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英雄とスライム  作者: ソマリ
世界樹編
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4章 第1話N 愛を阻む壁などぶち壊してやるのじゃ

 ヒデオ達をブランシェに連れてきて、私の国を自慢してやった。えっへん。

 翼の生えたスライムをモチーフとした国旗と硬貨を見せると、ヒデオ達は義体の頭上に鎮座する翼つきスライムと見比べ「ナナらしい」とか「紋章や国旗を可愛く作るなんて前代未聞」とか言いながら笑っていた。


 ほんとはもっとあちこち見せたかったけど、連れて来た元奴隷達の誘導はリューンとイライザに任せ、その日は風呂に入って早めに休むことにした。


 今日はみんな朝から戦いっぱなしだったもんね。


 というかお風呂には、エリーとサラとシンディの三人に無理矢理連れて行かれてしまったよ。私が元男だと知っても気にしないどころか、何ヶ月もお風呂に入っていないんだからそれどころじゃないと言われてしまった。


 お風呂ではヒデオのとの、その、キスについて、めちゃくちゃいじられた。というか事情を知らないアネモイ以外の全員が、私とヒデオをくっつけようと暗躍していて、しかも主犯がエリーとサラとシンディというのはどういうことなんだ。全くもう。

 お返しとばかりに全員スライムで包んで揉みまわしてやって、ついでに体のあちこちについた小さな傷痕とかもキューちゃんに頼んで治してもらった。


 なぜかアネモイのスライムを見る目がいやらしいというか、困惑しているというか、熱っぽいようなよくわからない感じだったのは気になったが、きっと青スライムのことでも想像しているのだろう。

 あとはセレスが私の体を触ったり揉んだりしてきたが、いつもよりだいぶ控えめだった。おかげでプロセニアへの怒りが再燃しちゃったよ。



 寝室はエリー達には三人眠れる中部屋をあてがったけど、ヒデオは一人部屋な。ヒデオは毎晩交代でエリー達三人の誰かと一緒に寝ているそうだが、帰ってからにしろ。けっ。少なくとも私と同じ屋根の下で致すのは許さん。

 本当は今一人にするべきではないとも思ったんだけど、あの馬鹿は今日初めて人を斬った事実を忘れている気がする。私がトドメを刺したのと、その後の告白のせいかもしれないけれど、あれは平気なフリとかじゃなく完全に忘れてるとしか思えない。心配して損した気分だよ、全くもう。


 あのあとヒデオとはあんまり話は出来なかったけど、それは別にいいや。私ももう揺れないし、焦らない。私には時間があるからね。それと、ヒデオにも。

 あとオーウェンがジルの部屋に引きずり込まれていったのが見えた気がするが、気のせいということにしておこう。


 私も自室に戻り、まずはヴァルキリーを修復しておく。あの人型竜との戦闘でボロボロだからね。

 しかし……あの人型竜、あんなのがプロセニアに何体もいたら、滅ぼされるのはこっちだ。戦力を整えなきゃね。

 でも今日はもうむーりー。おやすみなさーい。いつも通り白虎のぱんたろーと熊のぬいぐるみの間に挟まって体を休める至福のじかーん。




 朝はいつもの早朝訓練に、ヒデオ達も参加していた。レーネは皇国に残してきたがジル達はこっちにいるので、私と見学のアネモイを除いた十二人がそれぞれ試合や魔術訓練を行っている。

 みんな私より早く来て訓練を始めようとするので、なるべく遅めに参加するようにしている。

 それにしても……ジルの動きが若干悪いのと、オーウェンが元気過ぎるように見えるのは無視しよう。気のせい気のせい。

 さーて私も少し体を動かそうなんて思っていたら、私に気付いたアルトが訓練の手を止めて近付いてきた。


「ナナさん、おはようございます。昨日の人型竜の左腕を回収していましたよね、どうでしたか?」

「アルトおはようなのじゃー。どうと言われても、まだ調べておらんのじゃ。何か気になることでもあるのかのう?」


 アルトの真剣な顔を見て、今すぐ調べるべきだろうと思い空間庫から人型竜の左腕を取り出す。散弾で引きちぎられた面をよく見ると、ぐちゃぐちゃになった肉と骨が……骨? 歪み、ちぎれた断面は、どう見ても金属にしか見えないんだが?

