表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄とスライム  作者: ソマリ
世界樹編
165/231

4章 第18話N 言葉は溝を埋めるのじゃ

「そんな沈んだ顔をするくらいなら、倒した相手とわざわざ言葉を交わさなければいいんじゃないかしら?」


 海竜の吸収後、ぶぞーが倒した魔物達を集めて吸収していると、ツノを押さえて涙目のアネモイから質問を受けた。

 顔をあげるとリオを筆頭に側近四人も大きく頷いている。


「ただの自己満足じゃよ。何を助け何を排除するかは、わしの利己的な考えに過ぎぬということもわかっておる」


 魔物を倒せば素材も手に入るし私の能力も上がる。でも魔物だって生きるための営みがある。家族もある。


「魔物じゃからという理由だけで殺す必要は感じておらぬが、人に害を成す可能性があるなら排除すべきというのも理解しておる。しかしせっかく意思の疎通が出来る相手じゃからのう、殺す必要のある相手かどうか確かめたかっただけじゃ」


 実際、ぶぞーに命じて狩らせた魔物の中にはまだ幼いと思われる、ハリネズミのような針が背中についた熊っぽい魔物や、巨大な豹っぽい魔物なども混じっている。

 襲われたので仕方がないといえばそれまでだが、もし意思疎通が出来たなら倒す必要は無かったかもしれない。


「けっ、何を悩んでるのかと思えば偉そうに。殺さなきゃ殺される、自然の摂理じゃねえか」

「一体何をどこまで背負うつもりか知りませんが、僕達も背負いますから一人で悩むのは止めて下さい」

「姉御は、助けられる命はちゃんと救ってきたじゃん。利己的で何が悪いの?」

「ナナちゃんの悪い癖ねえ~?」


 呆れ顔の四人に集中砲火を浴びせられた。そんなに寄ってたかって叱らなくてもいいじゃないか、くすん。


「仕方ないわね、今度から四人が全ての魔物のトドメを刺しなさい! そうすればナナがいちいち悩まなくても済むわ!!」

「おう、言われなくても……って何でアネモイが仕切ってんだよ……」

「気にしたら負けよ!」


 アネモイ……ポンコツなりに気を使ってくれているのだろうか。

 全くもう。


「ではアネモイのことは気にせず世界樹の調査に向かうとしようかのう」

「えっ?」

「また魔力線が繋がって、気を失うかもしれんがの」

「ええっ!?」


 涙目で私にしがみついてぷるぷると首を振るアネモイの頭に、私の頭上にいるミニスライムを乗せて留守番を命じる。

 疲労の激しいダグとセレスにアネモイを任せてわっしーで留守番してもらい、私はリオとアルトの三人で島の世界樹へと向かうことにした。


 なお海竜は水属性の上位竜で、ブレス器官を吸収・解析したことで風の上位竜との違いを比較でき、これによって他の属性のブレス器官も複製できるようになった。

 霧のブレスも吐けるようになったが、これは火の魔素を混ぜるとかなり使えるかもしれない。

 高温の水蒸気は、ヘルシーな調理にもってこいだからね!

 あとは他の魔物達も含め、魔素操作で代用できる能力ばかりだったので新しく出来ることは特に増えていないが、ハリネズミや豹はそのうちミニサイズで作ろうと思う。

 それよりもまた12センチ級の魔石が一つと、8センチ・10センチ級魔石がたくさん手に入ってしまった。

 これもあとで使いみちを考えよう。



 雪原の世界樹にいた白いフレスベルグと同じくらいの大きさの、ペリカン? みたいな鳥の魔物を倒しつつ、空中から世界樹へ向かう。

 だが襲われたのだから普通に戦うし倒すと言っても、アルトもリオも私には何もさせてくれなくなってしまった。

 むー。


 世界樹の枝先に着くと魔素で作った円盤型の刃を回転させて、丸ノコのようにして細い枝を一本切り落とした。

 アルトは目を丸くし、今後の参考にしますと言って早速真似をしていた。

 そして木の枝にしか見えなかった世界樹の枝は、みるみるうちに黒く変色し魔石と同じ色に染まった。

 その黒い枝の両端を持ち、力を入れる。


『バキッ!』

「え……ナナさん、素手で折れるのですか?」

「不思議じゃのう、魔石化すると逆に脆くなるとはの」


 細い枝のような魔石は、力を入れると簡単に折れてしまった。強度は普通の魔石と変わらないようだ。

 今度は枝を切り落とした部分に、魔石化した枝をくっつけてみる。


「融合……しましたね……」

「普通の、魔物から取り出した魔石はどうじゃ……むう、これもくっついたのじゃ。しかも……枝のように姿を変え、伸びておる……」

「これ全部魔石ってこと? こっちが本当の姿なのかな!」


 またわからないことが増えてしまった。


 とりあえずここの世界樹も雪原の世界樹と同量の魔素を湧出させていることはわかったので、もう一本の世界樹も念の為確認しに行こうと思う。

 これが本来の世界樹の魔素湧出量だとすれば、万が一アトリオンの世界樹が力を取り戻したらアトリオンは壊滅しかねない。

 それどころか雪原と島の世界樹を見た限り、魔素濃度が特に高いのは世界樹から半径2000キロメートル前後。ティニオン王国の王都アイオンもギリギリ入るかどうかの距離だ。

