5章 第7話D 覚えてやがれ、ロック
エリー達の出産が近付いてナナの周辺が慌ただしくなった頃、グレゴリーが帝国へ戻るため転移していった。
なんかロックがついて行こうとしてたみてえだが、グレゴリーはこの目でのんびり世界を見ながら行きたいとか言って、結局一人で行っちまいやがった。
ロックもナナと同じで心配性だからな。
あいつら笑っちまうほど思考が似通ってんだよ。
おっと思い出すと口元が緩みそうになるぜ、巡回中に一人で笑ってたら変質者扱いされちまう。
あとでナナに何を言われるかわかったもんじゃねえ、気をつけねえとな。
想像して気が滅入っちまったが、気を取り直して巡回の続きだ。
『ピピピッ』
「おう、ダグだ」
腰につけた通信機の表示を見ると、ロックからのようだな。
珍しいこともあるもんだぜ。
『やあダグ、今ブランシェの大通りだよね? ちょっと冒険者ギルドの買取カウンターに行ってくれないかな』
「なんだよ、俺が行くほどの問題でも起きてんのか?」
『そうなんだよね、あとは任せたよ。それじゃっ!』
「お、おい、ロック!」
切りやがった……あの野郎。
ちっ。何があったんだか知らねえが、行きゃわかるだろ。
そして冒険者ギルドと看板がついた建物が見えてくると、既によくわかんねえ人だかりができていた。
そいつらは俺に気付き、道を開け……ロックあの野郎、こういう事か!
「おお! ヌシは確かナナと一緒におったな! ワシじゃ、テテュスじゃ!!」
人だかりの真ん中にいた、ヒルダそっくりの女……に見える、水の古竜テテュスが、俺を見つけてニッコリと笑ってやがった。
足元に何人か転がってるが、あいつら衛兵たちじゃねえか……何してんだよ、つーか何しに来た。
「騒ぎを起こすなって、ナナに言われてただろうが……」
「テテュスはただ、宝石を売りに来ただけなのだ! しかし此奴等が、ジューミントウロク? なるものを行わないと買い取れないと言ってな、テテュスを連れ去ろうとしたのだ!」
「はぁ……テテュス、手を出せ」
首を傾げながら伸ばしてきた手を掴み、俺の右手に付けられた銀色の腕輪に触れさせる。
こいつは『こーじ』というスライムの分体が変化してるやつで、街の巡回時に持ち歩いているもんだ。触れさせれば登録者なら犯罪歴などを教えてくれるし、こうして新規登録することもできる。
「ほら、住民登録完了だ。つーかこの都市には登録しなきゃ入れねえってのに、どっから入ってきやがった」
「転移術なのだ」
「……あちこちに転移よけの魔道具が……って、効くわけねえか」
ジルが転移しにくくなるって程度の効果だしな、古竜を止められるわけがねえ。
「いてて……あの、ダグさん……そちらの青い髪の女性は、お知り合いですか……?」
「怪我はねえな? こいつはナナ……様の友人かつ、アネモイの同類だ」
あいつを様付けで呼ぶのはいつまで経っても慣れねえが、国民の前じゃこうしねえと示しがつかねえからな。俺達の王様だからよ。
「……ひっ!! し、失礼しました!!」
「気にすんな、悪いのは突然来たこいつだ」
獣人族の衛兵、尻尾が下がりきって足の間まで巻いてやがる。周りの住民は半分以上がキョトンとしてるが、アネモイが古竜だって知らねえ住民も多くなったもんだぜ。
「俺が詫びるのもおかしい気がするが、迷惑かけたな。これで美味いもんでも食っとけ」
衛兵に金貨を一枚握らせると嬉しそうに尻尾を上げ、ぺこぺこ頭を下げながら持ち場へと戻っていった。
そんでさっきから近えんだよテテュス。
