5章 第18話N お婆ちゃん呼ばわりは悲しいのじゃ
ヴァンの死体というかボロボロのゴーレムボディを吸収し終え、ざっと解析する。
頭部には魔石の他にも通信機っぽいものが埋め込んであったり、頭の他にも左胸など少なくとも全身に四個以上の魔石が入っていたりと、もはや自我のあるゴーレムと言ったほうが良いんじゃないだろうか。
外殻は古竜の鱗と似た素材だけど、それより脆いかな?
魔石は全部砕けてたし、シュウちゃんの一部になってもらおう。
全部終わったので瓦礫の山と化したセーナン上空で異空間を解除し、綺麗な町並みと立派な防壁に戻ったところで、その防壁上に降りた。
『GYISYAAA!!』
直後に壁から頭だけ出したドラゴンゴーレムのブレスが、坂道を登ってくる吸血鬼兵をなぎ払ったけれど、魔力足りなくて今日はもう撃てないんじゃなかったっけ?
そう思って壁の下を見たら、頭を壁に突っ込んだ間抜けな姿のドラゴンゴーレムに、テテュスが手を触れて魔力を送っていた。
犯人はこいつか。
「おおナナ、戻ったのだな。……ん? これか? ステーシアが給料を出すと言うでな、少しだけ魔力を分けてやったのだ」
私のジト目に気づいてなのか、何も言っていないのに釈明し始めたよ。
というか人同士の争いに関わる気は無いって言ってなかったかポンコツ二号。
それとうちの大きな子達は騙されやすから、保護者のいないところで食べ物やお金で釣ってはいけませんよステーシア。
全くもう。
「それとイライザから連絡があったのだ。緊急ではないが、戻ったら連絡が欲しいと言っていたのだ」
「そうであったか。留守番ありがとうなのじゃ、テテュス」
満面の笑みでダグに抱きついていくテテュスはほっといて、イライザだ。
緊急じゃないとはいえ、わざわざ連絡してくるほどの何かがあったのは確かだ。
急いで連絡をと思ったけど、振り返ると既にアルトが通信機片手にイライザと通話中だった。
「……ええ。……ええ、わかりました。一度戻りますので、詳しくはそれからで」
「何かあったのかのう?」
若干眉間にシワを寄せながら通信を切ったアルトは、ため息をついてから私の方を見た。
「ジースとプロセニアが、ティニオンへ攻め込みました」
シアもレーネも「自分たちの国は自分で守ります」と言うので、私達は全員揃って魔王邸に戻ることにした。
当然だけど二人には、ヴァンが出てきたら戦わずに私達に連絡するよう、きつく念押ししてからだ。
それとアネモイがレーネに、危なくなったらすぐに連絡するようにと半泣きで言ってたけど、アネモイが一人で来ないようにとも念押ししておく。
確かに竜の姿でブレス一発ぶちかませば、一瞬で戦争は終わると思うよ。
でもそれやるとヴァンのターゲットにされかねないし、何よりアネモイに人の姿をしたものと戦って欲しくない。
だって寂しがりだからね、人に怖がられるようなことはさせたくないかな。
それと帰る前に、門の近くまでたどり着いた吸血鬼の死骸をいくつか持ち帰り、吸収しておく。
これを解析することでわかったことがある。
やはり瞳が完全にどす黒くなった吸血鬼は、私にも治せない。
でも瞳の色が染まっていなければ、蘇生できる可能性はある。
可能性を信じて、ペースメーカー型魔道具の開発を進めておこうと思う。
魔道具の詳細を考えるのは後回しにし、魔王邸でリューンとイライザから報告を受けると、緊急ではないという意味がよくわかった。
ティニオンは元々ジースとの国境近くにある街に兵を集めていたため、攻め込んできたジース軍よりもティニオン軍の方が数が多く、攻めあぐねたジース軍は後退。
そして奇襲をかけてきたプロセニア軍はというと、プロセニア軍に気付いた変態紳士と森人姉妹が足止めしている間にティニオン軍が反撃、国境にある橋まで押し返して膠着状態。
どちらも被害は出たが、極々軽微だという。
