16. 第2章その7 ヴィジョン設定は大事です
その日は、夕食の時に久しぶりにビールを飲むことにした。
こちらでは15歳以上は飲酒できるので、街に来てから飲む機会はあったのだが、仕事への影響を考えて今まで飲んでいなかったが、明日は仕事を休もうと考え、飲むことにしたのだ。
ビールは、若干白濁したベルギービールっぽい感じで、若干アルコール度数が強い様に思えるが、味が濃く好みにはあっていたが(もう少し冷えていたらなぁ)というは贅沢か。
ダナーニールちゃんも
「飲みすぎない様に注意した方がいいですよぉ。」
と言いながらお代りを持ってきてくれた。
やっぱり仕事あがりには、ビール。
「くー、腹にしみるぜぇ。」
とオヤジくさいセリフを言いながらジョッキ5杯ほど飲むとさすがに酔いがまわってきたので、部屋に戻りミューに夕ご飯をあげて、寝てしまった。
次の日は、いつもより遅い時間に目が覚めたが、特に二日酔いなどはなく、気分よく朝食をとった。
今日、休みにしたのは、体を休めるだけでなく、ウスマールに来てからの1週間を振り返るのと、これからどうするかを考えた方が良いと思ったからだ。
まず、1週間を振り返ってみる。
仕事をしたのは5日間、全て薬草採取だった。
依頼ごとで若干報酬にバラつきはあったが、概ね3シュケルス/回。昨日しとめたストライクラットの報酬を含めて16.1シュケルスの収入になった。
まあ、だいたい15シュケルス稼げるとして1週間の宿代が5シュケルス。買い食いなどを考えても7シュケルスぐらいは貯める事が出来るだろう。
この仕事の請け負い方なら危険も極めて少なく、安全に暮らしていく事ができる。
さて、ここからが本題だ。
私は、このままでいいのか?
一週間暮らしてみたが、少なくともこのウスマールは治安も良く、行政がしっかり行われていて町の人間も親切な人が多いと思う。今のままでも十分楽しく暮らせそうだ。
こちらに来て、1年弱の修行でたぶん私の年齢は16歳。前の世界で過ごした時も合わせれば40歳だ。
今のままでいいのか?
答えは、“否”だった。
40にして立つという格言だけでもない。
カゼールに言った言葉がひっかかっているのもそうだが、16歳に戻れて将来への可能性が無限にある自分自身が、どこまでやれるのかを試したいという気持ちがあったのだ。
そこで考えたのは。
(ヴィジョン設定をしよう)
これは将が、サラリーマン時代に研修で教えてもらい実際役立った手法だった。
まず大きな目標をヴィジョンとしてたて、それを達成する近未来のターゲットを設定し、ターゲットに対するプランを立て実施するという方法だ。
まずヴィジョン。
これは【いつか日本の様な国をこの世界に創る】だろう。
そのためには、領土、国民、主権(権力)が必要か。現実問題、それをいきなり持つことは不可能だろう。
だとすれば、それを手に入れる可能性を持てる個人としての力をつける、という方向か。
師匠が言ったとおり、例えば国王などの国家元首への影響力が大きい宰相またはそれに類する地位につけばいいのだ。
まあ、いきなりそれは難しい。まずは、自分自身そういった職に就くことができる実力と経験、実績などを積むことが必要だろう。
まずは【ギルドでのランクをSにする】というのをターゲットにしよう。あまりに遠い未来にスケジュール設定するとプランが緩んでしまうので、仮に5年間を目標にする事にした。
なるべく早くEクラスからDクラスへの昇格をサブターゲットにして、それにかかる期間と、DクラスからCクラスにかかる期間などからプランを練りなおすとしよう。
また、昨日も強く感じたのだが、魔物と相対した場合、一人での行動はリスクが大きすぎる。単体だったから無傷で終わったが複数だったらどうなのだろうか?やはり仲間がいた方が、リスクは格段に下がると考えられる。
ただ、ストライクラットに関しては強さから考え、複数でも対処可能ではないかと思われ、まずはそういった検証をして、自分の強さを確かめつつ仲間に関してはギルドに相談する事にした。
まとめると、至近ターゲットは
1.ランクをなるべく早くDにあげる。
2.自分の強さ(特に複数の魔物への対処可能性)を把握する
3.仲間を作る
よし、明日からまたがんばるぞー。




