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英雄とスライム  作者: ソマリ
世界樹編
189/231

4章 第42話N わしはナナなのじゃ

「うああああああああ!!」


 ヒデオの悲鳴が、部屋の外まで響いている。

 ロックの言う通り、本当に目覚めたんだね……。


 ああ。


 だめ、視界がぼやける。


 扉をスライムで開けて、部屋に入る。


「ヒデオ!!」

「うううう……ナ、ナ……ナナ……俺は……俺は、守れなかった……う、うあああああ……」


 ヒデオが、起きてる。

 本当に、起きてる。


 良かった、良かったよう……。


 ヒデオはスライムに包まれたままシーツを掛けられていたエリーの、剥き出しになったお腹に縋り付いて号泣している。

 サラ・シンディにかけられたシーツもめくられ、お腹まで出ている。


「ヒデオ!」


 ヒデオの背中に抱きつく。

 私の体を包むスライム越しに、ヒデオの体温が伝わってくるよ。


 温かい。心臓も、動いてる。


 間違いなく、生きてる。


 生きてる!!


「ヒデオ……ばかものぉ……ばかぁ……起きるの遅すぎ……ぐすっ……」

「……マリエルが、教えてくれたんだ……俺、三ヶ月も寝てたって……エリーもサラもシンディも、まだ目を覚まさないって……ナナ……あれから、どうなったんだ……? それに……子供、は……? なあ、教えてくれよ……ナナ!」


『ぼよん』

「えっ?」

『ゴン!』


 勢いよく振り返ったヒデオの、思いつめた表情が見えたのはほんの一瞬だった。

 後ろから抱きついていた私を包む、スライムの塊に弾かれ……エリーが眠るベッドの角に、頭を強打……ヒデオ……。


「ぐおお……って……へ? ナ……ナ? その、お腹は……?」

「ばかものぉ……おぬしの子じゃ……元気に育っておるわ……」

「……は? ……えええええ!?」


 何素っ頓狂な声を出して固まってるのヒデオ。

 吹っ飛んで頭ぶつけたり変な声出したり、言いたいことがたくさんあるのに全部吹っ飛んじゃったじゃないか、全くもう。

 そして部屋の入口から顔を出したロック、何で私の顔を見て笑ってるんだ。


「何て顔してるんだよ、ナナ。それに今の言い方じゃナナのお腹にいるのは、ヒデオとナナの子だって思われても仕方ないんじゃないかな?」

「んなっ!? ち、違うのじゃヒデオ、これはその、ってロックは部屋に入ってくるでないわあああああ!!」


 ロックがあまりにも堂々としてるから気付くの遅れたけど、エリー達のめくられたシーツ、お腹まで剥き出しだからおっぱいも丸見えだよ!

 部屋の入口にいたロックめがけ、体からボールスライムを射出!

 ちっ、掴まれたか。それならブレスを――

「待てナナ、ブレスは駄目だろ! 出る、部屋から出るからやめろおお!!」


(今はキューちゃんじゃなくて男としてのロックなんだから、見たら駄目!!)

――すまんつい。だからもうブレスは勘弁してくれ!


「全くもう……ヒデオ、落ち着いて聞くのじゃ。まずエリー達の子じゃが、今はわしの中で栄養を与えておる。三人共元気に育っておるぞ」

「ナナのお腹にいるのは……俺の、子供……なの、か?」

「ヒ、ヒデオと、エリー・サラ・シンディの子じゃ! わ、わしとヒデオの子ではないぞ!! ちょっと預かっておるだけじゃからな!!」


 変な勘違いするから、急に恥ずかしくなってきたじゃないか!

 ぽかーんと口を開けやがって……全くもう……もう……。


「そ、そっか……よかった……ありがとう、ナナ……エリー達、は……?」

「間違いなく、生きておるわ――」

「ん、んん……」


 え? エリーが……動い、た?