さらにティニオンから連絡をくれたのはオーウェンだが、これはあくまでもティニオンが受けた戦争であるとして、プディングへ支援を要請することはないと言い切ったそうだ。
「タイミングを考えるとのう……後ろにヴァンがおりそうじゃのう……」
「いるでしょうね。ティニオン軍に傭兵として潜入している僕の部下には、ヴァンを見つけ次第連絡を入れるように伝えてあります。ですがいっそのこと、こちらからジースに出向いて叩きますか?」
戻るなり自分の配下からの報告を受けていたアルトが、気持ち悪いほどニコニコしながらこっちを見ている。
というか何でジース限定。こないだの使者の言動、そんな根に持ってるのか。
下手に行くとアルト一人でジース軍を全滅させてしまいそうだから、止めたほうが良いかもしれない。
個人にやり返すのは構わないけど、国相手にやり返すのは現段階だと許容できない。
プロセニアのように種族の違いを理由にして、子供を殺して笑っているような救いようのない連中ならともかく、まだジースのことをよく知らないからね。
「ヴァンが動き出したとなると、罠の可能性も捨てきれぬのう。それにまだ、ヴァンがおる確証が無いのじゃ。ヴァンの姿を見つけるまでは、待機じゃのう」
そもそも私個人ならともかく、今はプディング魔王国を背負う立場だ。セーナンの件は事故みたいなもんだから仕方ないとして、ヴァンが動いている可能性がある以上はうかつには動けない。
それに各個撃破のチャンスと跳んでいって、戻ったらプディングがありませんでした、では悔やんでも悔やみきれない。
ロックがいれば私と二人だけで、こっそり倒しに行くのもありかもしれないけどね。
こんな時に居ないんだもんなあ。
「ところで念の為聞いておきたいのじゃが、相手の兵は普通の人間かのう?」
「プロセニアでは薬物によると思われる強化兵の姿が見られましたが、吸血鬼のようなアンデッド兵士は確認されていないとのことです」
「ではティニオン・フォルカヌスともに支援要請が入り次第、すぐに動けるよう準備だけはしておくのじゃ」
テテュスじゃないけど、人同士なら介入すべきじゃない。
プロセニアはもう少し叩いても良さそうな気がするけど、気の所為ってことにしておく。
「軍も全員待機させておくぜ」
「頼んだのじゃ、ダグ。じゃが外で戦うのは、基本わしらだけにしたいと思っておる。プディングの軍は軍用ゴーレム同様、国の守りに徹して欲しいでのう」
「ああ。だが戦わせたくねえ誰かがいるってのは兵士も俺達も同じだからな、希望するやつは場合によっちゃ連れてくぜ」
戦わせたくない誰か? 守りたい人とか?
誰のことだろう。
「それはいったいどういう――」
「ダグ! 軍への指令が終わったら、オレに稽古つけてよ!」
「あら~、なんなら軍にはわたしの方から知らせておくから、今すぐ訓練場に行っても良いのよ~?」
「ありがとうセレス!! じゃあ行くよ!!」
え、ちょっとダグに聞きたいことあったんだけど。
「え、ちょ、待てリオ、引っ張るんじゃねえ!」
「じゃあ姉御、またあとでね!!」
「リオよ、ダグはテテュスのものなのだ、勝手に連れて行っては困るのだ」
「ごめんね! じゃあテテュスも一緒に行こうよ!!」
「僕は念の為、吸血鬼化の対抗術式を国内とティニオンへ広めるよう、ニース君に伝えてきます。その後でセレス君、僕の訓練に付き合って下さい」
「いいわよ~、わたしももう少し魔術の練習をしたいと思ってたのよ~」
「ナナ、お腹が空いたわ」
何この突然のカオス。
アネモイには黙れと言いたいけど、リューンとイライザもやることがあると退室したため、気がつけば会議室には私とアネモイしかいなかった。
「……お昼ご飯、まだじゃったのう……仕方ない、二人で食べるとしようかの……」
「ねえナナ! お肉! お肉がいいわ!!」
リオ達は何か隠してるっぽいなあ。
こうなったら拗ねてやる。アネモイと二人だけで地竜肉のステーキ食べてやる。
