5章 第12話N+ うんざりなのじゃ
「……ごめん、ナナ。世界樹の下で倒したヴァンがオリジナルだったから、複製は無いものと決めつけてた」
「それはわしも同じじゃよ。複製を作っておったなら、単騎で戦いを挑んでくるはずがないと思っておったわ」
ロックも私も同じ思いだったんだろうな。
もうヴァンと関わりたくない。
だから複製なんかいないって、思い込もうとしてたのかもしれない。
「ナナさん、ロックさん。まだ皇帝がヴァン本人だと決まったわけではありません。まずは帝国の使者と会いましょう。先方には午後からの謁見と知らせています」
「ならばまだ時間はあるのう。使者は何人で、どのような背格好じゃ」
「金髪の青年男性が一人で、ゲオルギウスと名乗っています」
金髪と聞いてキンバリーかと期待したが、そううまくは行かないようだ。
「宣戦布告に来たのじゃろうかのう」
「使者からは新皇帝就任の報せとご挨拶、と聞いています」
「胡散臭いね。あの小狡いヴァンのことだ、何か企んでるに違いない。気を抜くなよ、ナナ。それとヴァルキリーに換装しておこう」
今はヴァルキリー姿で動きたくないんだけど、そうも言ってられない。
ゲオルギウスって言ったっけ、その使者と会う直前に換装すればいいだろ。
しかしもうヴァンのことで頭を悩ませるのは嫌だったんだけどなあ。ロックもアルトもうんざりした顔してるし……ってアルトは何か違うな、下手すると私以上に表情が暗いよ?
「申し訳ありません、ナナさん、ロックさん。報告しなければいけない事があります」
そう言って申し訳無さそうに頭を下げたアルトが、ゆっくりと顔を上げて口を開いた。
「……帝国には斥候を六名送っていたのですが……実は全員、連絡が途絶えています。簡易ゲートで帝都近郊へ跳んだ者、帝国北のセーナンから潜入した者、敢えて帝都から東に離れた場所へ転移し陸路で向かった者等、全てです」
「アルトの配下といえば、この国でもエリート集団だよな。それぞれがヒデオまでとは行かなくても、かなり強い連中ばかりのはずだけど……」
「帝都に向かったグレゴリーには伝えてあるのですが……そのグレゴリーとも、通信が途絶しています」
まさか、やられた?
「いや……通信が阻害されてるのかも。さっきから感覚転移で帝国の様子を視ようとしてるんだけど、空間魔術を阻害する結界が広範囲に張られてて、近付くとかき消される。俺達やゲートゴーレムの転移は問題無さそうだけど、通信魔道具は駄目だな」
「よほど後ろめたいことを隠しておるようじゃの……む。では何でわざわざ、ヴァンは自分から存在を明かすような真似をしておるのじゃ」
「何らかの計画を立てていて、その準備が整ったと考えるのが妥当でしょうか」
何か準備していたっていうのなら、私達にバレていない状態のまま計画を実行したほうが良いはずだ。
まさかヴァン本人ではない?
