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英雄とスライム  作者: ソマリ
幼少期編
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1章 第3話N へんたい(変異体の方)したよ

2018/6/20

大幅に改稿。

というかほぼ書き直し。

 やってしまった。穴の中に隠したつもりの小動物の姿が無い。お姉さんがいなくなってからゆっくりやろうと思った事が、全部台無しだよ。

 でもいつまでも凹んでられないや、まだできることあるし。

 体と光の粒子を自在に動かせるよう練習だね。


 毛しか食べてないからお腹が空いて……ないな。

 あれ? この体だと空腹感を感じないのかなー。てーか胃とか腸とか無いじゃん! どうやって栄養吸収してるんだろ。

 そもそも、スライムの生態ってどんなだっけ?


 映画・ゲーム・漫画、それといくつか読んだファンタジー小説にもスライムって出てきてたよね。


 一番有名なスライムはゲーム序盤で出る雑魚だよねー、あはははー。

 でも他のゲームとかだと大きくなったり切る殴るが効かず魔法でしか倒せない、なんてのもあったな。

 ……待てよ? そういやどっかの神話に出る「てけりり」言う奴もスライムだったよな。あれは自分の体を変化させて目とか脳とか作ったりしてたな……やってみるか。


 スライムこねてー目玉に耳にー、ってこんな簡単に作れて良いのか?

 体の操作に慣れてきたせいかな、イメージ通りに形を変えるの案外簡単。

 なんていうか、粘土細工みたい。いや、それより簡単かも?

 そしたらこれを体の表面に移動させてーっと……。

 あははー。見た目だけそっくりにしても使えるかっ!


 ぷちっ、ぺしゃ。


 目玉と耳を体から引きちぎって床に叩きつけるイメージしたら、ほんとに飛んで行っちゃったよ!

 容器の底に当たって潰れて、スライムに戻っちゃった。


 これどうしよ。潰れた目玉と耳だったスライム、くっつくのかな……あれ、触ったら普通に体に戻ってきた。おかえり?


 千切れたのに痛くなかったよ、てーか何で千切れた?

 床に叩きつける様にイメージしたから?

 それに千切れたけど、離れた奴にも感覚があったような……?


 ちょっと試そう。分裂するイメージで、体の一部を切り離してみる。できた。

 切り離したまま小さい方を動かしてみる。これもできた。

 小さい方に視点を移動させてみる。これもできた。


 うひょーたっのしいいいー!


 とりあえずちょっと遊んで……ほうほう、球から離れた方も自由に動かせるけど、五分位が限界か。

 一度に動かせる分裂体は二つだな、三つ目動かそうとすると例の痛みが来た。


 分裂体に触ると本体に戻るし、自分の体とはいえこれは飽きない……じゃないよね、まずやることあるから遊ぶのは後回しにしなきゃ!


 目と耳の件に戻るよ!


 ていうか見た目だけ真似て作ってももダメに決まってんじゃんね、見えも聞こえもしませんでしたよええそうでしょうよ。

 とはいえ水晶体とか視神経とか三半規管とか鼓膜とか、名前は知っててもどうなっているのかまで知らないよー。その辺りわかれば作れそうな気がするんだけどなー。


 そういやネズミの毛の構成とか仕組みを今日視たな。えーと確か……スライムこねて―同じものをイメージしてー……できた。見た目じゃわかりにくいけど、これは間違いなく吸収した毛とだいたい同じものだ。

 ていっ。

 完成した一本の毛を投げ捨ててみる。

 これには感覚は無く視界も移動できない。

 つまりこれはもう、スライムじゃないんだ。

 本体で覆いかぶさり吸収する。最初に食べた時と同じ感覚があった。


 これもしかして凄い能力じゃない? 吸収した物とほぼ同じ物が作れるって……はっ。これはもしや!

 頭の中で強くイメージしてみる。全身に毛が生えたフッサフサのスライムの姿だ。毛玉だ。モフモフだ。俺はモフモフになるんだ!


 ……って、天辺に一房しか毛が生えないってどういうこと!?