「……うる、さいわね……」

「エリー……? エリー!!」

「んん……ヒデオ……おはよう、朝から何の騒ぎ……きゃっ」


 薄っすらと目を開けたエリーに、ヒデオが泣きながら抱きついた。

 エリーは状況を把握できてないようだけど……そんなの後だ。


「エリー、エリー……う……うあああああ……」


 私も抱きつきたいけど……今は、ヒデオに譲ってあげるよ。

 あとは……ん?


「ん……」

「うるさいかもー……」

「っ! サラ! シンディ!!」


 残った二人も揃って目が覚め、ゆっくりと体を起こしてぼーっとした顔でヒデオに目を向けると、私がいることに気付いて首を傾げた。


「は、はは……この、寝坊助どもめ……みな、おはようなのじゃ……」


 みんな、良かった……良かったよう……。


「ねえナナ? そのお腹、何? まさか私達が寝ている間にヒデオと!? それに私の子供は!?」

「随分寝てた気がするかもー? 寝てる間に産んじゃったかも?」

「ん。私達が寝てる間に致すとは許すまじ」

「ち、ち、違うのじゃ! 三人の子はみな元気に育っておる!! それにこのお腹はヒデオの子で、その……う……うわああああん!!」


 ああもう、説明しなきゃだけど、みんなが起きてくれて嬉しくて……。


 良かったよう……。


「うわあああああん、よかった、よかったのじゃああああ」

「サラ、シンディも……無事で、よかった……うああああ……」

「ちょ、ちょっとナナもヒデオも泣きすぎ! ねえ、何があったの!?」


 ヒデオがエリーから離れてサラ、シンディと順に抱きしめて無事を確かめていたけど、エリー達三人はヒデオを押しのけ私の前に来て抱きしめてくれた。

 私を包むスライムを少しどかして胸から上を出し、私もエリーから順に抱きついて無事を確かめ、一周してエリーの胸に顔を埋める。

 温かい。温かいよう……。ちゃんと心臓の音も聞こえるよう……。


「ふええええ……ぐすっ……みなは、ぐすっ……ヴァンに……ふえええ……」

「マスターに代わり、わたくしが説明致します。ヒデオ様・エリーシア様・サラ様・シンディ様はヴァンの攻撃を受け、死亡または瀕死の状態でした。そこでマスターが蘇生及び救命措置を行いましたが、皆様はおよそ三ヶ月の間眠り続けておりました」


