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英雄とスライム  作者: ソマリ
最終章 大戦編
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5章 第42話N 酸いも甘いも人生なのじゃ

「……ヒデオ……そろそろ教えてくれぬかのう……少なくともロックとアネモイにテテュス、それとグレゴリーはわしらと同じく、寿命が無いはずじゃ。……みなは……どうしておるのじゃ?」

「それは、これから……説明する」


 近くにいれば、古竜の気配は感じられる。その気配がないということは、ここにはいないってことだ。

 もう一度私の手を取ったヒデオと転移した先は、手入れされた綺麗な庭だった。というか雲が、空が近い。


「ここはロックが作った空中庭園なんだ。といっても、ダンジョンの中だけどね」


 手入れ要員なのか、あちこちでスライムが飛び跳ねてる。

 ヒデオに促されて庭園の向こうに見えた真っ白な建物に入ると、メイドと執事が私達を迎えてくれた。


「おかえりなさいませ、マスター・ナナ……」

「よくぞ……お戻りに……」

「おお、マリエルにヨーゼフではないか! 久しぶり、と言うべきかのう? ……って、何で目に涙を浮かべておるのじゃ……?」


 へ? 二体ともゴーレムだよね?

 ヒデオを見ると、何か困ったような変な顔してるし。


「ナナが眠りについてすぐ、ナナの作ったゴーレムたちは皆独立して、自我を持ったんだ。ロックが言うには、魂が宿ったらしいんだけど……」

「そ、そうじゃったか……これは嬉しい誤算じゃのう……。二人とも、改めてよろしく頼むのじゃ!」


 二体……いや二人とも私の空間庫にいたはずだけど、ロックが出してくれたんだろうね。

 嬉しさを必死に抑えようとしている二人を見ていると、私まで嬉しくなってくるよ。

 それに目覚めてからヒデオ以外で初めて会った、私の知っている者だ。

 嬉しくないはずがない。

 話したいことや聞きたいことは山ほどあるから、後でゆっくり時間を取ることにして、まずは二人の案内で建物の奥へと進む。

 通された部屋は奥に豪華な椅子が一脚あるだけの、謁見の間みたいな広い部屋だった。


「のう、ヒデオ……」

「まずは玉座に座ってくれ。そうすれば全てわかるようになってる」


 いつまでも教えてくれないヒデオにいい加減ちょっとイラッともしてきたんだけど、申し訳無さそうな顔を見てたら文句が言えない。


「座ればよいのじゃな? ……む?」


 玉座に腰掛けると同時に目の前に9人の影が、薄っすらと姿を現し始めた。

 ……リオ……セレス……アネモイ……ダグにアルト、テテュスにグレゴリー、ミーシャ……それに、ロックだ。


「これは……立体映像とか、そういう魔道具……かのう……?」


 でもみんなの姿が濃くなっていくにつれ、強く、はっきりと……古竜の気配を感じるよ……? それも一つや二つじゃない……9人、全員から!? ……どういう、ことなの……?


「寝坊助のナナ、おはよー! 散々待たせた罰として、ドッキリを仕掛けてみたよ!」


 肩に緑色半透明のスライムを乗せたロックが、私に向けてサムズアップしてきやがった。

 これは……異空間?

 ……みんな、隠れてたの……?


「姉御!!」

「ナナちゃん!!」


 肩に黄緑色のスライムを乗せたリオと、青色のスライムを乗せたセレスが、実体化が終わると同時に私に抱きついてきた。

 ……なん、で……千年だよ?


