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英雄とスライム  作者: ソマリ
魔王編
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2章 第18話R 望郷

 レイアスたちのパーティー名が『紅の探索者』と決まったあと、レイアス・エリーシア・サラの三人で報酬とパーティー資金の分配を行い、五人で話し合った結果一人につき金貨八十枚を出し合ってパーティー資金を金貨四百枚とする。

 一行はそのパーティー資金でまず都市外壁近くに家を借りて『紅の探索者』の拠点とし、五人で寝泊りをするようになる。これはオーウェンとシンディが宿屋暮らしであったため、いっそ家を借りたほうが安上がりだということになったためである。安い宿なら大部屋で一泊銀貨四枚だが荷物を置いておくなどという無用心な真似はできず、長期間借りても良いような個室の宿になると一泊金貨一枚前後となる。都市防壁に近い家なら月に金貨三十~五十枚ほどであるため、一人で借りるのならともかく宿を使うより相当安上がりなのである。

 さらにパーティー資金の中から金貨二百八十枚を出して『紅の探索者』専用の竜車を購入する。使用しない時は都市防壁近くの竜舎に預けることができ、その費用は月に金貨十枚となっている。なお、基本的に都市内部は竜車に使われる地竜の乗り入れは禁止されている。

 ゆっくり歩くことが苦手な地竜で人の多い場所を走ることが危険であることと、都市内部では馬車が主流であることがその理由である。もし安全が確保された上であっても、馬の落とし物がそこかしこにある道を、地竜が体を大きく左右に振りながら高速で地面を這い進むとどうなるか、想像に難くないであろう。そのため都市の竜舎側には馬房も建てられており、竜車の所有者はそこで馬を借り籠を載せ替えて都市内を馬車で移動するのが一般的であった。


 オーウェンへの冒険者入門指南と冒険者ギルドが公開した資料の閲覧であっという間に一ヶ月が過ぎると、今度は竜車を使って一泊の範囲内での魔獣狩りを行い連携を確かめながら、熊や体長1メートルを超える大蜘蛛などの、高額買取かつ強敵の部類に入る魔物を狙って狩りを行う。

 オーウェンは魔術こそ使えないが剣と盾の扱いはレイアスを僅かに上回っていたため、レイアスと共に二枚盾として敵の注意を引く前衛の要として働くようになる。またシンディはほとんど怪我人の出ないパーティーであるため支援魔術も使う余裕ができ、エリーシア・サラと共に攻撃の要として働く。

 レイアスはこの頃から一人でいる時間がほぼ無くなり、英雄としてレイアスに語りかける事は少なくなっていたが、一緒にいる時間が増えたエリーシアとサラには何度か独り言を話す姿が目撃されていた。



 竜車の扱いにも全員が慣れた八月、クーリオンから東に半月移動した先にある沼地側の村から、家畜を襲う大蛇退治の依頼を受けて『紅の探索者』は東へと竜車を走らせる。もうすぐ村に着くという頃、御者をしていたレイアスが沼地に見覚えのある物を発見し竜車から降りると沼地へと近付いていく。


「どうしたレイ、何かあったのか?」

「ん? あ、ああ……この草がちょっと気になってな……」


 竜車の籠からまずオーウェンが出てきてレイアスに声をかけ、次いで出てきたエリーシア・サラ・シンディはレイアスが気にかけている沼地の植物をよく見ようと、レイアスに近付いていく。


「麦? でもこんな沼地に生えてるなんて珍しいわね」

「あーこれ水麦かも? これもいつか栽培したいと思ってたんだー、こんなところに自生してたんだね。レイくんよく見つけたねー」

「水麦? ってことは食べられるんだよな?」

「もちろん食べられるよー。 小麦と同じように挽いて粉にしてパンにするらしいかな?」

「炊いて食べたりは……?」

「ん? 炊くって何かな?」


 ここでレイアスは『炊く』という言葉が米だけに使われる調理法を指すということを完全に失念し、目の前の沼に生える『稲』に見える植物を見つめていた。まだ収穫時期より大分早いようで濃い緑色の実をつけた穂はわずかしかお辞儀をしておらず、しかも自生している数が少ないのだ。目の前にあるのに食べられないとわかるととたん食べたくなり、レイアスはがっくりと肩を落とす。