 壁際に控えていたマリエルがこっちに来て、エリー達に説明してくれた。

 ごめんマリエル、お願いするわ。


「マスターは眠るお三方の胎児が成長していないことに気付き、栄養を与え命を救うためにご自身の体を生体部品と交換、お三方に代わり胎児を育てております」

「……そういえば……そう、ね。確かに死にかけていた記憶があるわ」

「ん。小さいドラゴンが出てきて、攻撃されたことは覚えてる」

「ヒデオがキンバリーと戦ってたから加勢して……その後どうなったか、思い出せないかもー……」


 思い出さないほうが良い、自分がどうなって死んだかなんて、忘れたままのほうが良いんだ。


「それじゃあたし達は、ナナのおかげで助かったのね。子供達まで……ありがとう、ナナ……たくさん心配かけちゃったみたいね」

「ん。私ももう平気。だからもう泣き止んで、ナナ」

「ナナちゃん、ありがとうね……」


 エリーの胸から離れて顔をあげると、手を出そうとしては引っ込め、また手を伸ばそうとしては引っ込める、変な踊りみたいなことをしているヒデオが見えた。


「ぐすっ。ヒデオは、何をしておるのじゃ……」

「あ、いや……俺も抱きしめようと思ったんだけど、その……入る隙間が……」

「……ふふっ……ばかものぉ……」


 エリー達が離れてくれたので、私の方からヒデオに近づいて抱きしめる。


「ナナ、みんなを助けてくれてありがとう。それに子供まで……大変だったろ?」

「ふふ……よいのじゃ。目を覚ましてくれて、こちらこそありがとうなのじゃ。じゃが、のう……」


 温かいなぁ……でも、気付いちゃったんだ。


 ごめん、これ以上は無理。


 一度気になったからには、このまま何事もなく続けるなんてできない。


「ヒ、ヒデオ……それにみなも、まずは……服を、着んか」


 私とマリエル以外、全員パンツ一丁だ。


 全くもう……。




 マリエルに四人の着替えと、服を着たら会議室に案内するよう頼んで部屋を出る。

 部屋の外にはリオとセレスが控えていて、私が出てくるのを待っていてくれた。

 二人共私の顔を見るなり口を揃えて「ひどい顔だ」と言い、リオには涙の跡や鼻水を拭き取られ、セレスには私の腫れぼったい目に治療魔術を施された。

 でも二人共ニヤニヤと嬉しそうな顔だったから、きっと私と同じ気持ちなんだろう。

 転ばないようにと、二人に手を繋がれて会議室に行くと、そこにはロック・アネモイ・アルト・ダグだけでなく、ガッソーまでいた。


「また置いていかれて三ヶ月放置されてはたまりませんからな! 無理矢理ついてきましたぞ!!」

「ガッソーはこちらで移住についての話を詰めた後、終戦についてプロセニアと話す窓口になってもらいます」

「そういえばプロセニアは放置したままじゃったの、任せたのじゃアルト」


 そしてアネモイに腕を掴まれているロック、なぜ目を逸して笑っている。

――捕まった宇宙人みたいになってるぞ。


 んなっ!

 両手はリオとセレスに握られ、胸から下は半透明のスライムで包んだまま飛行魔術で移動しているので、一見引き摺られているようにも見えるな……ちくしょう的確じゃないかロック……覚えてろ……。


 これから重い話をしなきゃいけないというのに……。


 ……ん?

――ナナさん、おはよう。僕どれくらい眠ってたのかな?


(おお、グレゴリーも起きたのじゃな。おはよう、寝ておったのは二ヶ月ほどじゃ。ちょうど今会議室に集まっておるでの、こちらに来るがよいのじゃ)

――わかった、僕もそっち行くよ。


 私の目に前に転移して来てフヨフヨ浮いている魔石の前に、空間庫からグレゴリー用の義体を出してやる。

 事前に聞いていたリクエスト通り、十歳位に見える男の子の義体だ。

 可愛らしい顔立ちに、金髪碧眼。

 隣でハァハァ言ってるセレスの手を振りほどき、リオにも手を離してもらって、両手で浮いている魔石を包む。


(これはわしとロックからの贈り物じゃ。頭に魔石を収納する空間があるでの、転移で中に入るのじゃ)