 異界も魔素が濃かったが、この世界樹付近はそれ以上。いつ瘴気化してもおかしくない。


 それにしても……一体どうやって世界樹を用いて、異界などというものを作り出せたのか。

 アトリオンの世界樹も調べる必要があるな。それと各国の歴史だ。 


「とはいえ……喫緊の課題ではなかろう。ひとまずは情報収集のみとし、プロセニアの問題が片付いたらゆっくり調べるとしようかのう」

「それもそうですね。必要なら転移で調べに来たら良いだけですし、水棲亜人の集落へ向かいましょうか」


 折った世界樹の枝を元の場所にくっつけて、わっしーのところへ戻ることにする。

 途中で魔石視の仮面をつけて振り返ると、大量の魔素に彩られ光の柱と化した、世界樹の姿が視える。

 魔力視を解除して魔石視の仮面だけで視ると、立派な大樹がはっきりと視えた。


 間違いない。世界樹は、巨大な魔石の塊だった。




 わっしーのところに戻りミニスライムを抱いてご機嫌のアネモイからスライムを奪い返し、ついでに四人の頭上に乗せっぱなしだったミニスライムも回収する。

 というか約一名、金髪の不審者が胸の谷間にスライムを挟んでご満悦だったが、これも問答無用で回収した。

 女性陣は以前渡した青スライムを空間庫に入れて持ち歩き、わっしーの中で寝る時も枕にしていつも使っているだろうに。

 どうして私のスライムをみんな離したがらないのか、理解に苦しむよ。


 世界樹のある島の西、大陸側は高い山々が連なり、またわっしーよりも大きな鳥の魔物の姿も多数確認できたため、周辺の確認ついでに山脈の南側を迂回して西へ飛んだ。

 およそ八時間ほどで次の島の上空に差し掛かった。

 その島は南北に細く伸びる、日本の本州に近い形だ。そのやや南寄りの海岸線に、海竜に流されたと思しき集落跡があった。

 高台に残る廃屋は見たところほぼ原型を保っているが、壁は蔦で覆われ屋根も抜け落ち、捨てられてから十年以上は経っていると思われた。


 そのまま西へ三時間ほど飛べば、人が住んでいるらしい大陸に近い島の集落に着くのだが、日が完全に落ちているため集落跡にわっしーを降ろして翌朝の出発とする。

 このまま行くと深夜の訪問になっちゃうからね。


 この日の夜はせっかくなので海で魚を捕り、海底にいた白身の魚は過熱水蒸気ブレスで蒸し焼きにし、赤身魚は刺し身で頂いた。

 蒸し焼きの白身魚は五人全員に好評で、特にアルトとセレスが気に入ったようだった。

 刺し身はダグが気に入ったようだが足りなかったのか、追加でカツオのような1メートル位ある魚を捕ってきて、そのまま齧り付いていた。ワイルド過ぎるだろ。それと真似しちゃ駄目だリオ。


 しかしどちらも醤油を使ったため残量が心許ないな、明日向かう集落で補充できればいいなー。



 そして早朝に出発し、わっしーを集落の手前で着水させて海からゆっくりと集落へ近付く。わっしーの甲羅の上に全員立って、敵意がないことを示したつもりだ。


「ねえナナ、囲まれているように見えるのだけれど気のせいかしら?」

「水棲亜人というから人魚のようなものを想像しておったが、これはこれで驚きじゃ! 魚にカニ、カメやワニの亜人と、ずいぶんと種類が豊富じゃの!」


 銛のような武器を手に周囲を泳ぐ水棲亜人達はヴァリエーションに豊んでおり、それらを観察しながらゆっくりとわっしーを進める。

 水面から出る顔が明らかに人とは一線を画した亜人たちは、顔がサメみたいだったりワニみたいだったり魚のように目が異様に離れていたり、硬質な皮膚というか甲羅に覆われているような者が多い。

 全員が男で上半身は裸、下半身はふんどし一丁というスタイルは、海の漢を感じさせる。

 そんな警戒心全開の亜人達を観察しながらわっしーを進め、集落が肉眼で見えて来た辺りで正面に人の顔をした者が水中から姿を現した。


「そごで止まれ!」


 言う通りわっしーを止めて相手の様子を見る。それはハゲ上がったツルツル頭の老人で、白い口髭を蓄えているだけでなく背中に亀の甲羅まで見える。


「ねえナナ、あれって亀仙――」

「アネモイ黙るのじゃ、それ以上はいけない。キューちゃんも変な事を教えるでない、全くもう」


 つぶらな瞳を隠すサングラスとアロハシャツを渡したくなるような亀の亜人は、私達がわっしーを止めたのを確認するとゆっくりと近づいて来て、わっしーをまじまじと観察し始めた。

 同類だから気になるのだろうか。


「この亀はわっしーといって、わしが作ったゴーレムなのじゃ。生き物ではないし暴れたりせんから、そう警戒せずともよい」

「……なたじは何もんだ? わんどの村さ何しさきたど」

「……はい?」


 あれ? やばい、何言ってるか微妙にわからないよ!?


「なたじは、何もんだ? わんどの村さ、何しさ、きたど」

「ええと……わしらが何者で、村に何をしに来た、と質問しておるのじゃな?」

「んだ」


 んだ、って何!? 返事!?

 微妙に会話が出来そうで出来ないよこの人たち!

 いくらゆっくり話してくれても単語がわからなかったら意味ないよ!!

大変申し訳ありませんが、今話より不定期更新とさせて頂きます。

日曜午前と可能であれば水曜の更新予定です。

今後とも宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