43. 第3章その7 情報収集
開拓村の表門は、それほど大きなものではないが、出入りは柵で制限されているため、十分機能している様だった。
万里の長城とまではいかないが、かなり長い柵によってその内側には十分な耕作地と牧草地が作られている。
居住地は、さらに内側の壁によって守られており、この中に住むのであればかなり安心感が持てるのだろうと想像できた。
募集に応じた村人以外は、ほとんど出入りがないため、ギルドカードをチェックすると簡単に通してもらえた。
開拓村の出入り専用に簡単な数字入りのカードを貰った、これを見せればチェック済みとしてすぐに出入りさせてくれるとの事だった。
「すいません、冒険者用の簡易宿泊施設はどのあたりですか?」
「ああ、それなら裏門の近くだぞ、少し大きめの平屋でそこだけ黒い屋根だ。
だが、今はほとんど討伐に出払っていて、誰もいないと思うがな。」
「ありがとうございます。」
内門の中は、建物が立ち並んでいるというほどではないが、どうやら100世帯程度の規模で住民がいる様である。
教えてもらった裏門の方に進んでいくと、他の建屋より若干大きめの平屋があった。
扉を叩くと、中から人が出て来た。
「なにか、用かね?
おや、冒険者の方達かい?」
おばあさん、と言うには少し若い感じのおばさんだった。
「はい、そうです。
ショウと言います、こちらはシルフィとエミリーです。
門の守衛さんには、誰もいないかも、って聞いていたのですが。」
「ああ、昼間は私もいない事が多いし、ここ数日は、誰もここを利用してなかったからね。
私はここの管理をしているタマラだよ、よろしくね。」
「よろしくお願いします。
あの、もしお時間が問題なければ、最近の状況、できれば魔物の発生などに関して知っていたら教えて頂きたいのですが。」
「あらー、ショウはずいぶん丁寧な言葉を使うのね。
冒険者なのに珍しいわね。いいわ、知っている事ならお話しするわ。
じゃあ、せっかくらだから、中に入ってお話ししましょうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
「ああ、まずここの部屋だけど2人部屋しかないから申し訳ないけど、泊まるときは2部屋になってもらうわ。
誰が2人部屋を使うかなんかはお任せするけど。」
タマラがいたずらっぽく、おばちゃん突っ込みをする。
「はい、とりあえず私が一人になる様に分かれます。
ところで、最近の状況の方なんですけど。」
「そうね、その話だったわね。
今、冒険者は3組来ているわ。1組は4人、後の2組は5人のパーティでいずれもBランクの人だったわ。
そのうち、2組は来た日から考えると、もう10日経過しているから2,3日以内には帰ってしまうと思うわ。
村の外縁では、ほとんど魔物が見られなくなっているわね。この1月ほど3チームの騎竜部隊で、近辺のゴブリンみたいな弱いけど集団を組む様な魔物は、ほとんど討伐してしまったみたい。
わたしね、『なんで馬じゃなくて騎竜なの?』って兵隊さんに聞いたの。
そしたら魔物がいても怖がらないから、魔物討伐にはとっても役立つんだって。
しかも、倒した魔物をその場でムシャムシャ食べてしまうから死体の処理も済んで便利ならしいわ。
そんな事あって、さっき言ってた冒険者達はさらに先の森の中で討伐を行っているみたいよ、2日以上は離れたところに行ったみたいよ。
このあいだは虎の皮を見せてもらったの、ワータイガーだっけ、初めて見たわ。」
さすが、おばさんは話を始めると長い。
だが情報が満載でありがたかった。
「ありがとうございます。
その今、冒険者が入っている森は危険がないんですか?」
「もちろん危険だよ。
もし、自信が無いなら入っちゃだめだよ。
特に裏門から真直ぐ北に5日以上行くと人外魔境に入ってしまうからね。
まあ、森を進んでいけばどこも危険だけど、特に注意するんだよ。」
タマラからすれば、孫に近い年齢の若者が危険な事をするのは心配だった。
「真北に5日以上ね、そこまで行ったら往復で10日かかってしまうから、絶対行きませんよ。
情報助かりました、今日はちょっと裏門からの様子を見て明日から本格的に活動します。
荷物は部屋に置いて行っても良いですか?」
「ああ、良いわよ。
ただ部屋に鍵はかからないから、貴重品なんかは置いていかないでね。
まあ、何にもないここで盗みを働くような人もいないけどね。
私は用事を済ませてくるから、適当に出かけなさいな。」
タマラは、豪快におばちゃん笑いをして、去っていった。
とりあえず、大きな荷物を部屋に置き、3人で裏門から外に出た。
裏門から50~100mほど離れた場所からは道もなく、森が広がっていた。
森の周辺は樹が切り倒された後があり、今後も開拓村は、徐々に広がっていく様な感じではあった。
3人で、森の周辺まで移動したので、将が話しかける。
「よし、まだ日が高いし3時間ぐらい森の中に入って様子を見てみよう。」




