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マキとマサキの物語   作者: 森嶋直斗
10/10

マキとマサキの物語 最終回!真樹(マサキ)は、JoyJoyの店長候補に!将来も見えてきて、結婚の報告に一緒に帰省!ところが、人生ガラガラポン!

 いよいよ最終回!マキとマサキの物語。すったもんだで、年下の真樹と結ばれた真樹。二人で、故郷の伊良湖岬に帰省する。真樹もJoyJoyの店長候補に推薦された。将来が見えてきたぞ!

 ところが、コロナで、カラオケ事業は、大打撃・・バイトの状況も険しくなった・・・

  (^^♪離れ離れのひかり号♪  なんで降りるのひかり号・・


最終曲 離れ離れのひかり号


茂雄の四十九日は、美沙が、近くの帰命寺の住職に頼んでくれて済ませた。遺骨

が、自宅に祀られている。茂雄の遺言で、網元が船を出してくれて年内には散骨に

行く予定だ。

美沙:マキちゃんの予定次第だから決まったら連絡して。

マキ:わかりました。


マキ:マサキの予定次第だから。決まったら教えて。

マサキ:わかりました。


マサキは、相変わらず、就活挫折中。もう、面接の予定も無くなった。そろそろ

3年生が決まりだす。ギターもそこそこ上手くなったが、プロを目指す気は無い。

アルバイトのJoyJoyも後輩たちが増えてきて店長もそんなにあてにしていない。

だからこそ、休めない。定期的なシフトを外れると、代打要因に回される。

店長も、忙しい時に無理を言っても、出てくれていたマサキを理由なく外すことは

出来ない。本当は、キレイどころが増えてきたので、マサキには厨房に回って欲し

いのだが、マサキに料理のセンスは全く無い。盛り付けすらも任せられない。

ここでバイトを休んだら店長に代打要因を宣告するチャンスを与えてしまうのだ。

マキ:そんなにシフト入ってないし、休んでも大丈夫なんじゃないの?

マサキ:だから休めないんだよ。アルバイトの厳しさ知らないんだって。

マキ:人生の厳しさ、知って欲しいわ。


そんなマサキに試練なのか、ビッグチャンスか!?

カラオケチェーンのJoyJoyが、川越店に新店舗を出すことになった。マサキに、

店長候補でどうだと、声がかかった。


ボナペティーで、

マキ:すごいじゃん!評価してくれてる人もいるんじゃん!

マサキ:分かってないな・・まだ、候補なだけだから・・東京の研修会に出て、

    あっちこっち回されて、出張もこなして、候補から店長待遇になって、

    店長代理で、店長だから・・

ゆり:アルバイトじゃないんだよね。良いじゃない。田さんよりましだわ。

田:まあ・・・

マサキ:社員扱いってやつで、社会保険引かれて手取りは下がるし、社員積み立て

    持ち株会、組合費とかガンガン引かれてバイトより安くなるんですよ。

マキ:なんでも前向きにチャレンジだって!

ゆり:伊良湖から帰ってきて、後ろ向きだった人が・一気に元気になっちゃって、

マキ:信じてたからこうなったし!

と、指輪をゆりに見せた。

ゆり:へー、あそう、

田:人の幸せへの正しいリアクションでしたっけ。

ゆり:そう、わくわくしないでしょ。

マサキ:一応、断れそうもなかったんで、受けたから研修始まるまで自宅待機。

    しばらく、休めそう。

マキ:ほんとう!じゃあ、帰れるね。予定入れるよ。

田:いよいよマサキ君と里帰りですか!うらやましいな・・

マサキ:田さんはそういう人、居なかったんですか?

ゆり:いたのよ。どろどろの関係の人が!

田:どろどろじゃないですよ。ぐちゃぐちゃですよ。まあ、マサキ君じゃないけど

  ずーとフリーターですからね。自信もってって言われても・・・

マサキ:ですよね。

マキ:変なとこで、意気投合しないでよ!

田:あれ?この間は、田さんみたいになってもいいもん。私が稼ぐからって!

マキ:それぐらい信じてるってことじゃない!

