第3話 ローゼンフェルト公爵家
我が家は建国以来続く名門で筆頭公爵家だ。歴代当主は王の忠臣として仕え、一族そのものが王の忠臣として名高い。故に何度も王女の降嫁を賜り、正妃を輩出してきた。その血筋は、王に後継者が不在であれば代わりの王を出せるほどで、過去には実際に王を輩出したこともある。
現当主であるグレゴールもまた先王の娘であるロレーヌ王女を娶り、その子供や孫は王位継承権を保持している。
公爵継嗣であるテオドールもまた、王太子殿下とは幼年学校時代からの学友で、無二の絆で結ばれている。王太子殿下が即位した暁には要職に就くことになるのだろう。
そしてリィンジークはというと、やはり王太子殿下の長子と友誼を結ぶことが期待されていることは知っている。何せリィンジークとヴィルヘルム王子殿下は一つ違いだ。王子が茶会デビューした日には学友候補として召し出されるだろう。
王の忠臣であるが故に派閥としては国王派ということになる。
領地は王都から遠く離れた北東にあり、東は海に面している。いくつかの港を軍港として王室が買い上げており海軍が駐留している。領軍と海軍の関係性は可もなく不可もなくといったところ。一応連携は取れているので今のところ問題はない。
他国との貿易が盛んに行われており領地は富んでいる。自家所有の船がいくつもあるが、軍艦は王室が独占しているため少々面倒なこともある。例えば商船の護衛とか。
公爵一家は普段王都にある公爵邸で暮らしているので領地は代官が治めている。ただし、転移魔法が存在するので定期的に公爵領本邸にも戻っているのだが。
王都で生まれたリィンジークは、まだ幼いため領地に行ったことはない。茶会デビューが終われば連れていってもらえるとのことなのでその日がくるのが楽しみである。
そういえば、茶会デビューの前に重大な事が二つ待ち受けている。どちらも恐れ多くも親族という立場にあたる至高の方々にお会いするのだ。まず離宮で先王陛下ご夫妻と面会する。かねてより孫とひ孫に会いたいという打診がきていたそうだ。それが済んだら、今度は王宮で王族方と面会することになる。将来の側近候補の見定めということなのだろう。5歳になった子供が両親と共に国王陛下ご夫妻に謁見する慣例の儀式の前に行われるのは些か早すぎる気がするのだが。