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幻想の箱庭  作者: 農園
プロローグ-■■■■■■-
7/70

1-4 魔術事故とルノーママ

よろしくお願いします

「さっきの石像って初代の6賢人でいいのかな?」


「ええ、そうよ。この国をつくり、魔導院をつくって魔術の発展に貢献した6人の賢者と聖皇様。ちなみに中央にあった小さな丸い泉が聖皇様を表してるらしいわ」


「あそこの石像に合わせてそれぞれ今の6賢人が転移してくるようになってるんだ、だから普通の生徒はこの廊下に入ることすら出来ないんだよ。もし転移先で重なったりなんかしたら、大事故だからね」


 アランは思わずクリスの方を向いて固まってしまった。転移魔術について、そもそも魔術の危険性について、シャルルやフェルがあまりにも簡単に行使するせいで深く考えていなかった。


「ほら、足を止めないのよ。アランの集合場所は私達と少し違うんだから、急がないと」


「そうだぞアラン、しっかりついてこい。私はお前を集合場所まで送ってやれるからな。その間に少し転移魔術について話してやろう」


「ルノー様、アランに魔術ついてお話したのではなくて?」


「教えはしたが基礎の基礎、五大属性の基本だけしか教えていないし使わせてもいない」


 ルノーがアランに教えた魔術は、魔導院の1年生が初めの授業で触れることのみだった。


 アランには言っていないが、シャルルからの、強力な魔術の行使が、目の封印に対してどんな影響があるか分からないとの言葉を受けたからであった。


 シャルルはアランの目の封印に関して、1年生の間はなるべく解かない方針でいる。厄介事に巻き込まれないように。


 ルノーとしてはどんどん先を教えていきたかったのだが、アランの安全には変えられないと諦めたのだった。


「どうせ魔導院で皆同じように学ぶんだ、先のことを知っていても授業が退屈になるだけだろう?その代わりと言ってはなんだが基礎は完璧だ、贔屓目なしにな」


「そうですわね、言われてみればおかしなことでもありませんわ。それと、あなたのアランに対する評価は贔屓目無しにとは言い難いですわ。あまりにも甘いんですもの」


「あ、あの、転移魔術以外にも、どんな事故が起きるんでしょうか」


 再び歩き始めたアラン達。ただアランの歩みは少しばかり遅くなった。


 アランは、魔術を教えられ、はしゃいでいた自分が怖くなった。空想の世界が現実になったという非現実感に身を任せすぎていたと、反省し始めていた。


 ルノーは、見るからに沈んでいくアランを見て焦り始めていた。明らかに自分の教え方が悪かったのを自覚したのである。


 シャルルからある程度の事情は聞いていた。魔術のない世界で過ごしていたと。こちら側の子供が当たり前のように持っている魔術への恐怖心、事故の危険性、これらを教えてこなかったのは自分である。


「アラン、私の授業が悪かった。ただ、安心してくれないか、魔術による事故が多発していたのはもう何百年も前の話だ。今やそんな事故は意図的に起こさねば起きないと言われてる程に魔術が完成されているんだ、転移魔術なんかは特にだ」


「まあ。あなたも随分はしゃいでいたようね。そんなことは基礎を教える前に言っておくことじゃないの」


「ああ、だからアラン、そんなに考え込む必要はないんだ。大丈夫、安心してくれ」


 ルノーが焦っている横で、クリスは、これ僕が余計なこと言わなければこんな空気になることなかったんじゃ...と少しばかり落ち込んでいた。




 それからしばらく歩くと制服を着た集団が見え始めた。ソフィア曰く、見覚えのある生徒がちらほらいるから2年生以上であろうと。


「1年生の集合場所はもう少し先にあるはずよ。私たちも早く会場に入らなければいけないからここでいったんお別れよ。あとはルノー様が案内してくれるはずですわ。また寮でねアラン」


「バイバーイまたねー」


「じゃあなアラン」


 3人はそれぞれ同期を見つけ廊下を進んで行った。角で姿が見えなくなるまで、時折振り返ってはこちらに手を振っていた。


 見えなくなったのを確認して2人は歩き始めた。


「行くぞアラン。気分はもう大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」


「今日1日は座って話を聞くだけで終わるはずだ。終わって寮に入ってしまえばソフィア嬢達が迎えてくれるはずだ」


「じゃあ集合場所に着いたらもうルノーさんとはしばらくお別れですか?」


「ああそうだ。次に会う時はほぼ1年後になるだろうな。何かあっても、フェルが講師として在籍しているからな、そちらを頼れ。私は恐らくフェルの仕事を引き継ぐのだろうからな」


「半年間付きっきりでありがとうございました」


「何を言う、こちらこそだ。お前が生きていてくれて感謝しかない」


 アランが横目でルノーを見ると、彼はいつになく真剣な顔をしていた。この半年で随分仲良くなれたと思っていたが、まさかそこまで言われるとは。


「できればお前の親代わりになりたいが、向こう側に親と呼ぶべき存在がいるのだろう、シャルル卿より聞いている。だから、その、なんだ、立場上シャルル卿に物をねだるのは難しいだろうからな、何か欲しいものができればその都度私に言いなさい。私は独身です、お金は余っていますからね」


「ありがとうございます。甘えさせて貰います」


「ああ、存分に甘えなさい。さあ、もう集合場所が見えましたよ、あそこに立っている教師に名前を告げれば連れて行ってくれるはずです。私は会場の場所取りがあるのでね、ここでお別れです」


 ルノーは照れていたのだろう、言うだけ言うとそそくさとアランから離れていった。アランもまたルノーを見送ると言われた通りに教師に話しかけた


「アラン・クルールです。新入生なのですが」


「はい、今確認するからちょっと待ってね。アラン、アラン、ああシャルル卿の推薦枠の子ね、さあこっちにおいで」


 ついて行った先には既にたくさんの同期達が並んでいた。推薦枠というのは名簿の順番的には最後らしい。


「あと1人かしらね、んー、ああ来たわね、あなたは最後から2番目に並んでちょうだい」


 アランの前に並んだのは、見るからに静かそうな、背中を常に丸めている女の子だった。顔は長い髪に隠れて見ることはできない。


 じーっと女の子を観察していると、アランを連れてきた女性の教師が話始めた。


「さあ、みんな注目してちょうだい。私が君達20人の587期生の総合的な教師を務めることになったサミー・イザナです。位階は祭司プリーストになります。式の時間があるので詳しい自己紹介はまた後でみんなと一緒にしたいと思います。それじゃあその列のまま私に着いてきてください」


 すぐに列の前に大きな扉が見えた。


「アナウンスが聞こえて扉が開いたら私について会場に入っていきます。そのまま席まで進むので、先頭の子から順番に奥に詰めて座っていってくださいね。よろしくお願いします」


 うっすらと式の開始を告げるアナウンスが聞こえた。


「さあ、入りますよ。胸を張って堂々と歩きましょう。今日の主役は君たちですよ」

ありがとうございました

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