 パイナップルみたいじゃんか!!


 また引きちぎって投げ捨てたけど……この毛の量、俺が食べたのと同じくらいじゃないかな。

 

 でも何か違和感がある。ていうか、見逃してる感? これ、スライム体で作り出してるって言うより……元々体内にあったものを取り出してる感じがする。

 完全にスライムで作ってみよう、こねこね。……たくさん、毛が生えたよ!


 むしっ、ていっ!

 床に叩きつけた毛が、ぺちゃってスライムに戻ったよ!

 さっきのと違うな、やっぱり。


 検証検証っと。



 ……あー。そうかそうか、最初のは取り込んだ物を『再構築』して、次のは『複製』してるってことか。

 他人事みたいだけど便利だなー俺の体。


 あれ。となると……目玉や耳なんかを吸収できていれば、五感を得るのも簡単だったんじゃ……。


 うわー、やらかしたなぁ……次の餌はいつだろ、一日一回なのかな?


 次の餌まで待たなきゃだねー……。



 やっちまったものは仕方ないや、次は四次◯ポケット的な何かの検証しよう。

 何でごはんが無くなったのか、ちゃんと調べないとね。


 毛を作って穴に入れて閉じてまた出して、と。

 今度は毛を作って穴に入れて閉じて、穴を消してまた穴を作って……毛が、無くなった。



 ……いろいろ試した結果、原因がわかりました。

 光の穴を完全に消したことが、敗因だったようです。

 証拠隠滅が仇になったのね……。


 時間経過で消えることも無いようだし、小さくすることもできるし、自分の体に追従させることもできた。

 あといつまでも四次◯ポケット的な何かと呼ぶのも嫌だし、空倉庫そらそうこと名付けておく。中はかなり広いからね。

 さらに目立たないようにして追従させて、と。これでもう同じ失敗はしない!


 よーし今度こそしっかり頂いて目と耳と再現してやるっ!

 あと鼻で嗅覚、喉で声帯、舌……は、死骸味わいたくないから後回しでいいや。最優先は視覚と聴覚!

 ご飯が待ち遠しいなー。


 って期待してたけど、今日はご飯無かった。

 何日かに一食とか、そんな感じかなあ。

 しかたないのでお姉さんの観察でもするよ。


 お姉さんの頭上には白い光の塊がふわふわ浮いており、何かつぶやく仕草をしたら机上と室内の天井二箇所に白い光が集まって、代わりにお姉さんの頭上に浮いていた白い光が霧散した。


 何があったのかよくわからないよ?

 明かりを付けたように感じるけどスイッチに触れた様子もないし、もしかして音声認識で起動する照明?

  ……いや、それにしては棚に置いてあるものとか部屋の雰囲気とかレトロな感じだしなー。……お?

 今度は机に近付いてつぶやく仕草をしてるな、橙の光が集まったのが視える。でも角度的にどうなっているのか視えないのが残念。


 今日のお姉さんは一通り容器内を確認すると机上で書き物をし、頭上に白の光を集めると室内の橙と白の光を消して立ち去った。

 滞在時間は十分も無いかな、疑われずに済んでるのは良いけどちょっと寂しい。


 でも良いんだ、やらなきゃいけないことがたくさんあるから。

 これまで得た能力のおさらいと試行錯誤だ。

 光視力は光の粒子を更にスムーズに動かせるようになってきたし、注視しなくとも色の判別ができるようになった。

 発動し続けていても限界を感じることもなくなったし、今度は紫以外の別の色の光を集めて検証をしてみよう。


 なんて張り切って始めたものの、最初の橙でいきなり痛い目みたよ……。

 スライムで作った触手の先に橙の光を集めてみたら、焼けるような痛みを感じて慌てて触手を切り離す羽目になったよ。焼けるような痛みというか、恐らく文字通り焼けたっぽい。

