捏造の王国 その41 次期総理の甘い罠?地獄行き宣告に迷いに迷うガース長官
アベノ総理の突然の辞任により、最有力総裁候補となったガース長官。根回し、裏工作、抱き込みも順調に進むものの、何か心にひっかかるものが。その不安をおしひろげるような怪しげな声が聞こえてきて…
災害級の猛暑に見舞われ、新型肺炎ウイルスも一向に衰える兆しをみせないニホン国だったが、9月に入りようやく朝晩秋の風らしきものが吹いてきた。そしてここ官邸でも季節の変わる秋の風が吹こうとしていた。
「はあ、アベノ総理の辞任か。まあ休み取りたいだの、ガワイ夫妻逮捕だのでストレスもたまっていたし、仕方のないことだったが、もうちょっと持つかと思っていたのだが」
ガース長官はため息をつきながら、ぬるい緑茶をすすっていた。
もうやめそうとの情報はつかんでいたものの、後先考えずに決めてしまうアベノ総理のしりぬぐいを最後までやらされ、いや
「ジコウ党総裁、そして次期総理か、それはまあ悪くはないが」
ニホン国総理、つまりトップの座。苦節ウン十年、世襲でもなく、有力な後ろ盾もなく地味に姑息に裏工作に励み、マイティフールと言われる総理のお守りをしながら頑張ったかいがあったと、喜べなくはないが
「まあサンカイさんの推薦もあるし、国会議員の抱き込みも順調だし、ニシニシムラ副長官はじめ、いろいろ頑張ってくれているのだが」
何か引っかかるのだ。小さな棘が刺さったようなかすかな痛みというか違和感がかんじられるのだが
「いや、この機会を逃して世襲でもなく、大言壮語もはけない私が総理になれるわけはない。ここは何がなんでも総裁選出馬、いやもう表明したから後にはひけないのだ!」
と自分で自分を叱咤激励したが
“そううまくいくかねえ”
「そ、その声は奪衣婆!」
去年の春の悪夢以来なにかとつきまとう自称閻魔の使いを兼業している奪衣婆(捏造の王国 その14、その34および、その38をご参照ください)がどこからともなくガース長官に語りかけているのだった。
「くう、ストーカーのごとく付きまとう奴だ!どこだ、どこにいる!」
“ここだよ、ってストーカーじゃないんだけど”
と振り向いてみると、官邸清掃員の制服をきた女性が一人、
「ひいいい、こ、こんな身近に!と、トメさんはどうした、まさか地獄に」
“真面目で実直な人は地獄なんかいかないって。トメさんは有休。孫の新学期が始まるのに両親が忙しいってんでね。私が代理。まあ実はしょっちゅうやってたけど”
「なんだと、こんな怪しげな女に官邸をうろつかせるとは!警備はどうしたんだ!面接は」
“地獄の眷属にそんなもん通用すると思う?だいたいアンタ、ドローン飛ばされたりしてもわかんなかったぐらい警備手薄だし。サイバーセキュリティ大臣がパソコンをロクにつかえないとか、厚労大臣が検疫のイロハも知らないとかさあ、危機管理能力ゼロ以下のくせになにいってんの?”
「くうう、それは、そのだなあ」
“まあ前いや、まだ総理か、アベノ総理が考えなしに適当に任命したからだよねえ。ポスト欲しさの議員さんたち抱き込んだ見返りにさ”
グサッと図星を刺されるが平静を保とうとするガース長官。
「それはそれだが、私が総理となった暁にはだな」
“あ、そのことなんだけど、最終警告にきたんだわさ”
「さ、最終警告?」
“いや、だからさあ、このまま総理になっちゃうと、ご家族が残酷に殺されてえ、アンタも八つ裂きにされるってアレ、あの未来が実現するから、大人しくアベノと田舎にでも帰れって”
「な、なんだとお」
と叫ぶガース長官・
「な、なぜだ、なぜ、私が」
“いや、だから、アベノ総理他のしりぬぐいで”
「え?ま、まさか、このまま次期総理になるということは」
“アベノ路線を引き継ぐって思われてんだよねえ。つまり無駄に長かった政権の失策の後始末を全部アンタがやるってことで”
「それは、その政策のしっぱ…いや弊害の」
“報いをアンタが背負うってこと。弊害どころかほぼ害しかないよねえ”
「そ、そんなアホなバカな。わ、私はニホン国経済そのほかを立て直すべく総理に」
“それはさあアベノ路線の真逆やんないと無理だよねえ。それにさ公文書偽造に、法律無視、国会軽視に、会食でメディア抱き込みに、民主主義崩壊寸前で、国民の皆様瀕死寸前。自殺者だのもいてさあ、実質アンタたちに殺されたようなもんだよねえ。残された奥さんやらお母さんたち、さぞかしアンタらを恨んでいるだろうしねえ”
「それは、その」