「ナナァァァァッ…… うわあああああああん!!」

「にゃにゃ様! ブラッシングしてくれる約束にゃ!!」


 泣きながら飛びついてきたアネモイも、肩に迷彩柄のスライムを乗せたバカ猫ミーシャも、私の知ってる姿そのまま。


「千年も寝るたあ寝過ぎじゃねえか? ああ?」

「そう言うダグも、この千年テテュスと一緒にほぼ寝ておったのだ」


 腕を組んでふんぞり返るダグの肩には、髪と同じ真っ赤なスライムが乗ってるんだけど……千年寝てたって、どういうことなのテテュス。


「僕が帝国でやっていたのと同じ手を使って、ナナさんが起きる年まで寝てたんだよ!」

「それだけじゃありませんよ。僕たちは全員ナナさんと同じ流動性魔石生命体、古竜になっています」


 グレゴリーの肩には灰色の、アルトの肩には黄色のスライムが乗っている。


「みな……千年も、わしを……待って……ふ……ふえぇ……ふえぇぇぇ……」


 抱きついてきた皆のぬくもりが、嘘じゃないって教えてくれた。

 リオの、セレスの涙の熱さが、アネモイの鼻水の不快感が、ミーシャのざらざらした舌が頬を舐める痛痒さが、夢じゃないって教えてくれた。


「姉御ぉ……帰ってくるって約束したのに……遅すぎるよう……」

「ナナちゃん、無茶しないって約束したのに……もう……」

「ふぇぇぇ……すまぬのじゃ、リオ……セレス……ふえええええぇぇぇぇ……」


 4人にもみくちゃにされながら散々泣いた。

 途中で鼻水を私になすりつけるアネモイを蹴り飛ばし、肉を削ぎ落とす勢いで舐めるミーシャの首根っこ掴んで引き離してからも、リオとセレスと抱き合って泣きまくった。

 どさくさに紛れて胸とお尻を触ったセレスも引き剥がしたあとは、リオに抱っこされながらお互い泣き止むまで抱きしめあった。


 会えるなんて思ってなかったから。

 不意打ちすぎて、何も考えられなかった。


 嬉しくて、嬉しくて、嬉しい。

 ごめんよ千年も寝てて……。

 待っててくれてありがとう、みんな……。




 そしてくだらないサプライズを仕掛けたロックとそれに加担したヒデオの二人が、ボロ雑巾のように転がっている玉座の間で、ここにいない皆のその後の話を聞くことにした。


 ここにいない者は結婚し子供が出来て、子供と生きることを選択した者。

 もしくは流動魔石生命体になれなかった者、ならないことを選択した者だそうだ。


 リューンとイライザは子供こそできなかったものの、生涯をかけてプディング魔王国を発展させた。一度は引退し民主主義に任せるも、声が大きいだけの少数派に過剰な権利を与えたり、他国の工作員による政治的介入を許すような、国を任せられない政治家が増えたことに業を煮やして政治に復帰。選挙の仕組みを大きく変えた後に完全に引退し、生涯を終えたという。


 オーウェンとジルとの間には男の子が生まれたが、ティニオン王国の後継者争いに巻き込まれプディングへ亡命、その後二人は平穏な生涯を送ったそうだ。

 そしてその二人の子だが、なんとヒデオとエリーの子ローラと結婚し、青い髪の男の子を産んだという。……青い髪、ねぇ……。

 そして成長した青い髪の少年は、サラの子ハルト、シンディの子ティナ等と一緒に、ヴァンの復活を目論んだベルクマンという吸血鬼の討伐に向かった。

 何でもヴァンの魔石が一つ残っていたらしく、稼働させるための魔力を求めたベルクマンが大量虐殺を行い、一度はスライムヴァンが復活してしまったという。

 それを知ったヒデオやロック達が慌てて討伐に向かったものの、スライムヴァンはさしたる抵抗もなく、ローラやその子である青髪の少年によってあっさりと倒されたそうだ。


 しかしその後ティナの子が、英雄の家系というプレッシャーに耐えきれなくなったのか出奔し、犯罪組織を束ねるリーダーとなるも麻薬絡みのいざこざで死亡。

 エリーもサラもその時既に年老いて亡くなっており、残されたシンディはヒデオの支えの甲斐なく120歳で亡くなったという。


「その後は俺とヒデオで麻薬組織潰して回ったり、時には竜化して麻薬の栽培農場を焼き払ったりしてね……同じような姿で同じことしてたはずなのに、何でか俺は断罪神って呼ばれるようになって、ヒデオは竜神として広まるようになったんだよねー」

