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マキとマサキの物語   作者: 森嶋直斗
4/10

マキとマサキの物語④⑤同姓同名となりで同棲 偶然の出会が、連日連夜、揺れまくる乙女ごころ。こりゃもう、始まっちまうな!

連日連夜、細かな偶然が続く、一緒の時間にシャワー。一緒の時間に寝る。同じ時間に出かける。考えてみればそんな風に重なる事もある。ところが、偶然を偶然じゃないと思い出すと、そわそわし始める。お互い、自分から合わせに行ったり、待っててみたり、何かに導かれていると思い出すと・・始まっちゃうんだな!

第5曲 同姓同名となりで同棲


マキは、昼過ぎまで二日酔いで寝ている。隣のマサキの部屋からギターの音が聞こ

えてきた。

マキ:おっ、私の好きなバックナンバー!・へったくそだ・・うー、頭いたい・・

   飲み過ぎたか・・カレーラーメン食べたい!

マキは、二日酔いの時は、カレーラーメンが無性に食べたくなる。アパートを出て

吉敷ガードをくぐって17号線に出る手前にラーメン屋がある。いつも地元の人で

にぎわっている。11時の開店に行くとまだすいている。

マキ:11時5分前、カレーラーメンの汁が、飛ぶからスウェットで行っちゃえ。

マスクをしてすっぴんで、寝巻代わりのスウェットでラーメン屋に向かった。


マキ:すいません。カレーラーメンお願いします。

おばちゃんが、熱々のカレーラーメンを出してくれる。唐辛子をがっつりかけて、

激辛にして食べる。

マキ:熱そうー、

体中の毛穴が開き汗が出てくる。日本酒とジンの香りが放出されて二日酔いが、

ぶっ飛んだ!やっぱり、汁が飛びまくり。

マキ:ごちそうさまでした。

のれんをくぐり、爽快な風が吹き抜ける。二日酔いにはカレーラーメンだ!

ご機嫌で、アパートに帰ってきた。と、マサキが、向こうから歩いて来た。

マキ:やばいな

と思い目伏せて歩いていくと、横から自転車が来て、

マサキ:危ない!

と、すれ違いざまにマキの手をつかんだ。

マキ:ンガ・・イタ

マサキ:大丈夫でしたか。自転車、ぶつかりますよ!

マキ:あ! アリガト・・

自転車もマキも遠ざかる。

マキ:目の前にすっぴんの顔面があったのに・・気づいて無いな・・

そうです。すっぴんなら気づかれません。

マキ:こんな時間に出ていくのか・・大学生か?

部屋に帰って着替えると駅ビルにカーテンやら部屋の小物を買いに行った。北側に

しか窓がない。その窓もマサキの部屋の窓と被っていてお互いが全開にすると、

窓から隣のアパートに乗り移れる。向こうは真っ黒なカーテンで、完全閉鎖。

せっかくだから少しでも明かりが入るように白いレースに、薄い黄色いカーテンに

した。お互いどうせ開けることもない。けど・・窓の下に花なんぞ(造花)飾って

みた。

マキ:小久保真樹で、お姉さんが小久保梨々花。渥美物産店でメロン買って送る。

   普通に考えれば、田原の出身だよな。私より大分下で、大学生なら22,3

   歳か・・つじつまは合うな・・

マキより少し背が低いマサキ。若干小太りで、人懐っこい顔だがイケメンとは

言い難い。なかなかの美形でモデル体型のマキとは、不釣り合いで、マキのタイプ

でもない。ところが、偶然が重なるとやっぱり気になってくる。

アパートとアパートの間隔が30cmと、また微妙な距離で隣と接近している。

かすかに聞こえるテレビの音も生活感を伝えてくる。

マキ:向こうだって聞こえてるんだよな。ちょうど間取りが反対で、寝室同士が、

並んでいる位置関係だ。不思議な環境が、微妙に人の心に影響を与える。

水回りの音は、ほとんど聞こえない。ドアの音や、鍵の音がよく聞こえる。

帰ってきた。冷蔵庫開けた、閉めた。寝室に行った。と、言う具合に

ドアの音で、移動の様子も分かる。

マキがベッドに倒れこむ。”ドン、ギシ”

