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悪役令嬢だから知っているヒロインが幸せになれる条件  作者: 音無砂月


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14.幸せになれる条件

貴族裁判で私を階段から突き落としたハロルドには殺人未遂が適用された。

彼自身に殺意がなかったとしても階段から落とすのは危険行為であり、それを学生でありながら既に騎士という立場を得ていた彼がしたことは彼の家だけではなく騎士の顔にも泥を塗る行為であった。到底許せるものではないということからハロルドはアグリオス公爵家の継承権を剥奪後、平民に降格。辺境の地に飛ばされてそこで騎士として働くことになった。

魔物や他国の脅威から常に国を守らなければならない過酷な場所だと言われている。

アグリオス公爵家は伯爵位に降格となった。

私を貶めようとした三バカは修道院送りが決まった。三バカの家には慰謝料を請求。元々、贅沢三昧で家計が火の車状態で何とか上位貴族との縁談を取り付けて支援をしてもらおうとしていた家にとっては大打撃だろう。

家にある金目の物を全て売って、後は慎ましやかに暮らすしかない。

メロディは貴族裁判の場で自分は「王女だからこんな仕打ちはあり得ない」と寧ろ不敬罪でヘザーズ公爵家を断罪すべきだと宣わった。

それにどれだけ彼女の母親を愛していたか知らないけど陛下は最後までメロディを庇い続けたそうだ。

それに自分の子だからメロディを王女として迎えるべきだとも言ったとか。

しまいには王妃が浅慮であり狭量なのだと王妃を責め、王妃を貶めた。その時の陛下の目は常軌を逸していた。後で陛下の部屋から薬も発見された。

依存性が高く、服用を続ければ現実と妄想の区別がつかなくなる薬だ。陛下が好んで摂取していたのかあるいは何者かが摂取させていたのかは分からない。

私が思うに王妃の仕業だとは思うけど。

兎も角、メロディは平民に戻る。ハロルドとの婚約は維持したままなので二人仲良く辺境に行くことになった。

二人一緒だということをとても喜んでいたようだけど、地位も財産もない。過酷な辺境の地で二人が幸せになれるかは不明だ。それこそ並々ならぬ努力がいるだろう。

王はまともな判断力ができない為王位を王妃に返却し、田舎で療養することになったが一生そこから出てくることはないだろう。療養と言う名の幽閉だ。

結局、王妃が女王として立つことになった。全ては王妃が望んだ通りになったのだ。


◇◇◇


「もっと重い罪にしてやればいいのに」

貴族裁判の結果はレオンには不服のようだ。

「十分な罰よ」

「でも結局、あの二人は一緒の場所に送られるんですよね」

あの二人とはハロルドとメロディのことだろう。

「レオンは二人が辺境の地で仲良く過ごせると思う?」

「過ごせるんじゃないですか?愛が本物なら。義姉さんは違うと?」

「ええ。物語の主人公がハッピーエンドを迎えられるのは結婚する相手が王子様だからよ」

私がそう言うとなぜかレオンはぶすっとむくれてしまった。

「王子様じゃないと幸せにできないという考えは間違っています。確かに夢見るご令嬢は白馬に乗った王子様の方がいいと言うかもしれませんが俺だって義姉さんを幸せにすることができます」

どこで張り合っているんだ。

「優しいレオンと結婚できるならそれだけで幸せかもね。物語の主人公は優しくて慈愛に満ちていて、どんな困難でも乗り越えようと努力を重ねて、常に前向きなもの」

「メロディ様とは似ても似つきませんね」

「そうね」

それでも彼女は乙女ゲームのヒロインだった。どうして彼女がゲームとキャラが違ったのかは分からないけど。

彼女は何か危機に陥る度にいつも誰かが何かが助けてくれたと言っていた。それは彼女がこの世界のヒロインだったからだろう。

それが過信に繋がり今の状況を生み出したのではないだろうか。

何をしても、何が合っても自分だけは大丈夫だと。

絶対に大丈夫と言いきれる道も人生もないのに。それが彼女には分からなかった。

いくら世界のヒロインでも、どんな強運の持ち主でもいつまでも続くものではない。最近の物語はヒロインがバッドエンドを迎えるものだってあった。それと同じだ。

ヒロインが必ずしも幸せになれるとは限らないのだ。それを信じて良いのは幼子だけだろう。

「小さい頃に義姉さんが読んでくれた物語の主人公は確かに義姉さんの言う感じの人ばかりでしたね。俺はよく思っていましたよ。その主人公たちは随分と生きづらそうだなと」

「‥‥‥」

そんな小さい頃から随分と歪んでいたのね。まぁ、仕方がないけどさ。

「でも必ず幸せになる。物語上ではね。ああいう世間知らずのお嬢様はね地位も権力もお金もある人と結婚して初めて幸せになるの。お金があるから施しを与えられる。地位や権力があるからこそ馬鹿げた理想論に文句を言う人もいない。いつまでも夢のような御伽噺の中で生きていけるのよ」

では、その全てを持たぬヒロインは果たしてどのような未来を歩むのだろうか。

シナリオから外れた今、私の人生に二人が関わって来ることはもう二度とないだろう。

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