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英雄とスライム  作者: ソマリ
英雄編
146/231

3章 第82話? 暗躍するよ

 どや顔のナナの肩の上で、水色の手乗りスライムがぷるるんと揺れている。


「ここがわしの国、プディング魔王国じゃ!」


 真新しい都市のあちこちにスライムをモチーフとした国旗が掲げられ、太陽の光を浴びて揺れていた。

 ナナとジルに半ば強制的に連れてこられたヒデオとオーウェンとその仲間達は、その光景を眺めてあっけにとられている。


 普通に考えたら、たった四ヶ月でここまで発展するとか信じられないよね。

 とりあえずヒデオを連れて来るのはいいけど、お願いだからもうキスとかやめてね。感覚を完全に遮断するのはあんまりやりたくない。戻るタイミング掴みづらいんだ。


 でもお風呂は大歓迎です!


 お風呂ではナナがエリー達に冷やかされまくってやんの。いつもより多めに顔を赤くしてやろう、やーいやーい。くすくす。

 あ、エリーの髪に枝毛発見。ついでに綺麗にしておこうっと。サラとシンディもねー。しかし今まではぼーっと見てるだけだったけど、こうしてじっくり見れてしかも介入できるっていいね!


 やわらかーい。しあわせーーー。


 もちろんリオとセレスとアネモイもー、って……アネモイの俺を見る目に違和感が。って、そういやアネモイとは繋がってるんだった。はしゃぎすぎるとバレるかもしれんね。反省。


 しかしセレスが少し心配だなって思ってたけど、ナナはお風呂ではセレスの隣をキープしてた。珍しく胸とか触られても放っておいたおかげか、セレスの顔にも少し笑顔が戻ってきたみたいで良かった。

 セレスの涙思い出したら、またプロセニアに腹が立ってきたなー。どうやって滅ぼそう。




 さて、と。やっとナナが寝たな。っていっても意識レベルを落として休んでいるだけだから、移動には気を付けないとな。

 頼んだよ、相棒。

―――承知しました。


 ()()()()()()()()、キューの力も借りて魔力視の出力を上げて……と。よし、リオは完全に寝てるな。こないだ転移したとき危うくバレそうになったからね、マジで気をつけよう。しかし寝顔も可愛いなー、って、あんま見るのも悪いからやめとこうっと。それで、あいつはちゃんと起きてるな。んじゃナナにばれないようにそーっと離れて……転移っと。



「っ……こんばんは、キューさん。今回も突然ですね」

「仕方ないだろ、誰にも見られたくないんだからさ。それよりもっと早く助けに来いよー、おかげでヒデオとキスしちゃったじゃないかー」

「申し訳ありませんが、僕にとってはキューさんの望みよりナナさんの望みの方が大事です」


 大きな人型の粘土の塊をヘラのようなもので整えていた、細身で紫色おかっぱ頭のイケメンが、そのヘラを置いてプルプルボディの俺の方を向いて椅子に座った。

 前来たとき描いてた絵は綺麗だったなー。今度もきっとナナの像とか作ってるんだろうけど、完成が楽しみだな。


 それにしても説明が面倒なのでキューと名乗ってるけど、我ながら紛らわしいなあ。

 ま、いっか。


「仕方ないかー。でもま、ビデオゴーレムも上手く使ったようで何よりだよ。アルトのおかげで皇国の戦争による死人がだいぶ減ったと思うよ。ありがとう」

「キューさんの指示のおかげですよ。あえて情報を広めることで人々の不安を抑えるなんて、僕達では考えつきませんからね。それにビデオゴーレムだって、キューさんのアイディアじゃないですか。僕としてもナナさんの素晴らしい姿をいつでも見られるので、感謝としか言いようがありませんね」

