1-1 強制的な決意
描きたいことが伝えられるように改善を加えながら執筆していこうと思います。駄文ではありますが、頑張って続きを書いていきますのでよろしくお願いします。
真っ暗な闇を抜け、初めて見た世界は色で満ち溢れていた。目に写るものすべてが色とりどりに輝きを放っていた。瞬きをすれば消えてしまう儚い思い出。自分の目に微かに残っている記憶でしかなかった風景は、いつの間にか幻想の中に消えてしまっていた。
「やあ、誕生日おめでとう」
今日は、僕、グルダ家長男であるアランの誕生日である。毎年の派手な飾りつけとプレゼントはその年一番の楽しみだと言っても過言ではない。
しかも今年は12歳になるのだ。幼学院の最終学年であり、来年には中学院に入学するのだから、今年のプレゼントはいつもより豪華なもの、幼学院に入学する前の年のプレゼントは家計が心配になるような立派なローブだった、になると予想していた。
「私の名前はフェル、12歳になった君を迎えにきた」
リビングに入った僕を迎えたのは、泣きそうな顔をしている両親、そして、フェルと名乗る黒ずくめの男だった。彼は無表情で僕を見つめていた。
「私の仕事は、君を門に連れていくことだ。
これからする説明の後、1時間の猶予を与えてもよいと雇い主から言われている。
さあ、椅子に座りたまえ、アラン君。説明は手短にしたいんだ」
椅子に座った僕の目に最初に写ったものは、机に広げられた書類だった。
記名欄らしき場所には両親の名前が既に書かれている。日付をみると11年前、僕が生まれた年だ。
そんなことを考えていると、フェルと名乗った男はまっすぐに僕を見つめ話しかけてきた
「まずは契約云々の前になぜ私がここに来たか、そして何者なのかを話しておこう。
今からする話の内容に関しての質問を私は受け付けられない。事実のみを君に伝えることになっているからだ。
ただ、私の話を終えてから君がこの家を去るまでの間は、ここにいる両親に真実を問うことができる。」
僕はフェルの横に立っている両親に目を向けた。2人ともうつむいていて表情がわからない
「まず初めに、ここにいる者たちは君の本当の両親ではない」
「え......はぁっ!?どういう意味だよ!」
「質問は受け付けられないと言ったはずだ、最後まで聞きたまえ。」
「お、おぅ...」
「11年前、君の本当の両親は、とある事件により亡くなった。
それだけならこちら側に預けなくてもよかったのだが、君は少し事情が違った。
その事件に関して箝口令が引かれていると言えば、わかってもらえるだろうか、話すことすら許されない事件に君の両親は巻き込まれ、生まれたばかりの君を遺してこの世を去った。」
理解が追い付かない、今僕は夢の中にいるんじゃないかと考えてしまう
「そして最後に殺されそうになっていた赤子の君を助け犯人を撃退し、縁があったこちら側の家に預けたのが、私の雇い主であり、契約書にかかれている契約主シャルル卿である
この度契約の満了のために、代理人である私が迎えに来た、というわけだ」
こちら側、まるで違う世界があるかのように語るフェルと名乗る男
「簡単に契約内容に関して話しておこう。難しいことはない。
シモンズ・グルダ、シリル・グルダ両名の名において、アラン・クルールをグルダ家の子息として迎え入れ、12歳まで生活をさせること、12歳の誕生日を迎えたらすぐに魔界からの代理人へ引き渡し、門をくぐること。これだけだ」
「なあ、これだけだなんて、簡単に言うけど、それだけの説明で納得して、ついていきますだなんて言うと思ってるのかよ、しかもエルガスって、門ってなんだよ!」
「納得してなかろうが、君を連れて行かねばならないのだよ。それが契約だからだ。こちらの両名もそれで納得したから契約に応じているはずだ」
両親の様子を伺おうと顔を向けたとき、俯いていた両親がお互いの顔を見ながらおもむろに顔を上げた
「さあ、あと1時間猶予を与えよう。何も持っていく必要はないが、どうしても持っていきたいものがあるのなら鞄に入れて準備したまえ。私は外で待っている」
そしてフェルは立ち上がり、何故かため息をつきながら僕の後ろに立ち、肩に手を置いて話始めた
「ここからは門をくぐる前の私の権限を越えた発言となる。聞かなかったことにしてくれたまえ...
