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英雄とスライム  作者: ソマリ
世界樹編
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4章 第37話N 何でここにいるの

 一度全員でブランシェに戻り、ヒデオ達を魔王邸の部屋に寝かせてピーをそこに置いておく。

 ピーの生命維持が頼りだ。頼んだよ。


 ヒデオ達のことを考えると怒りとか悔しさとか悲しさで頭がぐちゃぐちゃになるから、今は考えないでおく。


 きっと……いや、絶対に、目覚めるよね。


 このままヒデオ達が目覚めるまでここに居たいけど、私にはしなければいけないことがある。

 みんなが目覚めた時に大陸が壊滅してたなんてなったら、顔向けできない。


 私は戦闘はまだちょっと無理だけど、多少痛いのを我慢すれば普通に動くことならできるようになったので、会議室に移動してアルトに情報収集を始めさせる。

 久々だけど、地球にいた頃はいつも感じていた慣れた痛みだ。


 会議室にはリューン・イライザ・ミーシャ・ペトラ・ジュリア・ニースも呼び出し、私の側近全員集合だ。



 異空間の解除は多少のタイムラグがあることはわかっている。

 どうも大陸規模ということもあり、そのタイムラグも相当大きいようだ。


 このエスタニア大陸で世界樹から一番遠い都市は、南のジース王国の南端にある都市グアラス。

 グアラスに居るアルトの部下によると、都市中に半透明の樹木や魔物が現れ、実害はないものの住民が恐慌状態で大騒ぎらしい。

 グアラスのある岬の南端では、既に異界にいた魔物が実体化しているという報告も受けた。


「相棒……キューちゃんによると、異界と地上との完全融合まで六時間らしい。このままだとあと一時間もしないうちに、ここブランシェも異界と融合するよ」


 ロックはジュリアに持ってこさせた服にジャケットを羽織って座ってる。隣にはアネモイがピッタリとひっついてるけど放っておこう。

 しかしキューちゃんはキューちゃんで存在してるんだね、二重人格?

 ……いいや、この話はあとあと。


「ナナさん、異界に残っていた鉱夫全員の地上転移を命じました。間もなく完了します」

「ナナ。魔王国全軍に緊急招集をかけた。いつでも動けるぜ」


 時間が足りない。説明する時間も惜しいから、ゼルとオーウェンにも緊急強制通信だ。


「オーウェン、ゼル、聞こえるの? ナナじゃ」

『うお! びっくりさせんじゃねえよ、嬢ちゃん。この地鳴りの件か?』

『ナナ殿か。それとも、アトリオンから世界樹並みの火柱が上がったと緊急通信が届いているが、その件かな?』


 どっちも正解だけど世界樹並みは言い過ぎだろ。


「時間がないでの、手短に話す。復活したヴァンによって世界樹の異界維持機能が破壊され、現在は異界とエスタニア大陸が融合の真っ最中じゃ。地鳴りは異界と融合する空間の音、火柱はわしがヴァンを討った時の物じゃ」

『……ナナ殿。このあと大陸は、どうなる?』

「異界の木々や魔物が地上に現れるのじゃが、その際に人や建物と重なっておった場合、融合してしまうのじゃ。ゼルとオーウェンには国民の避難誘導を始めてほしくてのう、ジース王国では既に融合が始まっておる」


 二人が絶句する様子がわかる。

 それもそうだろう、下手をすれば各都市で壊滅的な被害が出る。


「アルトはここで情報を集め皆に指令を、ダグは軍を率いてリオ・セレス・ペトラ・ミーシャと共に、可能な限りジース・ティニオン両国の各都市に現れる魔物の駆除を頼むのじゃ。リューン・イライザ・ジュリア・ニースは国内を頼んだのじゃ。ゼル、わしの配下を各都市へ向かわせるでの、説明も頼んだのじゃ。わしは――」


