22. 第2章その13 魔法の実力と連携
痛む鼻をさすりながら尋ねる。
「どの魔法を見せればいいかな?」
「得意な攻撃魔法で良いですよ。
そうですね、単体攻撃のものと複数攻撃を見せて頂けると作戦が立てやすいですね。」
「わかったよ。」
ちょっとぶっきらぼうになったのは、痛む顔のせいだった。
将は何を使うかを少しだけ考えて標的に向かう。
(最近使ってない魔法を練習しようかな)
「では、いきますよ。」
将は、単体攻撃を選択した。
「ウォーターレーザー」
目に見えるぎりぎりの太さに圧縮された水が軌跡を描いて標的に届くと、標的は倒れもせず穴が穿たれた。
これは以前、テレビで見た超高圧力の水による加工機の様に、水を可能な限り圧縮し指向性を持たせ標的に放つ技で、カゼールに訓練されていた時に試していた。
「「なっ なに 今の!!!」」
シルフィとエミリアが驚く。
「いや、水は圧力を高めてやるとほどんどの物質を切断できるほどの剪断力を持つんで、それを利用できないかと、水を圧縮させるイメージと、開放する範囲を可能な限り小さくしてやることでレーザーの様にしたんだよ。
この魔法は師匠にもほめられたよ。」
エミリアが先ほどとは異なる口調でまくし立てる。
「あなたが言ってる事が理解できないんだけど、今のはオリジナルな魔法なの?」
「うーん、基本はウォーターボールだから、オリジナルってわけではないと思うけど。」
「わかったわ。いえ、わからないけど今のはウォーターボールの応用って事ね。
経験を積んだ魔法使いは、魔法大全の魔法を応用できると聞いた事があるわ。
でも、初めて見た。」
「そ、そうなの?
ずっと師匠と二人で修行してたから。。。」
そこに、シルフィが口を挟む。
「いいから、次を見せてくれ。」
「ああ、わかった。」
次は無難に習った魔法を唱えることにした。
「サンダーストライク」
5本の指から5本の光束が発生し、標的5体へ同時に雷が落ちる。
ブスブスという音が残り、雷の落ちた部分が黒く変色した。
「えっ、今のサンダーストライクですよね?」
「うん、そうだけど。
今のは、習ったまま使ったから普通だよね?」
「まあ、確かに普通といえば普通だけど。。。
普通は片手の手の平をこうして。」
と、エミリアが動作をして。
「片腕から1体に雷を放つ単体魔法なの。
極まれに両腕から放てる魔法使いがいるって聞いたことはあるわ・・・。」
シルフィが標的を見ながらコメントする。
「でも威力としてはそれほどでもないな。さっきの水魔法の方が威力は高そうだ。
次は範囲魔法を見せてくれ。」
将はうなづき。
「みんな、少し離れてくれ。」
そう言ってから呪文を唱える。
「トルネード」
標的全てを巻き込み、小さな竜巻が発生する。
帯電によるオゾン臭があたりに漂い、バチバチという音も伴い標的が宙高く舞った。
暴風が収まると、とんでもなく高いところまで飛ばされた標的が落ち、四散した。
「ふん、トルネードは普通だが威力はかなりのものだな。
魔法使いとしては十分使えそうだ。」
シルフィが、上から目線でほめてくれた。
「そ、そうね。
あれだけ収束度の高い竜巻は、実戦でも使えそうね。
サンダーストライクも麻痺効果があるから、とても有効ね。
ありがとう、十分参考になったわ。
ところで、ショウ。
今の魔法は何回使用できるの?」
エミリアが尋ねる。
「ああ、最近限界まで使った事がないからわからないけど
20回は問題なく使えると思うよ。」
「そんなに。。。すごいわね。」
「そうなのか?」
「ええ、まぁとにかく喫茶コーナーに戻りましょう。」
一度、3人で元の喫茶コーナーに戻り話を続けた。
「ショウ、ありがとう。
あなたの力は良くわかったわ。
魔法使いとしては十分よ。
しかも剣もシルフィと同程度使えるなんてすごいわ。」
「わたしが勝った。」
「後は連携をどうするかね。」
エミリアはシルフィの独り言をスルーした。
「もともとは、後衛からの魔法攻撃をお願いしようと思っていたのだけれど。
あの試合をみたら、十分前衛もできると思えました。
ショウさんは、どうしたいですか?」
「あ、まず少なくともしばらくは仲間なんだから、さん付けはいいよ。
ショウって呼び捨てにしてくれ。」
「「わかった(わ)。」」
「そうだね、すでに2人は前衛と後衛で十分な連携ができているだろうから、私は遊撃的に行動するっていうのはどうかな?」
「作戦というのはどうかと思うけど、確かにそれが良いかもしれないわね。
シルフィが良ければ、そんな感じでいかが?」
「いい。」
「じゃあ、それで決まりって事にしましょ。
今日は、依頼を受けるのは時間的に遅いから明日ここに集合しましょ。
私達は、『輝く獅子の背中亭』に泊まっているわ。」
「わかった。私は『陽気な大熊亭』に泊まってる。」
お互いに宿泊場所を教えあって、その日は解散となった。