はぁ、今からアラン少年が行く場所は、エルガスという、この世界から見ると裏側にある世界だ。
こちら側とは、我々が門と呼んでいるもので繋がっている。
君はそこで偉大な魔術師の夫婦の間に生まれた、特異な目を持って、な」
「は?ま、魔術師?特異な目?その、エルガスってとこは、魔法使いの国か何かなのか?そんな空想みたいな国があるってのかよ」
「ある。ちなみにだが、そこのグルダ夫妻もエルガス出身だよ、魔術を全て封印した上で追放された異端者だがね」
両親は力なく笑っていた。その表情が事実だと語っているようだった。
「ああ、勘違いはしないでくれよアラン少年、私の雇い主からすれば彼らは何も罪を犯していない。
むしろ利益になることをしてくれた礼に、門を開けこちら側に逃がしたのだから」
「ごめんねアラン...でも私達は、あなたに本当の子供のように愛を注いで育てたわ。
迎えなんて来なければいいのにと、何度思ったことか...フェル様も、その節はまことに感謝しております。シャルル様のご厚意により今日まで生きながらえております。」
「アラン少年の保護並びに養育ご苦労であった。
ただ私の力を持ってしても、異端者とされている両名の罪を無くすことはできん。
これからもこちら側での協力者として私も協力は惜しまない。
と、シャルル卿からのお言葉です。私の脚色も入っていますがね。」
「シャルル様は相変わらずのようでございますね...」
見たこともない憂いのある笑みで両親が微笑んでいた。
「さぁさぁ話が逸れてしまってすまないなアラン少年。シャルル卿の話はエルガスに着いてから嫌でもすることになるんだ、今すべきはその話では無い」
すべき話?疑問しかない会話の内容だ、全て問いただしたい気分になる
「僕の本当の両親と魔術と、目の話ですか?見えているものが両親と違うことなんてないと思いますけど」
「うーん、目に関しては夫妻と一緒で、こちら側に来る時に封印してあるからだ。
魔術を封印しないと、門をくぐれないんだ。
それに、君の目はエルガスの中でも特別なんだ、門をくぐってもしばらくは、封印したままだと思う」
「そう、ですか」
「あと、君の本当の両親のことに関しては、エルガスに着いてからかなあ...
私もそこの夫妻も君の両親と面識があった訳ではないんだ。
シャルル卿ならよく知ってるから出会ったら質問するといいよ...すまないね」
「じゃあ魔術について」
「さっき言った通り、門をくぐるために私も魔術を封印している状態だ。
まあ門自体はこちら側からすればこれぞ魔法みたいな感じだと思うし、くぐってしまえば嫌でも見ることになる。
それに説明するとなると、1時間では足りないからね。魔法を実現する力とでも、思っていてくれ」
「アラン、やってみる前から言うのもなんだけれど、あなたは頭がいい子よ、きっと魔術もすぐ上達するわ。」
「うん、そうだね。僕達の自慢の息子だからね」
「そっか、現実なんだね、この話」
まだ信じきれない僕がいる。
夢であれと思う僕がいる。
でも、両親の顔は、今まで見てきた中で1番真剣な顔だった。ついさっきまで俯いて泣きそうだった両親はもういなかった、覚悟を決めた顔をしていた。
「んー、まーた話がそれたんだが、もう少しなんだ、話の続きをしてもいいかい?」
肩に乗っていた手が頭の上に移った
「例え君の本当の両親が偉大だったとしても、育てたのは彼らダリル夫妻だ。
君にとっての両親はこの2人なんだ、記憶が消される訳でもない。
なんなら永遠に会えない訳でもない。
君は、少し長い1人旅に出るような気持ちでいればいいんだ」
そうだ、僕にとっての本当の両親はこの2人しかいないんだ。誰がなんと言おうとも。
例え本当の両親が偉大であったなんて、言われようとも。
フェルの言ったことは一種の諦め、現実逃避なのかもしれない、けれど
「覚悟が決まろうがどうであろうが、君の意志を無視した事柄なんだ、この状況は。
理解が追いつかない、納得がいかない、それで結構。
ただ私は君を無理やりにでも連れていく。
だから君は、自分自身を騙してでも、ついてきて欲しい、自分の意志でだ」
こんな短時間で、人生を左右するかもしれない選択を突きつけられ、うち片方はすでに選べない。
どうせ一択しかないのなら、自分の意志で選んだことにしてしまおう。
これ以上、僕の意志を無視した事柄に振り回されないようになるために。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
執筆はゆっくりとしていきますのでまた目に入りましたら読んでください、よろしくお願いします。