終りの世界と仮面の悪魔
世界から人類が滅亡してそろそろ一ヶ月たちます。
ワタシは自らの足でこの静かな世界を歩き続けました。
疲れはありません、眠気なども勿論機械なので存在しません。
ワタシは人間よりも優れたロボットなのです。
しかし…ワタシは白衣の悪魔が言った事がずっと気になっていました。
彼は言ったのです。君は失敗作だと。
あの短時間で彼はワタシの何が分かったというのでしょうか?それも悪魔の能力と言うものなのでしょうか?
彼と別れてからは色々な悪魔に出会いました。
彼らは人類を滅ぼしてしまったことを理解しているが反省はしていない。
とくにそれを責める気はありません。所詮は弱肉強食なのですから。
そして今、ワタシは古びた遊園地に来ていました。
遊びたかったからというわけでは勿論ないです。ワタシは何かをしたいからそれをするという事は好みません。機械だからでしょうか?
ワタシはずっと歩いていたのです、この世界を、人間が作り上げた世界をただずっと。
そしたら偶然ここに来た、ただそれだけです。
遊園地は随分と古く廃れていました。
人間が一ヶ月いないだけでここまで変わるのか、というほどに。
しばらく歩いていると、ワタシは一人の悪魔に出会いました。
「なんですかアナタは…。見る限り人間ではないようですが。人類も滅びましたし…」
「…。ワタシはロボットです」
初対面だというのにこの悪魔は随分と慣れなれしく話しかけてきました。
彼も白衣の悪魔と同様独特な姿をしていました。
黒色の肌に白いお面をかぶっています。
服はピッシリとした黒色のスーツ。白衣の悪魔に比べれば幾分か人間に近い形をしていました。
「おおーロボット!人間が残した文明の一種ですか。素晴らしいですね。実に素晴らしい!してロボット君、実は僕はちょっと落し物をしてしまってね。君の力で探し出してくれないか?」
彼は物凄くオーバーリアクションでした。
人間には数多の種類がいたそうですが、彼の場合はアメリカ人でしょうか。
とりあえず親しみずらいので早く離れたかったのですが、ワタシもお願いを頼まれて断るなどという非道にロボットではありません。
感情はあるのです。
「…。いいですよ。なにを落としたのですか?」
「うん、とても小さな物なのです!あろうことか僕は大事なイヤリングを片方落としてしまいました。アナタはロボットなのでしょう?搭載された力で探してもらえない?」
「…。残念ながら、ワタシには殺戮兵器しか搭載されていません」
ワタシは自らの事を粗方説明しました。
その間彼はオーバーリアクションに相槌をとりながら聞いてくれます。
やはりこういうタイプの者は苦手です。
「なるほど…つまりアナタは、人間の手によって戦争のために作られたと言う事ですね。しかしそれは失敗に終った。何故ならあなたには感情が宿ってしまったから…。実に興味深い。」
「そういうことです。何故ワタシに感情が宿ったのかはワタシにも分かりません」
「少し質問をさせてくれ。アナタは人類を滅ぼした悪魔を憎んでいるかい?」
「…。いえ、特には。ワタシは人類にあまり興味はありませんでしたから。むしろ、ワタシを閉じ込めていた人類を憎む気持ちのほうが大きいのかもしれません」
「そうか。余談だが、アナタは何故人類が滅んだのかしっているかい?」
「?それは悪魔が人類を襲ったからなのでは?」
「んー、簡単に言えばそうだけど、違うね。僕たち悪魔は人間を憎んだり恨んだりはしていなかった。この事件を起こしたの一人の悪魔だけなんだ。彼は悪魔の中で特別力が強かった。彼はその力で人類を滅ぼしたんだ。しかし彼に悪気はないよ。彼は真実を知ってしまったから、人類を破壊したんだ。誰も彼を責める気はないのに、彼は閉じこもってしまった…」
「…。それは、可哀想なお話ですね」
ワタシは深く介入せずにそれに同情という感情を示しました。
「…もしよかったら彼がいる場所へ行くと言い。結構遠いけど、道を教えてあげよう」
ワタシは彼から道を教えて貰い、その場を後にしようとしました。
「そうだ、最後に質問。アナタは自分が生まれてからの人類が滅亡するまでの記憶を持っているか?」
「…持っています」
ワタシは初めて嘘というものをついた。