ゆり:はあぁ、そう、

やっぱり、幸せトークは場が持たない。


とにかく、伊良湖に帰るのが決まった。


生き物美容室、カヨリーナでは、寒くなってお客さんが、めっきり減った。亀も

蛇も冬眠。クワガタの幼虫達も土の中で春を待つ体制に入った。鈴虫も土の中で

生きているのかどうなのか・・犬も猫も涼しくなると臭いも減って、シャンプーに

来なくなった。ペット用の服を置いたりして、恋がペットブティックのように改装

した。売り上げは少ないが、恋が一人で楽しそうにネットで売っている。

マキ:恋ちゃん、そういうわけでお休みします。

恋:オッケー!任せて!ZoZoTownに負けないように

   生き物ブティックZooZooTownの快進撃を見せてやるから。

   今度ね古着バージョンも始めるの。ネーミングは、

           ZooZooTawnバックストリート!

       古着屋っぽいでしょ。

マキ:全部パクッテるじゃん。セカンドストリートも・・

恋:オマージュッテ言うのよ!


こちらも伊良湖帰省に問題なし。


マキ:おばちゃん、来週から帰れそう。散骨は海の状況もあるから細かな日は、

   任せる。お願いします。

美沙:分かったよ。お土産いらないから、アマゾンで何でも買えるから。

マキ:はい!それじゃあ。


帰省当日、マキはカヨリーナに出勤して事務仕事などを片付けて帰宅した。帰省の

準備を自宅でしている。昼過ぎに帰ってきたがマサキの気配が無い。

(Line)

マキ:新幹線17時30分発だから大宮を15時には出たいけど・・

マサキの返事はない。

マキ:どこ行ったんだ!バイトも無いし、スーツでも合わせに行ったか!


(Line)

マキ:もう出ないと間に合わないよ。

マサキ:ゴメンバイト入った。直接、東京駅に行く!17時30分了解!


マキ:はーっ、なんで、?いまさらまた?バイト?

とにかく、駅に急いだ。一人で荷物を担いで、汗だくで歩く。二人分の荷物を

あらかじめマキの家に集めていたので、荷物はまとまっているが、二つのカバンが

ぎっしり詰まっている。家出でもするようだ。顔から噴き出る汗を拭くことも出来

ない。

マキ:あいつ!まさか!すっぽかすつもりじゃないだろうな。はっはっはぁ・・

   あー涼しい!おーっ、”パタパタパタ”ほーっ・・

こぎれいな姉ちゃんが、荷物を両腕にもって乗ってきて列車の窓際でエアコンの

風を胸元に入れてTシャツをパタパタされては、乗客の視線も釘づけになる。

マキ:やば・・汗でTシャツびしょびしょ、スケスケ・・・

窓ガラスの方に向いて張り付いた。駅に止まるたびにくるくる回った。

東京駅に着いた時には、汗も引き、Tシャツも乾いたが、新幹線のホームまで、

行くだけで、またしても汗だく・・待合室でグロッキー。視線など気にしていられ

ない。荷物を膝に置いて寝たふりをした。


寝たふりをしたつもりが、寝てしまった。ホームのアナウンスで目が覚めた。


アナウンス

15番線の列車は、折り返し、15時30分発、新大阪行き、ひかり201号と

なります。車内清掃を行いますのでしばらくお待ちください。

マキ:しまった・・寝ちゃったな。昼食べてないから、お腹空いた。

ホームのキオスクで駅弁を2つ買って、列車に乗り込んだ。発射5分前。

マキ:どうせバックレたな・・まっいいか、お父さんの散骨に帰るんだから・・

マキは、買ってきた駅弁を広げ始めた。

マキ:ん・・お腹減ってるから何でもおいしいわ!・・んうま!

”プルルルルルルルル”発車のベルがなって・・

ドアが”プシュー”

マサキ:フワーあ、間に合った!セーフ!マキちゃんお待たせ!

マキ:フンガ!オグゲマニヅエ荷物sjもさせ汗skdjfjびしょびしょ!!

弁当で口の中が満タンで、何を言っているのか分からない。はずが、

マサキ:ごめんごめん、荷物重かったから汗だくだったでしょ。ごめんね。

と、言ってマキの口の周りと汗をハンカチで拭いた。分かり合えるんだ!

