53. 第3章その17 素材買取
シルフィの申し込みも終わり、そのまま以前防具を買った防具屋に向かった。
「そういえば、あの時もレッサードラゴンの鎧を薦められたな。」
「そうだな、レッサードラゴンの皮は貴重だし、今回は1頭分まるまるあるから、それなりの価格になると思うぞ。」
「それなりって?」
「分らんが、10人分程度は鎧が作れる面積があるから、処理前とはいえ500シュケルス以上はするんじゃないか?」
「えっ、そうなの?」
「皮の部分によっては鱗もついているからな、鱗だけ取って、スケイルメイルの材料に使う事もできるしな。
すまんが、専門的な事はわからないが、あの店は良心的だから適正価格で買い取ってくれるはずだ。」
そんな話をしながら、店に着いた。
「あのー、すいません。」
「はい、どの様な防具をお求めですか?
あれ、先日ワーベアの皮鎧をお買い上げ頂いた方ですね。
調整でしょうか?」
さすがに、1週間しか経っていないので顔を覚えていたようである。
「いえ、今日はレッサードラゴンなど素材の買い取りをお願いできないかと。」
「ありがとうございます。
素材のお持込も大歓迎ですよ、申し訳ございませんが、こちらのカウンターにお越し下さい。」
そういうと、少し奥の裏口近くのカウンターに案内してくれた。
「では、お手数ですが、こちらに素材を置いて頂けますか?
私は職人を呼んできますので。」
そう言うと、店員は裏口から職人を呼びに行った。
その間に、袋からレッサードラゴンの皮とワーベアの皮を取り出す。
カウンターには置ききれず、周辺の床にも置いた。
「牙とかはやっぱり、ここでの買い取りはしないよね?」
将がシルフィに聞いた。
「どうだろう、聞いてみたら色々教えてくれるのでは?
職人は素材の薀蓄を語りたがるからな。」
「ああ、確かに。」
研究者だった将にも身に覚えがあった。
「おう、おまえらが素材持ち込んでくれたのかぁ、ありがとよ。
これがそうか、こりゃまたずいぶん多いな。」
職人は、素材を丹念に調べ始める。
「うーん、剥ぎ取り方がちょっと雑だから肉がずいぶんついちまっているが、まあそれは問題ない、しかし、これは今さっき取ってきたみたいに新鮮だな。
処理をするには変に乾いてしまっているより良いからありがたい。
ワーベアーも1頭分あるな。
希望の買い取り価格はあるか?」
「いえ、適正価格で買い取って頂ければと思っています。」
「ほう、まあ俺が作った鎧を着てくれてるんだから、これからも長く付き合いたいしな。
1,050シュケルスでどうだ? レッサードラゴンが1,000、ワーベアーが50だ。」
「えっ、そんなにいいんですか?」
「おう、また持ってきてくれよ。
俺の名前はサーダットだ、よろしくな。」
「私はショウです。
あっ素材の事で教えて欲しいのですが。」
「なんだ、なんでも聞いてくれ。」
「レッサードラゴンの牙や骨の一部なども取っておいたのですが、そういうものは防具の素材に使えたりします?」
「あー、装飾で牙を使う事もあるが、レッサードラゴンの大きさだとな、重すぎるだろ。
確かポーションの素材として使えたと思うが、レシピなんかは王立図書館に行けばあるから、読めれば参考になると思うぞ。」
さすがに職人だけあって博識だった。
「ありがとうございます。
文字は読めるので今度行ってみます。」
「そうだな、良いものできたら今度来た時にでも教えてくれ。」
サーダットさんと話が一段落つくと店員が横から話しかけてきた。
「買い取り価格は1,050シュケルスでご異存なければお支払いたしますがいかがですか?」
「もちろん、問題ないです。」
「はい、それではこちらが代金です。」
そう言うと、店員は、金貨10枚と大銀貨5枚をカウンターに置き、将は小袋に入れた。
「お持込ありがとうございました。
また、何か入手されましたら、ぜひまた“サーダット防具店”に持ってきてください。」
将があれっ? という顔をしていると。
「ああ、おれが職人頭兼オーナーだ、よろしくな。」
サーダットがいたずらっぽく笑った。
さすがに、レッサードラゴンクラスの高級素材の買い取りは、店主自らが行ったというのが真相だ。
「今日はありがとうございました。」
将は礼儀正しくお礼を言って店を出た。