「それはロックが、犯罪者を容赦なく皆殺しにしてきたからだろ……俺はみんな捕まえて、憲兵に引き渡してたからな?」

「いつの間に復活しおったんじゃ、ロックにヒデオ。けっ」


 ヒデオがずっと申し訳無さそうな顔をしていた理由が、ロックによるサプライズに加担したことだっていうのはわかったけれど、許してなんかやるもんか。ふんっ。


「ところでそれぞれについておる神の名は、ガッソーやファビアンが付けたのではないのかのう?」


 確か私だけ女神様扱いされるの嫌だからって、適当に話でっち上げてみんなも神に仕立て上げてしまえって、計画していたような……。


「全世界に放送されたあの戦いを元に、神話が創り直されたのです。最初は女神ナナとその従者達という扱いだったんですが、その後の僕たちの活動で名前がつけられました」

「姉御の裸は画像が乱れててはっきり映ってなかったらしいけど、それ以外はバッチリ全部映ってたよ! ……姉御が『生かすためにおぬしの生命を奪う』って言って、自爆するところまで、ね……」

「ま、まてリオ、すまぬ、すまんかったのじゃ! なんかその笑顔が怖いのじゃ!!」


 リオ、抱きついてくるのは嬉しいけれど、それはベアハッグだ! 苦しいよ!

 そしてどさくさに紛れて触りに来るんじゃないセレス、そして鼻水をつけるなアネモイ!!



「はぁ、はぁ……ひどい目にあったのじゃ……ううう……」

「ったく、自業自得だぜ。あとナナが使った魂破壊の術式だがな、禁呪として使用はもちろん研究も禁止し、破ったやつは俺やロックが直接行って止めさせてるぜ」

「魂複製の術式もね。ロックさんと話し合って決めたんだけど、肉体から魔石への魂複製術式も禁呪として、僕の記憶の中だけに留めてあるんだ」

「禁呪……そうじゃのう、あれは世界にあってはならぬ」


 破壊された魂や、複製された魂は、死後時間をかけて一つの魂へと戻る。

 神となった立場から言わせてもらうと、輪廻の妨げになるのだ。

 ヒデオとグレゴリーは複製された魂だが、死んだ方の魂は既に今存在する魂と融合し、一つの魂へと戻っている。

 唯一の例外は、私とロックだ。

 複製されてから時間が経ちすぎたため、既に別々の魂として世界に定着している。

 もはや一つに戻ることはないだろう。

 同じようなことが幾つもあると問題だが、これくらいなら輪廻の妨げにはならない。

 ともあれ、続きを聞くことにしよう。


 ニースは流動魔石生命体に至る実力があったが、ジュリアはそうではなかったことと、アラクネの娘と狐獣人の息子という二人の子に恵まれたこともあり、流動魔石生命体化を断念。仲睦まじく生涯を終えたとのこと。

 ペトラもニースと同様、結婚した相手が流動魔石生命体に至る能力のない一般人だったため、その相手……変態紳士と、同じ妻である森人族姉妹の四人で平穏に暮らし、子宝にも恵まれたたそうだ。


「ミーシャよ……おぬしまさか、いい相手を見つけられず売れ残ったから……古竜の力を得ようとしたのではあるまいな……」

「にゃにゃ様……それは言わにゃい約束にゃ……」

「約束をした覚えはないのじゃ」


 他にも人口が増え世界中で国家の数が100を超えたとか、アーティオンとセーナンに『虹色の海』教団の大陸統括支部があるとか、森人族がエルフ、地人族がドワーフと呼ばれるようになったとか、様々な報告を聞いた。


「それとエルフとドワーフについてなんだけどさ……名付けたのは俺達とは別の、元日本人なんだよね。なんか地球または似たような世界から、こっちに転生するやつがたまーに出てくるようになったんだよね。最初は800年くらい前かな? スライム虐殺の罪で死刑判決を受けたやつがいるってんで、興味本位で会いに行ったら……元ゲームオタクのヨーロッパ人だった……」

「はあ? ロック、その話ちょっと詳しく話すのじゃ」

「魔王が神として君臨する世界に生まれ変わった俺は勇者なんだーとか言ってて、狂人扱いされて可愛そうだったし、こっちで断罪することにして保護したんだ。事情を話したら相当へこんだ上に、魔術適性が高い以外はただの一般人だったから、以降はおとなしく暮らしてもらったよ」


 何で地球から?? それもヨーロッパ??

 ……アメノミナカヌシ様?