マキ:あぁ、ありがと!どうしたの?

機嫌治った。

マサキ:急にバイト!

マキ:なんで?

マサキ:コロナで、自粛になってJoyJoy閉店続出。川越店のオープン延期。

    バイトもやめる人ばっかで・・今日から自主解除で・・・

マキ:急にマサキに頼んできたの!?

マサキ:俺は、社員扱いで、首切れないから・・何とか抜け出してきた。

マキ:えー、偉いじゃん!お腹減ってない?食べる。

と、ラブラブだ。今が一番、楽しいとこか・・愛は素晴らしい!

マキ:はい!あーん・・・

マサキ:もう、新横浜だよ・・

弁当を無造作にレジ袋に仕舞い、両手に大きなカバンを持って乗車口に向かった。

マキ:何するの?崎陽軒のシュウマイか!お土産・・?

新横浜に新幹線が停まると、

マサキ:マキちゃん!早く!行くよ。

マキは、のぞみを通過させるのに10分ぐらい止まるのかと思って、

”プシュウー”ドアが開きマサキが降りていく。

マキも追いかける。マキが、降りると、マサキがホームを駆け出した。

マキもわけが分からず追いかけて走る。

アナウンス

扉締まりまーす。駆け込み乗車は危険ですのでおやめ下さい。

マキ:げー、すぐに出発じゃん!マサキー!乗って!

マキは、すぐ横の閉まる扉に滑り込んだ!

マキ:あーぶね!間に合った!マサキは?

マサキは、マキの叫ぶ声で、振り返る。マキが消えた!

となりの車両を覗き込むマキ。列車がゆっくり走り出した。と、、、

窓の外にマサキが、へばり付いた!

窓の内側にマキが、へばり付いた!

マサキ:なんで?乗ってんの!

マキ:なんで!乗らないの!


       (^^♪離れ離れのひかり号(^^♪

全速力で走るひかり号からマキは全速力でLineを打った!

(Line)

マキ:なんで乗らないの!

マサキ:なんで乗ってるの!

マキ:どこ行く気なの!

マサキ:三崎町に帰るんだろ!

マキ:三崎町ってどこ!?

マサキ:神奈川県の三崎町だって、マキはどこに行くつもりなの!

マキ:伊良湖岬に決まってるじゃない!

マサキ:伊良湖岬ってどこ?

マキ:愛知県田原市!伊良湖岬が二人のふるさとでしょ!!三崎町ってどこ?

マサキ:神奈川県三崎市三崎町!二人の故郷だよ!!

マキ:岬小学校は?

マサキ:三崎小学校がどうした?

マキ:へーーーー・・・・間違えてたの?

マサキ:間違えてたのか・・・

マキ:早く来てよ・・・

マサキ:明日の始発で行くよ!どこか分からないけど・・・


マキは、伊良湖の実家に着いた。荷物は、マサキがすべて持って降りたので、財布

免許証などの貴重品以外は持っていない。鍵を開けて自宅に入ると自分の部屋で置

いてあった服に着替えた。

(Line)

マキ:伊良湖の実家に着いたよ。新幹線の豊橋駅まで来て、迎えに行くから。

マサキ:了解、豊橋に着く時間がわかったらLineする。


なんで、間違えたのだろうと、マキは考えていた。

マキ:引っ越して、メロンの宅急便が来て、それが伊良湖のメロンで、送り主が、

   マサキの姉の梨々花。梨々花の住所書いてなかったわ。送り主が伊良湖人

   だって、もうそこで勘違いか?

伊良湖のサーフィンの撮影に行って、マサキにお土産を送っただけだ。

マキ:小学校は・・伊良湖岬小学校・・マサキは、岬小学校って、言ってた・・・

   若い子は、そういうのかと思ってた・・・三崎小学校なんて、知らんし・・

   だけど、なんでつじつまが、合った?盆踊り、金魚すくい、大サービス!

