皇鎖の死神①
僕は今〖死神〗関連の職業クエストを進めるために、宇宙ステーションから弾かれて最終的にたどり着いた『突き抜けし暗黒世界』にいる。ここは『大地貫く巨空穴』の最下層に溜まっている暗黒水の底にたどり着くと行けるエリア。ただし暗黒水は振れると1秒ごとに最大HPの2割のダメージを受けるために5秒でそこまでたどり着かなければならない。
しかし普通に暗黒水に潜るだけでは絶対にたどり着かず、僕みたいに高高度から一気に落下して底にたどり着くしかない。ただし落下する高さは天空の花園があったくらいの高さでないと到達不能。またWMMPでは落下ダメージもあるため確実にこの高さから落ちると暗黒水の水面にぶつかりグシャとつぶれるので世界樹のダンジョンでとれる素材で作れる『なぎさポーション』(一定時間落下ダメージ無効)が必須。ちなみに暗黒水だが現状あらゆる容器でも回収できず素材としては利用できない。
『突き抜けし暗黒世界』だが出てくる敵はすべてアンデッド系で光属性の攻撃で無いと無限に復活するので、今回連れてきたメンバーはシズク・アーシャ・レイ。さて現在〖死神〗だけど200人ほどのプレイヤーが就職しており、その半数以上が上位職である〖上位死神〗に転職している。転職条件は簡単で〖死神〗の職業レベルを最大まで上げて、惑星ファーストのとある湖にある死神の石像の前に座ると〖死神〗の世界に移動でき、そこで転職できる。
ただ僕が狙ってるのは創造神ライネに教えてもらった一人で『突き抜けし暗黒世界』のどこかにいるナニカを倒すことで転職できる〖死神〗関連のシークレットユニーク職。場所については〖開拓者〗の⦅発見⦆で突き止めているので向かう。
目的の場所は黒い教会の広間。たどり着くと
ピシ ピシ ピシ
いきなり地面がくずれ落下していく。
ピチャ ピチャ
水滴の音が聞こえ目を開ける。どうやらいつの間にか気を失っていたようだ(システム的に説明するとゲームオーバー直後のリスポーン地点)。デスペナもないから死んだわけではないみたい。ログを確認してみると
・災禍渦巻く異界 (さいかうずまくいかい)に到着
・このエリアではリスポーンできず、再度訪れることはできません
・メイン職業が〖死神〗に固定されます
・一部職業・セットスキルが使用できません
・アイテムに制限がかかります
・装備の一部に制限がかかります
急いで現状を確認すると、メイン職業は〖死神〗、サブ職業は使用不可。そのためシズク達は一度拠点に送還。セットスキルの制限は【死神の大鎌】以外の職業スキル、それ以外のスキルは使える。だが【開拓者】の⦅危険察知⦆が使えないので気を付けないと。アイテムについてはHP・MP・状態異常回復・補助系(ダメージ系・デバフ・バフ系以外)のアイテム以外使用禁止。装備は武器が『死神の大鎌Mark3』で固定、それ以外は制限なし。
次はこのエリア『災禍渦巻く異界』について。今わかるのは黒い石でできた洞窟のようなエリアで、何か特殊な効果があるのか【夜目】があったとしても通路の奥まで見ることはできない。
とりあえず移動しよう。今のところ察知系に反応は敵の無いから大丈夫だと思うけど何があるかわからないから慎重に進まないと。ある程度進むが敵の反応もなく何も起こらない。風景も変わらないからイベントが進んでいるのかどうかもわからない。
カン カン カン
前方から何か金属が打ち合う音が聞こえる。その音はこちらに近づいて来て
「⦅シャドウ・エッジ⦆」
スキル名とともにこちらに何かがすごい速さで飛んできて巻き込まれる。飛んできたのは赤い髪をポニーテールにした黒い衣装を来た女性。手には黒と金に輝く大鎌を持っている。
「くっ、一体何とぶつかったの?・・・って人間?なんでここにいるの?それって死神の大鎌じゃない。てことはあなたも死神ね。だったら力を貸して」
「え?どういうこと?」
「それは・・って説明してる暇はないわ。構えて!」
謎の女性の声に従い大鎌を構えるとあたりに黒い靄が現れ大鎌を構えた黒いウエディングドレスを着た透明な女性の幽霊が現れる。
「あの大鎌の一撃には注意して。下級死神の鎌だと受け止められずに真っ二つよ。あなたの攻撃だとダメージは与えられないから私が攻撃するわ。援護をお願い」
謎の女性はそう言い残すとウェディングドレスの幽霊の元に向かう。もうちょっと説明があってもいいんじゃないかな?とりあえず謎の女性の指示に従い戦闘に参加する。ウェディングドレスの幽霊の名前は狂宴の黒花嫁 ラスティー・ヴェール、ランクは8。大鎌をすごい速度で操るだけではなく、黒い魔法弾、ムチ、槍など遠・中・近距離と様々な攻撃を加えてくる。謎の女性の注意通り、大鎌の一撃は振りの速さ・威力とも高く、一度大鎌で受け止めたが軽々と吹き飛ばされ全開からHPが残り1割まで削られた。
「だからいったじゃないですか。でも生き残ったんですね。なら早くHPを回復して復帰してください」
それからは大鎌以外の攻撃を弾いていき謎の女性の援護に周る。だが少しずつ謎の女性の動きは鈍くなっていく。顔を見ると苦しそう。ここは仕切り直しが必要だな。二人の距離が開けた瞬間『錬金製超煙幕玉』を投げ二人の視界を防ぐ。
「!?いったい何を・・ムグ」
もうしゃべらないで欲しいよ。せっかく目隠ししてるんだから。個の煙幕の中では動き・魔力・気配が一時的に遮断される。ただしこの煙の中ではこちらからのあらゆるダメージが与えられない。謎の女性の口を手でふさいだ後、もう一方の手でさらにポーションを投げる。僕が投げたのは『ジェットストリームポーション』。その場に強烈な風を生み出し相手を吹き飛ばす。この風にはダメージがないが吹き飛ばす効果をマシマシに強化するように作ってあり、狂宴の黒花嫁 ラスティー・ヴェールは一瞬で通路の奥に飛ばされる。
「とりあえず、どこかに身を隠そう」
コク
僕と謎の女性は別の方向へと進んでいく。




