44. 第3章その8 ある日森の中
森といっても外周部は、樹木がまばらで見通しはそれほど悪くない。
1時間ほど、あまり奥に入らず様子を伺っていたが、ウサギらしい小動物がいる以外は魔物どころか、あまり動物も見かけられなかった。
「おばさんが言っていた通り、ずいぶん討伐が進んでいるみたいだな。
もう少し奥の様子も探っておくか。」
将の意見に2人が無言でうなずく。
さらに30分ほど奥の方に進むと、うっそうとは言えないまでも樹の生えている間隔が狭まっていた。
「このあたりから先になると、騎竜も動きが邪魔されやすそうね。」
シルフィが指摘する。
「そうだな、そう考えればこのあたりから奥が注意しないといけない場所なんだろうな。
じゃあ、今日はこのあたりで戻って、明日からは本格的に探索をしよう。」
3人は宿泊所に戻り、その日は携帯食料で簡単な食事を取って休んだ。
次の日の朝早く討伐に出発した。
前日の下見をしたあたりからさらに奥の方に進んでいくと、数十m先の背の高い藪が不自然に揺れる。
各々が樹の陰に隠れて様子をみると、ワーベアーだった。
しばらく様子をみて、複数なのかを確かめていると、どうやら1頭だけだった。
3人は目をあわせ、将が『俺がでる』と口を動かすと、2人が頷いた。
「サンダーストライク!!」
片手を鉄砲の様な形にして3本の指から電撃を放った。
3条の電撃が1本に絡み合い、ワーベアーの脇腹に突き刺さると
「ウォー」
という悲鳴とも叫び声ともつかない、唸り声と共に体を立ち上げ、ショウの方を威嚇する。
電撃を放った直後からシルフィは走り出していたので、立ち上がった瞬間には、ほぼ正面に相対する形となり。
そのまま首を横なぎに斬りつけると、『ドシュッ』という鈍い音で首の半ばまでが断ち切られ、勢いよく血が吹き出し、数秒後に後ろに倒れていった。
「よし、幸先良く仕留める事ができたな。
ショウ、エミリア 悪いが周囲の警戒を続けてくれ。」
そう言うと、そのままワーベアーの魔石を取り出し始めた。
ワーベアーの声などで、魔物が寄ってこないか心配だったが、特に問題なく作業を終え、そのまま討伐を継続した。
その日は、他にもゴブリン4匹とホブゴブリン1匹の団体さんや、魔物かと思って攻撃をしたら反撃をしてきたので、仕方なく狩ってしまった猪などが獲物だった。
野営をしながら、血抜きした猪の肉を焼き、そのまま食べたり、焼いた肉をスープに入れたりして食べると、塩味だけなのに素晴らしく美味しく感じたのだった。
まあ、干し肉ばかり食べていたからという理由が大きいのだが。
3人交代で見張りをするが、さすがに危険地帯の野営という事で、少しの音でも警戒をするので、それぞれが自分の見張り番の時には全く眠くならなかった。
初日の夜は、幸いにも何事もなく明けた。
次の日は、さらに奥に進んでいった。
すると。
“ジィーー” という独特の羽音が聞こえたと思うと、ジャイアントホーネットが現れた。
将は、剣に炎の属性を急いで纏わせる。
ジャイアントホーネットは、しばらくホバリングをするとシルフィに狙いを定めたのか、襲い掛かった。
針を剣ではたくと、空中で体勢を立て直し、針から毒液を撒き散らした。
シルフィから距離を取って、さらにホバリングして警戒をしていると別の2匹が現れた。
どうやら、さっきの毒液の匂いが仲間を呼んだようだ。
「シルフィ、時間をかけるとさらに増えてしまうかもしれない。
ここは一気に叩きつぶそう。」
「おう。」
そう言うと同時に、切りかかる。
シルフィは羽をねらって剣を振ると、1匹は避けきれず地面に落ちる。
ショウが、剣を横なぎに胴を切り落とすと、焦げ臭い匂いと伴に絶命した。
残った1匹は、後ろにいたエミリアに襲い掛かったが、杖で上手く叩き、その隙にシルフィが羽を叩き斬った。
その後ショウとシルフィが、地面に落ちたホーネットにとどめを刺した。
手早く、魔石を取り出し、その場から離れる。
「ああいう、仲間を呼ぶタイプの魔物はやっかいだな。」
「そうだな、昆虫タイプは正直苦手だ。」
「あ、私も。
なんか顔とかが気持ち悪いのよね。」
ひどい言われようだが、なんとなく気持ちはわかった。
「まあとにかく、また匂いで集まってきたりしたら、やっかいだから早く別の場所に行こう。」
ショウは『熊ときたらミツバチだろうに、なんでスズメバチなんだ』と、やくたいもない事を考えながら足早に移動するのだった。




