2. 第1章その2 初めての魔法と修行
「さて、それではワシの自慢の工房に行って魔法の説明でもしようかの。」
カゼールがそう言って歩き出すので、あわててその後を追う。工房というより研究室という雰囲気のその場所は色々な機材や道具が置いてあった。
「ああ、危ないものもあるから勝手に触れないようにな。必要な事は後で必ず学んでもらうから。」
そう言ってニヤリとする笑顔がちょっと怖かった理由は、後になって将は判った。
「まずは相性の良い属性の診断だが、これは実は特別な装置を用いなくてもある程度わかる。」
「なんでですか?」
「それは、髪の色と属性の相性が深く関わっているからだ。赤い髪は火属性、青い髪は水属性と言ったようにな。 ああ、属性の説明をまずしないとな。長くなるから後で本も渡すから良く読んでおくように。さて、説明するぞ属性は、地、水、風、火、光、闇、その他に大別できる。その他というのは今つかっている精神系、時空系や種族限定などの使用できる者が限定される属性じゃ。一般に属性と言えば、地水風火光闇の6属性を指す。ここまでは良いか?」
「はい、わかりました師匠。」
将も興が乗ってきたのか若干ふざけて返事をすると、カゼールは素直に嬉しそうに続ける。
「よろしい。それでは、ショウは自分の属性をなんだと思う?」
「えーと、黒髪だから闇ですか?」
「いいや、違う。」
「じゃあ、地かな?」
「それも違う。ヒントをやろうか?」
「はい、欲しいです。」
「うむ。属性の相性が複数になるとその色を混ぜたような色合いか斑の髪色になる。という事から考えてみろ。」
「もしかして、まさか。。。全属性に相性が良かったりします?」
・・・・・・・・・・・・・・・
「おしいのぅ、全属性に相性があるものはわしの様に生まれつき白髪になる。」
「え、ということは。。。まさか。」
「そう、全属性に相性が無い。」
「なんだそれー、期待したのにぃ。」
カゼールはひとしきり笑うと続けた。
「悪かったのぅ期待させて。じゃがな、全属性に相性が無いという事は。実は全属性に相性が良い事とあまり変わらないんじゃ。」
「すいません、言っている意味がわかりません。」
「混乱させたかな。相性というのは良いものがあると基本的にはその対称となる属性の相性が悪くなり、その属性の魔法を習得できない。白色は例外的に全属性に対して良い相性になるが、黒は全属性に相性が無い。相性が悪いわけではない。無いのじゃ。」
「良かったー。あれ、でもそれって要するに器用貧乏的なものでは?」
「そういう言い方もあるの。じゃが一人で全ての属性魔法を扱えるのは非常に大きな利点になる。わしの長い生涯でも黒髪の人間にあったのはお主が初めてじゃ。」
そういわれれば将も悪い気がせず、えへへぇ、とにやけてしまった。
「まぁ、白髪はワシ以外いなかったがの。」
とボソッとつぶやく。
「そういうわけで、属性に関しては良いとして次は保有魔力にかんしてじゃ。魔力、地方によっては理力とも言うがこれはあまねく生命体が生み出す力、オーラと呼ぶこの力を意志力で物質や仕組みを構築するのが魔法、魔術なんじゃ。」
カゼールが熱く語るのを、将も若干わくわくしながら聞いている。
「魔力は生命体の持つ力ゆえに一定ではない。体調や集中度合、状況などでゆらぎをもっている。ただ、ある程度の固有魔力というのは測定する事ができる。理論的には大きさの異なる石を持ち上げて筋力を測定する事と似ている。」
「わかりました。」
「さて、それではこの石に手をかざして力を送り込む様に意識をしてみろ。」
カゼールが取り出した石版に手をかざしてイメージ的に力を与えるようにしてみる。
「もっと真剣にイメージしろ。」
「わかりました。師匠。」
・・・・・・・・・
しばらくたって
「よし、値を確認してみるぞ。」
「はい、お願いします。」
若干わくわくしながら結果を待つ。何か期末試験の結果をもらうみたいにドキドキワクワクする。どうやら体が若返った事により意識的にも若返っている様子が見られる。
「お主の今の魔力値がわかったぞ。」
「どのくらいですか?」
「うん、、、まあまあじゃ。」
「え、測定値って言ってましたが数値じゃなくてそんなに曖昧なんですか?」
「いや、まあ数値はあるんじゃが。」
「いくつですか?」
「い・・・」
「い、一万?」
「いちじゃ。」
「いち?」
「そう、一。」
「One?」「Oneじゃ」
「あのぅ、ちなみに伺いますが平均的に私の年齢ぐらいの人間の数値はいくつですか?」
「聞きたいか?」
「はい。」
「まあ、15歳として」
「15歳の平均的な数値としては?」
「まあ、特に何もしない場合は、だいたい50ぐらいかの。」
