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2 当面の生活

さて、野盗の一件が終わったあとに鷹の目で探し出した町へとやってきた。


「しかし異世界転生ってのはどうしてこう中世西洋風なのかね」


まぁテンプレートに従ってくれたほうが僕としてはやりやすい。

まずはギルドでも探すか。多分あるだろ。


「文字と言葉はオートで翻訳されるのか。パッシブスキルは助かるなぁ」


町の雑談に耳を傾けたが日本語として聞こえる。

文字も形は理解出来ないが日本語として意味が伝わってくる。


「これは翻訳業でもやれば……と思ったけど文字がかけないからダメか」


町を適当に歩いていると酒場兼ギルドを見つけた。

おっと、なにがあってもいいように予めスキルを発動しとくか。


スキル発動 反射神経 精神安定


扉を開けるといろいろな種類の人がいた。

筋肉質の戦士、杖を持った魔法使い、軽快な装備の……忍者、かな?

ともかく僕はギルドの受付を探した。


「いらっしゃいませ。初めて見える方ですね。

 お食事でしょうか、ギルドの登録でしょうか」


給仕の女の子が笑顔で接してくれる。

僕はギルドの登録をお願いしますというと受付まで案内してくれた。


「はいどーもー。ギルドフォードスターへようこそー」


気怠げなお姉さんに出迎えられた。


「ん、そこの用紙に必須事項を書いて提出してねー」


えーっと、名前と……魔法適正? そんなもんしるか。ゼロだゼロ。

あとは得意な武器……武術にしとこう。戦闘経験……野盗と戦ったから一っと。


「えーっとアマモリリョウジ君。ランクは下の下の初心者だねー

 んじゃこれからがんばってー」


すげぇ、審査とかなしで通るんだ。

ギルドに集まる人なんて脛に傷を持った人なんていくらでもいるだろうし、依頼さえ達成できればいいってスタンスなのかもな・


さて、ギルド登録は終わったし、次は宿と金策だな。


─────────────────────────────────────────


金かーどこに言っても金は必要だよなー。

初心者の僕向けの仕事がそうそう都合よく入るわけないし、当面の金と宿の確保は必要だよな。


そんなことを思いつつ宿の前へとたどり着く。値段だけでも聞いとくか。


「いらっしゃい」


愛想のないおっさんに出迎えられた。できればお姉さんが良かったものだが。

僕は壁に掲げてある料金表に目を通す。

一泊五千ルーグ……たしか街で見たりんご1個が百ルーグだったから日本円で五千円ってことでいいんだろうか。


五千円+食事代、はてどうやって工面したものか。


僕が悩んでいると宿の奥から二人の女の子が出てきた。


「お嬢様、安易な行動はおやめください。先程のような輩にまた出会ったら……」


「そう思うならアステラが私を守ればいいのです。野盗なんかに苦戦して逃げ出すなんて……」


先程の女の子二人だ。

よし、金持ってそうだしさっきのことを恩に着せて集ろう。


「や、どうも」


「あ、あなたは……」


「いやぁ、まさか助けて逃げ出されるとは思いませんでしたよ」


相手に罪悪感を植え付ける。


「そ、それは……」


お嬢様といった雰囲気の子が動揺する。


「仕方がなかったのだ! 万が一にもお嬢様を傷つけるわけには行かず……」


「つまり僕は犠牲になっても良かったわけだ」


「ごめんなさい…」


謝ったな。よーしこれでこっちのもんだ。


「まぁ僕も鬼じゃありませんし? 感謝の気持ちってもんを見せてもらいたいもんですなぁ」


「あ、ありがとうございます……」


「おいおいおい、ガキじゃあるまいしありがとうの一言で済まされたらたまったもんじゃありませんよ」


くっころ系お姉さんが前に出てくる。


「金か。浅ましい奴め……」


「なんとでも。命の値にしちゃ安いもんでしょ」


「いくらだ。法外な値は受け付けんぞ」


「っしゃあ! 今日の宿代と食事代オナシャス!」


ここでジャパニーズ土下座発動。相手は言うことを聞く!


「……は?」


─────────────────────────────────────────────


「ごちそうさまでした」


人の金で食う飯はうまい。それはどこの世界でも同じだ。


「なんというか……変な人なのですねリョウジ様は。命の代償がお宿とお食事なんて」


クスクスと笑うお嬢様。名前をレフィーリアと名乗った。


ブロンドの長髪に一見して庶民のものとは違うひらひらのくっついた服。

年の頃は十代前半だろうか。

その割に礼儀正しい佇まいからして上級階級の人だとわかる。


「お嬢様、私はこやつを気に入りません。人の弱みに付け込み金の無心など……」


くっころ系お姉さんはアステラさん。

真紅の長髪をポニーテールでまとめ鋭い目つきをしている。

そしてなによりもでかい。驚くほどでかい。軽甲冑からはみ出ている。

でも目がいったら殺されそうだから見れない。残念。


「しかし……どうにか金を稼がないとなぁ。今日は二人に甘えちゃったけど」


「ギルドには登録しているのだろう。仕事を探せ」


「つっても初心者の初心者にそうそう仕事は来ないのですよ」


「まぁ、それなら私のお家にきてはどうでしょうか」


ピンと僕のセンサーが反応した。金の匂いがする。


「ぜひ。掃除でもなんでも雑用全般すべて受け付けますお嬢様」


「お嬢様! 私は反対です! このような素性も知れないものを!」


「アステラ、リョウジ様は私達を救ってくれたのですよ。お客様としておもてなししてもいいくらいです」


「いえ、お嬢様。私めには雑事をお任せいただければ十分にございます」


宿と金の問題がいっぺんに解決する。

こんな美味しい話逃してたまるものか。


「くっ……妙な真似をしたら切り捨てるからな!」


そして僕は雑用係としてレフィーリア嬢の屋敷に仕えることとなった。



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