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「打ち身と軽い捻挫です。ですが頭を打っているので医者を一日待機させた方がよろしいかと。それとすぐにお邸でお休み頂いた方が気も休まると思いますが、三十分程はここで安静にしていただいてよろしいでしょうか。もし気分が悪くなったり頭痛がした際はすぐに仰ってください」
「分かりました、ありがとうございます」
「お荷物は担当教員がこちらに運びますのでレオン卿はリスティル嬢についていてください」
「分かりました」
私の状態を校長に報告するために養護教員は一度退出した。
「義姉さん、義父さんには既に報告を飛ばしたから。すぐに迎えに来てくれるって。それと今回の件はヘザーズ公爵家側と学校側から正式に抗議することになったから」
「そう」
怪我をしたのは私なのにレオンは私よりも痛そうな顔をしている。
血が繋がっていないくても家族だ。階段から落とされたと聞いた衝撃は計り知れないだろう。
それにしても予想外のことが続く。
本来なら階段から落とされるのは私ではなくメロディなのに。
落とすのは当然、悪役令嬢の私だけど。
ここまで来るとゲーム知識があまり役に立たないわね。
◇◇◇
side.王妃
「まさかここまで愚かだとは思わなかった」
「お義母様」
「私はあなたの母ではないわ。この国の妃よ。止めて頂戴。あなたみたいな汚らわしい子が娘なんて冗談じゃない」
今すぐ不敬罪で殺したいところを何とか抑える。
陛下の妾子だというだけで私の娘ではない。
そもそも本当に私の娘ならこんな無様な娘になるような教育はしない。
身の程をしっかりと弁えさえ、どこに出してもおかしくはない娘に育て上げる。当然だ。王女としてこの国の顔になるのだから。
「私がいくら平民の出だからってあんまりです」
そう言ってめそめそ泣くこの小娘が煩わしくて仕方がない。
「出身で言っているのではありません。あなたの性根の話をしているのです」
リスティルの婚約者を欲しがり、彼女を貶めようとしておいて被害者面をする人間を汚らわしいと言って何の問題がある。
「早くこの娘を追い出して頂戴。二度と私の部屋に来させないで」
「はっ」
控えていた騎士が嫌がるメロディを無理やり部屋から追い出した。そのまま軟禁するように伝えておく。
「気分は最悪だけど、上々ね。あの娘が色々やらかしてくれたおかげで陛下に大打撃が与えられたわ」
戦争が長引き、財政難に陥ったゾルターン王国を当時伯爵だった陛下が救ってくださったことから私と婚約して今は王位についている。
元から傲慢だった彼は更に傲慢になる上に、彼の親族まで出しゃばって来る始末。
でもそれも今日まで。
彼の妾子を放置したおかげで色々やらかしてくれた。まさかハロルド卿がリスティルに怪我をさせたのは予想外だったけど。
でもこれを機に陛下やその親族の勢力を弱めることができるだろう。
何よりも彼らが出しゃばることをヘザーズ公爵が許さないはずだ。
「リスティルに見舞いの品を送って頂戴」
「かしこまりました」
侍女は見舞いの品を選びに退出した。




