ブラコン姉さんは待っていた
『天災』それは人知の及ばぬ出来事。この世界では台風や地震と同様にあることも天災としてあげられる。
それは、『ケモノ』によるものである。ケモノは神出鬼没、人畜無害なものもいれば、人類に危害を与えるものまで様々である。しかし、それらすべてが『天災』として片付けられてしまう。それがこの世界の常識、だった・・・。
「姉さん、姉さん!行かないでよ、ずっと一緒にいるって約束したじゃないか。行かないでよ!」
「君っ!危険だ離れたまえ、彼女は人間ではないんだぞ。君も近くにいたら死んでしまうかもしれない」
「そんなわけあるかっ!姉さんはずっと一緒にいてくれたんだぞっ!姉さんっ」
「龍二・・・」
「姉さん・・・?」
「私待ってるから、ずっと。あなたが向かいに来てくれるのを。だから、必ず向かいに来てね」
「姉さん・・・?」
ガタンッ
心地のいい朝の日差しが差し込む部屋で痛々しい目覚め方をした、井沼 龍二はベットから落ちたときに痛めた腰をさすりながら壁の時計を見上げる。朝5時半これは龍二の平均的な起床時間にはだいぶ早いものだった。しかし、珍しく朝早く目覚めた龍二は時計の下の一枚の写真に微笑みかけた。
「おはよう、姉さん。やっと姉さんを迎えに行けそうだ・・・」
「おはよう、母さん」
「おはよう、龍二」
そう爽やかに挨拶を交わすと龍二はテーブルに準備された朝食に手を付ける。
「母さん、ネクタイどこだっけ?」
「タンスにあるでしょ」
と、普段道理の会話をするのは龍二の父親である。父親は龍二に気づくと「そういえば今日だったな」と言って母さんと目配せして口を開いた。
「「龍二、ガッツだぞ」」
そう言って二人して、タンスのある寝室に向かっていった。子供じゃないんだからいい加減ああいうこと止めてほしいと、常々思っていても言えない龍二であった。
「はー・・・ガッツね」
「行ってきまーす!」
「お弁当持った?ハンカチは?ティッシュは?あとは、定期」
「心配性だな。全部持ったよ」
「龍二・・・」
「何?母さん」
「ガッツよ・・・」
「ああ、ガッツだ!・・・じゃあ行ってきます」
「ここが、国際ケモノ対処課か。・・・でっけーーーーーーーーっ!」
龍二の目の前に建つ白い建物、ところどころに派手な装飾が入れられた白いビル。それは日本に設置された、『ケモノ』に対する対処がゆいつ許された組織「国際ケモノ対処課」の東京支部であった。
「こちらから入隊式会場に行けまーす」
大きなプラバンを肩に抱えて叫ぶ女性のもとに高校生ほどの男女が集まっていく。
「俺もっ!」
そう、意気込み龍二は女性のもとに走り寄っていこうとしたときだった。
「退け、庶民が。この僕の前に立つな」
そう、行ってセンター分けの金髪の少年が龍二の背中を蹴り飛ばした。予想外の衝撃に龍二は顔面から地面に倒れ込んだ。それはもう無残に。普通、物語の主人公というものはここで蹴り飛ばした相手に盾をつくものなのだろうが・・・。
「サーセンしたー」
と、その頭を地面にこすりつけるのであった。
「ふんっ、ものわかりがいいじゃないか、庶民、以後気をつけろよ」
「チッ、なんだよあの金髪うぜ〜」
そう、龍二は言葉を吐き捨てる。その龍二の隣をきれいな黒髪のポニーテールを揺らし通り過ぎる少女がボソリとつぶやいた。
「ダサ・・・」
その一言は、龍二の深層心理に深く付き刺さったのだった。このときの龍二は本当にダサかったと思う。
入隊式会場には18,9才の少年少女がそれぞれの席についていた。龍二も席につくと、後ろから一人の男子が声をかけてきた。
「なな、お前さっき門の前でものすごいコケ方してたやつだよな。あれ最高だったぜ」
とカラカラ笑う男子は馴れ馴れしく龍二の肩を叩いた。龍二は苦笑いでその言葉に返した。
「そりゃどうもっ」
「ま、そんなに怒りなさんなって。あれがあの場での最高の判断だと思うぜ。あの金髪はな、桜倉財閥の御曹司、それはもう大金持ちで逆らうやつは3日以内に死ぬなんて噂もあるぐらい危険なやつなんだぜ」
桜倉財閥それは「日本だけでなく世界をシェアに入れた観光」で一躍有名になった観光会社のトップでその他にもたくさんの事業を世界規模で展開するものすごい大企業である。
「へ〜、あれがあの大財閥のお坊っちゃん。でもあそこの子供って2年前の『天災』で死んだって聞いたけど」