「そこはまあ、お互いの利害が一致したってことで」


 そう、利害の一致だ。少なくともナナを守りたいという点では、完全に協力体制を取っている。


「偽装用のゴーレムも手に入れたね。しかしゲンマと来たか、ほんと俺と全く同じセンスで笑っちゃうよ。とりあえずこれでアルトがナナと同じ事が出来ても疑われないな」


 パンダのぬいぐるみゴーレムをスライム体で作った触手で撫で回す。あーもふもふだー。猫も触りたいけどなかなか機会がなー。


「はい。それと約束の品です。魔銀と魔鉄ですね。魔鋼は集められませんでした、申し訳ありません」

「いいよー、魔鉄に混ぜものして魔鋼作るから平気平気。さて、それじゃあ本題だよ」


 アルトから受け取った素材類を空間庫にしまい、体をぷるんと震わせる。


「皇都でナナと戦った黒い人型ドラゴン、あれは俺やナナと同じ存在かもしれない。ゴーレムだった」


 アルトの眉間にしわが寄った。そうだよね、ナナと同じかもなんて言われたら、ナナを敬愛するアルトには耐え難い話だよね。でもまだ続きがあるんだ。


「それと悪い知らせがもう一つ。あのゴーレムを動かしている人格は、ヴァンだ」

「なん……ですって……まさか!!」


 部屋を遮音結界で覆ってて良かった。アルトが変人に見られるのは良いが、俺の存在がバレるのは困る。


「マジだよ。剣筋が完全に一致、光線魔術を連続で放ったときの狙う順番も一致。おまけにナナに殺意を持つ理由も心当たりがあるときた。確定だね」

「その話、ナナさんは……?」

「気付いてる。確信じゃないみたいだけどね、俺も聞かれてないから答えてないし。ヴァンが飛んできたのは皇国の西、つまりプロセニアだよ。セレスの涙を見たのも理由だけど、それもあってプロセニア侵攻を決めたっぽいね」


 ナナの怒りはよくわかる。俺だって殺意が芽生えたもん。


「……キューさんは、ヴァンがまた来ると思っているのですか?」

「うーん。多分、ね。アネモイのブレスが激しすぎてよく見えなかったけど、逃げられたと思って対応したほうがいいと思う」


 それに、ヴァンの魔石は確かにナナが砕いたんだ。なのに戻ってきたということは魔石を修復する手段がある、もしくは……()()()()()存在。

 万が一そうだった場合、下手すれば一体じゃ済まない。


「至急、プロセニアへの斥候を増やします」

「それも良いけど、うんちょーに繋がってるふーすけのスライムもばら撒いちゃえ。まだプディングの敷地の外はあんまり撒いてないでしょ? ティニオンや皇国はもちろんプロセニアや帝国にも、可能な限り広い範囲にばら撒こう。どうせ潰されても本体にダメージ無いし」

「もしかしてキューさん、うんちょーから情報を引き出すおつもりで?」

「そういうことー」


 この手段はナナには思いつかないだろうな、相棒の能力について俺ほど理解してないからね。

 相棒と協力すれば、ある程度は知りたい情報が手に入る。てゆーか俺もほぼ相棒任せになるんだけどね。



 そのあとしばらくの間、これからの計画をアルトと話し合った。

 まずはプロセニアの元奴隷兵の処置で、ピーを使った治療のあと基礎教育を行うことにし、こーじを使った住民登録の際、野人族や他種族に対して敵意や悪意を持つ者をマークさせておくようにさせる。

 ブランシェにはアトリオンから来た野人族の商人や技術者もいるからね。

 意識を変えろとは無理強いしないけど、差別を受けた憎しみから差別する側に回るような者であれば、ブランシェから叩き出しナナの庇護下から外れてもらう。

 好きなとこで勝手に生きれば良い。


 俺が思いつくことは全てナナも思いつく内容なんだけど、ナナは色気付いてそれどころじゃないみたいだからね。こっちでやっといてやるよ。



 アルトの望みは、ナナの神格化。

 ナナは気付いていないが、遺体をナナに吸収してもらい、新たな生命の一部として生まれ変わるという話を広めているのが、ヒデオというかレイアスの親父さんが作った女神教だ。

 そして水面下でこのプディングでも女神教を広めてる張本人は、アルトだ。


 それを俺は気付いていたため、アルトとは協力関係を結べると判断した。

 目覚めた日の夜にアルトのところに来て、ナナの姿を撮影して広めるという手段を伝えた。ついでにピーの設置場所を火葬場ではなく、女神教の神殿に置くようアドバイスもした。

 おかげで皇国の傭兵たちにも順調に女神教は広まったし、今後はやプロセニアから連れてきた亜人森人地人達にも広まるだろう。


 なぜアルトに協力するのか? 決まってる。 面白そうだからだよ!