それから時間ギリギリまで対応を話し合ったけど、相手の出方を見ないことにはどうにもならないということだけはわかった。
ヴァンは一体だけなのか、複数なのか、存在しないのか、それすらもわからないのだから対策の立てようがない。
だが最低限の方針として、自国はもちろん同盟国も含めた自衛が最優先であることだけは決めた。
私はヴァンを最低でも二度は殺しているし、ヒルダとノーラを殺された借りは十分に返していると思っている。
ヒデオとレイアスを殺した件についても、その場で倒し魔石を粉々にして磨り潰してあるから、既にケジメは付けてある。
異界と地上階の融合が果たされてしまったのだけは悔しいけれど、融合による人的被害は無かったから怒るほどの事でもない。
これ以上何をしようとしているのかわからないけど、私に関わらないところで生きるのなら好きにすればいい。
「とはいえ、ナナのこと相当恨んでそうだからね。何か仕掛けてくると思ったほうがいい」
「じゃろうのう、皇国での一件もあるしの。ともあれそろそろ時間じゃ。ゆくぞ、アルト、ロック」
二人を従えて謁見の間へと向かいながら、ヴァリキリーに換装する。
義体に魔力を通したくないんだけど、そうも言っていられない。
慣れない玉座に座り、両隣にアルトとロックを従えて使者を待つ。
やがて兵士に案内されて謁見の間へ姿を表した使者は、外見だけは若く見える男だ。
でもその正体は動く死体、赤い魔素に包まれたアンデッドだった。
自我のあるアンデッドなんて初めて見た。
片膝を着いて頭を下げているけど、その表情には敬意のかけらも感じられないな。
「お初にお目にかかります、魔王ナナ様。わたくしは皇帝ヴァレリアン様の側近で、ゲオルギウスと申します。どうかお見知りおき下さい」
「わざわざ側近が使者として来るとはのう。それほどヴァンは人材に困っておるのか?」
「……ナナ様はヴァレリアン様の旧知の間柄と聞き及んでおりますゆえ、万が一無礼があってはと、僭越ながら立候補させて頂いた次第にございます」
やっぱりヴァン本人だったか……最悪。
だけどこの使者、一瞬返事が遅れたな。
もう少し探りを入れてみるか。
「立候補のう。おぬしはヴァンにアンデッドにされて、恨んではおらぬのか?」
「恨むなどとんでもない! ヴァレリアン様のおかげで、わたくしどもは若さと永遠の命を手に入れられたのです!!」
うわぁ、ほんとにヴァンに殺されてアンデッドにされたんだ。
しかも喜んじゃってるし。
ヴァンは相変わらずまともな方法じゃ仲間の一人も作れないみたいだけど、何かどっちも哀れだな。
「……失礼致しました。まずヴァレリアン帝国と致しましては、国内の平定を第一と考えておりますゆえ、プディング魔王国との争いは望んでおりません。隣接するフォルカヌス神皇国とも同様、友好的にとは行かずとも共存できたらと考えております」
嘘くさいけど余計なことは言わずにひとまず話を聞こう。
嫌だなあ、腹の探り合いとか苦手なんだけど。
「ところでナナ様はフォルカヌスやティニオンとも親交を深めているとお聞きしています。両国にもご挨拶に伺おうと思ったのですが、ティニオンは我が帝国とは別の大陸の、遠く離れた異国。移動や交流をするにしても、私のように転移魔術が使える者に限られてしまいますゆえに断念いたしました。ナナ様はフォルカヌスのような遠く離れた地と、どのように交流なさっておられるのか、参考までにお聞かせ願えませんでしょうか」
「交流は個人的なものじゃ。フォルカヌスのヴィシー王とは茶飲み友達みたいなものでのう、たまに遊びに行っておる。国としての正式な交流が始まるのは、安全な海路が見つかってからじゃの」
ヴィシーの私に対するへりくだった態度が面倒で、何か珍しい食材を手に入れたとか連絡が来たときくらいしか行かないけどね。
ゲートを使った交流も既に始まってるけど、極僅かだ。
だから、嘘は言ってない。
ゲオルギウスが何を探っているのかわからないけど、とぼけるのも不自然だし最低限の情報だけ会話に入れるようにしてるだけだ。
「海路ですか、ありがとうございます。我がヴァレリアン帝国も海路を使ってティニオンと交流可能か、国へ戻ったら検討することに致しましょう。それでは本題なのですが……本日はナナ様に、ヴァレリアン皇帝からの伝言を預かってまいりました」
話を無理矢理変えやがった。
今ので必要な情報は得られたってことかな?
海路の方に食いついたってことは、多分それ以外。フォルカヌスとの関係性についてかな?