くすん。
それから一週間、拍子抜けだけど何も変わったことは起きなかった。
アルトの部下によるプロセニア軍やジース軍への潜入は、流石に危険すぎるからとアルトは許可しなかったようだけど、それでいいと思う。
それに戦火がティニオンの市街や一般人に及ぶようなら何らかの介入も考えたけど、ジースもプロセニアも、ティニオンの都市に近付くことすらできていないそうだ。
南のジース軍は士気が高いらしいけどティニオン軍に数で劣ってるし、北のプロセニア軍に至っては最初っから戦意が低く、仕方なく従軍してます感が強いらしい。
そのおかげでどちらもティニオンが優勢なんだけど、ジースの国内に潜入させたアルトの部下から、おかしな情報が飛び込んできた。
いや、ある意味納得かもしれない。
ジース国王が、暗殺されていた。
しかもジース国内では、裏で糸を引いていたのがティニオンということになっているそうだ。
それを煽っているのが、こないだ使者としてうちを訪ねてきた貴族だっていうんだから、もう呆れて言葉が出なかったよ。
ところでその貴族、名前何だったっけ。聞いた覚えがないけど、どうでもいいや。
あと変わったことと言えば、ヒデオがティニオンの王都アイオンとブランシェとの行き来が増え、会う時間が急に減ったことくらいかな。
ヴァンがいる可能性もあるから、もしヒデオが前線に出るというのなら、魔石抜き出して空間庫に閉じ込めておこうとも思ったけど、『英雄レイアス』が健在であることを国民にアピールして、国民の戦争に対する不安感を薄れさせようという理由なら止められない。
まあヒデオがいなくても、エリーや子供達には毎日会いに行ってるんだけどさ。
それにヒデオの護衛と言うか、万が一の連絡係としてミーシャとペトラを付けているけど、いくらなんでもここと王都の行き来だけなら問題ないだろう。
そしてこの間に、私はハチの大改造を行った。
まずは銃身を上位竜素材に変更し、グリップ内部の魔方陣を取り払いマガジンも空にした。
そしてそこに大事にしまってあった魔石を入れ、ハチそのものをゴーレム化する。
ハチには射出する弾丸の生成だけでなく、従来撃てるようにしてあったビームやレールガンの能力も組み込み、私の魔石と魔力回路を繋いで会話も可能にした。
よろしくね、トロイ……いや、『ハチ』。
――よろしくお願いします、マスター・ナナ
アサルトライフル型魔道具のハチ、これまであまり出番が無かったからね。
私の切り札として、トロイの分まで活躍してもらうよ。
ジース王暗殺の報せを聞いた三日後。
魔王邸地下のゲートゴーレムが門を開き、突然ロックが帰ってきた。
でも慌しく邸内を走って外に出ると、別のゲートゴーレムを出してなにやら調べ始めた。
「何をしておるんじゃ、おぬしは」
「転送座標の確認? 異空間からだと、同じ場所になる通常空間に転移したりゲート開いたりはできるんだけど、通常空間の離れた場所に転移したりゲートつなげたりするのって、難しいんだよね」
「……まさかおぬし、帝国内に作った異空間から、ゲートで戻ってきたんじゃなかろうな?」
ゲートも転移も似たような術だから、使ったらヴァンにばれるだろう。
でも異空間からだったら、転移しようがゲートを開こうが問題は無いかもしれない。
「そうそう、でも異空間で座標情報をつかむまで結構時間食っちゃってね。ひとまず座標情報がわかる魔王邸の地下に跳んだんだけど、さすがにみんなをそこへ通すわけにいかないし……さて、これで……つながるかな?」
「みんなとは何じゃ、いい加減説明せぬか……む?」
ロックが開いたゲートに顔を突っ込んだ、その少しあと。
ロックの脇から、ひょこっと小さな男の子が顔を出してキョロキョロし、私を見つけるとにぱぁっと笑って顔を引っ込めた。
なに今の可愛いんだけど。日に焼けて浅黒い、健康的な感じの子だったよ?