 それに()()()()()とは言え、ナナは俺にとって妹みたいなもんだからね。

 ナナの方が俺より十五年くらい長く活動してるけど、オリジナルは俺の方だから兄であることは譲らないよ。ヒルダとノーラから付けてもらった名前は、仕方が無いから譲ってあげるけどさ。

 それに俺が言うのもおかしな話だけど、いろいろ危なっかしいし。

 そんなナナの幸せを願うアルトに協力するのも、当然じゃないか。くすくす。



 それと俺の目下の望みは、自由に使える身体だ。


 素材はアルトの協力でそれなりに溜まってきたけど、問題は生体部品なんだよね。ナナがこれまで吸収したものは俺も使えるけど、それ使ったら多分ナナにバレる。

 でもナナがヒデオとえっちい事をする前に、俺が避難する身体を確保しておかないといけない。間に合わなければスライムのまま逃げるが、人型のほうが色々便利なんだよな。

 確かに可愛いもの好きだし料理も好きだし、性別のないスライムになったことは喜んだけど……ナナと違って俺の性癖はノーマルなんだよ!


 大体なんであの子どんどん乙女心増やして行ってんの? 何、ノーラとヒルダの魔石と融合したから? だんだん女になっていく自分を見せられる俺の葛藤、三日ぐらい余裕で語っちゃうよ?


 今日はあの子久々の和食作りにテンション振り切れて、途中からヒデオに食べさせることしか考えてなかったし!

 とっさに義体の体温めっちゃ上げて、ヒデオとのキスを阻止しようとしたけど無駄だったよ!


 何かいろいろ思い出して悲しくなってきた。くすん。



「それでキューさん、いつナナさんに存在を明かすおつもりですか?」

「まだ当分先かな。だって『キュー』はまだナナに必要だからね、それなのに俺の存在を知っちゃったら、ナナは間違いなくキューとの接続を切って俺を自由にしようとするよ。俺ならそうするもん」


 アルトが用意してくれたクッキーを、スライム体で再構築した舌で甘さを堪能しながら応える。ナナ越しの感覚じゃなく、自分で食べるクッキーおーいしー。

 ちょっと悲しみが薄れた気がするので、全部食べればきっと立ち直れる。だから全部食べようっと。


「いつかピーか別の隷属魔石が俺の代わりに入るとして、俺と同じことができるよう下準備しなきゃいけないし、それにヒルダの作った魂魄移動術式についてもう少しちゃんと調べたいからね」


 魂魄移動術式と名付けられてるけど、実は人格のコピーを作る術式だったなんて夢にも思わなかったよ。てゆーかあれ、魔石から魔石への情報のコピー限定なんだよな。人から魔石への情報コピー術式も調べておきたい。

 今のナナには、人体実験なんてさせられないからねー。なんたって神様(笑)にする予定だし。だから代わりに俺とアルトでやらないと。


 可愛い妹のためだからね、おにーちゃん影で頑張るよ。


 ……ほんとだよ? ナナを隠れ蓑にして正々堂々と女風呂入ったり着替えが見れたりすることが惜しいからじゃないよ?

 スライム体で女の子の体を包んだり洗ったりするのも、ナナの命令だから仕方なく、だし!



「それでキューさん、建国時の祝典についてなのですが……」

「ナナは大勢の人前に出るのまだ苦手だから、ビデオゴーレムの映像を写す巨大スクリーンを作ろうよ。物理的じゃなく、魔術的に。あとティニオンとフォルカヌスも巻き込んじゃえ」


 あとで巨大スクリーンを知ったナナが恥ずかしさに悶える姿は想像できるけど、ヒルダとノーラの面影のある可愛い妹を、あまねく世界に自慢したいのだよ。

 そこは完全にアルトとタッグを組んでるからね、くすくす。


 それに敵……ヴァンを呼び寄せることになるかもしれないが、それまでに俺も身体を用意しておきたいな。

 ヴァンへの憎しみはナナが晴らしてくれたが、俺だってヴァンが粉々になるくらいには殴っておきたいんだ。


 さて、これから忙しくなるぞーっ!




英雄編 完

3章はこれにて終了です。

お読み頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] TSした元男性が女性として変化していく心を書いてるのかと思ってたからなんか梯子外された気分。オリジナルとコピーでこれ程大きな差異があるのなら、TSというより記憶転写された別人だね。 展開とし…
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