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マキとマサキの物語   作者: 森嶋直斗
7/10

マキとマサキの物語⑧一人きりの里帰り、その1 マサキと生きていこうと決めた。父に話に伊良湖岬に帰京する

真樹と生きていこうと決めたマキは、父、茂雄や直斗の墓前に報告に帰る。マサキと一緒に帰ろうとも考えている。年下で、大学4年生で、就活に挫折してアルバイト生活の真樹との交際に否定的な声もある中で、最後の恋と突っ走るマキ。暖かく迎えてくれる人々、変わらぬ伊良湖の自然。思わぬ事態が待っていた。

第8曲 一人きりの里帰り その1


生き物美容室のカヨリーナでは、引き取りに来ない生き物が、少しずつたまって

きている。美容室に預けて、サービスを受けて飼い主が料金を支払いに来ないで

そのまま放置するケースだ。何か月もたつと、仕方ないので保健所にあずける。

お盆休みの前は、増えそうな気配が・・


生き物なら良いと触れ込んでしまったので、クワガタの幼虫とか、鈴虫の幼虫なん

かも預かって霧吹きで適度に湿らせる。春に預かったまま飼い主が取りに来ない

鈴虫は、成虫になって店の中で、リンリンとないている。電話をするときは店から

出ないとうるさくて、電話できない。

クワガタは、次から次へと立派に成長し、狭いケースで、戦いの毎日。うわさが、

地元の小学校に広まって、子供が集まってくる。プレゼントしてしまいたいが、

一応拾得物扱いなので、警察に届けなければならない。見せるだけにしている。

子供:ねえねえ、おばちゃん、クワガタにスイカやって良い?

マキ:いいよ。

次の日も来る

子供:いい?

マキ:いいよ。

他の子も、きゅうりとか、なすとか、ビスケットの子には、ダメだと言ったが、

クワガタのケースがかす漬けのツボのようになってくる。しょうがないから、

古いのを出して捨てるけっど、夏休みに入ったから。毎日来る。

そのたびスイカやきゅうりを取り出してゴミ捨てに行かないといけない。


佳代子は、ハワイに旅行、恋も中国人の知り合いと中国旅行。マキは、10日から

休みをもらうので、今は、店番。

プードルを連れてきていた。白鳥文は、最近は来なくなった。プードルだから

30Kgになって、ここのゲージに入らない。文もペットショップにプードルと

言われた通り、この子は、プードルの小次郎と言っていた。トイ・プードルと

間違えて買ってしまったようで・・・小次郎は、大次郎と改名して、

大型犬のペットホテルで、口輪をはめられているらしい。


ボネペティーで、

田:お盆は、田舎に帰るの

マキ:私は、10日に帰る。

マサキ:俺は、バイト次第。休む人が多いから、店長は出てくれって言ってる。

    友達と昼間はゲームやってるから夜のバイトならそれで良いんだけどね。

マキ:大学生で、いい大人が、オンラインゲームって・・

田:田舎に帰ると盆踊りとかやってるの?

マキ:小学校でやってるよね。

マサキ:岬小学校でやってる。屋台も出てるよね。

マキ:そうそう、眼鏡のおっちゃん!

マサキ:金魚すくいの!

マキ:サービスしすぎ!

マサキ: ビスしすぎ!

マキ:マサキの時もまだやってたの?

マサキ:金魚いっぱいもらって、家で怒られた。

マキ:しばらくお風呂で飼ってて、家族はシャワーだけ使ってた。

田:二人とも田舎が一緒でも、会ったことないの?

マサキ:5歳上だと、会ってても分かんないっすね。高校が付属だったんで、

    高校から大宮なんですけど・・中学校の時はマキちゃん大人ですから。

マキ:そうやって言われると、おばちゃんだわ。

   一緒に帰れるようならLineしてくれれば・・・

   と、言っても海しか行くとこも無いけどね。

マサキ:帰っても、大宮みたいに店もないし・・・


マキは、今回は一人で帰るつもりだった。帰省すれば、直斗の家は隣だから

美沙と話もして、直斗の仏壇にも線香をあげに行くことになる。直斗にも美沙にも、

自分の父、茂雄にも一人で話をしてからマサキを連れて行こうと思っていた。


帰省の日、生き物美容室、カヨリーナで仕事終わり。

マキ:それじゃあ、失礼します。17日から出勤します。

佳代子:了解。鈴虫には、何にもしなくていいんだね。勝手に鳴かせとけば。

マキ:だいじょぶです。クワガタの餌、そこのゼリー、はいはいそれです。

佳代子:行ってらっしゃい!

定時まで仕事をして、最終で帰省する。アパートに戻って身支度、荷物をまとめて

19時に出た。豊橋鉄道の終電に乗るには、大宮を20時がギリギリなので、

少しは、余裕がある。東京駅で見上げを買って、軽食を食べてホームに行くと、

ちょうど東京駅で折り返す。新大阪行きのひかり号がホームに入ってきた。

指定席に座って荷物を整理している。10分ほどして、出発のアナウンスが、

流れて、座席は結構すいている。

マキ:当日でも座席空いてるな・・マサキくるかな・・

来るならLineで連絡してくるはずなので、どうせバイトだと分かっているけど

自分の横の席が空いているので、少しだけそわそわする。発車のベルがなって、

ひかり号が出発した。


豊橋には23時到着。豊橋鉄道渥美線に乗り換えて、24時ちょっと前に田原に、

ついた。今日は駅前のABホテルに泊まる。チェックインだけして知り合いの

磯野花鈴がやっているスナック”花あかり”に、急いだ。


マキ:ごめんなさい。遅くなりました。

花鈴:ちょうど最後のお客さんが帰ったところ!マキちゃん、おかえり。

マキ:ご無沙汰しちゃってます。お元気そうで。

花鈴:ビールで良い。直斗はサッポロ、マキちゃんはアサヒ、両方開けちゃうか。

マキ:喜びますね。

花鈴:はいどうぞ、直斗には、マキちゃんが注いであげな。私もサッポロ。

マキ:頂きます!・・んーん、おんなじビールなんですけど・・

花鈴:おいしいね。どう、トリマー

マキ:面白いです。オーナーが、大久保佳代子で、店の名前が、カヨリーナ!