 …………………………。


「……はぁ……地球ではそやつ……魔力過多症――原因不明の痛みがある病気だと言っておらんかったか?」

「そいつは何も言ってなかったけど、そのあとにも5人が生まれ変わってきて、5人全員が魔力過多症の症状があるって言ってたよ。うち2人は俺の知ってる地球じゃないっぽかったけど、似たような異世界だったらしい」

「なんというか……それもわしが原因じゃ。他にもいろいろあるのじゃが、最大の理由は魂の初期化と修復を任せておるシュウちゃんが、高い魔力を秘めた魂を初期化しきれておらんかったらしいのじゃ」


 眠っている私の体を流体魔石化するのにも力を使ってたから、シュウちゃんが出来ることもそんなに多くなかったんだよね。


「今後はそういう事は無いと思うのじゃが……いや……残しておいてもいいかもしれんのう」

「偶然とはいえ……俺達も、そうだったもんな……」

「……人生は、一度きりじゃ。じゃがたまには……わしのように、二度目の人生を送れる人がいてもよいとは思わぬか? とはいえ神として積極的に介入する気は無いでのう、幸せになれるかどうかはその人次第じゃ」


 そもそも私もヒデオも前世では魔力過多症で、魂の初期化には普通の者よりも相当な時間がかかる。

 その初期化が終わる前に、この世界に偶然引っ張られたのだ。

 というわけでヒデオもロックも同意見のようだし、シュウちゃんにはこれまで通りの輪廻の管理をお願いしよう。



 そして……ヒデオが空間庫から、一つの魔石を取り出した。

 それをアルトが用意した魔道具にセットすると、空中に大きなスクリーンが作られた。


「この世界でビデオレターを目にするとはのう、何か……時代に取り残された気分じゃ」

「まだまだ俺達が暮らしてた西暦2000年代には程遠いけどな。……再生するよ」


 スクリーンに映し出されたのは……五歳くらいの子供が三人。

 女の子が二人、男の子が一人、行儀よくソファーに並んで座っている。


『『『ナナかあさま! おはようございます!』』』


 いきなりこれは反則だよ……一発で画面見えなくなっちゃったじゃないか……。

 鼻の頭にいくら力を入れても……涙、止まらないじゃないかぁ……。

 ローラ、ハルト、ティナ……大きくなったなぁ……。

 あああ……可愛いなぁぁぁぁぁ……。

 ずっと見ていたいなあ、ってなんでカメラがパーンして……あ……。


『ちょっとナナ! 千年近く目覚めないってどういうことよ!』

『正しくはあと九百九十六年。寝すぎ』

『ナナちゃん……わたしでも千年近くは無理かもー……』


 エリー……サラ……シンディ……。

 三人共、目が真っ赤だ……。


「これ、ヒデオと一緒にナナの寝所を調査して、やっとシュウちゃんとコンタクトが取れて……ナナが目覚めるまで、千年かかるって言われた直後なんだ」

「この時エリーが泣きながら、アルトからビデオゴーレム借りてこいって怒鳴ってさぁ……」


 ごめん……ごめんね……。


『全くもう……仕方ないから……これから定期的に、ローラとハルトとティナの映像撮って、残しておくわ。すっごく長くなるんだからね! 覚悟しなさいよね!!』

『三人共私達と、ヒデオと……ナナの子』

『もう少し小さい頃の映像も別にあるかも? ヒデオから見せてもらうと良いかも!』


 ヒデオを見ると小さくうなずいたってことは、あるんだね。

 もちろんどんなに長くても……全部見るに決まってるじゃないかぁ……。


 それからしばらくは私がいなくなって四年の間に、ハルトがどんな悪戯をしたかとか、ティナが食べ物の好き嫌いが激しくて困ったとか、ジルとオーウェンの間に生まれた赤ん坊を見たローラが急にお姉さんぶってきたとか、いろんな事を教えてくれた。

 他にも肉の値段が高くなったとか代わりに魚の値段が安くなったとか、新種の果物が開発されてとっても甘かったとか、取り留めのない報告をじっと聞く。


 ……私が焦がれた、平和な日常の出来事だ。


『……結構話しちゃったわね……。ねえ、ナナ……あなたと二度と会えないなんて、信じたくないわ……あなたと出会ってからの出来事は、一生忘れない。わたしの、大切な宝物よ』