大抵、盆踊りは小学校で、金魚すくいのおやじは水が飛ぶから眼鏡けけるし、

お盆の15日に行くと、最終日だから金魚は全部配って水捨てて帰っていく。

大サービスじゃなくて、大処分だ。


勘違いの訳がわかったら爆睡できた。東の空が明るくなった。美沙の家の軽トラを

借りて豊橋に向けて走る。ちょうど、朝日が昇ってくる。雲でかすみ、紫色の朝日

が、海面で揺れながら反射している。波打ち際まで光の道が伸びる。音がとまる。

数秒で、朝日の色は、白くなりまぶしくて、見れない。


マキは、7:00からやっているモーニングが豪華な豊橋の喫茶店。パンに味噌汁

おにぎりにサラダバイキング。コーヒーが一番安いと思うぐらいのサービス。三河

地方では、当たり前だが、大宮では、考えられない。帰ってきたら行かなければ。


マサキは、新横浜6:00始発の広島行き。静岡でこだまに乗り換え8:00豊橋

に着いた。

(Line)

マキ:西口にピンクの軽トラだよ。

マサキ:ピンク?了解・・


マキが西口につけて待っている。マサキが軽トラをすぐに見つけて荷物を荷台に

ほおり投げ乗せた。

マサキ:ふーっ、やっと会えた・・?なに、その恰好?

マキ:しょうがないじゃん着替えないし、実家に残ってた服は、

   これしかなかったんだもん。

中学生時代のジャージ姿のマキは、胸の伊良湖の刺しゅうを見せた。

マサキ:俺は、故郷一緒だって、マキちゃんから聞いたんだよ!

マキ:分かってるよ。私が間違えた。メロンだよ。梨々花が伊良湖の人だと思い

   こんじゃったの。三崎小学校も思い込んでるから・・金魚すくいも・・

   だけど、なんで新横浜で降りたの?

マサキ:新横浜で乗り換えてJRで横浜、三崎口だから降りるよ。

マキ:なんで走ったの!?

マサキ:同級生が目の前を降りたから声かけようと思って・・・

    そしたら、マキちゃんが、乗れ!って叫んで振り返ったら・・消えてた!

マキ:マジでびっくりしたんだから・・お土産でも買うのかと思ったら走るから、

   乗らなきゃって・・窓の外にいるんだもん!(笑)・・やーだ・・

マサキ:マキちゃん大分走ってるけど‥どこまっで行くの?

マキ:30分走ったからあと半分!

マサキ:豊橋から1時間以上かかるの?名古屋こえるよ。

マキ:渥美半島っていう半島の一番、南が伊良湖岬。

マサキ:遠いね。さっきから右側は、ず~と海だよ。どこまで続くの?

マキ:自宅まで、ず~と海の道。買い物していきたいけど、まだ、

   スーパー開いてないから、寄り道してくね。

内海から高松に抜けてロングビーチを走っている。

マサキ:今度は、左側が海になった。波が凄いね。

マキ:東京オリンピックの時、五十嵐カノアが来たとこだよ。

マサキ:サーフィンの試合テレビで見てた。姉ちゃんも撮影で来てたんだって!

    ここか!

マキ:あの時よりも、今日は波が高いね。トイレ休憩!

   道の駅赤羽ロコステーション! ここから後、20分かな・・

マサキ:休憩しないと漏れるとこだった・・


自宅について、荷物を下ろした。

マキ:おばさん!ただいま。車ありがとう!

美沙:はい、お疲れ様! あれ可愛い兄ちゃんだ。

マサキ:小久保真樹です。マキちゃんとおんなじ漢字の人ね。

美沙:どうぞ、上がって・・ても、良いか?

マキ:いいよ。話してある。

マサキ:お邪魔します。

マキ:直斗!マサキ連れてきた。”チーン”

線香をあげて、席を開ける。マサキが、座って線香をあげて”チッ ジッ”

マキがリンをたたきながら教える。

マキ:斜めに外をたたくの”チーン チーン”1回か、2回

マサキが、”チーインin in in”うわ良い音だ!

マキ:上手だね!

マサキ:直斗さん、むっちゃイケメンだね。・・

美沙:ジャニーズなみだ!