向こうの部屋でも倒れこむ。”ドン、ギシ”

マキ:壁の向こうで寝てるな。・・

お風呂のドアが、”ガシュ”

向こうもドアが、”ガシュ”

シャワー浴びて出てきて、”ガシューゴン”

向こうも浴びて出てきた、”ガシューゴン”

思わず、タオルで隠す。

マキ:偶然か、偶然だな・・見られてないよな・・見てたら合わせられないな。

   もう、寝るか”ドタン”

     向こうも・・”ドタン”

今のは、ずれてると思うけど・・


ある日の夕方、マサキが大宮駅から歩いて帰る。マキが新都心から歩いて帰る。

氷川神社の参道でお互い向かい合った。両方とも気が付かない。道路の向こうを

マキが歩く。こっちをマサキが歩く。お互い右に曲がってマキが先にアパートに。

マサキ:あっ、マキちゃんだ。


ある日は、逆にマサキが少し先、マキが後ろ。追いつきそうで追いつかない。

偶然は、乙女心に火をつけた。この日は、マキが小走りで追いついた。

マキ:小久保さん

マサキ:あっ小久保さん!

マサ:学校?大学・・

マサキ:はい、4年です。

マキ:この前、タクシーに担いで載せてくれたんだ。

マサキ:泥酔でしたよ。

マキ:ごめんなさい。飲み過ぎで・・

マサキ:日本酒とジンですから・・・

マキ:それじゃあ!

マキが部屋に消えた。

マキ:やば、全部覚えてる。

だれでも忘れない。

ある日は、

マサキ:マキさん!

マキ:おーおつかれ!

マサキ:昨日もカレーラーメン言ったでしょ。

マキ:えっ何で知ってるの?

マサキ:11時ちょっと前にスウェットで出てったから。それじゃあ!

マキ:見られてるのか・・ん?昨日も・も・・この前のすっぴんも見られてた!

よく考えれば、名前以外は、偶然でも何でもない。同じところに住んでるような

ものだから、帰りが一緒になったり、出かける時が重なったりするのは、当たり前

だし、部屋だって、同じ間取りだからキッチンと寝室しかない。同時に寝たり、

テレビつけたり、重なる時もある。同郷の人が隣に引っ越してくることもある。

ただ、それをお互いが知って、意識しだすと・・・偶然が、偶然でなくなり、

導かれていると思い出すと、少女雑誌のようになってくる。


休みの日、マキが昼前に何か食べに出ようかと着替えている。隣もドアの音が、

どたばたと聞こえる。マキは、昼ご飯を食べて、買い物でもと出かけようとした。

となりの物音を聞いて、少し止まって聞いている。玄関の扉が開いた音がして、

マキもその瞬間、ドアを開けた。

マキ:おはよ!マサキ君

マサキ:おはようございます。

マキ:学校?

マサキ:駅前に買い物に

マキ:おーっ私も、偶然だね。

これは、偶然じゃない。ロックオンしています。


二人で駅前の富士そばに入った。マキが自販機に千円いれて、

マキ:良いよ!おごる

マサキ:すいません。ありがとうございます。

Lineを交換して、

マキ:急に雨降ってきたぞ、とか・・大雨警報出てますよとか、ね。家が隣だから

   Lineで連絡できるしね。


田舎じゃないから人んちの洗濯物を取り込めないでしょ・・

とにかく、距離が少し縮まった。


マキが、生き物美容室カヨリーナで働いていると、マサキが通りかかって

(Line)

マサキ:マキさんが、働いてるところ見ました!

マキ:近くに来てるの?

マサキ:友達の家から近くて、帰るときにたまたま。

マキ:一緒になんか食べてく?

