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3 屋敷での生活

──屋敷──


「今、新しい屋敷の基礎工事をやっている。貴様はそれを手伝ってもらう」


アステラさんが作業着一式を僕に渡す。


「そして夜は夜警だ。不審者がいないか警戒してもらう」


「それって寝る時間は……」


「うまく作れ」


あらいやだブラック屋敷。


──────────────────────────────────────────

「おい新人! 木材もってこい!」


「うーっす!」


そうして僕は土木関係の仕事をしていた。汗が気持ちいい。


「しかしおめぇ働くな。そんなにお嬢様のことが気に入ったかい!」


棟梁が暑苦しいスマイルで話しかけてくる。

実際にはスキル疲労回復でひたすら回復しながら働いているのだが。

役に立っているのだし多少のズルはいいだろう。


「お嬢様に拾われた身ですからね。それとここで働いていると力も体力も付きますし」


スキルの選択というタイムラグがある以上基礎能力の向上は急務だった。

あって困らぬ金と健康。


「ほおー、言うじゃねぇか。ならガンガン仕事振ってやる!」


「合点承知」


────────────────────────────────────────────


そして夜。


眠気をスキルで消し飛ばし屋敷内をチェックする。

もちろん作業着から室内用の正装にお着替え済みだ。


「しかし、防護の魔法陣とやらを敷いてるのに入ってこれるやつなんているのかね」


そう思うと屋敷の窓の外からなにか聞こえてきた。

マジか。夜警一日目で来るか。


にゃー。


……猫かよ。どっから紛れ込んできたんだ。


「きゃあああああああああああああああああああ!!!!」


突然お嬢様の叫び声。


僕は疾走を使いお嬢様の部屋まで走っていく。


「お嬢様!」


「リョウジ様!」


お嬢様が抱きついてくる。


「ゆ、幽霊が出ました! 窓の外に!」


何を言っているんだお嬢様は。

僕は幽霊否定派なのだがこのファンタジー世界ではいるのだろうか?


「どうした!」


お嬢様の叫び声を聞いてアステラさん含む警邏の人達が集まってくる。

僕は急いでお嬢様を剥がし、佇まいを整える。

お嬢様の話を伝えると、念の為外回りをしようという話になった。


「お前もついてこいリョウジ」


アステラさんについていこうとしたとき

僕の服をお嬢様が掴んでいた。


「あ、あのリョウジ様はここにいてくれませんか……その……怖くて」


「お嬢様。リョウジは私とともに警邏に回ります。どうしてもというのなら他のものを回しますが」


「……じゃあいいです」


ぷいっとお嬢様はそっぽを向く。

うむ、かわいい。


「はぁ……行くぞリョウジ」



────────────────────────────────────────────────


僕らは正門辺りを調べていた。


「リョウジ、お前はなぜ働こうと思った?」


唐突にアステラさんからの質問。


「んーいくつか理由はありますけど一番は金ですかね。これがないと世の中生きていけませんから」


「しかしお嬢様はお前を客として迎えるつもりだった。ならば働く必要はなかったのでは?」


「そういうの嫌なんですよ。できるだけ自立したいので」


「宿代と食事代をたかった男が何を言う」


笑われた。


「あ、バレました? まぁいろいろ試すのに働きながら金もらうのが一番効率良かっただけです」


「自己中心的な男なのだなお前は」


「アステラさんは? お金目的って感じはしないですけど」


「いや……私はこういう仕事しかできなかっただけだよ。お金が目的なことには変わりないさ」


正門を押して開いていないことを確認し、アステラさんは屋敷へと戻った。


「ちょっと意外だったかな……」


僕はてっきりお嬢様のために、と返されると思っていた。

アステラさんにもなにか思うところがあるのだろう。

僕が踏み込んでいい領域じゃない。


そして、夜が終わった。


────────────────────────────────────────────


「新入りぃ、昨日嬢ちゃんとよろしくやったらしいじゃねぇか」


ニヤニヤながら現場のみんなが僕を見る。

どんな情報が伝わってるんだ。


「僕はただお嬢様の叫び声を聞いて部屋に行っただけですよ」


「そんで抱きつかれたんだろ? いやぁ若いのはいいねぇ」


僕は淡々と資材を運ぶことにした。これ以上付き合うと状況が悪化するだけと見た。


しかし、疲労回復スキルの恩恵は大きい。昨日散々資材を運んだにもかかわらず筋肉痛が起こっていない。

どころか昨日より運ぶのが楽になっている。これは超回復も疲労回復スキルの一環なのかもしれない。


僕はさらなる向上を目指して土木作業に従事するのであった。


─────────────────────────────────────────────

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