マサキ:なんか申し訳ないな・・・俺なんかが来て・・

マキ:何言ってんのよ。

美沙:さっき、網元から電話があって、良ければ今日出すかって、明日は、荒れ

   そうだから次は、だいぶん後になるって・・

マキ:私たちは、今日でも大丈夫です。

オリンピックの決勝の時よりも波がある大丈夫だろうか。マキは、子供のころから

船に乗っているけどマサキは、観光船ぐらいにしか乗ったことは無いはずだが・・

赤羽港にピンクの軽トラで戻った。

網元:マキちゃん!こっちだ。

マキ:ご無沙汰しています。よろしくお願いします。

マサキ:小久保真樹です。よろしくお願いします。

網元:あーよろしく。ちょっと波あるけどな。マキちゃん、また、ずいぶん美人

   さんになったなあ。その恰好は、茂雄に見せるためか?

マキ:えーっ、違います。どうせ潮になるからこれでいいやって。

マキは、中学校のジャージのままで来ていた。少しサイズが小さいので、

ピッチピチで、網元がニコニコ見ている。


三人が乗った茂丸が、赤羽港を出て行った。

網元:兄ちゃん、揺れるからしっかりつかまって、踏ん張ってろよ。

マキ:マサキ、遠くを見てる方が良いよ。下向くと酔うから。

漁師にとっては、問題ない波だが、素人にとっては、ジェットコースターに乗って

いるようなものだ。胃が、上がったり下がったりして普通の人は、5分で吐く。

マキも一度は、経験させた方が良いと思って、港の中で吐き方も教えてきた。

慌てて船べりで吐きに行けば、海に落ちて遭難する。散骨に行ってマサキまで、

海に落としてしまっては冗談にもならないから。十分気を付けている。


網元:兄ちゃん大丈夫か!?

マサキ:?大丈夫ですね。

マキ:ほんと?気持ち悪くないの?

マサキ:別に・・・

網元:兄ちゃん漁師になれるわ!はは!

マキ:初めてでも酔わない人なんてね。

網元:マキちゃん以来だな!茂雄はマキが男ならなあって、船に乗せたがってたな

沖の海は、風波がおさまり、大きなうねりになった。

網元:マキちゃん落っこちたら終わりだぞ!茂雄だけ撒けよ!

マキ:はい、気を付けます。マサキ、こっちの小さい、お舎利さん撒いてみる。

   船が上下してるでしょ。下がった時に撒くの。いい、タイミング、見て・・

マサキ:ん・・気を付ける。よし!

マキ:おとうさん!バイバイ!


帰りは、うねりは後ろからだが、風波が、向かい波になる。操船は比較的簡単だ。

網元:兄ちゃん!操船してみろ。

マサキ:僕免許もってません。

網元:船は、免許もってる人が乗ってれば、兄ちゃんがそうしても問題ない。

マサキ:良いんですか。

マサキは、網元が、横に着き茂丸を赤羽港まで操船した。

網元:ほい、ご苦労さん。港の中は、免許がいるんだ。俺が代わる。

マサキ:マキちゃん、兄ちゃん、良い漁師になるな。感が良いぞ!

マキ:どうだかね。カラオケボックスの受付だから。

船を係留する。マキも手際よくロープを縛りダンパーを岸壁に合わせた。

網元:この船は、茂雄の船だ、だから法的には、マキちゃんの船だあ。

   頼みがある。知らない人に売らないで欲しい。今は、茂雄に頼まれて俺が、

   面倒見てるけど、兄ちゃんが乗るなら教えるぞ。考えてみろ。

マキ:漁師は、そう簡単には・・・

網元:そうりゃそうだな・・話はした。茂雄との約束だからな・・

マキ:ありがとうございました。おとうさんも喜んでます。

網元:じゃあな。

マサキ:ありがとうございました。


ピンクの軽トラで帰っていく。

マキ:兄ちゃん筋が良いね。

マサキ:怖いね。凄い波だった。

マキ:明日はもっと荒れるよ。明後日はその倍の高さの波になる8mぐらいかな。

マサキ:漁師さんは、その海に出ていくの?