そのゲオルギウスが正面に片手を伸ばし、こちらに視えるようにゆっくりと空間庫を開いた。
ロックとアルトが一歩前に出て警戒するが、その眼前でゲオルギウスが取り出したのは一つの水晶玉だった。
何度か似たようなの見たことある。中にドラゴンゾンビ入ってた奴だ。
「これはわたくしが開発した魔道具の一種で、中に様々なものを封じることができます。今回こちらにはヴァレリアン様のお声を封じさせて頂いておりますので、お収め下さい。割ればお声が聞こえるようになっております」
その水晶はゲオルギウスが作ったのかー、プロセニアやら皇国の四大貴族の後ろにいたの、こいつだって確定ってことでいいのかな?
それにしてもヴァンの声、ねえ……正直聞きたくないんだけど。
ロックがゲオルギウスから水晶玉を受け取って調べてるけど、特に変なものは入って無さそうなのはここからでもわかる。
といっても私にとって、ヴァンの声以上に変なものなんて無い。
「今ここで聞いたほうがよいかのう?」
「はい。お願いいたします」
気が滅入るなあ。
でも仕方がない、割るか。
ロックに目で合図を送るとアルトと一緒に私の前に立ち、ゲオルギウスと私達の間辺りに水晶玉を放り投げた。
割れるとすぐに、気持ちの悪い含み笑いが聞こえてきた。
「くくくっ。私は皇帝ヴァレリアンです。既に気付いているでしょうが、ヴァンと言った方が馴染みが深いかな? 魔王ナナ、まずはスライム風情とこれまで侮っていたことを、素直に詫びようじゃあないか」
うわぁ……この気持ち悪い話し方、間違いなく本人だわ。
それにヴァンが詫びる、ねえ……。
「そして私に敵対の意志はありません。貴女にニ度も殺されかけましたが、私は異界の融合という目的を果たしましたので、これ以上貴女と戦う理由がありませんからねえ。私も縁あって自分の国を持つことになりましたし、この機会にお互い水に流そうじゃあないかと思って、こうして使者を送らせてもらいました」
私は間違いなくヴァンを二回殺してるよ。
でも殺されかけたって、どの件を指しているのやら。
世界樹の下で倒したヴァンはカウントしてないかも?
いや、とりあえず突っ込むのはよそう。
ゲオルギウスの視線が気になるから、無反応を貫いたほうが良さそうだ。
「私は貴女のことを、許して差し上げようじゃなあいか。ですから貴女が送り込んできたネズミについても不問としますし、遺体も返して差し上げます! くっくっく、なんて私は寛大なのでしょう!」
ネズミ? まさかアルトが送った斥候か!
ヴァンの声にあわせて、ゲオルギウスがまたゆっくりと空間庫を開いた。
そこから取り出して床に並べたのは、六人の遺体。
うち五人はアルトの配下で、私は全員の顔を知っている。
全て胸に大きな穴が空いているが、一人だけ損傷の激しい遺体がある。
光人族のダイアンだ。手足は潰れ顔も原型をとどめていないけど、私が見間違うものか。
そしてもう一人、子供の遺体にしか見えないものが混ざっている。
「怒っているのかな? それとも悲しんでいるのかな? 何にせよ私の国に無断で入って来た者をどうしようと、私の自由じゃあないか。それでも遺体だけは返そうというのだ、まずは私に謝罪やお礼を言うべきじゃあないかな?」
ああ、怒っているよ。今すぐ目の前のゲオルギウスを殺したいくらいだ。
でもヴァンの言うことは正論だ。
国家間の問題として考えれば、非があるのはこっちだ。だからこそ余計にイライラする。
私が殺したようなもんだ。
それにしても子供の遺体に見える、私とロックが作ったグレゴリーの義体がここにあるってことは、やられたってこと?
胸に開いた穴には、見えるはずの魔石が無い。
抜き取られている? それとも逃げ出せた?