 レイアス――英雄は日本での生活に戻りたいと思ったことは無いが、衛生面と食事だけは話が別であった。世界でも指折りの清潔さと食の多様さを誇る日本で生まれ育ったのだから当然といえば当然である。米や味噌や醤油、カレー・牛丼・カツ丼・ハンバーグ・唐揚げ・蕎麦・うどん・ラーメンと、米だけでなく日本で食べた数々の料理を思い出し、懐かしさと今の食事を考えて悲しくなってしまう。


「……なあシンディ、その水麦っての、大量に買えたりしないかな? できれば製粉する前の奴……」

「うーん、ちょっと無理かも? ここみたいにたくさんの水が無いと栽培できないし、水辺には魔獣も集まってくるからねー。アタシも実物は見るの初めてだよー」

「レイ、なんだか元気ないわね。水麦がどうかしたの?」

「……」


 レイアスの様子に気付いたエリーシアとシンディがレイアスに近付き、サラは無言でレイアスの手を握っている。


「ああ、なんでもない。ちょっと食べたいな、って思っただけだから……寄り道してごめん。もうすぐ村だ、進もうか」




 村では沼地で10メートルを超える大蛇を発見、村長によると四~五日に一度沼地から出て羊を丸呑みにして戻るらしく、今日明日にも出てくるだろうとの事。蛇の魔物は目が悪く動くものと温度を感じ取る性質があるとギルドの書庫で読んだ一行は、足場の悪い沼地の戦闘は不利であるため、シンディが見つけた蛇の通り道で待ち伏せをする。

 全身に泥を塗り蛇の通り道で待つレイアスとオーウェンが、村に向かう蛇の頭が通り過ぎた頃合いを見て二人がかりで剣を突き立て首の辺りを地面に縫い付けると、残った三人が総出で動きの封じられた大蛇の頭部へ攻撃、難なく仕留めることに成功する。蛇の肉は村へ安く売りつけ、皮と牙は綺麗に解体して竜車に詰め込み冒険者ギルドで売却することとする。


 帰りの竜車では稲を見つけて以降元気の無いレイアスは、エリーシアとサラの二人がかりで問い詰められ、『米』を食べたいということを白状する。レイアスはそのまま米と水田がいかに優れたものであるかを力説するが、エリーシアにはいまいち理解できず首を傾げるだけしかできなかった。


「わりいがこの国の水はほぼ地下水だ、くみ上げ続ける労力を考るとコストがかかりすぎる。その水田? っての、一つ作るのにポンプがいくつ必要になるんだか考えたくねぇぜ」

「炊くって煮るのと同じかな? 水麦は煮ると独特の臭いが出て嫌がる人が多いらしいかも?」


 オーウェンとシンディの二人から駄目出しを受け再度肩を落とすレイアスは、幼馴染であるエリーシアですら見たことが無いほどに消沈していた。


「だいたいてめえはどこで水麦なんて珍しいもん知ったんだよ。王都でも聞いたことねえぞ?」

「ああ、うん……どこだったかな……俺、いろんなところで本読んでるから、どこかで読んだんだと思うけど……」


 こうやって誤魔化す時はたいてい本のせいに出来るので、いろいろなところで読書を重ねていてよかったと思うレイアス。


「レイ、神殿にまで本読みに行ってた。ギルドの資料もほぼ読みつくしてる」

「そういえばあたしのお父さんの蔵書もほとんど読みつくしてたわね……ねえ、レイ。他にはレイの食べたいものって、どんなのがあるのよ。あたしに覚えている限りの作り方教えなさいよ……あたしこれでも料理得意なんだからねっ」


