イキってミッションコンプリート ー帰還とそれからー
結論から言うと、俺たちは依頼を達成した。
依頼された宝を回収し、俺たちは探索者の本拠地サルテに帰ることに。
あの竜擬きを倒し、仮面の中を見た後。
深度Ⅲに降りてきたドドンとも合流を果たし、チーム全員で休息をとってから宝の回収に向かった。
あの小さな宝箱は最初に俺が見つけた場所から位置を変えず、道中モンスターに襲われることもなくアッサリと確保に成功。
そして俺が切り落とした奴の尾も無事確保し、俺のこれまでの探索者経歴の中で最も大きな成果となった。
何せ紛い物っぽいとはいえ竜の尾だ。
それも推定だが新種の。
新種のモンスターなど滅多に見つからなくなった中でこれだ。
きっとちょっとした騒ぎになるだろう。
奴の亡骸は一旦放置することになった。
竜は全身が余すことなく一級の魔法資源だ。
そのため全て回収したくはあったが、何せああも大きいと持って帰りたくとも鞄に入らない。
鞄には一応空間拡張系の魔術がかけられているものの、低位の魔術しかかかっていないので竜を丸ごと、とはいかない。
ドドンが所有するものが一番容量があるが、彼も竜の討伐は予定していなかったのかそこまで容量のある物を持ってこなかったそう。
チーム全員の鞄を足しても入りそうになかったため、結局後で取りに行くことに。
モンスターの遺体はそう簡単に腐らないしな。
だが後日。
安息点から現場に戻ると、そこに奴の死体は無かった。
まるで最初からそんな存在は無かったとばかりに、忽然と姿を消したのだ。
あの状態からまだ動けたのか、それとも誰かがあそこから動かしたのか。
今も謎に包まれている。
それと、助けたあのナンパ男についてだが。
あの男の命は助かったが、意識は戻らなかった。
安息点にある医療施設に預け、今も入院しているそうだ。
ルフェイリアが何事かを気にしてそうな顔をしていたが、何だったのか。
まさか好きになったとかじゃないよな……?
あの男の仲間は、誰も助からなかった。
距離があったため安息点まで運ぶわけにもいかず、その場で簡易だが墓を建てた。
かろうじて形を留めた一部の遺留品と探索者組合の証明書だけを回収し、後日組合に提出することに。
そんな感じで色々あったが、一つ問題が生じた。
「おい、クリスト」
「ん? 何だよ人の頭ジロジロと」
「いや、お前のその白いのはいつ落ちるのだ?」
「へ……?」
──俺の髪は、一部色が抜け落ちたように白くなったのだ。
原因に心当たりはあった。
俺が竜擬きの尾を切断した際。
奴の体から噴出した白い血は、顔だけでなく俺の頭、つまり髪にもかかった。
ドドンにポーションを頭からかけられた時にでも流れたと思っていたが、そうではなかった。
確かに血は落ちたが、髪そのものが白くなっていた。
何度洗っても白いまま。
黒い頭髪に所々白が混じり、目立つしカッコ悪い。
それは例えるなら鳥の○が落ちたようで────
「なんっっっでだああぁぁぁぁぁああああ!?」
こうして、俺の最初の大仕事は幕を閉じた。
あとは、この宝箱をあの謎だらけの依頼主様に渡すだけ。
俺たちは、サルテに到着して早々に彼女の下に向かった。
「いや〜皆さんお疲れ様ですぅ〜!」
はー、むかつくわぁ……っ!