悲しそうな顔で遺体と義体を回収するロックを、ゲオルギウスがニヤつきを抑えているようなムカつく顔で見ている。
それがまたはらわた煮えくり返りそうになるけど、我慢だ。
「くくくっ、貴女からの謝罪も礼も直接聞けないのは残念ですが、これくらいにしておきましょう。私は生き返った際に、光人族でもなければ魔人族でも無くなりました。ですから生まれ変わった私は『ヴァレリアン』として、新たな生を歩むつもりです。……願わくば、今後貴女と関わらずに済ませたいものですねえ」
本気で言っているのか?
……それならそれで構わないけど……本気なら、ね。
さっきから喧嘩売ってるとしか思えない発言ばっかりだったけど……これ以上の犠牲も出したくない。
というかほんとに『人間やめたから』なんて安易な考えで、本名晒したのかよ。
「そうそう、遊びに来たいと言うのなら、いつでも歓迎しようじゃあないか。くっくっく……はーっはっはっは!」
イライラする笑い声の余韻を残して、ヴァンの声が完全に消えた。
するとゲオルギウスすっと立ち上がり、こちらに向かって深く頭を下げた。
敬意や謝意は微塵も無く、仕事だから頭を下げてるって感じがムカつく。
「ヴァレリアン様のお言葉、確かにお伝えしました。特に返事は不要と申し付かっておりますが、言付けなどございましたらお預かりいたします。いかがなさいますか?」
「そうじゃな……では一つだけヴァンに伝言を頼もうかの。『復讐は遂げられたのか?』との」
「ナナさん、最後の伝言にはどんな意図があったのですか?」
玉座に座ったままゲオルギウスを見送り一息つくと、アルトが不思議そうな顔でこっちを見ていた。
「ヴァンは元々異界に閉じ込められた母親の無念を晴らすため、異界の者も地上階の者も殺そうとしておったはずじゃ。じゃが帝国こそが、異界を作り出した元凶の住む地であろう。帝国領内に住む光人族がどれほどおるか知らぬが、もし本当に目的を達して満足しておるのなら、関わらずに生きる事も可能かと思ってのう……仲良くする気はないがの」
グレゴリーから光魔大戦について、目覚めたらとんでもない事になっていて激怒したと聞いている。
その元凶がどうなったのか聞いてないけど、資料くらいは残っているだろ。
こんなことならグレゴリーからもっと帝国のこと聞いておくんだった。
「ナナ、グレゴリーは大丈夫らしい。ポケットに小さな羊皮紙がいくつか入ってた」
「なんじゃと? なんと書いておったのじゃ!?」
「猫の観察日記みたいな走り書きばっかりなんだけど、一つだけスライムの欠片が包まれてた。それには『今は小さなネコ達と遊んでいるけど、凶暴なやつが六体いて困るなあ。でも跳んだらバレるから、しばらくここで様子を見ようと思う』って書かれてるよ」
なんじゃそら、意味がわからん。
「ゲオルギウスや他の者に見つかっても良いよう、僕たちだけにわかるように書いているのではないでしょうか」
「だとすると……確か以前ミーシャが『小型の猫が砂漠に住んでいる』と言うておったの。では現在地は砂漠ということじゃな? 凶暴なやつというのは、ヴァンのことじゃろうか。六体のう……厄介じゃな……」
とりあえずグレゴリーは無事なようで安心した。
「最後の跳んだらバレるというのは、転移のことでしょうか。中型ゲートで帝国領に向かった四名全員がやられたのも、転移を感知されたからと推測できますね」
「ここにいないもう一人は、皇国のセーナンから潜入したのか?」
「ええ……ダイアンと一緒に、トロイが潜入しています。連絡は途絶えていますが、生き延びている可能性もありますね」
トロイも行方不明なのか。生きているなら、無事に戻って欲しい。
これ以上犠牲が出るのは嫌だ。
グレゴリーも『様子を見ようと思う』ってことは、しばらく潜入を続けるって事だよね。
トロイもグレゴリーも、いざとなったら助けに行く準備だけはしておかないと。
