入梅
高校2年生の井野嶽幌と桜の双子の姉弟は、じめじめしてきた外を、家の中で朝ごはんを食べながら眺めていた。
「なーんか、こじめってるねぇ」
「そりゃ先週から梅雨入りしたからな」
「ああ、ニュースで言ってたね」
ご飯は、いつものように幌が作った。
制服を自室でハンガーにつるしたままの幌は、少し考え込みながら言った。
「そういえば、今日は入梅だったな」
「入梅?」
「梅雨に入る時期だっていうことさ。このあたりで梅雨入りして、いよいよ長雨が始まるって感じかな」
桜が思い出したかのように言った。
「そっか、このまえ梅雨入りしたものね」
「そうそう」
カバンの中に、折り畳み傘を入れながら、幌が答えていた。