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英雄とスライム  作者: ソマリ
世界樹編
158/231

4章 第11話Q? 結婚式だよ

「ではこれより、成婚の儀を執り行います」


 アルトから式の開始が告げられると、ナナが白の軍服の上から真っ赤なストールを肩に掛け、壇上へ立った。続いてその両隣に、緑のストールを掛けたリオと、水色のストールを掛けたセレスが立った。


「新郎、レイアス・ヒデオ・クロード」


 アルトの呼びかけにまずはハーレム野郎が待機室から現れ、壇上まで続く真っ赤な絨毯の上を歩きナナの前に立った。


「新婦、エリーシア・ライノ」


 待機室からマルクとリネットと並んで、足首が隠れるマーメイドラインの真っ白なドレスに身を包んだエリーが現れた。綺麗なボディラインがよく分かる、人魚のようにスカートの裾だけが広がったドレスだ。

 エリーの目は既に涙が決壊寸前だ。なんたってエリーの両親を本人には内緒で連れてきてもらうよう、ナナが手を回していたからね。

 マルクの足もナナが治してあるので、三人並んで腕を組み、しっかりとした足取りでヒデオの前まで行くと、ヒデオとナナに深く一礼し、マルクとリネットは壇上から降りて観客席最前列の関係者席に向かった。


「新婦、サラ・ロット」


 サラは膝下丈のプリンセスラインの真っ白なドレスで、スカート部分が何重ものフリルで飾られて膨らみ、とても可愛らしいドレスだ。

 その隣にはこれまた内緒で連れてきたサラの父カイルが立ち、腕を組んで壇上へと歩き出した。

 サラは既に涙腺が決壊しているが、ジルが施した大人っぽい化粧が一切崩れていない。サラの顔にうっすら魔素が見えるから、何かの魔術だろう。

 サラもヒデオの前まで行くと、ヒデオとナナに一礼してカイルも関係者席へ向かった。


「新婦、シンディ・クルス」


 シンディは真っ白なミニのベルラインドレスだ。腰からふわっと広がり、膝が隠れるかどうかの辺りまでの裾丈の、比較的シンプルなドレスだ。

 そのシンディの隣には、シンディ以上に緊張している女冒険者のクイーナが、スーツ姿で立っていた。

 シンディの親代わりというと、ヒデオと合う前にずっとパーティーで面倒を見てきたという彼女しかいないからね。

 シンディはエリーやサラとは逆に、終始照れたような笑みを浮かべ、嬉しそうにクイーナの腕にしがみついていた。



 ナナの前、左側にヒデオが、右側にエリー・サラ・シンディが並ぶと、ナナが一歩前に出てヒデオの方を向いた。


「これより制約の儀を行うのじゃ。新郎レイアス・ヒデオ・クロード。おぬしは幸せな時も、困難な時も、病める時も、健やかなる時も、死が四人を分かつまで愛し、慈しむことをここに誓えるかのう?」

「誓います」


 即答するヒデオにナナはわずかに微笑むと、今度はエリーたちの方を向いた。


「新婦エリーシア・ライノ。サラ・ロット。シンディ・クルス。おぬしらは幸せな時も、困難な時も、病める時も、健やかなる時も、死が四人を分かつまで愛し、慈しむことをここに誓えるかのう?」

「「「誓います」」」


 三人共可愛いなあ。綺麗だなぁ。ヒデオには勿体無い娘さん達だよ。

 エリー達の誓いの言葉を聞いて、ナナは嬉しそうに頷くとリオから手乗りスライムを受け取り、ヒデオの前へと差し出した。

 その手乗りスライムには、三つの指輪が刺さっている。


 結婚指輪には攻撃から頭部と胸部を守る術式が、ナナとヒデオの手によって込められている。

 それとこっそり、俺がもう一つ術式を加えてある。それは緊急時の位置情報を知らせる機能だ。

 あの卑怯なヴァンのことだ。ナナとヒデオ達との繋がりを知ったら、連れ去られないとは限らない。

 一応プライバシーは守らなきゃなので、位置情報の受信はキューだけができるようにしてあるけどね。


 指輪の台座となったスライムを受け取ったヒデオがそれを左肩に乗せると、今度はエリスがナナへと手乗りスライムを渡す。

 こちらは細い指輪が三つ台座に乗っていて、エリー達がそれぞれ一つずつ手に取り残ったスライムはそのままナナの肩に乗って待機した。


 その後は指輪の交換、誓いのキスと問題なく進み、ヒデオの左手の薬指には三つの指輪が嵌められた。


 ナナはそれを、終始嬉しそうに眺めていた。


 ナナはヒデオのこと好きだけど、それ以上にエリー達のこと大好きだからな。

 自分があの輪に加わると和を乱しそうだと思っているし、何より今のナナが結婚とかありえないものね。

 やりたい事もやらなきゃいけないと思ってることも多すぎて、とてもじゃないが一箇所に留まったりなんてできないのはよーく知ってる。

 ナナの番が来るまで二五〇年くらい先になっちゃうけど、その頃にはきっと落ち着いてるよね。



 次はオーウェンとビスチェタイプのマーメイドラインドレスを着たジルだ。ビスチェから零れそうなおっぱいと、キュッと締まったウエストが際立ってるね。

 ジルの親は既におらず、ヴィシーや皇国の上位貴族が養子に迎えたいという申し出もあったのだが、ジルは『魔王ナナの側近』という立場での結婚に固執したため、一人でヴァージン・ロードを歩いている。