もし戦いになったら、私とロックとダグとアルトで相手をする。
でもそれで抑えられるのは四体か多くて五体、リオとセレスの二人にぶぞーととーごーを加えればなんとか……いや、危険すぎる。
各個撃破できるのが一番だけど、それは向こうも同じ。なるべく個人での行動は控えさせたほうが良さそうだ。
戦いにならないのが一番なんだけど、これはうかつに動けなくなったなあ。
それにさっきのゲオルギウス。
あいつも戦力値だけ見れば、リオやセレスとほぼ同等だ。
シュウちゃんによると魔術師寄りの能力だけど、身体能力も相当高いらしい。
ヴァンはアンデッド作るの得意らしいからなあ、あんなのがたくさんいたらちょっとやばい。
ほんとにもう、私や周りの人に関わらないでほしいなあ。
せっかく平和を楽しんでたのに。
でもまた何かやらかす気なら……ノーラ、ハルト、ティナが生きる未来のためにも、私は全力でヴァンを叩く。
たとえ私の魔石が砕けようとも、絶対にだ。
――――――
私の領土の西側に転移反応を見つけて現地へ向かうと、ナナに会いに行っていたゲオルギウスが戻ったところでした。またネズミかと思って、危うく始末するところでしたよ。
「ゲオルギウス、ナナの様子はどうでしたか?」
「はっ、ヴァン様。やはりヴァン様の存在を掴んでいた様子で、驚いている様子は見受けられませんでした」
やはり逃げ延びたネズミがいたようですね。
ですが私達の人数まではさすがに知られていないでしょうから、これ以上探られないようにこちらから接触し、私の存在を知らせたのは正解ですね。
こうして釘を刺しておけば、うかつには動けないでしょう。
優しい優しいナナのことだ、これ以上部下の命を危険に晒してまで帝国を探ろうとはしないでしょうからね。
「それで、ゲオルギウスから見たナナの配下はどうでしたか?」
「アルト・ロックという男と、遠目で見ただけですがダグという男、この三人には私では敵いそうにありません。ですが……他の者たちには、それほど脅威を感じませんでした」
ロックという者は知りませんが、私達だけで十分足止めはできますね。他は全てゲオルギウスに任せればいいでしょう。
問題はどの私がナナを殺すかです。
どの私もナナを直接この手で殺したいと思っていますからねえ。
当然、この私もです。
私達全員でナナの国に攻め入るのが最も確実なのでしょうが、あっさりと片付いてはつまらないですからね。
ナナを苦しめ、絶望させ、泣いて命乞いをするまで追い詰めないと、私の憎しみは晴れません。
「フォルカヌスとの関係ですが、現在はナナ個人のもの。たまに訪問しているようなので、ナナが長々距離転移を使えるのは確実です。ですが魔導通信設備の本体が設置されている様子は見られませんでしたので、計画に支障は無いかと」
ゲオルギウスが開発したという魔導通信設備は、設備から設備、または携帯魔導装置から設備へと、距離や時間を無視して連絡ができる代物でしたね。
しかし全ての中枢となる大型魔道具が必要で、帝国では魔素収集装置がその役割を果たしているとか。
「それはそれは。よくぞ調べてきてくれましたね、ゲオルギウス」
「勿体無いお言葉にございます。それとナナからヴァン様に伝言を預かっております。『復讐は遂げられたのか?』だそうです」
私はナナを殺すためだけに生きてきたのだ。
私の復讐はこれからですよ、くっくっく。
私を殺した報いを……いや……待て……。
ナナに殺される前は、何のために私は生きてきたのだ。
そもそも私はなぜナナに殺された。
……私は異界の者も地上の者も皆殺しにしようとして、ナナに阻まれたんじゃあなかったかな。
では私はなぜ、皆殺しにしようとしたのだ。
復讐? 何の?
……記憶に欠落があるようですね。
ナナの言う復讐とは、一体何を指しているのでしょう。
私の覚えていない私を、ナナが知っているということですか。
腹立たしいですね。