 この後私が何をしようとしているのか、みんな気付いてるっぽいな。

 それぞれの微妙に納得してないような顔を見ながら、言葉を続ける。


「わしはこれから世界樹に飛び、融合の遅延もしくは停止ができぬか、調べてくる。ロック、付き合うのじゃ」

「……できれば俺は、ナナにはここに残って欲しいんだけど……言っても聞かないよね。俺もそうするだろうし」

「私も行くわよ、ナナ、キューちゃん!」


 アネモイはできれば置いていきたいが、これでも世界樹が作った原初生物の生き残りだ。

 何か私の知らない解決法を、見つけてくれるかもしれない。

 ロックに視線を移すと、深いため息を吐いていた。


「俺はキューちゃんじゃないって何度言えば……仕方ないなあ。ナナもアネモイも、俺が守るよ。でもアネモイは世界樹からの魔力線だけは、自分で防ぐんだぞ? 俺もキューちゃんも、そこまで余裕があるかわからないからね?」

「ありがとう! ……ロッ、ク……」


 ロックの名前を言い淀んで頬を赤く染めるとか、面白いことするなーアネモイ。あははー。

 ちょっと寂しい気もするけれど、これからアネモイのことはロックに任せよう。

――おま……他人事だと思って……。


 詳しい話は落ち着いてからね。それよりやることやってしまおう。


 ところでアルトやリオ達が入れ替わり立ち替わり、ロックに私のことを次々頼んでいくんだけど……私ってそんなに危なっかしいのかな。

――片腕片足無くて頭かち割られて首が落ちかけて、穴だらけでハラワタ引きずり出されたヴァルキリーなんか見せられたら、当然だと思うけどね……。


 ……反論できない。




 まず世界樹の根本に跳んだ私達は、ロックが見つけたという短剣の片割れを探す。

 伸びてくる魔力線は世界樹の幹から出てきた一本だけだったので、適当に防ぎながら幹の周囲を歩くと、それはすぐに発見でした。


「こちらの短剣は、対になる物から魔力の供給を受ける術式と……異空間生成魔術の破壊術式、もう一つは……なんじゃ? 何かを探す術式のようじゃのう。対象は……異空間生成魔術?」

「ねえナナ、さっきから魔力線を防ぐ度に、びりっ、びりって痛みが走るんだけど、どうしてかしら?」

「それはのう、アネモイ。恐らくじゃが、世界樹が強い痛みを感じておるのじゃろう。それが防いだ一瞬に伝わって来るんじゃろう」


 キューちゃんに自動防御させていた時は気付かなかったけど、自分で魔力線を防御してると相手の強い思いが一瞬流れてくるっぽいんだよね。

 そう、ヴァンと戦った時もヴァンの腹にあった魔石から、助けて、助けて、って声が聞こえたみたいに……。あ。


「ナナ! そいつ何か知ってるかもしれない、聞いてみよう!」

「う、うむ。……正直、忘れておったわ……」


 ロックの声を聞くまでもなく、私もちょうど思い出したところだったんだよ。

 ひび割れた魔石を取り出して、魔力線接続。

 キューちゃん、世界樹からこの魔石に伸びてくる魔力線を防いであげて……って、私の中にいないんだった。

―――承知しました。


 あ、繋がったままなんだね、頼んだよキューちゃん。


 さて、魔石の中に居る誰か、これで聞こえるかな?

(うん、誰かわからないけどありがとう。助かっ……ナナ? え、何だこれ。……あ、そうか。理解した。異界と地上の融合による被害を減らしたいんだよね?)


 話が速くて助かるよ。何か良い手はないかな?

(もう一度異空間生成で異界を作るのは現実的じゃないなあ。うーん……せめて融合を遅らせれば、何とかなる? 抗魔術式の阻害なら……でも元になる異空間生成術式の発動点を探す必要があるか……)


 どういうことじゃ?