マキ:明日は出ると思う。明後日は、漁師も休み。 買い物してくね。

スーパーダイシンで、晩の食材を買いだしていく。今日は良い魚が入っている。

サワラにホウボウ、レンコ鯛に岩ガキ豚肉も鮮度のいいものがあった。

自宅に帰って、美沙に声をかける。

マキ:おばさん、ありがとう!

美沙:撒いてきた。ご苦労さん!荒れてた?あれ、マサキ君元気そうだね。

マキ:マサキ、すごいの全然、酔わなかった。

美沙:そういう、人もいるんだね!

マキ:いたね。

マサキ:大丈夫でした。港の中でゲロの吐き方まで教えてもらったんだけど・・

マキ:今日は、こっちで食べます。お父さんの仏壇のあるので。

美沙:そうだね。


マキの自宅は、外装は古いが、中は数年前にリフォームしていて新築並みに綺麗に

している。いつでも住める状態だがここには仕事がない。紀香と茂雄の仏壇は残る

が面倒を見る人はいなくなる。いくら仲良くしていても自分の両親を美沙に頼む事

も出来ない。船のことも網元に相談していてマサキと話さないといけない事がたく

さんある。

マキ:マサキ、鍋にするよ。

マサキ:う、うん・・

マキが、線香をあげながら

マキ:なんか、骨壺が無くなっただけでも寂しいな。また、お母さんと一緒になれ

   たからお父さんはうれしいか。

マサキ:マキちゃん、ゆっくり話せなかったけどJoyJoyは、辞めようと思ってるん

    だけど。

マキ:何するの?

マサキ:次の仕事が有るわけじゃないんだけど・・川越店も無くなりそうで、出張

    も全国規模みたいだし。

マキ:やりたいことが見つかるまでは、辞めないで欲しいけどな。

   あのさ、昼間、網元が船の話をしてたじゃない。私が、船と家を売りたい

   って相談してるの。トリマーの仕事も自信付いたし、自分の店を持ちたい

   なって。伊良湖じゃ無理だから都会になると思うけど、私の方は、大宮でも

   他の街でも構わない。ただ、転勤に付いていくのは難しいと思う。だから

   マサキが、働くところが、決まってくれると動きやすいのよね。

マサキ:俺、ここで良いよ。美沙さん話しやすいし。

マキ:仕事無いじゃん。

マサキ:網元に弟子に入る。

マキ:冗談言わないでしょ。いまどき漁師なんて稼げないし。昼間の話は、お世辞

   だよ。船を他の港の人に売ってほしくないから。船に酔わないだけで、漁師

   は勤まらないよ。

マサキ:初めて人に褒められてうれしかったし、直斗さん船に弱かったんだろ。

    そこだけでも勝てたかな・・って。試しに使ってもらうのはダメかな。

何だか、降って湧いたような話だが、軽く飲んで聞いているには心地が良い。


翌朝3時、車の音がして、マキが目を覚ますとマサキがいない。車が発車して出て

いった。しばらくしてマサキから

(Line)

マサキ:網元の船で勉強してくる。

マキ:いつの間にそんな話になってるの。

マサキ:試しに、昨日の夜電話した。


マキ:あいつ本気か?漁師なんかで食っていけるわけないのに・・


伊良湖に住んでいる仲間の漁師が、マサキを迎えに来て連れて行った。若い人で、

漁師になる人は、この街でも少ない。茂雄の船だけでなく、使われなくなった船

も多くなった。今やっている漁師からしたら、これ以上人が減ると漁ができなく

なる。若い人で、船に酔わなくて、やりたいと言ってくれるだけで貴重な存在だ。


14時ごろ、マサキが、帰ってきた。無言のまま畳に大の字になった。

マキ:どうだった。

マサキ:厳しすぎ・・・立ってるだけで動けない。足腰ボロボロ。

マキ:                        ふふっ。

散骨は、海の状況で予定が変わるので1週間の休みを取っている。昨日、散骨が、

出来たので、今後の予定は、何もない。二人で、田原の街に出た。


17時10分に田原駅前発のグルリンバスに乗り笠山公園で降りる。坂を下って、

居酒屋、北の国からへ。

マキ:こんばんは、渥美さん!

渥美:おーい、マキちゃん!久しぶりだ。いつぶりだ?どうぞ、どうぞ、

大将:はあ?マキちゃん? おい、いらっしゃい。ママちゃん!マキちゃんが!