ロックにいろいろ聞きたいのに頭をゲートに突っ込んでるから、話しかけても聞こえないんだよなぁ。お尻蹴り上げてやろうかな。
「ねえナナ、ロックが戻ってきたのよね!」
「そうなのじゃが、何ぞ取り込み中らしいのう」
「ロック、ロック! うわあああん!!」
猛ダッシュで魔王邸から出てきたアネモイが、ゲートに頭を突っ込むロックへ向けて、両手を広げ全力ダイブ。
あれ当たり所悪いと背骨折れるな。
しかし激突の直前、ロックがゲートから顔を引き抜いて、アネモイに気付いた。
「ま、待てアネモイ!」
「ロックううう『ばいぃぃぃいん』ふごっ!!」
ぎりぎりでロックが張った空間障壁にアネモイが顔面から突っ込み、跳ね返されてひっくり返った。
というか何でそんな派手なパンツ穿いているんだアネモイ。
まさかすぐに出てこなかったのは、穿き替えていたからじゃないだろうなアネモイ。
それよりさっさと足を閉じて起き上がれ、そして透け透けのパンツを隠せアネモイ。
「ご、ごめんアネモイ、さすがに今押し倒されると後ろの子が危ないから……」
ロックの後ろのゲートから、今度はかわいらしい女の子が、ひょこっと顔を出した。
まさか浮気……は、無いな。今の私と同じか少し上くらいだ。いくら可愛くてもストライクゾーンにかすりもしないどころか危険球だよ。
いや、それより……ゲートから覗く顔が、次から次に増えてきたよ!?
「ちっちゃいスライムさんいた!!」
「ほんとだ! それにあれ、羽生えてるよ!!」
私の頭上のミニスライムに、子供達の視線が集中してる。
そしてゲートから出てきた子供達が、一斉に私へ向かって走ってきた。
笑顔の子供達に囲まれるのは嬉しいんだけど、何が起こっているんだろう。
しかも水色スライム持ってる子がいるんだけど、ふーすけの分体じゃないか。
「これこれ、押すでない。スライムが好きなのかのう? ほれ」
ミニスライムを増やして子供達の周りをぱたぱた飛ばす。ふふふ、みんな口をぽかんと開けて、可愛らしい反応だなぁ。
「わあ! スライムさんが、お空飛んでる!」
「綺麗なお羽だね!」
「お姉ちゃん、お婆ちゃんみたいな話し方だね!」
おいこら最後誰だ。
拗ねたアネモイに開放されたロックが会議室に来たのは、ゲートから出てきた女子供およそ八百人が、イライザの案内で仮設住宅へ向かってしばらくあとのことだった。
というかロックは疲れてるしアネモイは艶々してるし……けっ。
でもその件に触れるのもなんか嫌だしスルーしよう。
まずは大事な話をしなきゃいけないので、それどころじゃないし。
「ロックがおらぬ間に、トロイが見つかったのじゃ。アンデッドにされておったがのう……」
トロイの発見と吸収、ヴァンとの遭遇と撃破を一通り説明し終わると、ロックが悲しげに目を伏せた。
トロイの死を悼むのと、多分……ヴァンに対して、寂しい奴だとでも思っているのだろう。
「それと避難民だという子供と女性達から、ある程度話は聞いておる。吸血鬼が普通の人のように暮らし、しかもその吸血鬼に保護されておったとはのう。……ところでロック。その吸血鬼たちの瞳は何色じゃった?」
「ん? 普通の野人族らしい青や茶色が多かったけど、どうかしたの?」
「……説明すると長くなるのう。キューちゃん、わしの記憶から吸血鬼に関する部分を共有できるかのう?」
―――可能です。共有を開始します。
おお、これは説明が省ける。私とキューちゃんのつながりはまだ健在だね。
「お……ってナナ、自分の体を実験台にするとか、無茶するなよ……。俺の見た限りだと一部が赤色になってたけど、白目までどす黒くなってた奴は一人もいなかったよ」
「赤じゃと? ……それは見ておらぬな……ふうむ……」
シュウちゃん私の過去の記憶と、吸収した際のトロイの瞳の色を比較して。
――若干の彩度上昇を確認。
紅色から赤色寄りに変わってたのね……気付かなかった……ごめんよトロイ……。
ところでダイアンの瞳は?