(抗魔術式ってのは、ナナさんがヴァンの異空間を壊そうとして使った術式だよ。ナナさんは勘違いしてるみたいだけど、その術式は対象が発動させている全ての魔術や魔法陣の術式を徐々に破壊し、効果を打ち消す魔術なんだ。世界樹……って全部、魔石なの!? ちょっと待って、ごめんナナさん。もう少し記憶読ませてもらうね)


 ううむ、あまり良い気分はしないけど、いい案が出るなら我慢するよ……。

――あ。この短剣にあるもう一つの術式、探索系の奴……? これとその、術式破壊の二つを組み合わせてれば、ヴァンの魔石に触れなくても異空間を解除できたんじゃ……。


 ロック……無事勝てたから良いようなもの、今更だよ……全くもう。

(ナナさんありがとう、だいたい状況は理解したよ。それと記憶領域と思考領域のブロックはしたほうが良いよ? 全部ダダ漏れになってるから。とりあえず世界樹に関する記憶だけ、読ませてもらったよ)


 ……記憶領域と、思考領域のブロック? そう言えばロックって私の思考読んでるっぽいけど、私からはロックの思考が読めないよね。そのせい?


 って、何慌てて顔を背けてるのかな、ロック? 私の目を見て答えろおお!!



 その後は少年声の魔石から記憶と思考領域のブロック法を聞き、ロックにだだ漏れになっていたなんやかんやを遮断した。

 追求したいことが増えたぞ。全くもう。


(それで話の続きだよ。世界樹のどこかに、異空間生成魔術を発動する核になった魔石または魔法陣があると思うんだ。それを探して、破壊を遅らせるのが一番だと思うんだけど……多分無理だよ。ごめんね、正直他に良い方法が思いつかない)


 ん? 何で無理なの? 短剣にある探索系の術式は使えないの?

(その術式って探索に似てるけど、実際は探すっていうより手当たり次第しらみつぶしに術式を発動させるものだし、相当魔力を使うんだ。対象の魔石数に比例すると思ってくれればわかりやすいかな?)


 そうか、それで大量の魔力が必要に……。


「ねえナナ、いっそ世界樹に聞いてみたらどうかしら? こうやって……んひいいい!!」

「ば、馬鹿もん! 世界樹との接続を切るのじゃ!!」


 アネモイ何してんの! 以前世界樹と接続して気絶したの、忘れたの!?

 世界樹から伸びている魔力線と繋がったアネモイが、涙目で魔力線を切ってロックに抱きついた。

 そういえば前回は気絶して記憶なくしてたっけ……もう。


「痛いわ! ねえ、ものすごく痛かったわ!!」

「だろうなあ……世界樹の強い想いが魔力線を防ぐ度に伝わってきてるんだから、繋いだらどうなるかくらい想像しようよ……」


 ロックの言う通りだ。というかロックもアネモイも私の手にある魔石に魔力線つないでるけど、良いのかな?

(ロックさん? もアネモイさん? も、記憶領域と思考領域のブロックはできてるから、一気に情報が流れ込んだりとかしてないから大丈夫だよ。この会話が聞こえてるだけかな)


 そっか、それなら良いけど……ところで名前を聞いていいかな?

(あ、こっちこそ自己紹介が遅れてごめんね。僕の名前はグレゴリー・ノーマン。気軽にグレゴリーって呼んでね、ナナさん、ロックさん、アネモイさん)


 わかったよ、グレゴリー。

――あれ、聞いたことがある名前だな……相棒?

―――個体名:グレゴリー・ノーマン。全ての魔術の生みの親として、歴史に名を残す魔術師の名前です。


 ……同姓同名?

(多分本人? 魔石に入って二千年以上経ってるし。いやあ、歴史に名前を残してるとか、ちょっと恥ずかしいなあ)


 終わってから聞きたいことがまた増えたよ……。

 ロックも絶句してるし。


 とりあえずグレゴリー、体痛くない?