 それに改めて見ると外皮も金属にしか見えないというか手触りも完全に金属だわ、あと筋肉部に埋まる糸状の金属線とどす黒い血液。

 ……生物じゃ、ない?

 断面を少し吸収してみる。


「これは……生体部品で作られたゴーレムの腕、かのう?」


 筋肉は風の下級竜のものに、オーガやらオークやらの組織が混じり、そして多分……人の血や組織も混じっている。これを私のようにスライムで作るならともかく、それ以外で作るとしたらどのような手段となるのか、考えるだけで吐き気がする。それに微妙に腐りかけというのも気持ちが悪い。


「アルトはこの人型竜の正体、知っておったのか?」

「……いいえ。ただ外皮らしき金属片を見て、もしかしたらと思いました」


 ん。何か今誤魔化したな。でもアルトなら隠し事があるとしても、私が今が知るべきではない情報なのだろうから放っておこう。


「フレッシュゴーレム、というやつかしら? アンデット化の魔術とゴーレム化の魔術を掛け合わせたものらしいわね」

「アネモイは物知りじゃの……って、どうせキューちゃんの知識じゃろうが。カンニングしておいてドヤ顔するでないわ」


 しょぼーんとするアネモイはさておき、そうなるとますます同種の存在が複数いる可能性が高くなったな。……あれ?


「ゴーレムじゃから、アネモイと魔力線が繋がった?」


 きょとんとするアルトとアネモイは置いといて、ぶぞーととーごーを空間庫から出す。するととたんに繋がる、アネモイとの魔力線。


 相変わらず無意識でやっていたらしいが詳しく話を聞いてみたら、相手のことを知りたい・知識を得たいという欲求から、無意識に魔法の力を使って魔力線を伸ばしていたようだ。

 なぜアルトやダグには繋がらないのかと思って試させた結果、人相手では繋がっても知りたい情報にたどり着けないそうで、繋がった直後に無意識に切断していたらしい。

 その点ゴーレムが相手だと魔石に蓄えられている知識であれば、知りたい情報を好きなだけ引き出すことができるようだ。


 そうなると、一つ疑問が出る。


「なんでわしはゴーレムと同じ扱いなのじゃ?」

「知らないわよ。でもナナの魔石もキューの魔石も、知りたいと思ったことを次々教えてくれて助かったわ」

「ぐぬう。何にせよ、意識的に接続と切断が出来るようになったのじゃからの、万が一また竜人ゴーレムが出てきても魔力線を繋ぐでないぞ」


 もう少し詳しく調べようにも、私と同じような存在はいないから比較もできないなあ。意識してコントロールできるようになったことだし、他には特に問題も思いつかないし別にいいか。




 昼過ぎにはレーネとシアがブランシェを訪れた。その二人は到着早々、窓から差し込む太陽の光を見てため息を漏らしていた。


「日が沈みやっと一日を終えたと思ったのに、何かやるせない気持ちになりますわね……」

「そうですね……まだ働かなければいけない気になってしまいます……」


 このブランシェと皇都シェンナでは四時間半ほど時差があるので、二人は昨日に引き続きヴィシー王と話をしたり戦後の処理等で丸一日働き詰めだったらしい。

 それでもいろいろと報告があるため、夕食を食べてすぐジルに連絡をしてゲートゴーレムで転移してきたそうだ。


「ナナ様、まずはこちらお納め下さい。迎賓館の料理人から、ナナ様が飲みたそうにしていたとお聞きしましたのでお持ちしました」


 レーネがアイテムバッグから小樽を出して差し出して……匂う、匂うぞ!