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将はそれを聞くと、また頭を抱えて下をむいてしまった。
「まてまて、これはワシの仮定じゃがこれはお主の世界からこの世界に移行した際のトラップ的なものじゃと考える。なぜなら人間族が持つ生まれたばかりの赤ん坊の魔力が1なのじゃ。お主はある意味この世界にとって生まれたばかりの赤ん坊の様なもの、それゆえ肉体が持ち得る魔力も赤ん坊に準じているのではないかと考える。経験を積むことによって魔力は増えるものじゃ。しかもワシがついている、効率良く成長させてみせる。」
将は、カゼールの方を向いて。
「ほんとに?」
「本当じゃ。お主は運が良い。もしそのままどこかにほうり出されていたら野垂れ死にしていたと思うぞ。ワシが鍛えてやる。」
こうして、魔力1からの修行が始まった。
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カゼールが若干重々しく語る。
「さて、ショウの場合まず魔法の修練の前にすべき事がある事がわかった。」
「なんでしょうか?」
「基礎鍛錬じゃ。先ほどの測定の通り今のお主は赤ん坊と同じ様な状態である事がわかった。そうであれば、体力、魔力などまずは術や法を学ぶための基礎能力を高める必要がある。」
「はい。」
「そのためにはまずワシが考えた鍛錬を日々こなす事から始めてもらう。」
「わかりました。」
「まずはこの近くの森を走る事。走路に関しては、後でワシが教える。まずはそれを10日間行ってもらい様子をみる。」
「それだけですか?」
「走るだけと言っても、道は綺麗なわけでも無い。色々工夫して走れば得られるものはあるものじゃ。」
「わかりました。」
将は、考えても仕方がないと諦め、カゼールの鍛錬メニューをこなす事にした。
1周目はカゼールと一緒に走路の確認。意外と長く歩くと3時間はかかる距離だった。
「意外と長いですね?」
「まあの。短かったら修行にならんじゃろうが。ああ、それと夜は共通語の習得にあてよう。ワシとの意思疎通はこれで問題ないが一般人はこの魔法は使えんからな。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
将は、カゼールが面倒を見てくれることをありがたいと思いながら、なぜこんなに親切なのか疑問を感じた。
そんな疑問を口にする前に2周目が開始された。
「さて、今から一人で走ってこい。なるべく早い時間で走って帰れる様に考えながら走るんだぞ。」
「はい、行ってきます。」
道は、悪路であるため走ると言うよりは若干早く歩くというレベルであるがなるべく良い場所を選んで進んだり、小川は水嵩が少なそうな場所を選んで渡ったりしながら踏破した。
「ふむ、2時間と少しか。少し休憩してもう一度走ったら今日は終わりじゃ。」
そういいながら、大きなココナツの様な木の実をカゼールが将に渡す。
「この実の汁を飲むと良い。疲労回復の効果がある。」
「ありがとうございます。」
将はその少し甘い汁をごくごく飲みほした。飲むと確かに疲れが回復していくのがわかる。
木陰で少し休むと走る前と同じぐらいの状態になった。
「さあ、次の周回じゃ。始め。」
その言葉と同時に将は走り出す。先ほどと同じ様な要領で進んでいく。前と同じ経路なので少し余裕があるため若干スピードは緩める形でも同じくらいの時間で戻る事ができた。
「2時間と少しか、前回と変わらんの。」
「そうですか。」
カゼールは将の顔を見る。
「前回と変わらんの。」
「はい。」
「なぜ変わらないんじゃ?」
「はい?」
「これは修行じゃ、しかもなるべく早く帰って来るようにとワシは言ったはずだ。それなのになぜ同じ時間になるんじゃ?」
「・・・・・・・。」
「ショウは、今のままで良いのか?」
「良くないです。」
「で、あれば次に走るときは良く考えるように。」
カゼールは笑いながら言ってくれたが、正直言葉が骨身にしみた。
魔力が赤ん坊レベルだから、生き残るために鍛錬してくれているのに、俺は甘かった。カゼールは怒らないが逆にそれが辛い。もう二度と手を抜くまいと心に誓った。
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夜の共通言語習得は、リアルに英語の勉強状態だった。基本はアルファベット的な文字で単語を覚えるだけだが、文法など覚える事が多そうだった。
そんな昼間の鍛錬と夜のお勉強を10日間こなした結果。魔力が上がった。
魔力は2になった。。。 正直へこんだ。