――欠損していたため比較できませんでした。
「瞳がどす黒くなった者は正気を失い、赤色は血を吸ったことがある者、他は血を吸ったことが無く正気を保った吸血鬼ということじゃろうかのう」
「そうそう、砂漠地帯の吸血鬼はキンバリーが率いてるらしいんだよね。俺は会えなかったけど、グレゴリーが会って話をしたんだって。吸血経験のある吸血鬼が少なかったのはキンバリーのおかげかもしれない」
「キンバリーじゃと? いやそれより、グレゴリーはやはり無事じゃったか、安心したのじゃ。戻っておらぬようじゃが、どこにおるのじゃ?」
「あー、それがさあ……一部の吸血鬼を助けに行っちゃったんだよね……」
そこからロックが話してくれた内容には、正直言って驚いたよ。
キンバリーがヴァンの命令で砂漠の三都市を襲い、吸血鬼を増やしたことは正直言って悲しい。
でも女子供だけでも守ろうとしていたり、自我を持ち正気を保ってる吸血鬼が多いことを考えると、それ以外に道が無かったキンバリーのささやかな抵抗かもしれない。
そして女子供が保護されているところではスライムも保護されていて、そこへスライムになったグレゴリーも放り込まれたとは驚きだよ。
何でかスライムが増えていくなあ。
そこでグレゴリーはキンバリーに正体を明かしていろいろ聞き出し、そして親しくなった子供達から「父親が吸血鬼になったから会えなくなった」と聞かされ、ロックから義体を受け取ると一人で吸血鬼を追ったという。
子供達と父親をもう一度会わせてやりたいという理由だから、止めなかったそうだ。
「一度は合流しておいて、グレゴリー一人で行かせたのかのう? ロックらしくないのじゃ。それに吸血鬼を追ったとは、どういう意味じゃ?」
「俺は子供達の保護を頼まれたのもあったけど、どうしてもこっちに戻らなきゃいけない理由があったんだ。ナナ、ここに異界からみんなを引越しさせようとして調査してるとき、地竜が出入りしているらしい穴を見つけたの、覚えてる?」
「近くの小山でゴーレムを作り、飛び込ませて埋めた穴のことかのう?」
どこぞのネズミの集団自殺思い出して、悲しくなった記憶があるよ。
「その穴って地竜道って呼ばれてるそうで、隣の大陸まで繋がっているってさ。つまり帝国領だ。ヴァンはそこに10万人以上の吸血鬼を集めて、こっちに直接進軍してくるつもりらしい。グレゴはそのために集められた吸血鬼のところに行ったんだ」
「やけに長い洞窟じゃと思ったが、まさか帝国まで繋がっておったとはのう」
埋めちゃったから当然だけど、あの穴の奥って調査してないんだよね。
「それとグレゴが俺たちに伝えてくれた情報に追加。キンバリーがこれまで会った六体のヴァンのうち、一体は特に強そうだったらしいよ」
「一体倒したので残り五体じゃの」
「そうなるね。最後に朗報。ヴァンはもう、複製を増やせない。世界樹が無くなって魔力が足りなくなったらしいよ」
……ん?
あの術って、そんなに魔力使ったっけ?
そもそも魔石から魔石への複製魔術って、ヒルダでも使えたんだよなあ。
生命魔術がメインだから魔術適正が低いというのも考えられないし。
そういえばヴァンっていつも、光系統の光線魔術ばっかり使ってるなあ。
セーナンで倒したヴァンも、他属性の魔術使ったけどあっさりアルトに全部相殺されてからは、光線しか撃ってなかったし。
確かに使い勝手はいいけど……。
それと飛行に必要な闇属性も適正が高いのはわかってるけど、長距離の転移は使ってないような。
ヴァンってもしかして、光・闇・生命以外の魔術適正低い?