「ダグといったか? テテュスも美味いものとやらを食べたいのだ。そのためにお金が必要だということは、このテテュスも知っておるぞ! だからテテュスにそのお金を渡すのだ」
「人の財布を覗き込むんじゃねえよ。……ああ、それで買取カウンターにいたのか」
「うむ。お金が欲しいなら何かを売ればいいと聞いてな、そこの建物を教えてもらったのだ! だがお金も貰えず、さっきの者たちを呼ばれてしまったのだ……」
税金かけてるとかで、売買には住民登録必須なんだよ。
しかし無銭飲食で暴れられるよりはマシか。
「仕方ねえ、ついてきな。登録は済んでっから、もう売買できるはずだぜ」
「本当か! そのお金さえあれば、あそこの美味しそうな匂いがするものも、そっちの甘い香りのするものも、全部食べられるんだな!」
ああ、やっぱりこいつアネモイの同類だわ。
耳の後ろにあるツノと目と髪の色以外はヒルダそっくりなだけに、残念っつーか何つーか、何とも言えねえ微妙な気分だぜ……。
「あ、あの、ダグ様……申し訳ありません、お連れ様がお持ちになった品物ですが……こちらでは、買い取りできません……」
ギルドの買取カウンターの受付嬢が、申し訳なさそうに頭を下げてきた。
横を見るとテテュスが、悲しそうを通り越して死にそうなツラしてやがった。
「……理由はなんだ」
「その……お持ち頂いた宝石の大きさ、美しさともに素晴らしい逸品なのですが……全て未知の物でして、ここでは値段が付けられないのと……魔石は大きすぎて、ギルドでは買い取り不可のサイズとなっておりまして……」
カウンターの上に目をやると、拳くらいの大きさの宝石に混じり、拳一つ半くらいの魔石が転がって……おいこらそのサイズ上位竜クラスじゃねえか。
ナナですら数個しか持ってねえし、ティニオンのオークションにかけても多分売れねえぞそんなもん。
「テテュス、他のもんはねえのか?」
「……テテュスの宝の中で、良さそうなものだけを選んで持ってきたのだ……これ以上のものは……」
「上じゃねえ、もっと安っぽいもんで良いんだよ。……持ってねえんだな」
ああクソ、その顔で泣きそうなツラして俺を見るんじゃねえ。
それと腹が減ってるのはわかるが、俺を見ながらよだれ垂らすんじゃねえ。
「……はぁ……おい、こいつを換金してテテュスに渡してやってくれ……」
財布に入れておいた魔石を一つ取り出し、受付嬢に渡す。
俺にとっては雑魚の魔石でリューンとの賭けに使ってる奴だが、一般的には結構良い金額だったはずだ。
間もなく受付嬢が持ってきた白金貨90枚と金貨10枚を受け取ったテテュスだが、白金貨を見て首を傾げてやがる。
「なあダグ、お金と同じ形をしておるが、この白いのは何だ?」
「それもお金だよ、金貨10枚分の……」
まさかとは思うが、念の為だ。
財布から銅貨、銀貨、金貨、白金貨を一枚ずつ並べてテテュスに見せる。
「おい。テテュスの言う、お金ってのはどれのことだ」
「馬鹿にしておるのか……これだろう!」
「金貨一枚だけ持って自信満々なツラしてんじゃねえ、全部お金だよちくしょう!」
思ったとおりじゃねえか……これ放っといたら、あっという間にぼったくられてすっからかんになるぜ。
いくら治安が良いとはいえ、ここまでの馬鹿見たらカモにしてえ誘惑に負けるやつが出てきてもおかしくねえ。
手に負えねえ。腰に下げた通信機のボタンを押す。
『――はいこちらナナじゃー。今忙しいでの、テテュスのことはダグに任せたのじゃー。ぷち』
……グルかああああ! ロックもナナも知ってて押し付けやがったなああ!!