 ティニオンとしてもフォルカヌスとしても家同士の繋がりが欲しかったようだが、どの道この国に二人共住むつもりということで、プディングを介した良好な関係が築けるだろうと思う。


 少なくともゼルは、ナナとプディングを必要以上に警戒したり敵対することの方が危険であり、ナナの言葉通り友好的な関係を築く方がより大きなメリットがあると理解しているようだからね。

 ある意味で熊を人質として差し出したとも取れるが、俺とアルトくらいしかそこまで考えちゃいないだろうな。


 とりあえず誓いのキスが濃密すぎてゼルが頭を抱えていたのは、ちゃんと録画したからあとで見せてやろう。



 三組目はリューンとビスチェタイプのスレンダーラインドレスのイライザだ。知的な細身の美人さんが際立ってるね。

 イライザも両親がいないため一人でヴァージン・ロードを歩いた。

 アルトが代わりに歩く案もあったが、ジルもこの後の四組目の新婦も身寄りがないからと断ってたんだ。

 しかしこの二人は既に事実婚状態だったから、落ち着いたものだよ。



 さて……残るは問題の二組。まずは四組目だ。


「新郎、ニース」


 呼ばれて出てきたニースのもふもふの狐の尻尾が八本、膝上丈のプリンセスラインドレスのお尻部分から出て揺れている。


 そう。ニースが着ているのはウェディングドレスだ。


 観衆の大半はニースが男の娘だと知らないから、新婦が間違えて出てきたのかとざわついている。

 はぁ……合ってるんだよ、これで……。


「新婦、ジュリア」


 ジュリアは裾の長いロングトレーンドレスを着て、蜘蛛の胴体を綺麗にカバーしている。

 観衆もぽかーんとしてるよ。そりゃそうだよね、どっちも女性にしか見えないものね。


 観衆置いてけぼりで、誓いのキスまで進んだよ。ははは。



 さあ、次で最後だ。


「新婦、レーネハイト・グリニール」


 今度は新婦から呼ばれたので、また観衆がざわつき始めたよ。

 しかも出てきたのは真っ白なタキシードに包まれたレーネだ。控えめとはいえ胸があるからね、フォルカヌスの使節団以外ぽかーんとしているよ。


「新婦、ステーシア・フォルカヌス」


 自然なエンパイアラインのドレスを上品に着こなすシアが、ヴィシーと腕を組んで現れると、会場は一気に静まり返った。


 ええ、男装の麗人とお姫様ですよ。こっちこそ女同士です。


 またも呆気にとられてシーンと静まり返る観衆を置いてけぼりで、誓いのキスまで終わらせたよ。ははははは。


 みんな嬉しそうだったし、良いんじゃないかなー。


 こうして五組の誓いの儀が終わると、ナナが一歩前に出て観衆の方へと顔を向けた。


「わしは多くの愛を否定せぬ。そこに相手を想う気持ちと互いの幸せがあるのなら、好きに生きるがよい。とはいえ子を成してはならぬ関係もあるでのう、そこだけは気をつけて欲しいのじゃ」


 僅かにざわついていた観衆も、そのナナの言葉を聞いて静まり返った。

 それを確認したナナの合図で、今回式を挙げた五組十二名がナナの前へと並んだ。


「わしは愛し合い、幸せを求める者達を祝福する。これから子を成す者も成せぬ者も祝福する。命ある限り、互いを愛し、慈しみ、幸せを掴んで欲しいのじゃ。……ここに婚姻の儀を結びし者達に、神の祝福があらんことを!」


 ナナが翼を大きく広げ、そこから温かい光を放った。


 同時に鳴り響いた、観衆からの幸せを願う祝福の歓声は、割れんばかりのものとなった。



 ……ただ、一つだけ心配なことがある。


 ナナ、最後の方調子に乗ってノリノリだったな。翼から光まで出しちゃって。

 地球での教会の神父さんみたいに、神の祝福があらんことをーとか言っちゃってるけど、今この国で神様っつったらナナなんだけどな。


 このあときっとやらかしたことに気付いて、部屋に引きこもるんだろうなぁ。


 スライムの分体は他国への映像送信が終わったらアルトに預ける手はずだし、本体に合流できないならできないでやりたい事もあるから別にいいか。


 さーてナナも控室に引っ込んだし、今のうちに魔素吸収で魔力回復だー。



 ……ていうかアネモイ、何でこっち見てんの。ナナんとこ行けよ。

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