 手の中でぷるぷるっと魔石が震えると、姿が消えた。

 少しして目を開ける、少年型の義体。


「ああ……ちゃんと見えるし、人の体だ……ありがとうナナさん、ロックさん!」

「俺はくまのぬいぐるみ姿の方が良いと思うんだけどなあ」

「アホなことを言うでない、ロック。まあ、わしも同じ想いじゃがのう」


 みんなの笑い声を聞きながら、すねたような顔のグレゴリーに一つだけ注意をしておく。

 セレスにだけは気をつけろ。奴はロリコンかつショタコンだ。今のグレゴリーの姿は、完全にセレスの標的になり得るぞ、と。

 引きつった顔のグレゴリーが視線を向けた先に、異常なほどニコニコと笑うセレスがいた。ニコニコ顔なのに息が荒い。怖いわ。


 次いでロックがグレゴリーに近付き、何やら耳打ちし始めた。

 男性機能がどうこう聞こえたので、慌ててその場を離れる。

 そっちの造形はロックが担当したから知らないし、知りたくもないからね。

 ちょうどそこに、灰色の髪をした巨乳メイドが会議室に入ってきた。


「マスター。皆様をお連れしました」

「ご苦労さまなのじゃ、マリエル。みなに飲み物を用意してくれんかの」

「承知いたしました」


 ヒデオ達は知らない顔が二人いるしガッソーまでいるしで驚いていたが、とりあえず席につかせる。

 マリエルはすぐに他のメイドを従えて飲み物を持ってきてくれて、全員の席に並べてくれた。


 話をする前に魔力視の出力を上げてヒデオを見たけど……やっぱり、魔石に入ったヒデオしか、いない。

 さて……どこから話すべきか。




 まずヒデオ達とガッソーにグレゴリーの紹介だ。


「目覚めてすぐヴァンに捕まっちゃたんだ。そのあとナナさんに助けられて以来、お世話になってます」


 そう言ったグレゴリーの正体に真っ先に気付いたのはガッソーで、白目を剥いて呆けていたよ。

 グレゴリーにヒデオ達の紹介をすると、ヒデオのところでグレゴリーの目が止まった。

 同じ魔石生命体だってことは話してるからね、そのせいだろう。


(次はロックの紹介だけど、詳しい話は後回しにするよ。まずは経緯を話さなきゃ)

――おっけー任せろ。


「ナナの兄、ロックだ。妹が世話になってるね、よろしく」

「「「「……え?」」」」


 ヒデオとエリー達、四人の視線が一斉にこっちに向いた。

 特にヒデオ、酸欠の魚みたいに口をパクパクさせるんじゃない。

 ロックも任せろと言いながらいきなり何を言い出すんだ馬鹿。

 全くもう。


「詳しくは後で話すけど、俺は十五年キューとしてナナの中にいたから、みんなのことはよく知ってるよ。ヒデオ達がヴァンにやられて死にそうだったから、俺がナナの外に出てヴァンと戦い、ナナにみんなの治療を任せたんだ」

「キューちゃんって……へ?」

「ヒデオ、言いたいこともあるじゃろうが、まず説明が先じゃ」


 そこから私はヴァンの手で異界と地上界の融合が始まったこと、ヴァンを倒し魔石を砕いたこと、世界樹を吸収して異界との融合を遅らせたこと、エリー達の胎児が成長していなかったため一旦預かり、私の中で育てていることを説明した。


「あたし達が寝ている間に、そんな事があったのね……ナナにはほんと、迷惑かけちゃったわね」

「迷惑など思っとらんのじゃ。エリー達が無事に目を覚ましてくれて、本当に嬉しいのじゃ……」


 経緯はあらかた説明した。

 ここからの話は、気が重いな。

 でも胎児をエリー達に戻してからだとショックで何が起こるかわからないし、出産後となるとあとニヶ月位先になっちゃう。


 今、話さないとだね。


「さて……ここからが本題なのじゃ。結論から言うのじゃが……ヴァンの手にかかったエリー・サラ・シンディの蘇生はできたのじゃが……レイアスが、亡くなっておる」


 グラスに入った氷が溶けて崩れた、カラン、という音がやけに響く。

 その沈黙の中、ヒデオがゆっくりと口を開いた。


「……そう、か……やっぱり、そうだったんだな……」

「ヒデオ、気付いておったのか……?」

「夢の中に、さ……レイアスが出てきて……『守りきれなくてごめんなさい』『兄さん、今までありがとう』って……『楽しかったよ、さようなら』って……」


 うつむいたヒデオの目から、大粒の涙がぼたぼた落ちていく。

 そのヒデオに寄り添い、抱きしめるエリー達三人。

 ……私は、そこに……加わっちゃ、いけない……。

 支えたいけど……その役目は、嫁であるエリー達がすべきだから……。


「それと、レイアスと一緒に……俺が、いたんだ……『あとは任せた』って言われたけど……意味わからなくて、それがあったから、ただの夢だと思ってて……う、うう……うぁぁ……」