“アベノ総理とアンタを含むお取り巻きらの無茶ぶりのせいだよねえ。御用学者だのが蔓延って正当な専門家から実質職や立場をうばってるしねえ。会食とオベッカとコネで地位が確立できるなんて中国とかを笑えないよねえ。しかも隣国より頭悪い連中だし”
「そ、そこまで言われる筋合いはないぞ!なんといおうと長期政権だし!」
“何回もわけわかんない理由で解散して野党の足元すくって、どさくさに紛れて選挙やった結果だよねえ。8年足らずで何回も選挙やってるしさあ。しかも票の重みとか各県バラバラすぎ、って公平じゃないしねえ。ガワイ夫妻なんて事前に金配って取りまとめなんでしょ。あの夫婦も現世で罪を逃れても地獄で金に押しつぶされることになるんだろうけどねえ”
「が、外国のトップも称賛してだな」
“そりゃ、ちょっとおだてりゃ言うこと聞くもんアベノ総理。領土問題中だったはずの2島は事実上返してもらえないし、残りも絶望的。廃棄処分決定のポンコツ武器を高額でわんさか買う約束したうえ、数年にわたる納品遅れに文句も言わない。お願いすればいくらでも支援金は国庫からだしてくれる。こんなチョロイ首相、外国勢は大歓迎でしょうよ。自国の国民はたまったもんじゃないけどさあ”
「いや、それは、わ、私になったら」
“無理無理、貧相スダレ禿って陰口叩かれてんの知ってんでしょうが。第一アベノ総理の後継ってなったら、その路線を大幅転換できんの?利用してきたネトキョクウ芸人やらなにやらきっぱり切り捨てられんの?アベノ取り巻き議員、御用学者に太鼓持ちメディアを断罪できる?”
「そ、それは、私を後押ししてくれたり、その」
“つまり、総理になったら、ぜーんぶ引き受け。今までのツケもね。っていうか、もうほとんどツケだけか”
「そ、そんな!まだニホンには!」
“しゃぶれる利権がそんなに残ってると思う?ウイルス封じ込めに大失敗、経済政策に大失敗のおかげで秋には大不況がくる、国際大運動会なんて夢のまた夢。残るどころか利権に群がる連中自体が利権にあぶれてつぶれるでしょうね。で、国外に”
「そ、そうだ、国際企業だって」
“自国の政府をしゃぶりつくしただけの無能老害トップどもを引き受ける国があると思う?逆にニホンの資本を毟り取られて終わりでしょうよ。あ、ウイルスの被検者にするって手もあるらしいよ。最近地獄にきた亡者どもが噂してたし”
「ニ、ニホンの未来はそんなに暗いのかあ!」
“まあアベノ路線をやればねえ。そして大破綻、大恐慌、大災害で庶民は疲弊しつくし、理性も良識もかなぐりすてて、元凶であるアンタらに大復讐。それを国際社会も後押し、ついでにニホンを分割ってシナリオらしいよ”
「そんなアホな!大国の会議でそんなことは!」
“最強バカトップの国に、打ち明けるわけないじゃん。あんなアホをいただく国民もたかがしれてるから占領したってかまわないだろ、だってアホだし、って感じなんでしょ”
「我々には人権は!主権は!」
“国民の人権をあちこちで踏みにじっといて何を言ってんだが。企業、オッサンども、毒親の人権蹂躙をほぼ放置してた上に、貧困は自己責任で国民を幸福にする義務も放り出しといて。第一国民主権も忘れてるのに、国の主権がどうとかって、どの口が言うかって閻魔様も呆れるでしょうよ”
「わ、私にどうしろと」
“だから、総理をひきうけないか、なってもすぐにジコウ党自体を解答宣言、メイジの党とかとの密約やら今までの裏工作、根回し、偽造文書とか洗いざらい暴露するんだね。引退することと引き換えにすれば国民のお慈悲がえられるかもよ。残りの人生、畑仕事十年以上で、まあ地獄行きでも軽いとこにしてやってもいいという閻魔様のお言葉もあるしさ”
「そ、そんな言葉信じられるか!第一、暗黒の未来だと、まだ決まったわけでは!」
“あっそ、信じないならいいけどさ。私の仕事増やしたくないから、こうしてわざわざ忠告にきたんだけどねえ。しゃーないな。アンタらジコウ党の連中やら財界やら、芸人、学者、便通だのメディア関係者に、ゆ党メイジの党のやつらにネトキョクウに、と。地獄が混むねえ、三密状態、いや山手線の満員電車並みになるんだろうねえ。惨殺された上にそんなとこで何億年過ごしてもいいの?アンタ”
信じるべきか否か?
奪衣婆の問いに愛用の湯飲みを握りしめて逡巡するガース長官であった。
どこぞの国では、トップ辞任で次のトップ決めるのに、ごく一部オッサン談合でやるようですな。彼らを必死で下支えしてきた党員の声も聴かず、老齢の議員の跡継ぎやら利権のためという理由でのトップ決定。相当な禍根を後々に残しそうですねえ。本文のガース長官の最悪未来より悲惨なことになる、かもしれませんね。