惑星開放イベント:デンジャーアイランド⑭砦の支配者バレット:地獄編
「くそ、どうなってるんだ」
「バレット、やばいぞ。もう2階まで浸水してるぞ」
4日目の昼砦の3階に80人ほどのプレイヤーが押しかけている。その理由は先ほどデンジャータイムの通知とともに降ってきた大量の雨が溜まり砦の2階まで浸水しているからだ。この雨だがプレイヤーが当たると毎秒HPとMPに固定1ダメージを与える。さらにこの雨はプレイヤーのみダメージを与えるようで溜まった水の中には悠々と魔物たちが泳いでおりこちらの様子を観察している。
くそ、普通なら水が海に流れるはずだろ?なのに大量の雨とともに周りを囲むように蔓の壁ができてだんだん水が溜まっていきやがる。一体いつまでこの雨は降るんだ?
2,3日目は何も問題なく順調に進んでいた。食料と砲台の弾の素材である鉱石を重点的に集めて地盤を固めてデンジャータイムを乗り切り、4日目に入りそろそろ島の探索を始めるため2パーティー10人を探索班(リスポーンポイントを考えていろいろ指摘してきた第一陣プレイヤー2名・生産職4名・第2陣プレイヤー4名)として送り出した。
「あ、探索班から連絡が来た・・・最悪だ。この雨は当分止まなくてこのエリアは一日水に沈むらしい」
探索班は毒沼エリアの近くの洞窟でこの島の実態が書かれた紙きれを見つけた。つまり
「やっぱり探索に人数を割いた方がよかったんだ。どうするんだよ」
「うるせえ。いまさらそんなこと言っても遅えだろうが」
俺は怒鳴って周囲からの文句を黙らせる。実は探索班に決めたメンバーの他にこの拠点を使っているメンバーの半分近くが島の捜索に人数を割くべきだという意見があったがこの砦の強化ばかり考えていた俺たちは無視していた。
砦3階の雰囲気がぎすぎすしてきたそんな時とうとう恐れていた事態が訪れる。
「3階にも水が浸食してきたぞ。もう外に出て回復しながら今日一日耐えるしかねえ」
3階の階段と園と窓からすごい勢いで水が入ってくる。3階に退避していた俺たちはダメージを受けつつ窓や扉からすぐに砦から脱出する。幸いなことにこのダメージでは詠唱が途切れることがないので回復魔法は発動できる。ただしMPも消費していくのでいつかは限界が来る。もちろんMP回復のセットスキルを持つ者もいるのでこのままなら一日持つかもしれない。ただし雨以外の外部からの影響が何もない時だ。
「うわあ」
一緒に水面に出た一人のプレイヤーが叫び声をあげ水面に引きずり込まれていく。さらに
「きゃあ」
「いやだ」
「たすけ」
次々と犠牲者は増えていく。俺はそれを何もできずに見守っている。そして・・・
遠くの水面から何か巨大な物体が飛び出てくる。あれは巨大な熊。その熊はこちらへ向けて飛び込んでくるとそのまま爪を振り下ろす。その威力は高く俺は一撃でHPをすべて削られる。しかし〖見習い勇者〗のスキルでHPは1残り5秒間無敵時間が訪れる。水中で無敵時間を体感していると様々な場所ですごい速さで動く動物たちがプレイヤー達を倒している。無定時間終了とともに俺の意識は無くなっていく・・・。
次に目を覚ましたのは砦のマスターたち専用のリスポーン地点。もちろん水に沈んでいるのでリスポーンした瞬間ダメージを受ける。さらに部屋の中には魔物がたくさん侵入しており、こちらに気づき一斉に襲ってくる。
俺はリスボーン→即キル→リスポーンを繰り返し
『あなたはHPが全損しました。イベント終了まで待機ルームに送られます。待機ルームでは同じサーバーの様子をみたり、イベント終了まで眠ることもできます。またイベントの進みようによっては待機ルームにいるプレイヤーにも追加のイベントポイントが入ります』
待機ルームに飛ばされた。待機ルームではすでにたくさんのプレイヤーが居て、同サーバーの動画を観たり、今後のイベントの流れを議論したりと完全に観戦モードとなっている。だが俺はすぐにイベント終了まで寝るために操作を続ける。どうせマスター権限のデメリットの効果でどんなことがあってもポイントは0だ。今回はくそイベだな、くそイベ。事前に異常気象の情報があったら砦のマスター権限なんて使わなかったのに。もっとマスター権限を取得するときに注意しろよ。
それに砦が一日使えないんだろ?だったらこれからどんどんプレイヤーが死んで4日目の時点で誰もイベントクリアできずに終了だ。そうなったら全員で運営への批判メール送ってやろう。そうだよ、批判メールだ。ぼろくそに書くために他のプレイヤーの様子でも見るか。どうせあの異常気象で阿鼻叫喚だろう。
現在のサーバーの様子を映しているスクリーンを見てみると
「は?」
高台で雨宿りしているケン達の姿があった。




