25. 第2章その16 初めての共同作業(後半)
次の日は朝から3人と1羽で昨日のオーク発見ポイントまで移動し探索をする。
足跡や木の枝などが不自然に折れている場所などを注意しながら探すと、しばらくして将が20mほど先の藪が不自然に動いているのを発見する。
「あの先の藪が不自然だ。木の陰に身を隠せ。」
身を隠して様子を伺っていると、1.8mほどの体躯で顔は醜い豚、体はちょっとセクハラで太ったおやじ体型の魔物が確認できた。
ひそひそ声で話す。
「今、見えるのは3体だな。もう少し引きつけたら俺がサンダーストライクを放つ。そうしたら一気に近接戦で片付けよう。」
二人は無言で頷く。
しばらく様子を伺っていると、結局後からさらに2体現れ合計5体になった。
息を潜めて近づくのを待つ。
6mほどの距離まで近づいたところで、将が飛び出した。
「サンダーストライク!!」
剣を持っていない左手から5本の雷がオークにたたきつけられた。
「ピギー!!」
激しい鳴き声と雷が落ちたところが黒く変色するが5体の内3体はそのまま襲いかかってきた。
将が剣に風の属性を付与している間にシルフィは一番左のオークに襲い掛かり一刀で切り伏せる。
真ん中のオークは左のシルフィを襲うべきか前の将に向かうかを迷い立ち止まる。
右端の1体は将に襲い掛かってきた。
将は、襲ってきたオークの動きを見定めて武器の木やりを叩き斬り、そのまま胴を横なぎにすると魔力付与のおかげで上下真っ二つに裂けた。
それを見た真ん中のオークが背を向けて逃げようとしたところをシルフィが追撃する。
順調に攻撃を続けるその時、後ろから。
「きゃあ!!」
5体の他にもう1体いたオークが側面からエミリアを襲っていたのだ。
位置の近い将が慌てて駆け戻り、ギリギリでエミリアを引き寄せる。
その瞬間、オークの木やりが将の腕に突き刺さる。
「!!!」
ひどい痛みが腕を貫くが反対の腕に握っていた剣で木やりを斬り、そのままオークに切り付けた。
片手での斬撃だったため、それほど威力はなかったが魔力付与していたためオークを深く傷つけた。
オークが痛みに我を忘れ、折れたヤリでさらに突きかかろうという時、初めのオーク達に止めをさし終ったシルフィが後ろから切りかかった。
“ザシュッ”
重い音とともに、オークの後頭部から勢いよく血が噴き出すと、そのまま後ろに倒れた。
将はその様子を見て安心すると、緊張で緩んでいた痛みがぶり返す。
「いってー!!」
「ショウ大丈夫、ごめんなさい。」
エミリアが取り乱してあやまっている。
シルフィは、将に近づいてエミリアに話しかける。
「エミリア、刺さっている槍先を抜くから、すぐにヒールをかけるんだ。」
エミリアは頷く。
「がまんしろ。」
そう言って、シルフィは一気に将から槍先を抜く
「!!!!!」
声にならない叫びを将が発する。
「マナよ、我が声を聞け。我が同胞にその聖なる力をもって癒しを与えたまえ。ヒール」
将は痛みが引いていくのがわかり、傷もみるみるふさがっていく。
「我はマナに感謝のいのりを捧げる。」
エミリアは真言を唱え終わると、将に抱き着いて泣き出した。
「ごめんなさい。私がもっと気を付けて周りを見ていたら。。。」
将は、ちょっと驚いたが痛みも引いた事もあり、エミリアの様子を見る余裕ができた。
涙をぽろぽろ流して、肩を震わせている。シルフィがその背中を撫でて心配そうに様子を伺っている。
将は、傷ついた方の手で頭をなでる。
「気にするな。エミリーのおかげで、ほら、すっかり良くなってる。」
頭から手を離すと、ぶらぶらと手を振ってにっこりする。
すると、エミリアは顔をあげてグスグス言いながらも泣き止んだ。
気分を変えるためにも将が声を出した。
「さあ、せっかく倒したんだから、魔石をとっておこう。5シュケルスは大きいぜ。」
近くのオークからショートソードを使って魔石を取り出した。
そのとき将は、またちょっとウィルトス(小剣)が大きくなっている様に感じた。
3人で魔石を取り出す作業を終えると、少し休憩して周りの様子を伺い、他にまだオークが残っていないかを確かめた。
十分時間をかけて他にオークがいない事を確認すると村に戻って、討伐した事を伝えた。
何人かの村人がタラルと死体の処理をしに森に入って行った。
将たちは、街に戻る事もできるとは思ったが、疲労とエミリーが元気になってからと考えて、その日もう一日村の宿で泊まる事にした。
その日の夜は、村長の家で夕食をごちそうになり、気持ちよく寝る事ができた。




