ユグドラシルでの死闘⑮分断されたプレイヤー達②
ケンの〖開闢と終焉の錬金術師〗が本領発揮しまさかのイヴィル・アシッド・モス瞬殺。まだとっておきがひとつあるんだけどね
第4エリア ミズホ視点
突如ツルの壁に挟まれた私たちの前に現れたのは全長2mほどの黒い樹の巨人:イヴィル・パーツ・ゴーレム10体。たしか最強の5体とか言っていなかったっけ?まさか嘘?
分断された私たちのメンバーは全員テイマー職のプレイヤー。数ならこっちが圧倒的に有利よ。さあ、行くわよ。
「ミリア、ガトリングで動きを止めて」
「イエス、マスター」
同じギルメンの〖メカニカル・テイマー〗のガウスがミリアちゃんに指示を出すわ。ミリアちゃんは腕をガトリングに切り替えイヴィル・パーツ・ゴーレムの動きを止めます。ミリアちゃんはヒビキちゃんと同類の機会の人形に心が宿った『機械人』。体のパーツを変えることで様々な攻撃ができるわ。
あっちは彼等を中心に戦えば大丈夫そうね。他の所は・・・
「コテツ、受け止めて」
イヴィル・パーツ・ゴーレムと一匹の大きな人型の従魔ががっつり組み合っている。アレは碧シャナの従魔:コテツ。コテツの種族は『鬼人』で近接戦が得意な従魔だ。今は補助魔法をかけてイヴィル・パーツ・ゴーレムの相手をさせてるみたい。
「シルヴィア、⦅マリオネット・ダンス⦆」
さらに別の場所では『ドールテイマー』のクラリネットが西洋人形である従魔のシルヴィアに剣を持たせて戦っているわ。『ドールマスター』は少し特殊で人形を糸で操っているからある程度プレイヤー自体も動けないといけないのよ。クラリネットも最初苦労していたわ。
さらに別の所では『スピリットテイマー』のヴィオラが2体のイヴィル・パーツ・ゴーレムと戦っているわ。イヴィル・パーツ・ゴーレムの一体は青い竜のラピスが腕に噛みつき動きを止め、もう一体はタヌキの茶々が注意をひいている。
「ホムラ、ベル、今よ」
茶々が攻撃を引き受けているイヴィル・パーツ・ゴーレムに向かって火の鳥のホムラが全身から火を噴き出し突進させ、風の妖精のベルが風魔法で生み出した班ママーでラピスが動きを止めているイヴィル・パーツ・ゴーレムに向けて弾き飛ばす。2体のイヴィル・パーツ・ゴーレムはその場で絡まり動きを止める。そこへ他のテイマーたちの従魔が一斉に攻撃を加えていく。
別の場所ではウィンが従魔であるぬいぐるみ達と共に戦っている。彼女はWMMP唯一の『ぬいぐるみマスター』で自作のにぬいぐるみに命を吹き込むことで一緒に戦うことができる。
今も鳥のぬいぐるみであるエクレアが電気で作り出した巨大な爪を作り出しイヴィル・パーツ・ゴーレムに攻撃している。
さて、そろそろ私も参戦しなくっちゃ・・・
あれから少し犠牲もあったけどイヴィル・パーツ・ゴーレムを全員倒したんだけどこれだけじゃ終わらなかったわ。倒されたイヴィル・パーツ・ゴーレムだけど一か所に集まり巨大なゴーレムに合体したの。更に黒いオーラもまとったわ。これからが本番ってわけね。でも
ドカーン
いきなり横の壁が爆破され、そこからケン君達Xチームが現れたわ。
第5エリア
第5エリアの中ボスは蛾の魔物:イヴィル・アシッド・モス。常に飛行しており上空から酸の鱗粉や酸弾を放ち攻撃してくる。酸の攻撃は瞬時に拡がり一定時間ダメージを与える。それだけではなく装備の耐久力をすごい速さで削っていくため、まともに受けると装備が壊れてしまう。
一定ダメージを与えると黒いオーラを纏い4体の分身を生み出す。攻撃方としては新しく酸のビーム、全身に酸の鱗粉を纏って高速で突進してくる近接攻撃。最も厄介なのはこの状態のイヴィル・アシッド・モスはユグドラシエルの国にも直接攻撃してくるため、放置し続けると侵略度が一気に上昇する。
このようにイヴィル・アシッド・モスについて説明した理由だが残念なことにケンの活躍ですぐに倒されるからだ。何が起こったかというと・・・
僕達Xチームの前に巨大な蛾の魔物イヴィル・アシッド・モスが現れる。常に空を飛び続け大変そうだけど、僕の新スキルの実験台になってもらおうかな?
「みんな、10秒後にある魔法陣を呼び出すから、それに向かって攻撃系の威力が高いポーションを投げて」
皆に指示を出した後、『大盤雪結晶』を3本取り出しあるスキルを使い上空へ投げる。
「⦅ディレイ・タイム・スロー⦆」
僕は〖開闢と終焉の錬金術師〗に転職してからいくつかのスキルが進化した。その一つが【上級投擲術】→【投擲術・極】だ。【投擲術・極】になり覚えたスキルに今使った一度に3つのポーションを投げることができるパッシブスキル⦅マルチ・ポーション⦆と投擲後一定時間空中でとどまりその後に敵に向かう⦅ディレイ・タイム・スロー⦆がある。⦅ディレイ・タイム・スロー⦆は敵の意表をつけるが今回は目的が違う。
次に錬金魔法を展開する。〖開闢と終焉の錬金術師〗に転職して2種類の錬金魔法を扱えるようになった。一つは通常の錬金魔法、もう一つはこれから使うゲージを消費して使う【錬金魔法・覇】だ。ゲージは普通の錬金魔法で敵に攻撃することで溜まっていき、すでに雑魚戦で溜まっている。さあ、初お披露目だ。
「⦅極大錬金魔法陣:濃縮⦆」
僕達Xチームの前に巨大な魔法陣が浮かび上がる。これで準備はOK。
「みんな、今だよ」
他のメンバーはすぐに攻撃系のポーションを投げてくれる。さて、あの魔法陣の効果だけど、あの魔法陣を通ったポーションは全て⦅錬金魔法:濃縮⦆の効果を得る。つまりプレイヤーが投げたポーションは全て威力が10倍になっている。
ただ僕自身にもデメリットはあり、使用後一定時間ポーションの威力が半減し、クールタイム中はゲージは増えず、スキルを使用してから一定時間アイテムを投げることができない。つまり普通なら⦅極大錬金魔法陣:濃縮⦆の恩恵を僕は受けないが、さっき使った⦅ディレイ・タイム・スロー⦆の効果が切れ、魔法陣を通りイヴィル・アシッド・モスに直撃する。
「すげえ」
メンバーはその光景に呆然とする。イヴィル・アシッド・モスは強化された様々なポーションの効果を受け、電気や炎・風・水・爆風などのダメージで地面に墜落し消滅した。
『隣のエリアの魔物のHPが一定以下になるまでお待ちください』
「いやー、まさか一撃とは思わなかった。連発はできないけどやばいな、このスキル」
「ケン君、今のは何?」
「僕の新スキルで、援護型の錬金魔法です。ただここまで威力があるとは思わなかったですけど。でもクールタイムがすごく長いのと、いくつかデメリットはあるけど後4回使えるぐらいかな」
「やっぱり普通の錬金術師じゃないのね?」
「それは後でわかりますよ。多分」
まだ〖開闢と終焉の錬金術師〗については伝えてないからな