「何だかヌシとおると、余計にお腹が空くのだ。そんなわけでテテュスは行くのだ。これもお金だというのなら、100枚もあればお腹いっぱい食べられるな! 礼を言うぞ、さらばだ!」
「さらばだじゃねえよああもうクソ、勝手に歩き回るんじゃねえコラ!」
その後は屋台で串焼きを一度に100本頼んだテテュスを止めたり、スープを100杯頼もうとしたテテュスを止めたり、ハンバーガーを100個頼もうとしたテテュスを止めたり、果実水を……ああもういい加減にしやがれ。
かなりの時間をかけて貨幣価値と買い物について教えながら、テテュスと一緒に屋台をハシゴし、ひたすら食べて飲むのにつきあわされた。
良い食いっぷりだとは思うが、古竜だもんなそりゃそうか。
だが途中で古着屋を見つけて、仕立て屋に興味を持ち、しまいには下着屋に俺を連れ込もうとしやがった。それは断固として拒否させてもらうぜ。
つーか悲しそうな顔すんじゃねえよ……仕方ねえから代わりにジュリアのところへ連れて行ってやろう。
新しい服がたくさんあるって言ったら、やっと表情が明るくなりやがった。これが精一杯の妥協だぜ。
「ダグにしては良い趣味だね、あたいに任せておいてよ!」
どういう意味なのかジュリアを問い詰めてえが、後回しだ。
しかしここも失敗だったか、服飾研究所って何でこう女ばっかりなんだよ。ジュリアがテテュスを連れて奥へ行ったのは良いんだが、女どもの視線に耐えきれる気がしねえ。
だいたい苦手なんだよ、女っつーのは。
何話せば良いのかわかんねえし、ナナの周りにいる女以外は、俺が話しかけると怯えるか媚びてくるかのどっちかしかねえからな。
かと言ってあれを放っておくと、ろくな事にならねえ気がしな……。
仕方ねえ。
だがテテュスがいねえ今のうちに一言文句言っておくか。
『――こちらロック。只今通話することができません。ご用件のある方はピーという発信音の後に――』
「おいロック、何言ってるかわかんねえけがどういうつもりだコラ」
『いやほんとに忙しいんだってば。今ナナと一緒にブランシェの郊外で穴掘りしてるんだ、だからテテュスの相手はお願いするよ。夕方には戻るから、魔王邸まで連れてきちゃってー。んじゃっ!』
切りやがった……畜生、覚えてろ……。
まだ昼過ぎだぜ。夕方までどうしろってんだよ……。
「じゃじゃーん! ほらほらダグ、どうよこのあたいの見立ては!」
「どうだダグ、このテテュスに似合っておるか!?」
しばらくして戻ってきたテテュスは、ナナが以前洞窟で着せた服じゃなく、胸元が大きく開いた、青いドレス風の格好で現れた。
綺麗だとは思うけどよ……目の毒だぜ。
「あ、ああ……似合ってるんじゃねえか」
「ダグよ、似合っていると言うのなら、なぜ目をそらすのだ。しっかりとテテュスを見ぬか」
ズカズカとこっちに向かってきたテテュスに頭を捕まれ、無理矢理正面を向かされた。
なんちゅう馬鹿力だよ、さすが古竜……ってか、胸が開き過ぎなんだよ!
た、谷間まで見えてんじゃねえかクソ、見ちゃいけねえってわかってんのに、意識がそっちに向いちまうじゃねえか!
「あれあれー、ダグってば顔赤いよ? テテュスさんの魅力にやられたかな?」
「む、そうかテテュスの魅力か。照れているというのなら、悪い気はしないぞ」
「そうそう、テテュスさんってアネモイさんと一緒で立派な尻尾があるから、既成品の下着じゃ合わないんだよ。そこまでわかってて連れてきたのかな、ダグってばやるじゃん!」
「ち、ちが、そうじゃねえ!」
ジュリアがかぶせ気味にポンポンしゃべるもんだから、否定するタイミング外しちまってるじゃねえかおい、おかげで致命的な勘違いされてねえかコラ、訂正させろ!
つーかそろそろ頭離せ、って何顔近付けてきてんだテテュス!
何する気だおい、いきなりそんな、嫌じゃねえが心の準備ってもんが……あ?
「はむっ」
「ちょ、な、え、何で俺の首に噛み付いて……は、離れろコラァ!」
「……ちゅー」
何してんだこいつは、意味がわからねえ!
つーかテテュスこいつ、俺の血を……吸ってる?
「……ぷはぁ。ううむ、やはりのう……」
「な、なにが『やはり』だ、説明しろコラ」
首に少し痛みはあるが、大した怪我じゃねえな。つーか意味がわからねえ、古竜って人の血を吸う生き物だったか?
「どうもダグを見ておると、体が熱くなって、ドキドキが止まらないのだ」
「は? そりゃどーいうこと――」
「キャーっ! ダグにとうとう良い人が現れたのね! これは一大事だわ、あたいちょっとみんなに知らせてくる!!」
「待てこらジュリアあああああああああああああ!!」
それだけは阻止しねえと、って追いかけられねえ!
