18. 第2章その9 強さの検証2
夕食を食べて、部屋でくつろぎながら明日の計画を練った。
足元ではミューが大好きなお肉を食べている。最近は2人前ないと足りない様だ。
(うーん。意外とEランクの対象になっている魔物は弱いようだ。ちょっとこのままだと検証にならないなぁ。コボルトの単体もEランクになっているが、複数だとDランクだったな。今は一人だし強さの不明な複数の魔物を相手にするのは危険だな。Dランクの単体討伐依頼であればいけそうな気がする。
よし、明日はそれでいこう。)
穴の埋戻し作業でそれなりに疲れていたため、横になるとすぐに寝てしまった。
朝ごはんを食べていると、ダナーニールちゃんが声をかけてきた。
「ショウさんはいつも鐘の様に正確な時間にご飯を食べにきますね?」
「ああ、夜ねるのが早いから、いつも朝早く目が覚めてしまうんだ。」
「そうなんですか。でも、健康的でいいと思います。冒険者の方は体調が大事ですしね。今日もがんばってくださいね。」
「うん、ありがとう。」
たわいのない会話が結構心を癒してくれる。師匠といたころは、2人だけだったし、やっぱり1年は長かったのと、他の人と喋れなかったのは寂しかった。
(ダナーニールちゃんも後5年もすればストライクゾーンに入るのになぁ)
などと不謹慎な事を考えつつ、食事を終えるとギルドに向かった。
ギルドは朝一だと本当に人が少ない。今日は、女性の冒険者2人組がいるだけだ。ちょっとみると戦士風の子と神官風の子の組み合わせだ。
(いいなぁ、ああいう感じでバランスのいい仲間がいるといいだろうなぁ)
そんな事を考えながら見ていると、戦士風の子が睨んできたのであわてて目をそらして依頼掲示版を見る。
(睨まなくたっていいのにねぇ。さて、Dランクの討伐系で単体の魔物はっと)
探していると、ひとつ目につく依頼があった。
依頼ランクD
【魔物討伐依頼】
内容
街の西3㎞先の丘から2㎞北にある森にゴブリンが発生しています。この討伐を依頼します。なお、この依頼は掲示中、継続的な依頼としますので特に申請は必要ありません。職員以外が剥がす事を禁じます。
達成報酬 1匹につき1シュケル
期限:無期限
注意:ゴブリンは木やりなどで武装をしています。単体ではなく複数で行動する場合も多く、十分に注意してください。
将は、これを受けようと思ったのだが申請方法がはっきりしなかったので確認した。
「ルカイヤさん、あの依頼ランクDのゴブリンの討伐依頼を受けたいのですが、申請必要ないと書いてあって良くわからないのですが?」
「ああ、常時依頼ですね。あれは、数が多かったり、継続的に依頼する必要性がある場合に掲示する依頼です。
ゴブリンは数が増えると変異体、ゴブリンウォーリア、ホブゴブリン、ゴブリンメイジなどの発生につながります。繁殖スピードも速いので常時依頼が必要なんです。
常時依頼に関しては、魔石とカードを提出してもらえれば達成と判断します。
でも、気を付けて下さいね。注意に書いてあるようにゴブリンは武装している事が多い上に複数での行動も多いです。
常時依頼の場合は、達成しなくてもなにも罰則はありませんので、その点も考えて行動してくださいね。」
(つまり、後だしだから、逃げても依頼未達は無いってことか、確実に複数を倒さなければいけないコボルト討伐よりリスクが少ないし、強さの検証にはいいかな。)
「良くわかりました。とりあえず、これをやる方向で今日はがんばってみます。」
「そうですか、くれぐれも気を付けて下さいね。」
意外とルカイヤさんは心配性な様だ。
とりあえず、にっこり笑って受付を離れそのまま依頼書にあった森に向かった。
依頼の場所は、それほど樹の数も多くなく視界があるため、不意打ちを受ける心配は無さそうに感じた。
ただ、今回は初めての魔物という事もあってミューはバックパックに居てもらって顔だけ出して後ろを確認してもらっている。
しばらく、森を歩いていると、前の方でガサカサッと音がした。
あわてて近くの大きな幹に体を隠し様子を伺う。
すると、15mぐらい先でゴブリンらしき2匹の魔物が歩いて来るのが見えた。120㎝ぐらいの身長に猿の様な顔だが少し大きめの目と口、手には2匹ともヤリを持っている。
特に警戒する様子もなく、こちらに歩いてきた。
ゴブリンは個体毎に属性が異なるので、弱点属性ではなく、周りへの影響を考えて魔法は、水系の攻撃魔法「アイスランス」に決めていた。これは氷のヤリで単体への攻撃としてはそれなりに威力がある。
2匹いたので、1匹を魔法、1匹を剣で仕留めるようと即座に決める。
5mほどまで近づいたところで、飛び出し。
「アイスランス」
呪文を唱えると、左側のゴブリンの胸に突き刺さり動かなくなる。
すかさず、火の属性をミスリルソードにまとわせる。
「ファイヤブレード」
ファイヤーボールと同様のイメージで唱えると青い焔が剣の周りに発生する。
そのまま突っ込み、カゼールとの練習通り一文字に左から右に振ると、胴が真っ二つになると同時に切り口がブスブスと炭化していた。
「ふー、怖かったぁ。」
将は、本音を口に出し、周りを警戒する。
どうやら、他には魔物は居ない様だったので、ゴブリンから魔石を取り出した。
死体をそのままにするのは、少しだけ気が引けたが、この場所で長時間作業する気にはならなかったので、そのまま放置する事にした。
現時点では、Dランクのゴブリン程度であれば無理なく討伐できそうな事がわかったが、複数を近接戦闘するのは、技量というよりは精神的につらい気がした。
(まずは、Dランクの討伐依頼を受けて早めにDランクへの昇格を果たし、その間に仲間を見つけよう)
ある程度、自分の精神面も含めた強さを把握し、方向性を定める将だった。