マサキ:良いですか。

親戚の姉ちゃんみたいになってきた。


マキは週休二日だが、火曜日以外は休みは不規則。マサキは、4年生だから結構

休みが多い。休みの予定を聞かなくても物音でだいたいわかる。マキが10時頃

まで、家にいると、

(Line)

マサキ:今日はどうします。

マキ:新都心で食べよう!


お互い用事があるときは、何も言わないで出ていけば、ドアの音で分かる。


めんどくさいのは、マキが二日酔いで、爆睡の時だ。物音がしない。時々どたばた

するので、居るのは分かる。ステレオの音楽をちょっと大きめにかけてみる。

Lineの返事がなければ、今日は別行動ということらしい。


生き物美容室カヨリーナで、

恋:それってさー付き合ってるよね。

マキ:そういう関係じゃないよ。年も下だし、飲むとき以外は、わたしのおごり

   だし。岡崎体育みたいだよ。タイプじゃないし。

恋:不思議な関係だよね。物音で他人と合図し合って生活してるんだから。

マキ:でもね。知り合いだと楽だし、安心なの。田舎も一緒でなんとなく何やって

   るか分かると不安定な関係じゃなくなる。嫌な人だと最悪だけどね。

恋:動物ってさ、音とか臭いで分かりあってるじゃん。それと一緒か!

マキ:なのかなあ・・

恋:ねえねえ、この間の話、アルバイト体験してみない。

マキ:うん、やってみるか。


恋が務める。中国人パブ、チャイナイトでのアルバイトだ。そもそも恋も日本人な

のになんで中国人キャストがメインの中国人パブで働いているのだろう。


仕事終わりに、恋と一緒に行ってみた。7時前で、お客さんは誰もいない。女の子

もママ以外には誰もいなかった。

恋:ママ、マキさん連れてきた。

ママ:おはようございます。ママのまゆみです。

中国人キャストは、全員日本人のような名前を付けている。これには、色々理由が

あるが、複雑だ。

マキ:こんにちは。

ママ:難しい仕事じゃないです。日本人の人は、中国から来た新人と一緒に接客し

   て、日本語の練習相手になってもらいます。中国人だけだと、どうしても

   お客さんの前で、中国語でしゃべるので、接客としては良くないですね。

恋:だから中国語をしゃべることもほとんどないの。あと、マキちゃん歌上手いし

  お客さんの年齢層高いから、ぴったりだと思うんだ。


今晩は、海冷ハイリン春蘭シュンランが出勤してきた。

海冷:(レイコ)おはようございました。

春蘭:(はるな)おはようごぜんます。

ママ:こんな調子なんで、教えてあげてね。

恋:マキちゃんこっちに来て

恋が更衣室に案内して、マキにチャイナドレスを合わせる。

マキ:すごいいっぱいあるんだね。

恋:お店が用意してくれるの。マキちゃん背が高いから数が少ないけど・・

  この辺かな・・

マキ:この色、綺麗だね。

恋:合わせてみれば。

マキが着替えて見せた。

恋:うわー素敵。背が高いから見栄えがするわね。ママ! 見て!

店に連れて行く。

ママ:マキちゃんスタイル良いから綺麗だわ!腰の位置が高いのね。羨ましいわ。

海冷:きれいね。

身長が150cmしかない春蘭は下を向いた。

同じく150cmの恋が突いてお道化て励ます。


お客さんが、入ってきた。他のキャストも出勤してくる。そんなに広い店ではない

ので、5組ぐらいで丁度いい。初日なので、恋と一緒にマキもお客さんに着いた。

一般的なクラブと料金は変わらないが、お客さんの年齢層が高い。みんな落ち着い

ていて紳士的だ。


恋:お疲れ様、マキちゃん疲れた。

マキ:ちょっと、緊張してたかな・・

恋:あのお客さんで最後ね。見送りだけみんなで出るよ。

キャストが、みんなで、お見送り

恋:ありがとうございました。

マキ:またお待ちしています。

と、

マサキ:マキさん!おっチャイナドレス!

マキ:わア!マサキ!

恋:      君が、まさき!

始まっちまったな!

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