約二週間ぶりに顔を合わせた依頼主は、全く変わらぬ様子で俺たちを出迎えた。
探索者組合本部前にある噴水広場、つまりは俺たちが初めて出会った場所で彼女は俺たちを待っていた。
やはりフードを深く被っているため表情が分かりずらいが、ニヤニヤしているのは分かった。
それにしても妙にタイミングがいい。
ずっと俺たちのことを監視でもしていたかのようだ。
「ほれ、こいつがアンタのご所望の品だろ?」
「わぁ〜ありがとうございますぅ〜! 皆さんにお願いして正解でした〜!」
「言ったろ、俺ならヨユーだって」
「コイツは何故ボロボロになったくせに余裕綽々なのだ……」
「まぁ、ええじゃろ。強がりたい年頃なんじゃきっと」
いえ、ただの悪癖です。
受けた依頼通り、宝の入った小箱を手渡す。
何が入っているかは分からないし気にもなるが、これは彼女のものだ。
俺が知る由もないだろう。
「さて、色々あったがこれで依頼完了じゃな」
「えぇ、皆さん改めてありがとうございました〜! これにて私からの依頼は完了となりま〜す」
ぱちぱちぱち〜と言いながら小さな手を叩き拍手する少女。
一々動作が態とらしいというか胡散臭いせいか可愛らしいとは感じない。
ルフェイリアとドドンも何も言わず、拍手の音が虚しく響く。
ともあれ、これでこの依頼主の頼みは聞き終えた。
あとは──
「それで、報酬は?」
「はぁ〜い、ちゃんと用意してありますよ〜」
良かった、流石に用意してあったか。
あの竜擬きのことといい、この依頼主はどうにも信用出来ないが最低限は弁えているらしい。
最悪「報酬なしで☆」とか言い出してもおかしくないと警戒してたが、杞憂だった。
依頼主が懐から何かを取り出した。
鍵だ。
小さな、銀色の鍵。
それを宝箱に差し込み、解錠。
箱が開き、中から現れたのは────
「……ボール?」
ガラスのように透明な、拳大のボール。
よく見ると薄っすらと青い。
加えて表面には魔法陣に描かれる紋様や文字が刻まれており、中には菱形の針のようなものが浮いている。
なんだこれ?
魔術師が杖につける石に似てなくもないが、それとは少し違う気がする。
まさかこれが、俺たちへの報酬?
「これが、“大穴“が出来た理由と繋がるのか……?」
「ちと変わった魔道具にしか見えんのう」
二人もピンと来ないらしい。
となると俺に分かるはずもない。
「────それは“果ての羅針球“。この異界の果て、極点を示しそこに導くもの」
依頼者の少女による答え合わせ。
しかし彼女の纏う空気は、先程までとまるで別人のように変質していた。
得体が知れないのは変わりないが、より底知れない雰囲気を放っている。
「そこに答えが置いてある。何故現世と異界が繋がったのか、そも異界とは何なのか。それはあなた方の目で確かめるといい」
ふわりと、光の粒が舞う。
少女の爪先が崩れ、光る粒となり、やがて全身が風に乗って消えた。
聞きたいこと、聞くべきことを問う前に。
「消えた……」
「極点を示すもの……つまり、これは」
「うむ、そう言うことじゃろう」
残ったのは、報酬である羅針球。
これはこの異界の果て、極点を示すと彼女は告げた。
それはつまり、探索者の目指す目標“極点到達“を成す為の道具。
そしてそこに“大穴“が開いた理由があると、そう言った。
「何者なんだ、彼女は……?」
「さての、考えても分かりそうにないわい。本人に聞く暇もなかった上に何処かに消えちまったしの」
俺も、聞きたかったことは山ほどあった。
いや、今もそうだ。
あの白い竜擬き然り、不明なことが多すぎる。
だが、まぁ。
「次会った時に聞くしかない、か」
「そうさの、次の機会を待つか」
「そうだな……」
何となく、あの依頼主の妖精は探したところで見つかる気がしない。
ならまた俺たちの前に姿を見せた時にしつこく聞いてやればいい。
今回のような依頼はもうごめんだが。
「さて、依頼も済んだことだ。ここいらで解散かの」
「それが妥当か」
「かいさん……」
あ、そうか。
すっかり忘れていた。
俺たちは偶々同じ依頼を請け負っただけの即席チーム。
それが終われば当然チームでいる理由はない。
けど、
「ほんじゃ、また組む機会があったら……」
「な、なぁ!」
「クリスト?」
去ろうとする二人を引き止める。
こんなこと言う柄じゃないのは、自分でも理解してる。
でも俺は、まだ終わりたくない。
「俺たちで、チームを組まないか?」
俺は、このチームで行ってみたい。
この異界の未知の果て、それを指し示す針が今ここにある。
だったら、俺は目指したい。
「お前たちの目指すものが、異界の果てに、極点にあるかもしれない」
成り行きで探索者になった。
故郷に戻るに戻れないからと、ダラダラと過ごしてきた。
動機も目標もしょうもないものだった。
「だから組もう、俺たちで」
でも、今は仲間ができた。
こいつらの夢を聞いた。
だったら、叶えたい。
なってまだ半年も経ってない半端者が何をイキっているのかと笑われるかもしれない。
イキり人間種と、不器用森霊種と下戸土鍛種で出来るものかと。
「俺は、このチームで極点に行きたい」
イキり続けてやる。
イキって、イキって、イキり続けて望みが叶うまで。
「俺が、連れて行ってやるっ!」
俺は、アロ・クリストはイキり続けるのだ。
これにて第一章完結となります。
応援ありがとうございました! 第二章をお楽しみに!
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