朝、目覚めたら、私は樹木になっていた
朝、目覚めたら、私は樹木になっていた。しかし特に驚きはしない。人間だった頃から、本当に自分は生きているのだろうかと、疑っていた。
空が近い。
秋の空は高いと思っていたが、私の背も負けずに高かった。たくさんの腕を広げて、そこについた無数の葉に風を受け、太陽から光を受けて酸素を創り出す。
小鳥たちが私の肩に並び、囀っている。
虫たちが私を求め、どこからともなくやって来る。
生きている──
求められていると、私は嬉しくなった。
空から雨が降り注ぐ。
私はそれらも受け止めて、地中深く潜るまで、渇きを防いで陰を創った。
太古の記憶が私の隅々を巡っていた。
しかし私は知っていた。
いつか私は、切り崩されるだろう、この山ごと。
開発が計画されていることを、知っていた。
山の中で、唯一、人間であったことのある、私だけが。
「切らないでくれ!」
「私たちは君らの友達だ!」
そんな声をあげても、届かない。
私は樹木なのだから。
 