 そのエリーシアの言葉にレイアスは顔を上げるが、少し考えるとまた下を向いてしまう。


「いや、食材とか今と名前の違うものばかりらしいし……」

「それでもいいから教えなさいよ! 似た物集めて試してあげるわ! しょぼくれて下を向いてるなんてレイには似合わないんだから、さっさと話してしゃきっとしなさい!!」

「私も……手伝う。料理得意なのも、一緒」


 竜車の中に響くエリーシアの声にレイアスはびくっとして顔を上げ、そのままエリーシアもサラも聞いた事の無い調理法や食材を使った料理を聞き出すことに成功する。とりあえず卵を使う料理が多いことはわかったが、その卵が最も入手が困難であるという事実がエリーシアとサラに重くのしかかる。


「卵だったらアトリオンが一番手に入れやすいかも? 世界樹が近くて森に鳥が多いから、アタシも子供の頃よく食べたよー」


 シンディの言葉に目を輝かせるエリーシアとサラ。二人は向かい合い頷くとレイアスにアトリオン行きを提案する。しかしレイアスは首を縦に振らなかった。


「ありがとう、エリー、サラ。でも今は順番にいろいろやっていかないとな。いつか二人が作ってくれるって聞いただけで元気出たよ、機会があったら作ってくれ」


 そう言って竜車の中で立ち上がり、二人の頭を撫でるレイアス。レイアスはこの数ヶ月でまた身長が伸びており、今ではエリーシアよりほんの少し大きくなっていた。その事実に気付いたエリーシアは一瞬レイアスに見蕩れ、顔を赤らめてレイアスから離れる。


「き、機会があったらね! あたしが、知らない料理を作りたいだけなんだから、ついでよ、ついで!」

「……エリー、さっきと言ってる事が違むぐ」


 また余計なことを言おうとしたサラの口を塞ぎ、レイアスの方を見ないようにして長椅子に掛けるエリーシアの顔は耳まで赤く染まっていた。




 その後クーリオンへの帰還は何事も無く進み冒険者ギルドに到着し、討伐報酬と2センチ級魔石と大蛇の皮を売り金貨160枚を入手する。


「なあレイ……一ヶ月でこれって、近場で熊とか狼狩っていた方が稼げるんじゃねーのか?」

「オーウェン今頃気付いたの? これも冒険者が少ない理由の一つだよ。大蛇一体の報酬としては十分だけど、移動に時間がかかる依頼だと割に合わないから誰も引き受けたがらないんだ」


 竜車で一泊して行ける程度の距離で熊や狼を狩って戻るだけで、今回の大蛇討伐報酬を超える分は簡単に稼げるのだ。実際沼地に旅立つ直前の一ヶ月で、全員が二百枚以上の金貨を稼いでいる。


「もしかして十分に稼いでいて余裕があるから受けたってのか?」

「ああ、それと冒険者ギルドに恩を売るためかな。誰も受けずに埋もれていくような依頼をこなして『紅の探索者』は評判も評価も上がり、ギルドの悩みの種も減る。いい関係を築いているうちは無茶もそうそう言われないだろうと思ってね」

「……強かな野郎だ……」

「目的のためだよ。有名になればそれだけ情報も手に入れやすい」



 その日は稼ぎの分配を行うと早めに解散し、レイアス・エリーシア・サラの三名は一旦それぞれの家に戻る。レイアスの父ファビアンと母オレリアと長兄モーリス、それとサラの父親カイルがアーティオンでの任務を終え戻ってきているのだ。とはいえ半年交代で一月~六月が担当で、片道一ヶ月の距離であるためまた十月の半ばには移動するとの事だった。レイアスは久しぶりに会話の無い静かな夕食を堪能したあと、お互いの状況について会話を重ねる。

 ゴブリンリーダーとの戦闘については流石にクイーナがギルドに報告した内容と同様、単独ではなくパーティーでの撃破ということにして話したが、その時ファビアンは頬を僅かに引き攣らせていた。これはファビアンが嬉しいと思っているときに出る癖で、久しぶりに見たレイアスもついつい笑顔が溢れるのであった。