   それだけで、面白いでしょ!(大笑)

花鈴:面白い!かよーうりーな、かようって事!

マキ:・ん、まぁ・・オーナーは、獣医なんです。それで、ペット全般を扱う

   店なんですけど、生き物美容室カヨリーナって、看板なんで、生き物が、

   いっぱいきちゃうの!

花鈴:えーっ、例えば?

マキ:最近だと、鈴虫にクワガタ、へびに、金魚、ワンちゃんのシャンプー

   しながら、蛇の脱皮のお手伝い。金魚に赤チンぬって、鈴虫に霧吹きで、

   お水あげる。クワガタは、子供たちが自主的に衛生管理。

花鈴:トリマー兼昆虫博士君みたいになっちゃうね。

マキ:結構自由にやらせてくれるので、楽しんでやってます。

花鈴:そう、いい顔してる。安心した。また、綺麗になってるし。

マキ:そうですね。年下の彼がいて、大学4年で、内定無し。前に進みたくても・

花鈴:なんで、そういうのとくっついちゃうのかね。こんなベッピンさんが・・

   そんないい男なの?

マキ:性格は、良いです!外見は、岡崎体育かヤクルトの村上選手・・かな

花鈴:まあ。後は、仕事か・・どこの人

マキ:伊良湖岬小学校だっていうから日出とか港の辺じゃないですか。

花鈴:田原の人なんだ!一緒に帰って来なかったの?

マキ:今回は、直斗に報告してからと思って。

遅くまで、話が尽きなかった。


翌朝、田原駅前から伊良湖岬行のバスに乗る。1時間以上かかるだろうか。夏休み

だから学生は少ない。野球のユニフォームの子供もいる。田原から伊良湖まで行く

人は数名で、みんな途中で降りていく。10時過ぎ、伊良湖岬の手前の明神前で、

降りて伊良湖小学校の横を抜けて表浜に出る。この道が一番近い。


マキ:お父さん!帰ったよ。

誰もいない。鍵を開けて中に入った。結構中は綺麗に片付いていた。しばらく、

テレビを見ていたが、帰って来ないので直斗の家へ行ってみた。

マキ:おばさん!帰りました。

美沙:あら、マキちゃんお帰り。あがりん。

マキ:お父さん、こんな時間に漁ですか?

美沙:なに、見舞いに帰ってきたんじゃなかったの!

マキ:見舞い?

美沙:茂雄さん、渥美病院に入院してるよ。

マキ:えーっ、知りませんでした。

美沙:心配かけると思って、黙ってるのかな。

マキ:なんの病気なんですか?

美沙:よく知らんけど、腰が痛くて歩けなくなったって。

マキ:後で行ってみます。直斗に線香、良いですか。

美沙:どうぞどうぞ、見てやって。

マキは、仏壇に行って線香をあげた。直斗に、マサキの報告をした。

直斗は、いつものように笑っていた。



マキ:おばさん、好きな人ができて、まだ先のことは、分からないですけど

   付き合ってます。

美沙:ほんと、良かったね。直斗も応援してるよ。

マキ:仕事も面白いし、良い人たちと知り合って充実してます。

美沙:お父さんにも報告してきな。


マキは、自宅に帰って渥美病院に電話してみた。

マキ:小久保茂雄の娘なんですけど・・

看護師:小久保茂雄さんは、豊明の藤田病院に転院されました。一度、そちらに

    連絡してみてください。


マキ:おばさん!お父さん藤田病院に変わったんだって。

美沙:ほんとう、あそこに変わるってことは、だいぶ悪いのかね。

マキ:今日は、面会時間過ぎちゃうから明日朝から行ってみます。

美沙:そうだね。ご飯食べてきん、一人でしょ。

マキ:あとで、おじゃまします。

マキは、家のかたずけと思って戻ったが、片付ける所がない。生活感が無いほど

綺麗で、急に倒れたとかじゃないと思った。母、紀香の祀ってある仏壇もきれいに

掃除してあった。風呂に入って、楽な服にして、直斗の家へ行った。


マキ:お風呂のシャンプーとか石鹸も片付けてあって、変な感じなんです。

美沙:まあ、茂雄さんは、掃除も自分でする人だけど・シャンプーに石鹸もか・・

   帰って来れないと思ってるのかねえ・・

マキ:明日行けば分かるので、また連絡します。おじさんは?

美沙:豊橋泊、あいつは、帰って来れなくても良いわ。

マキ:おじさんいくつになりました。

美沙:62。私が茂雄さんと同じで60だよ。

マキ:おじさん元気ですね。お父さんなんか、もう外で飲んだの・・いつかな?

美沙:学校関係の人は、付き合いが多いから。

マキ;いつもの煮物、美味しいですね。

美沙:砂糖いっぱい使ってるから、東北の味付けだね。

いつもの食卓、いつもの会話、伊良湖岬は、いつもの感じだ。

茂雄がいないこと以外は。


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