39. 第3章その3 王都名物
若干修正しました(最後の方)12日AM3:00
「なんじゃ、こりゃ。」
と、将はお腹から出る血を見ながら言いそうな言葉が出てしまった。
視線の先には滝があった。
といってもただの滝ではなく、壁面を使った滝である。
ならば驚くことはないと思うだろうが、ひとつだけ違っている点があったのだ。
その滝はなぜか下から上に水が流れて行っていた。
上まで昇った水は壁の裏に勢い良く落ちる、という至極単純だがわけがわからないオブジェだった。
「ああ、あれが王都名物、“昇り滝”だ。
誰が作ったかは伝わっていないが、建国の頃からあるらしい。
一応伝えによれば、“常識を疑え”だの“不可能はない”などの象徴らしい。
まあ、後からこじつけた気がするがな。」
どうやら、水魔法と時空魔法系の重力操作の複合魔力が壁に付与されているらしいが、詳細は不明という事だった。
「王都に来たら一度はこの“昇り滝”を見る者が多いらしいぞ。わざわざ二度見る者は少ないらしいが。」
(そうだね、シンガポールのマーライオンとか、ブリュッセルのしょんべ〇小僧的な存在なんだね。)
「わかった、もう十分だからそろそろ他に行かないか?」
「そうは言っても、後は武器屋か防具屋ぐらいしか、私は知らないが。」
シルフィは、自分の興味がない場所は覚える気が無い主義だった。
「そう、なら防具屋に連れて行ってよ。
考えてみたら防具がマントだけっていうのも次の依頼の事とか考えると少し不安だから。」
「ああ、確かにそうだな。こっちにあるぞ。」
シルフィが先導して店に向かう、人通りも多いし路地も似たような感じなのに自分が興味のある建物の場所はしっかり覚えているようだ。
「ほら、そこが防具屋だ。」
店先の小窓から、立派なフルプレートメイルが展示されているのが見える。
「いらっしゃいませー。」
元気な挨拶で店員が二人を迎えた。
「お客様、どの様な防具をお探しですか?
おっしゃって頂ければご要望に応じて店の既製品からオーダーまで承っております。」
「えーと、既製品でかまわないので、比較的軽くて丈夫な防具が欲しいんだけど。」
「軽くて丈夫な防具ですね。それですと皮製の防具がよろしいかと思います。」
「お値段はいかほどのものをお考えですか?」
「うーん、大事なものだから少し値がはっても構わない。」
「そうですね、それですと魔物の皮を使用している物が値段は張りますが丈夫です、当店にはレッサードラゴン、オーガー、ワーベアーなど各種取り揃えているのですが、お値段しだいです。」
「ちなみにレッサードラゴンの場合はいくらぐらいなんだ?」
「そうですねぇ、1000シュケルス。
と言いたいところですが、特別に980シュケルスでお売りします。」
「なあ、ショウ。」
「なんだ?」
「レッサードラゴンの皮は、硬度は最高級だが柔軟性がない。オーガーもまあ少しは良いが同じく柔軟性はそれほどでもない。
戦う時、後衛から前衛に移動したりする将のスタイルを考えると、ワーベアーの様に硬度はそこそこだが柔軟性がたかい獣系の防具が良いと思う。
どうせマントも着るんだろ。」
そう言って、マントを指さすと店員の目が釘付けになる。
「あっ、お客様、そのマント少し見せて頂いて良いですか?」
将が、良いとも答えていないのに、手に取ってマジマジ鑑定し始める。
「こ、、、これは生地に魔法付与が特にしやすいグリフォンの皮を用いて、その上、互いに干渉しあわない様に複数の魔法付与がされています。
魔法の方は専門外なので詳細はわかりませんが、皮の耐衝撃力はレッサードラゴン以上です。
あの、これを着ていらっしゃるのであれば、ワーベアーの皮鎧などは、ほとんど意味が無いのですが。。。」
「えっ?」
「分りやすく言えば、フルプレートメイルの下に皮鎧を着る様なものです。
もちろん、お買い上げ頂ければありがたいのですが・・・。」
「あ、でも剣を使うときには、どうしても前がはだけてしまうので買います。
おいくらですか?」
「ワーベアーの革鎧、ガントレットとのセットで100シュケルスのところ
良いものを見させて頂きましたので90シュケルスで良いです。
大きさを最終調整しますので、少々お時間下さい。」
品物を奥から持ってきて、体に合わせて印などをつけて、作業をすると30分ほどで仕上がった。
「お客様の体型は、それほど既製品からの直しがなかったのですぐに済みました。
装備してお帰りになりますか?」
参考までに、装備の注意などを聞いて、そのまま着て帰る事にした。
支払いなどを済ませ、満足して店を出た。
「シルフィごめん。」
「なにがだ?」
「いや、色々作業している間待たせてしまったし。」
「別に良い。
マントの強度もわかったし、良かったじゃないか。
私も待っている間、次の防具をどうするか考える良い時間になった」
「そう?」
「そうだ。」
二人で妙に納得しながら宿屋に戻って行くのだった。