ママ:えーっ、あらま!うれしい!元気だった!?

マキ:ご無沙汰してます。

昔よく座ってたカウンターに座り、マサキを直斗の場所に座らせた。

マキ:生2つ、と、・・・

大将:生二つと、お任せで!

マキ:はい!

ママ:はーい。

マキ:こっちは、小久保真樹、結婚します。

ママ:はい、ビール。結婚して養子さん?

マキ:頂きまーっす。

マサキ:  ます。

マキ:たまたま名字が一緒で名前も漢字が一緒でマキととマサキ!

大将:また、そんな漫才コンビがいたような。

渥美:おとうしと、おつくりは、キス、カワハギ、メバルの白身づくし!

マキ:クー出たー、頂きます。ん・キス、キス・最高!マサキ、行って行って!

マサキ:んg・・?・・あまっ・・うまい。これ、キスっていうんですよね。

大将:はい、カワハギの肝。別皿にしといた。マキちゃんスペシャル!

マキ:これ食べてみて、

マサキが、カワハギの肝を1cm幅で切った特別料理を食べる。鮮度が特に新しく

ないとできない。肝だけの刺身。

マサキ:ん‥ううう・・濃厚・・うまあ!

マキ:ママちゃん!日本酒!南部美人と獺祭 マサキは?

マサキ:レモンサワーでお願いします。

ママ:”カクっ”・・

マキ:マサキは、あんまり飲めないんで・・

ママ:あ、冗談かと思って、突っ込みかけた。ははは、良いわよ人それぞれ・・

渥美:白身尽くしにスペシャルゲスト!の平貝!

マキ:ギャーオー、これだから田原は凄すぎる。んんうまうま!ぐびぐびずずず。

マキ:ママちゃん焼酎、国分芋!ボトルでお願いします!

もう、良い時間になったのだが、他の客は入って来ない。よく見ると、のれんも

下げられている。まあ、マキにこの勢いで飲まれたら、他の客に対応できない。

店もたまにはこういう日もあっていいのかもしれない。

マキ:渥美さん!エイひれ2で、

渥美:二つともお持ち帰りね。


マキ:ご馳走様でした。

ママ:また来てね。旦那さんも!

マサキ:おいしかったです。


タクシーで、花あかりへ

マサキ:白身の魚で、あんなにおいしいのは始めて食べたよ。平貝は、格別だね。

マキ:マサキも舌が肥えてくるよ。赤みの美味しいところは結構あるけど、白身は

   鮮度と海の条件がそのまま味に出るからっ料理人は難しいよ。

運転手:マキちゃん久しぶりだね。

マキ:すいません。お会いしてましたっけ。

運転手:よく使ってもらってたよ。チップ弾んでもらって!

マサキ:マキちゃん有名人だね。

運転手:こんなベッピンで、気前が良くて、みんな一度会ったら忘れないでしょ。

マキ:褒めすぎですよ。

運転手:はい。1,980円です。

マキ:ありがとう!ごめんなさいね。チョッキりまでです。2,000円で!

運転手:ありがとう!


マキ:こんばんは。

花鈴:あら、いらっしゃい!

マサキ:よろしくお願いします。

マキ:ほぼ旦那!

マサキ:小久保真樹です。

花鈴:それは、おめでとうございます。しっかり稼がないとこの嫁さんは、

   燃費悪いですよ。

マキ:小林さん久しぶりです。

小林:お、おお、んん

花鈴:ジンで良い?

マキ:ジンとジンサワーで、勝手に割ります。

花鈴:北から来たの?

マキ:はい。久しぶりに白いの連発で!美味しかった!