 それでも懲りない! 他の色も確認しようっと。

 黄色と銀色は光を集めると何らかの物質に変化したようだけど、よくわからない。吸収すると疲れが取れるような気がした。

 赤は集めても暖かい気持ちがするだけで効果がわからず保留、白は光源だと思うんだけど、光視力では判別できないなあ。


 最後に紫を再検証だ。

 これがまたいろいろ遊んで……もとい検証してみると、かなり使い勝手がいい代物じゃないか。

 空倉庫の口を作ったあとに集めた光を二つに分けたら、どちらの口も同じ空倉庫に繋げられた。

 また空倉庫内部のサイズ調整も出来たので、内部の広さをゼロにして片方から5センチほど入れた触手を、離れた位置に設置した別の口から5センチ出す、という事もできた。視界内であれば口の移動もたやすく、一度設置しておけば視界外でも維持できるため、これは万が一の脱出手段としよう。


 この能力には『どこで門』と名付けておく。

 また集めた光を線にせずそのままで紫に染めたところ、物質化して触手で触れられた。でも黄色や銀色と違って光の粒子が輪郭を模らないんだけど、何が違うんだろう。

 どんな違いがあるのか現段階では判別不能だね、通常の視力を入手するのが待ち遠しいよ!




 そして前回の食事から三日後、待ちに待った二度目のご飯来た!

 またでっかいネズミだけど、前回より一回り以上大きい?

 ま、いっか。いただきまーす。


 ……頭からまるかじり状態だけど、多分行けるな、これ。

 毛を吸収した時のように『何』で『どのように』構成されているのか、何となくだけど感じ取れる。

 第一目標の目耳を含む頭半分を吸収できたし、一息つこう。


 お隣さんも随分大きな餌貰ってるなー、お隣さん本体より大きかったんじゃない? もう半分近く無いけど。

 二件隣さんも同じくらいの大きさかなー。んで、お姉さんは……書き物に夢中だ。このまま喉まで吸収解析したら空倉庫にしまっておこうっと。


 ……うん。頑張ったけど、何とか喉まで吸収解析済んだ頃には、お隣さんもその向こうも、八割ほど食べ終わってた。

 差が開く一方だけど、それもそうだよね。このネズミ、一番小さい俺の体と比べて倍以上あるんだもん。

 でも食べるのはこの辺にして空倉庫にぶち込んで……と。


 ふっふっふ。


 前回はお姉さんが立ち去るのをただ待つだけだったけど、今回は違う。どこで門の片割れを、こっそりと机の真上に移動させてあるのだ。


 こっそり開いて真上から覗き込み……うむ、やはり凶悪な谷間だな……って、そうじゃないだろ俺。

 胸元じゃなくて手元に視線を移そう。

 机の上は……ああ、思った通り読めないね。

 インクが走った軌跡は何となくわかるけど、輪郭が出ないから光視力じゃ無理みたいだ。

 それとやっぱり使っているのは羽ペンとインク瓶か。ということは広げてあるのって布だと思ってたけど、もしかして羊皮紙って奴かな。

 でもお姉さんが来る前に見た、羊皮紙っぽいのに描かれた魔法陣? あれは読めないけど視えたんだよな、何が違うんだろう。


 それにこの橙の光、やはり燭台のロウソクみたいな物に集まってるな。橙は火で確定って事で良さそうだね。


 おっと、そろそろ容器に戻っておとなしくしておこうっと。

 どこで門閉じてーっと……えええええ!

 お隣さん、食べ残してるー!? え、何? その向こうのスライムも?

 二人共食べきれなかったの? てか二人じゃなくて二体? 二匹?

 いやそれどうでもいいわ。じゃなくて、そしたら逆にこのサイズで食べきった俺の方が目立つじゃん!

 ほらお姉さんが俺の方見てるー見てるよー、かがみ込んでガン見してるっぽいよーおっぱい零れそうだよー。

 ……あ、行ってくれた……ほっ。


 机に戻ってまた何か書いてるな、気になるけど大人しくしてよう。

 でもお姉さんはすぐ部屋から出ていったけど、しばらく様子見だ。

 いきなり戻ってきたら困るし、でも大人しくしてるの限界。

 ぷよぷよびったん。容器内歩き回ってみる。


 ……戻ってこない、ね?


 ふふふ……ふはははは!


