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1 世知辛い異世界転生

「死んじゃったねぇ、雨森涼次君」


「そうですねぇ」


プカプカと空を浮かびながら神様と談笑する僕。

ある日突然目が覚めたら死んでいた。


ほんわか系の女神様だからか死んでも癒やされてしまう。


「とりあえず転生する?」


「転生?」


「まぁわかりやすく言うとね、この世界で報われずに死んだ君のためにもう一度人生やり直させてあげるってことよ」


「え、割と報われずに死んだ人っていそうなんすけど」


「なんていうかきまぐれ?」


えぇ……


「でもなぁ、僕転生とかノーサンキューな人なんですよ。だってまた死んで頭からやり直しても同じことの繰り返しでしょ

 このままあの世にレッツゴーとかできないんですか?」


「絶対ダメだ。私のミスが天界にバレる」


あっ、この神様クズだわ。


「大丈夫よ。転生するにしてもあなたの世界じゃないし別世界に転生させてあげるから」


「拒否権は?」


「ない。転生しろ」


肩をギュッと掴まれ目で殺されるほどの勢いで迫ってくる女神様。

それでも笑顔と口調が変わらないところがまた恐ろしい。


「おまけで大概のことがあってもなんとかできるスキルをあげるから

 のーんびり第二の人生送ってよ」


というと女神は巨大なハンマーを振りかざす。


「じゃ、いってらっしゃ~い」


「ちょっ……」


「死ねオラァ!」


ゴギャッという音とともに僕の意識はなくなっていった。



───────────────────────────────────


「んー原っぱ!」


一面の草原だった。

道はあるものの近くに町は見当たらずどこに行っていいかわからない状態だった。


「そういや神様が大概のことができるって言ってたな」


頭の中で使えそうなスキルをイメージする。

『鷹の目』かこれなら使えるかな。


スキル発動 鷹の目


目をつぶると空からの視点に切り替わった。

なるほどこれは魔法によるドローン撮影みたいなものか。


空撮していると何やらもめている一団を発見した。

片方は女の子二人、もう片方はいかにも野盗といったガラの悪い連中だった。


「よし、見なかったことにしよう」


面倒事はゴメンだ。意識を街探しに戻そうとすると目潰しを食らったような痛みが走った。


「ぎゃあああああああ!」


痛みにのたうち回っていると頭の中から変な音と女神の声が聞こえた。


ピンポンパンポーン!


(雨森君、転生者がそんなことではいかんですよ。助けてあげなさい。イッツアヒーローウェイ)


のんびり第二の人生を送れといった割には監視付きなのかよ。

渋々僕は一団のところに行けそうなスキルを探した。


「んー瞬間移動は……ないのか。じゃあ飛行……もだめとな」


以外に縛り多いぞ。スキル。

そんな感じでスキルを探していると疾走スキルを発見した。


「足が馬並みに早くなって疲れなくなるスキルか、じゃ早速」


スキル発動 疾走


鷹の目を発動しながら疾走で一団のもとへと走っていく。

これ間に合うのかな、間に合わずになんかあっても僕のせいじゃないよな。


────────────────────────────────────


「くっ、この下郎共! 立ち去らぬか!」


「だから言ってんじゃねぇかよ。そのきれいな服と剣をよこしたら見逃してやるってよぉ」


なんかテンプレのようなやり取りが聞こえてくる。

はい、到着っと。


「どうもこんにちは」


「な、なんだてめぇ! どっから出てきた」


「ねぇそこのくっころ系お姉さん。とりあえず僕の都合で助けます」


「く、くっころ?」


お姉さんが困惑していると野盗が叫びだす。


「かまわねぇやっちまえ!」


やれやれこっちには万能のスキルがへぶしっ!


右頬に強烈なパンチを食らった。

その後も野盗の集団リンチでボコボコにされて、僕はボロ雑巾のようになっていた。


「ひゃははは! なんだこいつめっちゃよええぞ!」


うん、まぁそりゃそうだよね。僕は前世で喧嘩なんてしたことないしこうなるよね。


ピンポンパンポーン!


(雨森君調子に乗ってはだめですよ。基本あなたはどこにでもいる無個性の学生なのですから。

 こういう場合とっととスキルを探して発動するのがあなたがこの世界で生きる道なのです)


他人事だと思って上からものを言う女神。

ぐぬぬいいだろう、まだ生きてるのが幸いだ。

スキルとやらを存分に使ってやろうじゃないか。


スキル連続発動 回復 剛力 反射神経 精神安定


僕はすっと立ち上がり野盗の一人を全力で殴り飛ばす。

野盗は倒れ込み意識を失った。


「な……」


「ふぅ……スキルっていってもタイムラグがあるのが難点か。僕自身も鍛えなくちゃこの世界では生きていけそうにないなぁ」


「調子に乗んなオラァ!」


野盗がナイフを持って集団で襲いかかってくる。

普通ならナイフにビビるところだが、精神安定スキルのおかげで相手の動きをよく見れた。


突きを躱して、剛力での膝蹴り。一撃で野盗は崩れ落ちる。


「なんなんだこの野郎急に強くなりやがった……! くそっ! 撤退だ!」


仲間を担いで退散する野盗。なるほど仲間意識はあったのか。


「さてと、お二人さんこれでもう大丈夫ですよ……ってあれ」


いない。

きれいさっぱりいなくなっている。

ああ、僕が戦っている間に逃げたのか。実に合理的だ。


「ま。感謝されたくてやったわけじゃないしね」


いやそれでも、


「うーん。世知辛いですなぁ」


世の中の理不尽さを痛感する異世界転生だった。

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