「ありゃ、その弟だよ。奇才と呼ばれた兄には及ばないが、あれもかなり頭が切れるらしいぜ・・・。と、そろそろ始まるみたいだ」
いつの間にか、周りの椅子は全て埋まっていて前方のステージには見るからに偉そうな初老の男性たちが座っていた。その中の一人が立ち上がりステージの真ん中へと歩き出した。中央に立つとマイクに顔を痩せ話し始めた。
「『天災』それは人知の及ばぬものだった。しかし、地震や台風などと違い『ケモノ』は意思を持ち、自らの判断によって多くの命を奪い去っていく。その行動を、仕方ないの一言で終わらせていいのか?いいやならない、命あり、その上で命あるものから命を奪うのならば、我々はかれらにそれ相応の対処をしてもいいはずだ。世間にはケモノは神の意思によって動いているなどとのたまう輩もいると聞く、ならば我々は神に正当防衛券を抗ししようではないか。この星は、命は我々のものだ何人たりとも奪わせてはならないのだ!・・・新入隊員の皆もこのことを心に留めていてほしい」
初老の男たちはそのスピーチに拍手し歓喜していた。
入隊式も無事に終ったが、息をつく日間もなく入団の選別試験とやらの準備が始まった。いきなりのことで龍二は戸惑ったが、その他の入隊者は驚きもせづ支持に従っていた。
「はい、はーい。ここに並んでくださいねー。適正武器の検査をしますのでそれぞれこの機械に手をかざしていってくださーい」
適正武器、とは一体何なのか知らず列に並ぶ龍二の前がざわついた。
「適性は・・・双剣ですね。2番格納庫へどうぞ」
『双剣』そう言われたのは、金髪のお坊っちゃんだった。
「双剣てすごいものなのか?」
と、龍二は後ろにいるさっき知り合ったばかりの少年に聞いた。
「まぁ、珍しい適正ではあるよな、双剣の他には二丁拳銃なんかも珍しらしいな・・・」
『『二丁拳銃だとよ、双剣といい、二丁拳銃なんて珍しいな』』
そんな会話が龍二の耳に入ってきた。二丁拳銃という適正を出したやつはどんなやつなのかと思い列から覗いて見ると・・・、今朝の辛口ポニーガールがそこには立っていた。どうやら龍二はイレギュラーなやつとエンカウントしやすい体質らしい。
「そういや、お前の名前聞いてなかったな。俺は高峰、高峰 神田だよろしくな、え〜とっ」
「龍二だ、井沼 龍二。よろしくな神田」
「ああ」
自己紹介もつかの間、龍二の番が着た。
「手をこの上にかざしてください」
受付の女性は、きれいな黒髪ロングにメガネといういかにもな事務員の格好でかっこよく思えた。
「・・・出ました。『パイルバンカー』ですね」
「ぱ・い・る・ば・ん・か・あ・・・?」
「はい、パイルバンカーです。六番格納庫へどうぞ〜」
パイルバンカー、全く聞き慣れない単語に同様を隠せないでいると、後ろがざわついた。振り向くとそこには神田が立っていた。
「どうだった?」
龍二は恐る恐る結果を神田に聞いた。そうすると神田はニヤニヤしながら口を開いた
「ツインアックス」
また聞き慣れない単語だ。神田は「お前は」と聞いてくるが龍二は今言われた適正の武器名も忘れてしまったため言葉を濁すしかなかったのだった。
「六番格納庫、六番格納庫・・・あった・・・き、きたな」
龍二の前にはホコリをかぶり蜘蛛の巣がかかったどう見ても数年は開けられてなさそうな倉庫の前に立っていた。ここが今からお世話になる武器との出会いの場とは思いたくないが、六番格納庫と書かれているのだから仕方がない。龍二はため息を一つ付き錆びついた扉を押し開けた。
・・・懐かしい、昔どこかで感じた安らぎが龍二の心を覆い尽くした。龍二にはそれが何なのか、この安らぎをどこで感じたのか、すぐに思い出した。
歩幅は徐々に大きくなり最後には走り出していた。初めて入るはずの汚い倉庫の中を迷わずに突っ切る。
龍二は、息を整え言った。
「やっと見つけた。遅くなってごめん。・・・姉さん」
そう龍二が言った瞬間、周りの風景が汚い倉庫からきれいな草原へと変わった。龍二の前ではきれいな、青髪を揺らす女性。彼女は振り返ると、目に涙をにじませながら口を開いた。
「やっと迎えに来てくれた・・・ずっと待ってたんだからね私」
「ごめん、遅くなって。・・・でも今度はしっかり約束守るから。ずっと一緒だよ姉さん」
「・・・うん。ありがとう」