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4 魔法適性検査

「今日は休みだ」


アステラさんからの一言。

念願の休みがやってきた。土木作業と夜警を六日続けて普通だったら死んでたと思う。

疲労回復スキル万歳。


「本来は給料日ではないのだがお前には金がないからな。街にでも行って気を休めるといい」


革袋に銅貨と銀貨がじゃらじゃらと。あれ、結構支払いいいのかこの仕事。


でもすんません今日は寝たいっす。

スキルのおかげで持ってるとはいえ精神的にかなりギリっす。


「リョウジ様、今日はお休みですのね?」


あふぅ、なんかやな予感。


「その、私と街にでかけません? リョウジ様とだったらアステラの警護もいらないでしょうし」


全国のお父様方。これが家族サービスというものなのですね。

お疲れの中本当にご苦労さまです。僕もその領域に足を踏み入れます。


「ああ、リョウジなら安心だ。行ってくるといい」


アステラさんクスクス笑ってる。

許さん。後であの乳をガン見してやる。もちろん気づかれないところから。


─────────────────────────────────────────


──馬車の中──


「リョウジ様は食べ物は何が好きなんですか?」


「んー寿司ですかね」


「スシ……? 聞いたことがありませんね……」


こっちじゃまだ生魚を食べる文化がないのかな。


「僻地の郷土料理ですよ。一般的なのだとやっぱりステーキかな」


「ステーキ! 私もとても好きです!」


おそらく僕が思っているステーキとお嬢様が思っているステーキにはサイズも柔らかさにもずいぶんな差があることだろう。


「では街ではステーキを……」


「いや、もっと庶民的なものを食べましょう」


お嬢様のステーキの値段に僕の財布が追いつくはずがない。

おごってもらってもそれはそれで男としてのプライドが許せない。


……馬車が揺れる。しまった眠くなってきた。しかしお嬢様のまえで眠るわけには……


……すんません寝ます……





「んはっ!?」


しまった眠ってしまった。しかし妙に頭が温かい。

これは……


「あら、起きましたのね」


僕ヘッド・オン・お嬢様膝枕。


「ぬはぁん!」


飛び起きた。いやそのままでいたかったけど反射的に起きてしまった。


「うふふ。寝顔が可愛かったものでつい……」


うーん、外見からは想像できない母性……僕もうロリコンでいいかも。

っと、いかんいかん。相手は僕の雇い主だ。


というかなぜこの子はこんなに僕になついているんだろう。

わからん。


「お嬢様。着きましたよ」


行者さんが小窓から顔を出す。


僕らは街へとやってきた。


────────────────────────────────────


「リョウジ様は何がしたいですか?」


寝たいです。そんなこと言ったらアステラさんに後で殺される。


「うーん。特に思いつかないですね」


そういえば当面の目的が金と宿と体力だったせいかもう目標を達成してしまった。

強いて言えば本か。魔法の勉強をしてみたい。


「お嬢様って魔法は使えます?」


「ええ、回復の魔法を少々」


なるほどイメージ通りだ。


「僕も魔法って使えるようになれますかね?」


ギルドの登録では魔法適正ゼロと書いてしまったが、せっかくのファンタジー世界だ。

使えるのなら使ってみたい。


「適正が必要ですけど、使えないということはないと思いますよ。

 魔法具屋に行って適正を見てもらいましょうか」


お嬢様が僕の手を引く。


「こっちです。こっち!」


温かい手。僕も握り返すとお嬢様はビクッとして僕に微笑んだ。


────────────────────────────────────


──魔法具屋──


「いらっしゃい」


おとぎ話に出てきそうな魔女のおばさんがカウンターに立っている。


「あの、魔法適正検査薬がほしいんですけど……」


「千ルーグ」


「それくらいなら僕が出すよ」


銅貨を一枚カウンターに置く。

なぜかお嬢様は不機嫌そうだが、僕は検査薬を持って試験室という場所に移動した。


「ここはいろいろ魔法具を試すのに使う部屋なんです。大抵の魔法具屋にはあるんですよ

 えっと、それで検査薬の使い方なんですけど……」


黒い粉を親指と人差し指につけてこする。そうすると火が出てその色で適正がわかるらしい。

ではやってみよう。


ボッ、と指先から薄赤色の火が出る。


「これは……火属性の適正ですね。でも色が薄いかも……」


お嬢様が見入っていると火の色が薄青色に変わっていく。


「あっ! リョウジ様水属性にも適正がありますよ!」


みていると色はどんどん変わっていく。


「あわわわ……こ、これは……もしかして……」


そして薄白色の炎に変わるとフッと消えた。


「リョウジ様すごいですよ! 全属性に適正があるなんて貴重中の貴重です!」


「ってことは僕はなんでも魔法が使えるってことですか?」


「そうです! でも炎の色が薄いのが気になりますね……そうだ! 店長さーん」


トテトテとカウンターに向かって何かを買うお嬢様。


「魔法具の火の指輪です! これを使うと火が出せるんですよ!」


面白そうだ。やってみよう。

指輪をはめて念じる。


「指輪に魔力をためて解き放つイメージです!」


「うーん……はっ!」


しゅぼっ


…………なんだこれは。

指輪からはライターの火程度の炎がチロチロと上がっていた。


「え……ま、まさか。こ、今度は水の指輪です!」


嫌な予感がした。

そのとおりだった。


発動した水の指輪からはちょろちょろと蛇口を捻った程度の水が流れていった。


そこに魔女のおばさんがぬっと顔を出す。


「あんた全属性に適正があるっていっても適正レベルが低すぎさねぇ」


「それはつまり……」


「無用の長物ってことだよ。ひーっひっひっひ」


…………マジでか。


────────────────────────────────────


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