42. 第3章その6 開拓村到着
「おい、ショウ、起きろ。」
シルフィが、隣に寝ているエミリアを起こさない様に、将に静かに声をかける。
「ん…、うん。ああ、俺の番か。」
つぶやいて体を起こす。
将は、シルフィに代わって外の見張りを行う。
細い道とはいえ、王都の近辺であるため、それほど危険とは思えないが念のためだ。
伸びをしながら夜空を見上げる。
「月もあるし、星も綺麗だ。」
周りの様子に気を配りながら、過ごしていると、徐々に空が白み始めた。
それに伴って林の方が鳥の声で徐々に騒がしくなってくる。
見張りを替ってから、まだ2時間ほどしか経っていなかったので、そのまま空の色が変わっていく様子を見ていた。
さらに1時間半ほどすると、かなり明るくなってきたので、鍋にウォーターボールで水を張り、顔を洗うと、残りは2人のために取っておいた。
「ふう、目が覚めるなあ。
さて、そろそろ起こすかな。」
独り言を言った後、テントに入り二人を起こす。
隅の方でミューも丸まっていたが、とりあえずテントをたたむまでは、そっとしておくことにした。
「「おはよう。」」
眠そうに二人は答える。
「鍋に、水を入れておいたから顔を洗って来たらどうだ?」
「ああ、ありがとう、そうするわ。」
2人が身支度を整えている間に、片づけをして出発準備を整えた。
「さて、問題なければそろそろ出発しよう。地図から考えて半日もあれば開拓村までたどり着けるはずだ。」
二人が頷いたので、荷物をもって出発した。
道は広くはなかったが、特に荒れているわけでもなかったので道中はスムーズに進み、昼近い時刻になると、遠くに少し高い柵に囲まれた場所が見えてきた。
「あ、あそこがきっと開拓村だな。思ったより早く着けそうだな。」
そう言いながら、木でできた門の様なところに近づいていくと。
ドッドッドッ
と、馬とは違う足音の生き物の集団が近づいてくる音がした。
「「なんだ?」」
将達が慌てて、音の方を見るとかなり遠くから5人ほどの騎馬?とは少し違う集団が急速に近づいてきた。
近くで見ると、どうやら騎乗が可能な小柄な竜の様な生き物に兵士らしき人達が乗っているのがわかった。
「あれは、騎竜隊だな。」
シルフィがつぶやく。
集団が前に止まり、その中のリーダーらしき兵士が話しかけてきた。
「おまえらは、依頼を受けた冒険者か?」
「そうだが。」
「若造と女達だったから、道に迷って辿りついたかと思ったぞ。」
「・・・・・・・」
どうやら、かなり失礼な奴だった。
「私は、この開拓村の警備を預かっている騎竜隊第1チーム長のフィカール・ターリブだ。
お前らは、殊勝にも魔物討伐の依頼を受けた様だが、我々の仕事を増やさないために、依頼が無理だと思ったらさっさと帰る事だな。」
そのセリフに、後ろの4人が大声で笑っている。
「俺は、ショウだ。このパーティ『エラン』のリーダーをしている。
もちろん、無理な行動はしないつもりだ。
しばらく、よろしく頼む。」
シルフィとエミリーの二人はあからさまに嫌な顔をしていたが、将は冷静に受け答えをした。
「ふん、そう願うぞ。
開拓村は、二重の柵で中の住民を守っている。入口は2か所しかない。
今いる方の入口が表門でこちらは日が落ちても警備部隊と話をすれば中に入れてやる事ができるが、反対側は日が落ちたら通行できない。
開拓村の中には、宿屋は無いが今回のギルドへの依頼に伴って簡易の宿泊場所がある、内門の入口の守衛に場所は聞くと良い。
外門の守衛では念のためギルドカードの確認をするから準備しておけ。」
そう言い捨てる様に叫ぶと、騎竜の手綱を引き、また巡回に戻って行った。
「なかなか、騒々しい奴だったな。」
「まあ、魔物が近くに発生して気がたっているんでしょうが、ちょっと先が思いやられるわね。
とりあえず、中に入って話が聞けるなら状況だけでも聞いてみましょう。」
エミリアの言葉に2人は頷き、開拓村の表門に改めて歩を進めた。




