開拓者の新装備:ワイヤーショットと転売屋
僕は一度拠点に戻った後、再び『失われし緑の森』改め『エメラルドフォレスト』に向かった。僕以外のメンバーは現在ユグドラシエルを探索中だ。ユグドラシエルも僕しか探索できなかったから、まだまだ未発見な場所がたくさんあるはずだよね。
先ほどアナウンスが流れたからか、エメラルドフォレストにはたくさんプレイヤーが来ていた。さて僕の目的はエメラルドフォレストの奥にあるイベントの回収だ。そのイベントは【開拓者】関連、そう、とうとうキーアイテムの場所が分かったんだ。
僕達は森の奥に入って行きイベントの反応がある場所についた。しかしそこは一面崖がそびえたっているだけだった。うーん、洞窟とか何か目印があると思ったんだけど。僕達はとりあえず周囲に何かないか探すことにした。
そして探す事5分。崖の壁を触っていると突然腕に装備していた『開拓者の腕輪』が光り出し、崖の壁がなくなって洞穴が現れた。おおー、こんなギミックがあったなんて。僕達は慎重に洞窟を進むと
洞窟の行き止まりに円柱の台座があり、宝箱が置かれていた。その宝箱に近づき開けてみると中には緑色の球体が入っていた。するとその球体は突然浮かび開拓者の腕輪にはめ込まれ形が少し変わった。
『後継者君、これは私が残した開拓者の道具の一つワイヤーショットよ。これを使えば今まで移動するのが困難だった場所にも移動できたり、戦闘中には緊急回避にも使うことができるわよ。あとワイヤーショットだけど素材を変えることで強化することができるから、使いやすいようにチューンナップするのもいいかもね』
僕はアイリさんの説明を聞き終わると変化した開拓者の腕輪をよく見てみる。腕輪の一部に緑の球体がはめ込まれ、その個所から特殊な加工が施された矢じりが飛び出ていた。アイリさんが使い方を説明してくれたけど、たしかこの矢じりを飛びつきたい壁や木などのかたい場所に向けて
(発射!)
と心の中で念じるとまっすぐ矢じりが飛び壁に突き刺さる。本来なら収納できないワイヤーの長さだがこの装置の内部は空間魔法で拡大されているので問題なし。さらに
(戻れ)
僕が心の中で戻れと言うと壁に刺さった矢じりへ向かって僕ごとワイヤーが巻き取られて引っ張られていく。そしてある程度の長さでワイヤーは止まり僕は空中でブランブランと揺れている。これはまるでスパイ〇ーマン。僕は壁から矢じりをはずす。すると重量に導かれて自由落下していくが、その間に別の壁に向けてワイヤーショットを発射して少しずつ高度を落としていき地面に着地する。
「すごい道具だね。お兄ちゃん。まるで空中を飛んでいるようだった」
「かっこよかったですよ、兄さん」
「密林やこういう細い穴の中だったら、私の飛行ユニットよりそちらの方が自由が利きそうです、マスター」
「アーシャも蔦を使えば同じようなことができそうなの。これは練習してみるの」
僕の様子を見ていたヒミコたちにそれぞれ感想をもらう、確かにアーシャなら同じようなことができるかも。今度一緒に試してみよう。
このワイヤーショットだが強化のようなものが可能で、矢じりの部分の素材とワイヤーの代わりのひもや糸を変えることで様々な効果が付与されるそうだ。そして開拓者の腕輪自体も強化されていて、効果が全ステータス+3→全ステータス+10に上昇した。だけどまだアクセサリーとしては弱い方だ。全ステータスが上がるアクセサリーの中では中盤ぐらいだが、複数ステータスが上がる装備でももっといい装備(アタック+100,スピード+50やMP+200,マジック+50など)はたくさんある。
とりあえず今回したいことは終わったから今日はログアウトしようかな。
翌日学校から帰り早速『WMMP』にログインしてみるとマリーさんから連絡が来ていた。どうやら何か話があるそうだ。僕はマリーさんがログインしているのを確認すると一人で『インフォ・プロダクト』に向かった。
「マリーさん、こんにちは」
「あら、ケン君来てくれたの。だったら2階で話しましょうか?」
どうやら重要な話のようで僕は2階に案内される。
「そういえばユグドラシエルのクエストは進んでいますか?」
「すごく苦戦しているわね」
「でしょうね」
「討伐対象のモンスターが強すぎて討伐クエストは受けられないし、大体の納品クエストは周辺の森のアイテムを要求するからクリアできない。となると残ってるのが一部の納品クエストとお使い、手伝い関連のクエストだからなかなか招待状のランクが上がらないのよ。よくケン君はランク3まで上げられたわね?」
あはは、僕と全く同じ道を進んでる。僕も最初はそうだった。死にながら森を探索するために必要なスキルをどうにか磨いていって、なんとか簡単な納品クエストならクリアできるようになったんだよな。
「で、話なんだけどゲーム時間で数日前『インフォ・プロダクト』から数人が抜けてギルドを作ったのよ。別にそれに問題はないの。私たちのギルドは抜けるのも入るのもきちんと申請してくれたらよほどのことがない限り自由だから。まあ抜ける場合いくらかの制限はかけるけど」
「そして昨日その抜けた5人が『インフォ・プロダクト』に助けてほしいと泣きついてきたのよ。詳しい話を聞くと『インフォ・プロダクト』から抜けて新しいギルドを立ち上げてから数日後、アイテムを売っている時にいきなり称号を手に入れたんだって。その称号が『転売屋』。称号の内容はNPCの好感度低下、アイテムを売る時3分の1の売却値になって、買う時は3倍の値になるんだって」
「なんてデメリット満載の称号。取得の条件ってわかってるんですか?」
「ええ。それについては後から話すわ。『転売屋』にはまだ効果があって、取得と同時に商業ギルド強制脱退。これまでは称号に書いていたことなんだけど、さらに彼等には不幸が降りかかるの。それは『世界樹の国への招待状』の強制焼却よ。これにより『転売屋』の取得条件が分かったの」
「ユグドラシエルと関係があるんですか?」
「いいえ、『転売屋』の取得条件はNPCのお店で売っているアイテムを他のお店で大量に売って利益を得ることよ。彼らはユグドラシエルで購入したアイテムを『ファースト』で売ってお金を稼いでいたのよ。これで『転売屋の取得条件』と『世界樹の招待状の強制破棄条件』を達成してしまったわけ。彼らは大量のお金を持っているけどユグドラシエルは2度と行けずにこれからゲームをしにくくなるでしょうね」
まさかそんな罠があったなんて。どうやら自分で採取する、自分で加工するなど一部でも自分の手を介すことで取得条件は満たさないらしい。