 ファビアン達から聞いたアーティオンの現状は聞くに耐えないものであった。あの惨劇から何年も経つというのに、濃い闇の瘴気に覆われたアーティオンの都市防壁内部には、身体が腐りかけたアンデットだけではなく、水分を失いミイラ化したまま徘徊するアンデットも見られるとのことだ。

 アンデット化した魔物は闇の瘴気が周囲にある限り腐ったり風化したりせずに長期間活動するため、当初は都市ごと焼き払う案が出ていたそうだが、遺品を回収したいクーリオン領主コーバスによって却下され、現在は瘴気の薄い箇所で少しずつアンデットを倒し、瘴気が薄まるのを待っている状態とのことだった。



 十一月半ばになるとファビアン達はアーティオンへ赴くため旅立っていった。レイアス達もオーウェンの提案でクーリオンの家を引き払い、王都アイオンへと向け旅立つ。オーウェンがパーティーに加入して半年となり、そろそろ魔力の再計測をするという目的もあったが、魔人族と生命魔術の情報を王都アイオンで集めてみてはどうかと提案されたのだ。


 そして約一ヶ月の旅を終えアイオンに着くレイアスを待ち受けていたのは、ありえない人物との出会いであった。



「そう固くならずともよい。息子が世話になっておる者の顔を見たかっただけなのだ。非公式故、『ゼル』と呼んでくれ」


 オーウェンに連れられて訪れた屋敷で待ち受けていた『ゼル』と名乗る男性は、あろうことかティニオン国王のイゼルバード・ティニオンその人であった。跪き自己紹介をするレイアスを制し、非公式であることを念押しして普通に話すよう迫るイゼルバードに対し、レイアスはやむを得ず最低限の礼儀を外さない程度の口調で自己紹介をした。


「オーウェンの魔力だが、確かに上昇していた。ライノ男爵には謝罪の手紙を認めておくが、まずは我が息子の無礼を許して欲しい」

「いえ、こちらこそオーウェンさんには無礼な口を利きましたことをお詫びします。それに、そもそもオーウェンさんは若い自分たちを心配しての発言でしたので、何も問題はありません」


 イゼルバードの隣に立つオーウェンは、バツが悪そうな顔でそっぽを向ている。


「本来はレイアスの能力について、争いを引き起こしかねない力である以上、国として関わりを持つ気は無かったのだ。万が一何者かに利用されるようなことがあれば、王家の名で介入できる名目もライノ男爵のおかげで整っていたからな。それをこのバカ息子が無断で動きおって……」

「え、じゃあ親父はライノ男爵の報告を無視したんじゃなく、理由があって放置したってえのか?」

「そうだ! この馬鹿者が!! しかも結果まで丁寧に報告したせいで、儂は『王族の義務』にこの少年を巻き込まざるを得なくなったのだぞ!!」


 イゼルバードに怒りを向けられ、自分のしでかしたことに思い至り青褪めるオーウェン。レイアスは二人のやり取りを聞いて、今後の展開について考えていた。他国へ逃げるか、条件付きで引き受けるか、その場合エリーシア達はどうなるのか、家族に迷惑をかけないで収められる選択肢はあるか、そして魔人族や生命魔術に近付く一番の近道は何か等、様々なことが一瞬の間に脳内を駆け回る。


「レイアスには酷なことを頼まねばならん。戦争準備、及び戦争への参加だ。当然冒険者ギルドを通し正式に依頼させてもらうがな。……少都市国家群の情勢は聞き及んでいるか?」


 鋭い眼差しをレイアスに向けるイゼルバード。レイアスはそれを真正面から捉え、小さく首を横に振る。


「小競り合いが続く紛争地帯であるとは聞いていますが、そこと戦争になるのですか?」


 レイアスの問いに、今度はイゼルバードが小さく首を横に振る。


「先日、少都市国家群の一つであるバイアロンという都市が壊滅していたという報告を受けた。そこには大量の魔物の足跡が残されていたそうだ……レイアスはアーティオンの生まれだったな。そのアーティオンを滅ぼした魔人族が、少都市国家群に向かったという情報は知っているかな?」