(……体はないけど、全身が痛い。正直我慢してるけど、結構きついんだよね)


 これだけ大きなヒビが入っていたら、そうだろうね。

 ありがとうグレゴリー、しばらく私の空間庫で休んでて。

 終わったら魔石治してあげるから。

(ありがとうナナさん、お願いするよ……)


 グレゴリーの魔石をしまって顔をあげると、不安そうなアネモイの顔と、呆れ顔のロックの顔がある。

 おかしいな、もう考えは伝わってないはずだよね?


「そう不思議そうな顔するなよ、ナナ。どうせ痛いの我慢して世界樹に接続して、術式の場所を世界樹に聞いて遅延化させようとしてんだろ?」

「やれやれ……何でわかったのじゃ?」

「……話すと長くなる。でも直接繋ぐのは許さないよ? さっき試しに繋いでみたけど、もの凄い激痛で会話どころじゃない。だから……俺が接続する。ナナは俺に接続して、俺を通して話すんだ」


 いつの間に何してんのロックまで。


「ふふ……兄として、わしを守るか? 不思議な男じゃのう、キューちゃんとしてわしの中にずっと入っていたからかのう、他人とは思えぬ。わしも何となくわかるのじゃ。わしが拒否しても、無視して魔力線を繋ぐ気じゃろ?」

「まあ、そうなるかな。アネモイは俺との魔力線切って下がってな、繋がってると痛みが伝わるかもしれないからね?」


 ロックの腕から慌てて離れたアネモイは、今度は悲しそうな顔で私とロックを交互に見ている。

 アネモイがいなかったら、世界樹から直接聞くなんて考えつかなかったかもしれない。

 ありがとうアネモイ、ここからは私の仕事だ。


「大丈夫じゃ、アネモイ。少し待っておれ」

「じゃあ行くぞ、ナナ……ぐっ……」


 世界樹からの魔力線を繋げたロックのうめき声を聞きながら、私はロックとの魔力線を太くして、それを通して世界樹に……いたたたたた! 痛い、痛いよこれ!

 しかもこの痛み、魔力過多症の酷い時とか魔石が割れそうな時にそっくり!


 ロックを通してこの痛みって、ロックにはどんだけ激痛が行ってるの!?

 とにかく目を閉じて集中、世界樹との対話を……たくさんの意識が混じってる? くっ、だめだこいつは自我がない、痛みしか伝わってこない!

 奥に……別の意識……だめ、これも自我が無い……水竜のテテュスが「会話ができる存在じゃない」って言ってたのは、このことか!

 でもこれだけたくさんの意識があるんだ、きっと会話できるやつもどこかにいるはず!

 急いで次に……って、きついなこれ、痛みで集中が途切れる。

 でもロックはもっと痛いんだ、がんばれ私!


 ……あれ? 痛みが軽くなった? これなら探しやすい!


「んひいいい!!」

「な、馬鹿アネモイ! 離れろ!!」

「んひい、いーやーよーーー! 私も、ナナとロックの手伝いくらい、できるんだからああ!! んひいいい!!」


 目を開けるとロックの背中にしがみつくアネモイがいた。

 しかも私とロックを繋ぐ魔力線に割り込んでる?


「アネモイ、何をしとるか!!」

「ねえナナ、痛いの、だから早く、見つけてええ、んひいいい!!」

「くっ、あとで説教じゃからな!」


 もう、アネモイの馬鹿! 絶対、絶対に見つけてやる!!

 痛みはほとんど無い、これなら! 奥へ……もっと奥へ……っ!?


 あれか? 私に気付いた意識が、こっちに向かって……え。


 一つじゃ、ない?


 待って何この数!!


「ぐああああ! ナナ、上だ!!」


 ロックの叫び?

 って、何この上から伸びてきた魔力線の数!!


「こいつらに、繋いじゃだめだ……ぐあぁ……」


 ロックに殺到する、何百という魔力線。

 私とアネモイにも伸びてきているが、ロック、いやキューちゃんが防いでくれてるの?

