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6 ヒロイック

僕は急いでこのスペルを解くスキルを探した。


頭の中で該当スキルを探していく。


「ぐっ!?」


「まずは腕からいくぜぇ?」


腕をざっくり切られた。血がドクドクと止まらない。

早く、早くなんとかしなくては。


「肋骨いっとくか!」


男の拳が肋骨をへし折った。

呼吸ができなくなり、息が掠れる。


……これだ!


スキル発動 呪文解除レベル1 回復


パァン! と鎖が弾け飛び同時に傷がふさがっていく。

しかし完全には治らないようで痛みがズキズキと体を蝕んでいった。


「女神のやつ……何が大概のことはなんとかなるだ……」


「チッ! アンチスペルなんか使えんのかこいつ! だが死にかけだ! やっちまえ!」


スキル発動 弾丸 照準


指先から出た水が圧縮され高速で打ち出される。


「ウォーターカッターだ」


「っ!? ぐああああああああああ!」


男の目にカッターが直撃し悶え苦しむ。


「適正レベルが低くても使い方次第ってことか。他にもいろいろできそうだね」


もうひとりが短剣を振りかざし襲ってくる。


「くそがあああ!」


「スペル発動 呪縛」


これが全属性の適正があるってことか。

一度見た呪文はすべて使える。

出たのはたった一本の鎖。しかしその鎖に足を取られて男は転倒した。


スキル発動 剛力


「寝てろ」


倒れた男の腹を殴り飛ばす。


男は血を吐き出しぐったりしていた。


「はぁはぁ……」


急げ、まだ終わっていない。お嬢様を助けなければ。


────────────────────────────────


スキル発動 鷹の目 疾走 跳躍 回復


空中から見るとやはり男の仲間が一人馬車を追っていた。


走るたびに痛めつけられた場所が軋む。

回復のスキルが間に合っていないのだ。


「くそ、もっと便利なスキルにしとけよ……!」


走る、走る、走る。


男の短剣が行者さんを狙おうとしたその瞬間


「スペル発動 呪縛!」


馬の脚を呪縛で縛り転倒させる。

しかし男はその瞬間馬の背中から飛び降り難なくやり過ごした。


「ほー。お前がここに来るってことはあいつらを倒してきたってことか。やるねぇ」


「馬はもういない、お前がお嬢様に追いつくことはない」


「ま、そうだね」


スラッとした男は飄々とした態度で答える。


僕は警戒態勢をとかず男と対峙する。

しかし男はニヤッと笑って。


「やーめたっ」


なんだと……?


「これ以上は割に合わねぇわ。もう勝算もないし時間の無駄無駄」


「…………」


スキル発動 心理分析


男からは殺意も何も感じなかった。本当に諦めている。


「僕はあんたが諦めるならもう追わないし、興味もない」


「あ、よかった。正義の味方ってわけじゃなくて。俺も手下のことは忘れるよん」


男はパンッと手を叩いた。


「じゃ、これで終わりってことで。バイバーイ」


そう言うと男はどこかへ歩いていった。

僕は男が見えなくなるのを確認し、バタッと倒れた。


ピンポンパンポーン。


(雨森君お疲れ様ー。今回のはなかなかヒロイックじゃないさー)


「このクソ女神。どういうことだ死にかけたぞ。大概のことはなんとかなるんじゃなかったのか」


(私そんなこと言ってませーん。大概のことはなんとか『できる』って言いましたー

 つまり全部は雨森君次第ってわけよ)


「最悪だな……」


(でも雨森君もこの短期間でだいぶ変わったんじゃない? 

 ちょっと前の雨森君なら命なんてかけずにとっとと逃げ出してたでしょ?)


「む……」


確かに僕はそういう人間だった。

短い間とはいえお嬢様たちと暮らすうちに情でも湧いたのだろうか。


(まぁせっかくの第二の人生だし後悔せずに生きてよ。それでこそ転生させたかいがあるってもんだし)


そうして女神の声は遠ざかっていく。


「はぁ……なんとも世知辛い人生だね」


僕は意識を失った。


────────────────────────────────────────────

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