 ヒデオの嗚咽する声を、黙って聞いているだけの自分がもどかしい。

 それでも私は、ヒデオが泣き止むのを黙って待っているつもりだった。

 突然こっちを向いたエリーに腕を捕まれ、引っ張られるまでは。


「ナナまで泣きそうな顔、してるんじゃないわよ……」


 エリーが少しズレたことで空いた隙間に引き込まれ、ヒデオの前に立つ。

 少しためらったけど……私は空いている両手でヒデオの右手を、強く握った。


 私に気付いたヒデオも一瞬ためらったようだけど、皮が厚くてゴツゴツした手で、私の手を握り返してきた。

 するとヒデオの涙の量が増えた……ああ……この泣き虫な感じは、ヒデオだ。


「ヒデオの夢に出てきたもう一人のヒデオは、間違いなくヒデオ本人じゃ……。ヒデオ、心して聞くのじゃ……。ヴァンがヒデオに突き立てた短剣には、魂を破壊する魔術が込められておった。その魔術で……レイアスだけでなく、ヒデオも……死んだのじゃ」


 うなだれた頭を上げて、はっとした顔で私を見るヒデオ。

 そして怪訝そうな顔で私を見る、エリー・サラ・シンディ。

 その視線から逃げたくなるのを抑えて、乾いた唇を開く。


「わしが十五年前に死にかけた際、ヒルダが新しい魔石に魂を移してくれたおかげで生き延びたと思っておったが……その魔術、実は……複製を作る、魔術だったのじゃ」


 ヒデオが少し考えた後、ロックの方を見た。

 エリー達は首を傾げているけど、ヒデオは気付いたんだね。


「そうじゃ、ヒデオ。ロックこそが……十五年前までナナであった存在じゃ。わしはロックの、複製なのじゃ。そしてヒデオ……わしは死にかけたおぬしの魔石に、同じ魔術を使ったのじゃ……」


 あの時は、こうするしかなかったんだ。

 ごめんなさい、ヒデオ。

 勝手なことをして、ごめんなさい。


「……ありがとう、ナナ」

「……え?」

「ナナがいなければ、誰一人助からなかった。もちろん、俺も。だから……そんな顔、するなよ」


 ヒデオの左手が伸びてきて、私の目の下を親指で優しくこすった。

 あれ、いつの間に私まで、泣いてたんだろう……。


「ねえ、ナナ……あたしイマイチよくわかってないんだけど……今のヒデオと前のヒデオとは何かが違うの?」

「全く同じじゃ。本物と複製に違いは無い……そうじゃな? ロックよ」

「思考も行動も完全に同一だよ。ただ俺とナナの場合は、ナナが女性化してから別人になったけね」


 ロックの言葉を聞いたヒデオが、大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出した。

 まだ少し戸惑っている様子はあるけど、私を見て優しく微笑んでくれている。


「夢に俺が出てきた意味が、やっとわかったよ……でもこれで……完全にナナと同じ存在になった、ってことだよな?」

「それはそう、じゃが……」

「ナナは、ナナだ。本物とかコピーとかじゃなく、ナナなんだ。俺もそう。俺は、ヒデオだ。ナナは俺を救った。救ってくれた。だからもう一度言うよ」


 私の握る右手を優しく解いたヒデオが、両手を私に伸ばしてきた。


「ありがとう、ナナ。元のヒデオの分まで言うよ。ありがとうナナ、愛してる」

「……ば、ばかものぉ……おぬしは、自分の嫁の前で、何を……ふ、ふぇ……ふぇぇぇ……」


 ヒデオの腕の中、温かい。


 そうだ。


 このヒデオも、本物のヒデオなんだ。


「ふぇぇぇ……あ、ありがとう……ヒデオ、ありがとう……ふぇぇ……」


 私もそう。


 私は、ナナだ。


 本物とか複製とか関係ない。


 私が、ナナなんだ。

4章世界樹編はこれにて終了となります。

次章から完結編です。

引き続きお楽しみいただけたら幸いです。

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