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幻想の箱庭  作者: 農園
プロローグ-■■■■■■-
11/70

1-7 過保護も過ぎれば

よろしくお願いします

 魔導院は、全学生全教師の要望に応えるために多数の部屋が備えられている。全ての部屋を見て回り、解説するとなると半日程度では終わらない。


 サミーは主要な施設、講演が行われる際に使われる大講堂や教師の控え室、そして魔術の実践等で使うことになる部屋を選んで案内して回っていた。そして最後に学院内にある大食堂にやってきた。


「もうそろそろ時間になるので、このまま食堂で解散とします。午後の授業の鐘がなる前に教室に集合するようにしてください」


 食堂には少しだけ学生や教師の姿が見えた。5、6年生になると受けないといけない授業はないので、寮の食堂よりも広いこちら側に来て1日中いるものもいるほどである。


 アラン達1年生はサミーに食堂の利用法を教わりながら食事をすることになった。こちらの食堂は、決められたメニューの定食から選んで受付に伝えたのち、券をもらって各受け取り口で交換する仕組みになっている。


「リンさん、一緒に食べませんか?」


「いいよ、知ってる人、君しかいないから」


 2人以外の新入生はある程度グループを作って歓迎会で親交を深めていたのだが、ソフィアが過保護であったが故に2人を自分の側から離さなかったため、友人などいなかったのである。お互いさほど気にしてはいないのだが。


「もう少ししたらソフィアさんたちも来るのかな」


「来てくれると、嬉しいな」


 向かい合わせに座り、少しばかりの言葉のやり取りではあるが、アランは少しだけ心開いてくれたリンに嬉しくなった。


「おいおい、ソフィアのせいだろ。お前ら2人きりで食べてんの」


「こうして僕らがやってくることでさらに孤立すると思うんだけどね」


「今日だって午前中に話しかけるタイミングはあったはずだろ?それでも2人きりなんだ、もういいだろ」


 突然2人の隣の席に人が座ってきた。ディミトリとヴァンである。


 新入生の案内が食堂で終わること、そして早めの食事となることを予想した2人は、それぞれ友人など作れてないだろうと、あの過保護お姉様のせいで、ということで待機していたのである。


 リンは2人とも面識があり、頼りになるお兄さんレベルまでは心を開いている。


「俺たちとかクリスとニコラみたいに、お前らも2人で居ればいいんだよ。相性は悪くなさそうだからな」


「まあ確かに、これからも付き合っていく仲になるわけだしね」


「あの、推薦枠って、将来は6賢人の元で働くっていう認識でいいんですよね?」


「基本はそうだって聞いてるぜ。滅多に使われることの無い形だけの決まり事だったらしいけどな」


「だからこそアラン君にはリンと一緒にいて仲良くなって欲しいんだ。ほら、もう見るからに引っ込み思案だろ?ソフィアやニコラだけといる時はもう少し元気なんだけどね」


 リンは食事をする手を止め顔を赤くしながらディミトリを睨んでいた。


「いつ、見たの」


「いつだったかな、ヴァンも見てたよね?」


「ああそうだな。年初めとかじゃなかったっけな」


「最っ低」


 そんな会話ばかりしていると鐘がなり、食堂に学生が増えてきた。


 寮の食堂の倍近い広さを持っているため混雑な印象を受けることはない。受け取り口も返却口もそれぞれ3箇所に分かれて設置されており、並んでいる学生の待ち時間もなるべく減らせるようになっている。


 そんな学生達に紛れていつの間にかリンの後ろにはソフィアが立っていた。


「お2人とも、アランとリンちゃんに何かいらないことを教えてはいないでしょうね?」


「過保護な番犬が来ちまったな」


「一緒に食事をしていただけだよ、ソフィア」


「それならいいんですが」


 ソフィアはリンの横に座り食事を始めた。


 アランの後ろの方からクリスとニコラがやってきた。


「ほら、私の予想が当たったでしょ?鐘が鳴ると同時に教室を飛び出したのよきっと」


「こんなの分かりきってるんだから予想も何もないだろ...。あ、アラン隣座るね」


「うん、どうぞ」


 クリスは席につくとアランに話しかけてきた


「サミー姉さんの話を聞くの大変だっただろ?あの人話始めると止まることを知らないから」


「お話するのがすごい好きみたいで、本とか読み聞かせてくれたり、小さい頃はよく面倒を見てくれてたわ」


「同期の子達みんな頭抑えて机に突っ伏してたよ」


「だろうね。1年の最初の授業って説明ばかりだしね。まあこの後の魔術の授業はきっと楽しいよ」


「私たちは午前中に受けましたからね、フェル先生の授業」


 クリス曰く、フェルは2年生までの魔術の基礎と汎用魔術、3年生の属性適性に分かれての授業を受け持っているらしい。


 フェルの名を聞いて、アランの授業に対するモチベーションが上がった。魔術の講師として呼ばれているのは知っていたため、もっと上の学年を見るのだろうとばかり思っていたためである。


 実際は、1年生を受け持つようにアンリが根回しした結果である。


 そんなことを知らない学生達は、特に5年生以上の主に魔術の研究をしている者たちは、あのシャルル卿の1番弟子が講師としてくると浮かれていたのだが、低学年の基礎等を担当すると聞いて荒れているのだが。


 気づけば昼休みも終わりそうな時間、食堂にいた学生達は次の授業のためにそれぞれ片付けを始めていた。


 アランたちのいる机では、ディミトリとヴァンが一足先に去っていった。


「それじゃあなアラン、リン、また夜にな」


「あと2コマ頑張ってください」


 ソフィアは午後からは暇なようで、友人と合流してそのまま食堂でゆっくりするらしい。


 アラン達4人は少しゆっくり片付けを済ませソフィアに一言かけ食堂を出た。


「それじゃあ一応怪我とかしないようにな」

「怪我なんかしたらソフィア姉様がもっと過保護になるわよ」


 クリスとニコラとも別れ、アランとリンは2人で並んで教室へ向かっていた。


「君のこと、アランって、呼ぶわ」


「うん、いいよ」


「リンって、呼んでもいいから」


「リンって、ヴァン先輩のこと好きだよね」


「っっ、嫌い」


 リンは走って教室に入っていってしまった。後に残されたアランは楽しそうな笑顔を浮かべていた。

ありがとうございました

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