28. 第2章その19 方針決定と・・・
「じゃあ、大事な話だし、私たちの部屋に行って話をしない?」
エミリーが提案する。
「そうだね。他の人にあまり聞かれたくないこともあるしな。」
将が同意して、3人で『輝く獅子の背中亭』に向かった。
宿は、将が宿泊している『陽気な大熊亭』より綺麗で立派な作りだった。
「エミリー、ちなみに教えて欲しいんだけど。」
「なに?」
「この宿ってどのくらいかかるの?」
「えーと、シングルで1泊3シュケルス、ツインで5シュケルスだったかな。」
「ふーん、やっぱり結構高いんだなぁ。」
「でも、ここは共同だけどお風呂があるし、食事も部屋で食べられるから女性が泊まるにはいいのよ。」
そんな事を話しているうちに、部屋に着いた。
「ちょっと準備するから待っててね。」
「覗いたら斬る。」
シルフィが危険なコメントを残して2人がまず部屋に入った。
(そんな事言われると見たくなるじゃん。)
そうは思いつつ、命をかけるほどではなかったので、将は我慢して待つ。
「はーい、どうぞお入りください。」
エミリーの声が聞こえたので中に入った。
部屋は寝室とリビングが分かれている、現代でいうジュニアスィートレベルの作りの様で入った場所にはベッドは置いてなく、ソファと小さな机、椅子が2つといった感じだった。
中に入ると、とりあえずバックパックを置きミューを出す。
「ミュ?」
ミューはいつもと違う部屋にちょっと戸惑っている様だったが、3人しかいないことを確認すると安心したのか、おとなしくカバンの外で座り込んだ。
あいかわらず、シルフィの視線はミューに釘づけで顔が真っ赤だ。
「あのさぁ、シルフィ。どうしたんだ?」
「だ、抱いて・・・」
「えっ、そんな事いま 言われても。」
将が顔を赤くしてのけぞると。
「斬るぞ。そうじゃなくて、ミューちゃんを抱いていいかな? という事」
「ああ、ちょっと待ってな。」
将は、ミューに話しかける。
「どうだ? シルフィがそう言うんだが。」
ミューは、将を見つめて首を振る。
「という事だ、悪いけどもう少し仲良くなってからな。」
シルフィは、すんなり諦めて頷く。
「はい、はい。ミューちゃんの事は良いとしてこれからの事、話しましょ。
リーダーよろしく。」
エミリアは将に話をふる。
「あぁ、うん。じゃあ、まずはパーティのこれからを話そうか。
二人は何か希望はある?」
「うん、前話したかもしれないけど、私たちはもっと強くなりたい。要するにランクを上げたいの。」
「そうか、それは俺も同じだな。理由は・・・」
将が言いよどむと。
「なに?理由は。」
「うーん。笑わないで聞いてくれよ。
俺は目標にしている“やりたい事”がある。そのためには自分に力をつけたいんだ。
で、その“やりたい事”って言うのが。。。うーん、まあ、恥ずかしいけど“俺が生まれた国と同じ様な国をこの世界に創りたい”って事なんだ。」
・・・・沈黙・・・・
「男なら、国を持ちたいと思うのは別に恥ずかしい事ではないと思う。
まあ、できるかどうかは別として。」
シルフィが、ぼそりとつぶやく。
「まあ、そうだな。できるかどうかはともかく、師匠と約束したから頑張りたいんだ。」
「そうなのね。じゃあ、私達の理由も言うね。」
「・・・私達は、・・・行動の自由を得たいからなの。」
「???」
「あたり前だけど、女性は冒険者として数は多くないわ。良い生活するためにはお金も必要だし、実力もないと絡まれたりもする可能性も高いの。あと・・・」
エミリーが言いよどむとシルフィが続ける。
「私の名前はシルフェディア・ケトラー、ここから西方にあるクールラント国ゼムガレ領を領する伯爵家の出身だ。エミリア・ビロンは私の家に使える男爵家出身で、、、二人して家出をしてきたのだ。」
思ったより重い話になってしまった。
将が、遠慮がちに聞いてみる。
「理由は、なんでなんだ? 言えれば、でいいが。」
「ああ、二人とも父上が決めた、会ってもいない男に嫁がされそうになった事。女性だからと言って何もさせてもらえなかったから、、、だ。」
「そうか。。。わかった。
うん、まあ、お互い理由はそれぞれだが、“強くなる”という目標は同じなわけだからとりあえず、シルフィとエミリアはランクB、俺はランクCになる事を目標にしよう。」
二人がうなずく。
「あと、もう一つ。これは俺の希望でもあるんだが、色々な国を見てみたい。
さっき言った目標のために色々な国の知見を得たいんだ。」
「ふーん、そう。私も色々な国は見てみたいな。シルフィは?」
「うん、そうだな、自分の国から離れたいのもあるし、色々な国を見るのは楽しいのではないかと思える。」
「よし、ここまではいいかな。
そうだ、一つ教えてもらいたいんだが、二人がDクラスからCクラスに上がるのはどのくらいかかった?」
「私たちは最初から二人で依頼をこなしていたから早い方だと思うけど、1年はかからなかったわ。」
エミリアが答える。
「CクラスからBクラスになるより、DクラスからCクラスになる方が時間がかからないと思うから、まずは俺がCクラスになるまで色々な国に行って見聞を広めつつ皆で冒険者としてレベルアップを図る。
という事でいいかな?」
二人がうなずく。
「あと、二人の事情はわかったから、行く方向としては東方面の国を中心に回る。」
この意見にも、二人とも笑顔でうなずいた。
その後、エミリアから質問がきた。
「パーティの方針としては、ショウの決めた通りで依存はないわ。
さっきの話の中でちょっと気になる事があったのだけど。」
「・・・なんだ?」
「“俺が生まれた国と同じ様な国をこの世界に創りたい”って言ったわよね?」
「ああ」
「“この世界”ってどういう事です?」