「テテュス離せ! ああジュリアてめえ、蜘蛛糸まで使って全力で……ああ……」
「うむ、どうかしたのか? それよりダグよ、テテュスはお腹が空いたのだ」
奥で作業してた女どもの悲鳴が聞こえ、直後一斉にこっち見やがった。しかも奥から更に女どもが出てきて……晒しもんじゃねえか、クソッ!
「テテュス……とっておきの美味いもんがある店教えてやるから、いい加減手ぇ離せ」
「とっておきだと!? さあ行くのだダグ、テテュスをそこへ案内するのだ!」
これ以上女どもが増える前に、テテュスを連れてその場を逃げ……いや、立ち去った。
今度は食品研究所へ向かおう、高いし女性客が多いって聞いてたから避けてたが、あそこならテテュスも大人しくしてるだろうよ。
研究所運営の食堂や喫茶店なら、あまり一般に出回ってねえハチミツを使った甘いものも置いてるからな。
目論見通りテテュスが食い物に夢中になってくれたおかげで、相当時間は潰せたが……周りの女どもの視線がうっとおしいぜ。
いくらなんでも服飾研究所からは離れてるしな、ジュリアから変なこと聞かされたわけじゃなさそうだが……居心地悪いな。
それにしてもテテュス、ほんと美味そうに食うな……。
食い物で釣るのが一番だってのはアネモイと変わんねえようだけどよ、つーかそれで良いのか最強生物ども。
夕方になり魔王邸に戻るとナナもロックも本当に働いてたみてえで、アネモイと三人で疲れた顔してやがった。はぁ……これ以上文句をいう気が失せたぜ。
つーかこの三人が疲れるって、一体どんな作業してたんだ。
「テテュスよ、久しぶりじゃのう。ブランシェの街はどうじゃった?」
「美味しいものがたくさんあって、満足なのだ。テテュスもしばらくここに住むぞ」
「ちょうど使っておらぬ部屋もあるしの、構わんのじゃ。ということでロック、部屋を空けるのじゃ」
「え、そりゃないよナナ、他にも部屋空いてるじゃん」
てめえがその部屋使ってるの見たことねえよ。
ずっとアネモイの部屋で一緒に寝てるじゃねえか。
「ダグも一日お疲れ様なのじゃ、押し付けてしまってすまんのう。テテュスは満足しておるようじゃし、ありがとうなのじゃ」
「……おう、巡回のついでだ。気にすんな」
「ではわしらはちょっと風呂で汗を流してくるでの、夕食は少し待って欲しいのじゃ。テテュスも一緒にどうじゃ?」
テテュスは風呂って何なのか知らねえようで首かしげてたが、アネモイの方を見て少しすると行くって騒ぎ出した。
何だっけな、直接会話しなくてもやり取りできるとか聞いたが、それだろうな。
ったく、服を褒められて嬉しそうなツラしやがって。
しかしこれでやっと……肩の荷が下りたぜ……。
「ダグお疲れー。デートはどうだった?」
「てめえロック、そんなんじゃねえよ……ただの監視だ。つーか穴掘りって何してやがったんだ、てめえが疲れた顔見せるなんて相当だぜ」
「ダンジョン作ってた。でっかいの」
でっかいって嫌な予感しかしねえが、一応聞いてみた。
ああ、こいつらに常識を期待した俺が馬鹿だった。
ダンジョンってのは地下迷宮とか何とか言ってたよな。
十階層まで作ったが迷宮作りが面倒になったからって、階層ごとに一つの部屋にしたまでは構わねえ。
でもよ、森に山に海に空まであるって、それもう地下じゃねえよ。
アネモイが普通に飛べる広さとか、階層一つ超えるのに丸一日かかるとか、一体何の冗談だよ。
第三層までならうちの部下でも普通に狩りができそうだから、いい訓練と小遣い稼ぎになるかもしれねえが……四階層から下は元々世界樹があった地域から魔物連れてきたとか、八・九階層に捕まえてきたドラゴン放したとか、正気かよ。
「ナナがまだ戦闘用の義体作ってないし、アネモイは戦力面でもポンコツだから、魔物集めるのは全部俺の仕事だったもんでねー。でもだいたい完成したから、あと数日もすれば狩りができるくらいに魔物も増えると思うよ」
「……管理スライムだったか、そいつが魔物増やすって話だったよな」