「な!? 親父、まさかそいつがバイアロンを潰したってのか!?」

「光天教の司教が『魔物の軍勢を率いる魔人族の狙いは世界樹である』というお告げを受けたと報告に来た。光天教の言うことが事実であれば、状況を鑑みるにバイアロンを落とした魔人族とアーティオンを壊滅させた魔人族は同一人物であろう。そうなると世界樹都市アトリオンの防衛戦力を整えねばならん。そこでレイアスには、アトリオンに駐留する魔術師隊と中位指揮官に対し魔物との戦い方の指南と、魔物の軍勢に対する戦闘を依頼したい。ただしレイアスの能力である魔力上昇の件は伏せよ、味方の中に敵を作る可能性があるのでな。……どうか頼まれては貰えぬだろうか?」


 レイアスはまっすぐに自分を見つめるイゼルバードに対し、深く頷いて応える。


「アーティオンのような都市が増えているというのは、自分も見過ごせません。ですが、いくつかお願いがあります。自分は生命魔術について調べています。生命魔術に詳しい方をご存知でしたら紹介していただけないでしょうか。それが出来なければ、生命魔術について書かれた資料か、魔人族が暮らしている場所についての情報でも構いません。それと自分には仲間がいますが、彼女らについては依頼の対象から外して頂けないでしょうか。お願いします」


 そう言って頭を下げるレイアスの頭に、硬い拳骨が落ちる。


「んなっ!?」

「却下だ」


 レイアスの目の前に近寄り拳を頭に落とした張本人、オーウェンが不機嫌丸出しの顔でレイアスを睨みつけていた。


「仲間は連れて行け。てめえだけ行くことを許可しちまったら、俺が三人娘に恨まれちまう。それと……すまなかった、こんなことになるとは思っていなかったんだ……詫びってわけじゃねえが、オレも行くぞ。ぜってぇ死なせずに連れて帰ってやる。良いな? 親父!」


 呆れ顔のイゼルバードは、深くため息をつきながらオーウェンとレイアスを交互に見る。


「もとよりお前にはレイアスと共に行くよう命ずるつもりだった。しかし軍の指揮権はやれぬから、一冒険者として行くが良い。ただし万が一の事態に備え軍上層部との連携は欠かさぬようにせよ。レイアスの条件だが、まず生命魔術は失われた魔術と言われている。隣の大陸にあるフォルカヌス神皇国やローマン帝国なら見つかるかもしれぬが、少なくともこの国には存在しておらん。しかし文献の類で良ければ王宮の書庫より探させることを約束しよう。それと何かクーリオンに送るものはあるかね? ライノ男爵宛に出す手紙とともに送らせよう、近日中にバカ息子に預けておくが良い」



 イゼルバードとの非公式会談後オーウェンはレイアスに謝り倒すが、当のレイアスはそれほど気にしている様子は無く、むしろ目的に近付けそうだと笑顔すら見せていた。ただエリーシアとサラを巻き込んだことだけは気にしており、オーウェンに二人を守るよう頼んでいた。

 宿に着くと国王イゼルバードからの依頼の話になり、エリーシアとサラだけでなくシンディまで当然という顔でアトリオン行きがあっさりと決定する。むしろ女性陣の怒りは置いていこうとしたレイアスに向けられ、オーウェンはレイアスを戦争に巻き込んだ点と仲間を置いていこうとしたレイアスを叱った点を加味して、お咎めもお叱りも無しということに落ち着いた。


 翌日レイアス・エリーシア・サラの三名は国王の好意に甘えそれぞれ家族への手紙を認めオーウェンに預けると、冒険者ギルドで国王イゼルバード直々の指名依頼を受ける。オーウェンを除く一行は水と食料の補充を行うと手紙を届けたオーウェンと合流し、王都アイオンの観光をすることも無くその日のうちに世界樹の街アトリオンへと旅立つのであった。

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