 さあ、作業開始だ!

 まずはめっだまーめっだまーねっずみっのめっだまー。

 体につけて視神経伸ばして接続、光視力を切ってまぶたを開け……お、おおお……って真っ暗やないかーい!


 まぶたを閉じて光視力発動、明かりは多分白の光、集めて集めてまぶたを開けて……おお……見える、私にも敵が見え……って白黒かーい!


 びたんっ。あ、せっかく作った目玉、床に叩きつけちゃった。

 とりあえず吸収し直して……ぷるん。


 そのまま再構築するだけじゃだめか、何らかの調整をしないと色付きにならない……いや待てよ? 複製の方なら魔改造ができるんじゃね? 元々自分の体だし……。

 これまで光の粒子操作やこの体の操作だって、強くイメージすることで可能になったんだもの、きっといける! イメージだ、きっとイメージ力がキーワードだっ! 頑張れ俺の妄想力!


 まずは小動物から吸収した目玉の構造を強くイメージし、複製体を創り出す。

 って、視神経を伸ばすまでもなく白黒の視界が開けたけど、欲しいのはそこじゃない。複製体の目玉に意識を集中。

 多分これが網膜、水晶体に視神経に……網膜を厚くしたり視神経を増やしたり水晶体のサイズを倍にしたりといじりまくってると、視界の変化で酔いそう。

 眼底部の細胞・神経数も増やしてみて……あ。


 ……は、はは……見えた。見えたよ……前と同じ、視界。


 そんなに前じゃないのに、すっごく懐かしい感じ……ああ、普通に見えるっていいなぁ……。


 おっと、見とれている場合じゃない。

 気合い入れろ! ぷるんっ!


 次は耳、そして鼻、声帯だ!

 これらも目と同じく複製体で作って、体に付けて……「ぴたん。ぴたん」よーし聞こえる、匂いも感じる! 「んーんー」声も出てる!

 ……あれ。そういや夢中で気付かなかったけど、目鼻適当に体に付け過ぎたかな。それに数も作り過ぎた? ちょっと今時分どうなって……うわぁ……。

 幾つもの目玉と耳と鼻を生やしたスライムって、グロテスクな姿なんてレベルじゃないよ……SAN値直葬レベルじゃん、これどうしよ、目は欲しいけどこの姿見られたら終わる気がするよ?


 うーん。あ、全部俺の体の一部じゃん。色とかも魔改造できたり?

 スライムの体に同化させて……よーし、これなら誰が見ても普通のスライムだ。

 しかし我ながら綺麗な半透明の水色だなー。

 艶もいいし弾力もなかなか。ぷるんっ。


 それにしてもすげー便利だなこの体。

 てゆーか光視力も空倉庫もどこで門もこの体も、全部イメージでどうにか出来たってのが一番驚きだわ。イメージかー。妄想力と想像力の勝利だね、強く願えば叶う、的な? あれ、もしかして空も飛べんじゃね!?


 空に浮かぶイメージ、イメージ……とおっ!


 ぴょんっ!

「びたんっ」


 容器の底に、叩きつけられました。

 ですよねー。



 とりあえず恥ずかしいことは過去にして忘れよう。

 まずは通常の視力で確認したいことの検証だ。


 光視力で集めた黄色い光は土の、銀の光りは金属だった。紫の光では目には見えない板状の何かを作り出せた。

 そしてそれらで土台を作り出すことで、空中を跳び回ることは可能になった。空を飛ぶのではなく跳んでいるのだが、これもまた良しとしよう。


 視力はこれくらいにして、ちょっと自分の体について再度考察してみようか。

 特に再構築能力と複製能力だ。


 再構築は吸収し保持している部位等をそのまま生成する能力で、本物とほぼ見分けがつかない。

 複製能力はこれまで吸収した部位に似せたものをスライム体で生成するもので、スライム体がある限り際限なく複製できるうえ自由に調整ができるが、体から離れるとスライムに戻ってしまう。


 どっちも繰り返し使って練習だな。


 さて、お次はお待ちかねの室内探索だよ!

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