「これはもしかして、米で作ったお酒かの! ありがとうなのじゃレーネ、シア! うふふふー、二人はとりあえず甘い物でも食べてゆっくりすると良いのじゃー」


 おっさけーおっさけーにっほんっしゅそっくり、おっさっけー。とりあえずこれは私の空間庫に保存だ。あとでゆっくり飲むんだーうふふふふー。

 使用人に蜂蜜入りの紅茶やクッキーなどを運んでもらい、真っ先に飛びつこうとしたアネモイを阻止してまずはヒデオ達との顔合わせだ。


 シアとレーネを紹介し、次いで二人をヒデオ達に紹介する。ヒデオをティニオンの英雄と言ったらレーネの目つきが値踏みするようなものに変わったが、直後にジルに耳打ちされて驚いた顔でこっちを見た。何を言ったのか想像できるが、やめて欲しいなあ、もう。


「で、最後にこの男みたいな熊はオーウェンといっての、これでもティニオン王国の第三王子じゃ」

「嬢ちゃん逆だ、その紹介じゃオレは完全に熊じゃねぇか」

「今自分を熊だと認めたこの熊は、ジルと恋仲になっておる。二人ともよろしくなのじゃ」


 反論するのを諦めて肩を落とした熊の隣にジルが寄り添い、細い腕を絡ませ密着した。まあ別にいちゃいちゃするのは構わないんだけどね、シアもレーネもぽかーんとしているじゃないか。

 そして何か言いたそうな顔でちらちらとこっちを見るレーネ。ああ、そういえばそれも言わないとな。


「ジルの以前の性別のことなら問題ないのじゃ、その熊は全部知った上で問題ないと言い切りおったわ」

「そ、そう、だったんですか……ジル、おめでとう。心から祝福するよ」

「ありがとう、レーネ。ワタシはナナ様にお仕えできてオーウェンとも出会えて、本当に幸せよぉ。それにこの体にしてもらったこと、改めてナナ様にお礼申し上げますわぁ。元々ワタシも同じモノがついていましたから、どこが気持ち良いのかよく知っ『びちゃっ!』むごっ!?」


 最後まで言わせてたまるか、手遅れ感も強いがセレスに預けていたスライムを飛ばしてジルの口を塞ぐ。時と場所をわきまえてほしいな、全くもう。

 顔を真っ赤にさせたオーウェンの手も借りてスライムを引き剥がし、私に睨まれて軽く涙目のジルがおろおろしながら頭を下げた。


「ご、ごめんなさいねぇ、ナナ様。レーネ達も共感できるだろうと思って、つい嬉しくなってしまったわぁ」


 確かに女性同士ならどこが良いのかよく……私はわからないけど……って、そこは考えちゃだめだ。まさかの追撃だよ、全くもう。

 引き剥がされたスライムは、またセレスの腕の中に戻しておく。柔らかくて気持ちが良いからここにいるんじゃないぞ、セレスを元気付けるためだ。


「こ、こほん。ジルはちょっと置いておくとしてじゃ。どちらかを男にしてやることも出来なくはないぞ?」

「あ、いえ、その、わたくしは女性のまま……女性であるレーネを愛していますので……」

「わ、私も、女性のままのシアを愛しておりますゆえ、まことにありがたいお言葉ではございますが……」


 女の体が良い、か。まあわからなくも無いかな、私も今更男に戻りたいと思わないし。


「シアは立場上世継ぎが必要となるかもしれんじゃろう、互いに姿形を一切変えずにレーネの子を孕むことも可能じゃぞ」

『ガタンッ!』

「「本当ですか!?」」


 うわ、食いつき良過ぎだろう、びっくりしたじゃないか。椅子が壊れるから落ち着いて欲しいなあ。

 そもそもアネモイのように魔法の力で作ることも可能だろうし、そうでなければレーネの卵巣を精巣と入れ替えてあちこちいじり、愛液ではなく精液が分泌されるように人体改造するという手もある。

 その辺りの詳しい説明は、またあとで。流石にヒデオもいる前で愛液だの精液だの口に出来るか。


「想い合う者同士が、立場や種族や性別の壁で結ばれることを諦めるのは悲しいことじゃからの。壁を壊したり乗り越えるための手伝いくらい、何の苦も無いのじゃ」

「ありがとうございます、ナナ様……ナナ様との出会いが、わたくしや皇国に住まう民全てにとっての幸運ですわ」

「シアが全てにおいて他力本願じゃったら、こうはならんかったじゃろうの。わしらの力をアテにしておったとはいえ、おぬしはいつだって前線におったじゃろう。もっと安全な場所などいくらでもあったにも関わらずの」


 皇族の勤めですと言って笑うシアの、爪の垢でも煎じて四大貴族に飲ませてやりたいものだ。もう火葬済みだけど。


「さて、いろいろと脱線したが、報告を聞こうかの」

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