「そうそう。各階層に分体置いて、魔物が足りなきゃ作って、増え過ぎたら間引きするようにさせてあるよ」
そんな代物をブランシェから気軽に行ける距離に作ってんじゃねえよ……。
きゃいきゃい言いながら戻ってきたナナ達との夕食中でも、万が一ダンジョンから魔物が出てきた場合の対処と、内部での兵士訓練について考えるが、こりゃ実際に現場見ねえと何とも言えねえな。
それとテテュスはアネモイやナナ、リオやセレスと仲良くなってるみてえだし、一安心ってもんだ。
食後の風呂はこれまでにねえほど効いたぜ、相当疲れる一日だったからな。
あとはジュリアへの口止めだが……するだけ無駄だな。
無視してほっときゃ飽きるだろ。
なんてことを自室のベッドで考えていると、部屋の外に気配を感じた。
こんな時間に誰だよ。
『コンコン』
「開いてるぜ」
女の部屋と違って鍵かける必要なんてねえからな、いつも開けっ放しだったが……入ってきた奴の正体を見て、心底後悔したぜ……。
「のう、ダグ。テテュスはヌシが欲しいのだ……」
ちょっと待て欲しいって何だ。
その顔で、何目ぇ潤ませて俺を見てんだよ。
その顔で、何頬を赤く染めてやがんだよ。
その顔で、俺ににじり寄ってくるんじゃねえ。
つーか何だよその服、いろいろ透けてんじゃ……。
あ。
『ぱくっ』
「……な……何してんだコラああああああ!!」
ん……もう朝か。
噛まれた首が痛え。
つーか体中痛え、あちこち噛み跡だらけじゃねえか。
……俺、治癒魔術使えねえんだけど……この格好で外歩くとか、ありえねえんだけど……。
「ん……んん……ダグ、おはようなのだ……」
「……ああ……」
「ふふふ、ダグはやはり美味しいかったのだ。それにアネモイの記憶の通り……人とまぐわうのも、悪くないのだ。少し前までは人なんかとこうなるなんて、思いもしなかったのだ……」
……俺も初めての相手が人じゃねえとは、思いもしなかったよ……。
しかし明るいところで改めて見ると、テテュスの白い肌がとても綺麗だ。女の体があんな柔らけえもんだとは知らなかったぜ……って、それどこじゃねえ。
どうすんだよこの全身についた歯型。
って……扉の前に何か落ちてるな。スライムと……手紙?
なになに……。
『治療用スライム:患部に当てると小さな傷なら一瞬で消えます。ロックより』
…………ロックううううううううううううう!!
何だよこれどういうことだよどこまで知ってんだよあの野郎場合によっちゃ消してやる畜生!!
スライムは有り難く使わせてもらうが、それとこれとは話が別だ!
速攻で歯型を消して服を着て、テテュスを部屋に残して訓練場だ! この時間ならロックはそこにいる!
「ロックどこだゴラアアアア!!」
「あ、ダグおはよー。昨夜はお楽しみだったねー」
「おいこら何で知ってんだどこまで知ってんだちゃんと話せコラ」
ロックの上着の胸元を掴んで持ち上げ……つーか……なん、だ、これ……。
ナナにリオにセレスまで、何でこっち見てニヤニヤしてんだ……。
アルトは……俺を見て、何だよその深い溜め息は……?
「ダグ……一つ忠告してあげます。……するなら扉をちゃんと締めて遮音結界を張るか、テテュスさんに異空間でも作ってもらってください。丸聞こえです」
…………は?
……何が?
丸聞こえって……全部?
そういや部屋の扉って、テテュスが入ってきてそのまま……。
閉めて、なかった?
はあ?
「ダグは激しかったのだ。それにお腹も満たされたし、来てよかったのだ」
テテュスいつの間に来た……つーか……何が、どうなって……。
「ダグの血肉は上位火竜のそれじゃからのう……テテュスの大好物じゃろうが、食ってはならんぞ? 今度火竜肉を調理してやるでのう、それで我慢して欲しいのじゃ」
「ダグと一緒にいると、美味しそうな匂いがしていろいろ抑えられんのだが、善処するのだ」
いつの間にか俺の手から離れてたロックが、ぶん殴りたくなるような笑顔をして俺の肩に手を置いた。
「ナカーマ」
……………………は?




