47. 第3章その11 窮地に?
その時、左手の指にはめられた指輪が輝くと脳裏に懐かしい声が響く。
「わしの剣を使え。」
将は、その声で“ハッ”と正気に返り、腰にサブの武器として持っていたウィルトスを引き抜く、久しぶりに将がその剣を手に持つと、大きさが、小剣から1mを若干超えるほどの大ぶりな刀に変化した。
すでにレッサードラゴンは目の前まで近づいている。
将が、ウィルトスで切りかかった。(ほとんどヤケクソで)
「でゃあああああーーー!!」
気合の声とともに、刀を振ると
“ザシュッ”
という今までなかった衝撃音で、レッサードラゴンの腹が切り裂かれた。
「キュオーーッッ」
という苦しげな声を上げて、レッサードラゴンが後ずさる。
(なんだ、この切れ味は、それに斬った後、体が軽くなった気がする)
将が感じていたのは、相手に傷をつける事でその体力を吸い取る能力をウィルトスが持っていたからで、先ほどの岩にぶつかった傷が癒されていたのである。
その後、レッサードラゴンは、むやみに近づかず炎のブレスによる攻撃と、尻尾での攻撃を繰り返した。
(くっ、これじゃあ近づけない。魔法での攻撃はほとんど効果が無いしどうすれば)
将は、レッサードラゴンの攻撃を避けながら、近づく隙を見計らっていた。
チラっとシルフィの方を伺うと、上半身をエミリーが支え、動いていたので安心した。
「さて、どうしてくれようか。」
気合を入れるために、独り言を言ってみたが、妙案は浮かんでこない。
(一か八かで突っ込むか。いや、もし俺がここで倒れたら一人の被害じゃすまない。まあ、実際怖いし。)
と、一人突っ込みできるだけの精神的な余裕?ができてきた。
その時、空にキラッと輝く点が生じたかと思うと、みるみるそれが大きくなった。
「キュイイイイイイイイイイイイィィィィーーーーー!!」
先ほどの、ミューの声と同じような、だが声の大きさも長さも比較にならない鳴き声が響き渡った。
“ズッズーン”
と、レッサードラゴンが倒れこんで動かなくなる。
その前に、空から2mほどの巨大な鳥が降り立った。
その姿は、頭は白銀、翼は燃える様な赤、体は輝く金色をした美しい色合いの神々しいものだった。
『そこの人の子よ。横たわる龍蛇に止めを刺すが良い。
安心して良い、しばらくは動かぬ。
頭部の後ろにある、逆鱗から頭を刺し貫けば苦しまず屠る事ができる。
せめてもの情けに、一息に葬ってやれ。』
鳥が人の言葉を話した。
ミューで慣れているつもりだったが、少し驚いて疑いもせずその言葉に従う。
倒れているレッサードラゴンに近づき、頭の後ろをみると、確かに鱗が逆さになっている部分があった。
勢いよくウィルトスで、その部分を貫くと柄の部分まで深く突き刺さり、一瞬レッサードラゴンの体が“ビクン”と動くと目が閉じられ、刀を引き抜くと噴水の様に大量の血が流れ落ちた。
将は、混乱していたが、この鳥に助けてもらった事は確かなので礼を言う。
「助けてもらい、ありがとうございます。
私はショウという冒険者です。
失礼ですが、なぜ助けてくれたのですか?」
『ふむ、人の子よ、そなたは礼儀をわきまえている様だ。
悪いが、私の名を明かす事はできぬ。
種族としては、そなたら人間は我らを“ガルーダ”と呼ぶ。』
「えっ、神鳥ガルーダ」
エミリアが声をあげる。
『ふむ、そこの娘は知っておるか。
仔細は後で、その娘に聞くがよかろう。
さて、ここに来たのは助けに来たわけではない。』
「えっ、ではなぜ?」
『そなたに尋ねたい事がある。』
「なんでしょう?」
『なぜ、我が子がそこにおるのじゃ。』
ガルーダが羽を伸ばし、ミューの方を指す。
「「「えーーーーーっ」」」