花鈴:羨ましいわ。

マキ:お父さん居なくなっちゃったから、もう飲めないけど青一髪っていう焼酎が

   あるんですけど、あれと、今日の白身を合わせたかったなあ。

花鈴:有るわよ。他のお客さんには内緒よ。

花鈴ママが、青一髪の一升瓶を持ってきた。

マキ:なんで、有るんですか。

花鈴:若い時に長崎で歌ってるときに知り合って、酒蔵さんで飲ましてもらった。

   それ以来、息子さんの代になっても送ってくれるの。

マキ:もしかして、お父さんの・・

花鈴:そうね。言わなかったんだ。やっぱり口が堅い人ね。

マキ:家族にも誰にも言ってなかったみたいです。

花鈴:紀香さんは知ってた・・というか。知って逝った。

   ここで、三人で最後に青一髪で、飲んだ。マキちゃんは、

   美沙さんちでお留守番。茂雄さんが、紀香に献杯って言って!

   ”まだ、生きてるわよ”って、怒られてた!(笑)

マキ:お父さん、最後の日に、北山先生が看取ってくれたんだけど、

   青一髪で、北山先生に献杯って言われてた。(爆笑)

   自分に帰ってきたんだね。

   お母さんがガンっていうこと、死んでからも知らなかった。高校生で、

   美沙さんから初めて聞いたもん。

花鈴:あんまり口が堅すぎるのもね。小林さん!

小林:お、んん

花鈴:今日は、マキとマサキの披露宴ですからみんなで、青一髪でいきましょう!


北山:おー、やってるな。

マキ:噂をすれば・・

小岩:悪口だな。おっ、小林先輩、お元気そうで

小林:おっ、ん

北山:モトズカフェで飲んでたら客のうわさで、マキちゃんが飲んでるって、

   ここだなって。正解!あれ!青一髪。何であるの?マキちゃん持ってきた!

花鈴ママが、マキに目配せをする。

マキ:あ、あんん。ね。小林さん

小林:お、んん。

北山:茂雄のおやじが居なくなったから最後の一升瓶だな。

花鈴:はいどうぞ、みんなで献杯だ。献杯!

マキ:             献杯!

マサキ:             献杯!

小岩:             献杯!

小林:    お、まだ、生きとるぞ! 乾杯!


次の日、16時頃、網元が、マキの家に来た。

網元:おるか、

マキ:はい、先日は、ありがとうございました。

網元:マサキも居るだろ

マサキ:はい、どうも。

網元:どうだ、立てるか?

マサキ:なんとか、お尻の付け根が筋肉痛です。

網元:立てるだけで、立派なもんだ。

マキ:上がってください。

網元:ほれ、茂雄さんが好きだった黒糖焼酎の朝日、飛乃流と、壱乃醸だ。

マキ:あー、お父さんが時々飲んでてもらいました。おいしいね。良いんですか!

網元:条件がある。マサキとトレードだ。

マサキ:トレード?

マキ:マサキを本当に船に乗せる気ですか?

網元:あいつは、モノになる。

マキ:良いですよ。トレード成立!

   飲みましょう!朝日!飛乃流、壱乃醸ひのりゅう・いちのじょう

マサキ:トレード成立?・・焼酎で・・

マキ:ロックで良いですか!マサキは、ソーダ割!

網元:        良いぞ。

マキ:はいどうぞ、良かったね。マサキ、船に乗れるんだって!

マサキ:焼酎で決まり?

マキ:乗りたかったんでしょ。よかったじゃん。

マサキ:立ってるのがやっとだったから・・自身無くなって・・

網元:立ってて転ばないだけでも大したもんだ。おまえ、なんかやってたのか?

マサキ:特に何も・・店で立ってばっかりだから

マキ:店で立ちっぱなしで、電車もたちっぱなしで、

   子供のころもいつも立たされてたって言ってたしね。

マサキ:それで、漁師になれるのか・・・

網元:茂雄さんも喜んでるな!乾杯!


大宮へ帰る日

マキ:それじゃあ、マサキ頼むね。美沙さんの軽トラで練習してよ。

   ペパードライバーじゃこの町は、不便だから。年内にもう一回帰ってくる。

   JoyJoyには、私から電話しとくから。着信拒否っていいから。バイバイ


マキだけが、豊鉄バスで、帰っていった。


ところで、網元の名前は、小久保真輝マサアキ書きづらいし、読みずらいから

     網元で良しとした。

               

   マキとマサキの物語 おわり


    知らないおっちゃんと、兄弟船?

      真樹と真樹と時々真輝・・・始まるぞ~






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