「わしにとっても……一生の宝じゃ……忘れるものか……」

『わたし、幸せよ? 愛する男性と、同じ男性を愛する親友と、可愛い子どもたちに囲まれて、これからも幸せな人生を送るわ。……全部、ナナが守ってくれたから……だから……今よりもっと……幸せになるから! この先どんな困難があったって、絶対に……負けないんだから!!』


 視界が滲んで何も見えない……涙を拭いて画面を見たら、私と同じようにエリーの両目から涙が流れ落ちていた。


『ヒデオのこと……よろしくね。言われなくてもそうするでしょうけど……今度はナナが、幸せになる番なんだからね。絶対……絶対に! 私達に負けないくらい……いや、私達よりも幸せになってよね!! そうじゃなかったら……許さないんだから!!』

「ふふ……そうじゃのう……約束するのじゃ……わしも……幸せに……う……うう……うわあああああああああああん!!」


 拭っても拭っても、涙が両目から溢れてくる。


 この世界に来て、辛いことはたくさんあった。

 ヒルダとノーラを殺され、仲間を殺され、自分自身も危ない目にあった。

 やろうと思っていたことの全てが、眠っている千年の間に片付けられていた。

 千年という時間は、私のお腹の中にいたこともある子供たちや、親友と一緒に過ごす未来も引き裂いた。

 思い通りにいかないことが、数え切れないほどあった。


 でも……。

 ヒルダとノーラとの出会いは、過ごした時間は、私にとって何者にも代えがたい幸せだったと、胸を張って言える。

 リオやダグ、アルトにセレスとの出会いやお節介は、荒んで壊れかけていた私の心を繋ぎ止めてくれた。

 ただの女子力の高い男として死ぬはずだった私が、女性になってヒデオと出会い、恋に落ちた。

 嫉妬するエリーと喧嘩して仲直りして仲良くなって、初めて親友と呼べる相手ができた。

 みんなの存在がわたしにとって、家族のような、とても暖かいものだった。


 だから……私はこれからも、胸を張って……幸せな第二の人生……いや、スライム生だったと言うよ。

 これからも辛いこと、悲しいことがきっとある。


 神になったって、良いことばかりじゃない。


 これからも思い通りにいかないことがたくさんあるだろう。


 でも、負けない。


 エリーと約束したんだ。


 全部乗り越えて、今よりも……もっと、もっと!


 幸せになるんだ!!



「おう、ナナ。南大陸は今でも未開の地なんだがよ……なんでもバカ強え変種のドラゴンがいるらしいんだ。ちょっと見に行かねえか?」

「ほう……面白そうじゃのう、ダグ……詳しく聞かせるのじゃ」

「ダメだよダグ! 姉御はこれからオレと世界の温泉巡りするんだから!」

「温泉……じゃと!?」

「あらあら~、孤児院が運営しているふれあい動物園もあるわよ~?」

「ふれあい動物園じゃと……もふもふがおるのか……?」

「ナナさんの像が多数飾られている美術館や歴史資料館が――」

「アルトのはよい」

「テテュスはお金の使い方も覚えたのだ。一緒に服を買いに行くのだ」

「千年も経ってまだ使い方わかってなかったら、そっちのほうが驚きなのじゃ」

「にゃにゃ様! あたしにブラッシングしてくれる約束にゃ!」

「バカ猫は今夜風呂に入ったらしてやるのじゃ」

「ナナさん! 綺麗な景色が見られる場所を調べておきました!」

「グレゴリー、その話詳しく聞きたいのじゃが後ろでセレスが睨んでおるぞ」

「うわあああああん! ナナ、お腹空いたわ!!」

「やかましいアネモイ、ロックでも食っておれ」

「…………」

「ロックなぜ無言で泣いておる、ちょっとキモいのじゃ」

「あ、あの、ナナ……俺と、その……デートを……」

「あとでの」


 そんなに絶望した顔しないでよ、ヒデオ。

 ふふふ……時間はたっぷりあるんだから。

 みんなが提案してくれたとこ、一緒に回ろうよ。


 一緒に、幸せになるんだ!!




――英雄とスライム 完――

長らくのご愛読、誠にありがとうございました。

今後も合間を見てアフターストーリーなど書けたら良いなと思います。

よろしければブックマークなど、そのままにしていただけますと嬉しいです。

お読み頂きありがとうございました!

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