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朝、目覚めたら、私は樹木になっていた

 朝、目覚めたら、私は樹木になっていた。しかし特に驚きはしない。人間だった頃から、本当に自分は生きているのだろうかと、疑っていた。


 空が近い。

 秋の空は高いと思っていたが、私の背も負けずに高かった。たくさんの腕を広げて、そこについた無数の葉に風を受け、太陽から光を受けて酸素を創り出す。


 小鳥たちが私の肩に並び、囀っている。

 虫たちが私を求め、どこからともなくやって来る。

 生きている──

 求められていると、私は嬉しくなった。

 空から雨が降り注ぐ。

 私はそれらも受け止めて、地中深く潜るまで、渇きを防いで陰を創った。

 太古の記憶が私の隅々を巡っていた。


 しかし私は知っていた。

 いつか私は、切り崩されるだろう、この山ごと。

 開発が計画されていることを、知っていた。

 山の中で、唯一、人間であったことのある、私だけが。


「切らないでくれ!」

「私たちは君らの友達だ!」


 そんな声をあげても、届かない。

 私は樹木なのだから。




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― 新着の感想 ―
時期が来れば破局が訪れるのは分かっているけれども、その運命を変える事は出来ない。 これは何とももどかしいですね。 せめて伐採された後も木材として有効活用されればいいのですが…
 木は焚かれ火となり、火は灰と化し土に還る。  土は固まりて金の如く、されど溶けては水となる。  そして再び木となり茂る。  万物は死しては生まれ変わる。  命は循環するもののようです。  ──ってな…
素晴らしい作品です。 最近は、森林伐採のせいで。 森の熊さんも、暴れていますからね。 私も友人に、熊さんが二人居ますので……。 (ФωФ) 森林伐採いくないお。
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