56. 第3章その20 王立図書館
(考えてみたら久しぶりの単独行動だな。)
将は、ミューやシルフィ、エミリーなどの事を考え、街に出てから一人ぼっちにならずに済んでいる事に、改めてありがたいと思えた。
反面、ラッキーだったから今まで無事だった事もまた事実で、戦闘だけでなく、もっと実力をつけないと、と考えたりしながら時々地図を見て図書館にたどり着いた。
王立図書館は、さすがに立派な建物で入口は冒険者ギルドよりも重厚な作りで、建屋が年代を経ているであろう事が想像できた。
入口はメトロポリタン美術館の様に階段状になっており、ロビーの奥に受付があった。
「すいません、図書の閲覧をしたいのですが。」
「はい、それではギルドカードなどの身分証明書と預託金として50シュケルス、閲覧料として10シュケルスの合計60シュケルスをお願いします。」
「預託金?」
「はい、本などに傷がついた際にお支払頂く費用を前払いの形で頂いております。もちろん50シュケルス以上の場合にはさらに追徴金を頂きますし、何もなければそのままお返し致します。」
要するに、何かあった際に弁償できる人だけが閲覧できるシステムになっているのだった。
将は、カードと大銀貨6枚を渡し中に入った。
受付で、閲覧する際には、その図書をいったん司書に持っていき、その後閲覧室に移って読む事ができるなどを説明された。
中に入ると、本は種類別に並べられており、かなりの蔵書量だった。
将は近くにいた司書に声をかけた。
「すいません、薬剤の合成関係の図書を閲覧したいのですが、どの辺にありますでしょうか?」
「ああ、それならこのあたりがそうですよ。」
司書さんは丁寧に案内してくれた。
「ありがとうございます。
探してみて、読む本を決めたらまた声をかけますので。」
「はい、1度に3冊までは大丈夫ですので。」
早速、将は背表紙を見ながら読む本にあたりをつける。
『王都周辺の植物と薬効』『上級ポーションの合成法大全』『ドラゴン系素材の薬剤への適用』
この3種を手に取り、パラパラと読むと役立ちそうだったので選び取り、司書さんに許可をもとめる。
「はい、問題ありません。
かなり上級な合成を学ばれるんですね。
もし、本を写す場合は閲覧室にいる司書に声をかけてください、紙は販売、ペンは有償でお貸し致しますので。」
この世界でも、当然人件費や本の購入費その他もろもろ大変なのだろう、意外としっかりお金を取るようだ。
将は、3冊それぞれボリュームがあるため、今日で全て読めるとは思わなかったが役に立ちそうな部分だけでも探して写そうと考えた。
閲覧室に移動すると早速司書に紙10枚とペンをお願いすると1シュケルと50セントという事で入館量に比べればずいぶん良心的だと一瞬思ったのだが、紙が1枚だいたい1,000円でペンの貸出が1日500円と考えると、そうでもないかと考えを改めた。
まず、ざっと内容を確認し、今持っている素材に関連している部分のページをメモし、その後その部分をガリガリと書き写していった。
3時間ほどの作業で、とりあえず3冊の必要そうな部分は写せたので、作業を終えて本を司書に渡すと、司書は3冊が特に傷やページ破損が無い事を確認した後、将は閲覧室を出た。
そろそろギルドに向かわないといけない時間になっていたのだが、ちょっと気になる事があったので蔵書室の司書に再度声をかけた。
「すいません、魔法関係の図書ってありますか?」
「もちろんございますよ。
こちらになります。」
司書は蔵書がある場所に案内してくれたが、それは別室の扉の前だった。
「魔法関連図書は、この別室に保管してあります。
魔法を使用できない方への閲覧は制限されておりますので、この扉を魔力を使ってあける事ができた方のみが閲覧できます。
(ふーん、さすが魔法に関しては管理が厳しいんだな。)
将は、扉に手を当て、魔力を込めるとカチャリと扉が開いた。
「あ、魔術師の方だったのですね。
そういえば先ほども薬剤関連の図書を選ばれてましたものね。
閲覧されるのであれば、どうぞ中でご覧になってください。
もうしわけありませんが、魔術書関連は写しが禁止されておりますので、閲覧のみです。」
「色々ありがとうございます。
ちょっと今日は時間がないので、魔術関連の図書はまた今度読まさせて頂きます。」
「そうですか。
余計な事かもしれませんが、閲覧料は1日の料金になっておりますので、もし次回いらっしゃるときは、なるべく長い時間こちらに滞在できる日を選ばれる事をお薦めします。」
さすがに司書になる様な真面目な人は、優しい人が多いようだ。
将も優しい言葉を聞いて嬉しくなった。
「ありがとうございます。
次に来るときは1日中籠らせて頂きます。」
「はい、お待ちしております。」
将は、受付で預託金を受け取ると、少し早足でギルドに向かった。
「ショウ、ちょっと遅いわよ。」
ギルドに着くと、約束していた時間より30分以上遅れてしまい、エミリアからお叱りを受けた。
シルフィは憮然とした表情でエミリアの横に座っていたので、将が謝る。
「ごめんな、エミリー、シルフィもすまない。」
「いや、別に遅れた事は問題ない。」
「ん? 何かほかに問題があったのか?」
「ああ、アジーズはセクハラ爺だった。」
「役に立たなかったの?」
「役に立つから腹立たしいのに、この時間まで訓練を受けたんだ。
全くいまいましい爺だ。」
その後、場所を移してシルフィの愚痴を聞くことになった。