 でも数が多すぎて、防ぎきれてない!


(死にたくない……死にたくない……)

(魔物なんかに……うううううう……)

(どこ……わたしの、愛しい人……どこ……)

(奴隷のまま生きるくらいなら、いっそ……)

(痛いぃ……痛いよぉ……)


 くっ! 痛いのはこっちもだよ!! 何だこれ、世界樹の意識? いや……死者の意識か!? 何で? 誰の!? 勝手につながってきた魔力線は全部切って……私を見つけて、近付いてきた意識ってこれか!!


 世界樹に混ざっているたくさんの意識って、この死者の意識のことか!


 上の枝葉から伸びてるものと、何もない空中からも伸びて来てるって何!

 数が多すぎて探すどころじゃない、一旦退避するしか……ん?


 魔力線が、減った?


 いや……キューちゃん以外に、誰かが魔力線を止めている?


 誰?


 何かが、そこに……いる?


 魔力視、出力上昇!


 ……いた。


 魔力線に混じって、たくさんの魂の魔素が、周りに集まってる。


 その中の五つが、他の魂や魔力線が私に近付かないよう、止めている。


 何だろう。


 とても、温かい気がする。


 しかも私だけじゃなく、ロックやアネモイにも伸びていた魔力線を防いでくれているようだ。


 ロックがその五つの魂に気付いて顔を上げ……涙を、流した。


「ナナ……魔力視の出力を、もっと上げるんだ……」


 今すでに限界近くまで上げてるんだけど、と思っていたら、ロックから大量の魔力が流れてきた。

 いや、魔力じゃない? これ、どこかで……アネモイの力?


 とりあえず、これなら! 魔力視、出力上昇!!


 空中に浮かぶ五つの魂が、うっすらと形を変えていく。


 人の、型?


 やたら大きいのが一つ、そして小さいのが一つ。

 他は二つが男性で、一つは女性らしいシルエットだ。


 男性型の二つが一番早くはっきりと形を取ったけど、すごく薄くて視えにくいだけじゃなく、世界樹からの魔力線を防ぐために背中を向けたままで、顔が見えない。

 でも、そのまるっきり同じ二人の後ろ姿……私がよく知っている人とまるで同じ……。



 次にはっきり視えてきたのは、大きい奴だ。

 上半身が人の形だけど、下半身が……膨れて……ク、モ……アラクネ? おばあちゃん……バー、ビー……バービー!?


 優しげな顔をこっちに向けるその顔を、私が見間違えるはずがない。

 最期を看取って吸収した……アラクネの前族長、バービーだ。

 なん、で……?


「はは……声までは聞こえぬよ、バービー……」


 口を大きく動かしている、半透明のバービー。

 聞こえないけど、何を言ってるかわかるよ。

 うん、しっかりしなきゃだね……。



 次に姿を視せた魂は、女性と子供。


 母と娘。


 寄り添って笑顔を私に向ける二人の、その姿……。


 忘れるものか。私がこの二人を、忘れるものか。


 でも何で笑顔なの、私は二人共守れなかったんだよ……。


「ヒルダ……ノーラ……」


 私は一緒にいたいっていう我儘で、二人の遺体をゴーレムにしたんだよ?


 何で……「ありがとう」って、口を動かしてるの……。


「許して……くれるのかの?」


 二人の口がゆっくりと動いた。

 「ばか」と「ナナ大好き」と、動いた気がする。



 そして残る二人の男性が、振り向いた。


 向こう側がはっきりと透けて視えるほど希薄な二人は、同じ顔をしていた。


 そんな気は、していた。


 でも嘘だと思いたかった。


 似ているだけ、気のせいだと思いたかった。


 私のよく知っている、顔。


 私が愛した人の、顔。


「何で……何でここにおるのじゃ……何でじゃ! ヒデオ!!」

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