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英雄とスライム  作者: ソマリ
英雄編
141/231

3章 第77話N 食べて欲しいのじゃ

「姉御!」


 リオに体を揺さぶられ、我に返った。アネモイもリオもそんな泣きそうな顔で見るんじゃない。というか私の方がもっとひどい顔をしていそうだな。

 全く、あり得ない想像をしてしまったじゃないか。ヴァンがまた私の前に現れたなんて、そんなはず無いじゃないか。


「おお、すまんのうリオ、アネモイ。ちょっと考え事をしておったわ」


 遺体は全て消し炭になっていたが一応回収し、アルトの部下を伴って皆のいる場所へ戻ることにする。



 何やら若干興奮している様子のアルトの部下はトロイと名乗り、アルトの指示で皇国へ潜入して様々な調査や交渉などを行っていたのだそうだ。今回は皇都守備軍本陣の更に後方の高台に潜んでいた四大貴族の監視を行っていたところ、赤い狼煙を上げて間もなく少数の護衛だけ連れて逃げ出したため追跡していたという。

 しかし護衛達に気付かれて戦闘になり一人に致命傷を与えると他の護衛は離脱、死にかけの一人が四大貴族を巻き込んで自爆したそうだ。


 皇都守備軍の人がその五体の死体を見たいと言うので空間庫から取り出すと、燃え残った装飾品を見るなり間違いなく四大貴族だと断言した。

 その言葉を聞いてシアが少し考えるような仕草のあと、顔を上げて笑顔を見せた。


「……皇国の降伏は受け入れません。わたくし達の目的は四大貴族の排除ですから、結果的に目的が達成された以上、戦争継続の意志はこちらにはありませんわ」

「わしらの勝利ではなく、あくまでも終戦ということにするんじゃの。……レーネ? どうしたのじゃ?」

「あ、いえ、申し訳ありません。その、トロイがアルト様の手の者だと知り、驚いていただけですから……」


 どういうことかと思ったら、傭兵団『深緑の守護者』に加入して怪しい動きをしていた新入りがトロイだという。そう言えば深緑の団長と副団長も顔が引き攣っているな。

 レーネを探すために潜入していたことを教えると、トロイとアルトに必死に謝罪していた。この辺は放っておこう。


 その後シアは終戦の処理として、四大貴族軍の生き残りの捕縛等をノワモルの軍司令と皇都守備軍に命じ、私が負傷者の治療を終えるのを待って皇都シェンナへと足を踏み入れた。



 シェンナに入ると二台の馬車に乗せられ城へ向かうことになった。シア達皇国組の五人と私達プディング組の六人で分かれ、広い馬車内でリオと震えるアネモイにしがみつかれながら、デコボコの石畳が敷かれた皇都大通りを進んでいった。

 セレスはほんの少しだけ寂しそうだが、多分私がノーマル義体じゃないからいいや、とでも思っているんだろう。


「ところでアネモイ。あの人型竜から、何を知ったのじゃ? おぬしが気絶したのは、人型竜と魔力線が繋がれた直後じゃろう」


 すると僅かに震えていたアネモイの震えが強まり、私の腕を豊満な胸に挟み込むように更に強く抱きしめた。


「ナナ、あれは駄目よ……。世界に対する激しい怒りと、全ての命に対する深い憎しみと、ナナに対する強い殺意が、一気に私の中に流れ込んできたの……。それで、怖くて、私……」

「そうじゃったか……怖い思いをさせてしまったのう」


 リオが反対側の腕を離してくれたので、その腕でアネモイの頭を抱き寄せ撫でてやると、徐々に震えも治まってきた。怒りに憎しみに私に対する殺意か、ますます奴のような気がしてならないが、今はまずアネモイを落ち着かせよう。


「目が覚めたらナナとキューに守られてるって気付いて、でもあの黒い奴とナナを戦わせちゃいけない、ナナを守らなきゃって思って、怖かったけど戦おうって思ったら、今度は戦い方の知識とかが流れてきて……」

「恐らくその時、ぶぞーかとーごー辺りと魔力線が繋がったんじゃろうな。何れにせよ、アネモイのおかげで本当に助かったのじゃ、おかげで奥の手を使わずに済んだのじゃ。ありがとうなのじゃ」

「う……うわあああああん、よかったよう、ナナが無事で……うわあああああん」


 今はこれ以上の聞き取りはやめて、アネモイに感謝を伝えるだけにしておこう。

 それからしばらくアネモイが泣き止むまで、すーっと頭を撫でてやることにしよう。



「それで姉御、奥の手って何?」


 やっとアネモイが泣き止んで、真っ赤で派手な城がだいぶ近付いてきたなと思っていたら、リオが首を傾げて聞いてきた。


「ん? 核となるわしの魔石をノーマル義体に移し、中身をスライムだけにしたヴァルキリーで特攻して押さえ込んだ所に、ヴァルキリーごとハチとカメタンクとくまキャノンによる集中砲火を仕掛けようかと――」

「「「ダメ!!」」」

「ほぼ自爆じゃないですかナナさん、絶対にやめて下さい!」

「ナナてめえ、それを見せられて俺達が平気な顔していられると思うのか!」


 リオ・セレス・アネモイの三人に大声で叱られ、アルトとダグに二人がかりで懇々と説教され、お城に着く頃には私の奥の手は永久封印という約束をすることになってしまった。しょぼん。

 それなら別の奥の手を考えないといけないなー。……ふふふ。


「ナナてめえ、何嬉しそうにしてんだ、こっちは怒ってんだよ」

「本当にすまんかったのじゃー、もう特攻はせんと約束するのじゃー」


 何か本気で叱って貰えたというのが、側近とか配下とかじゃなく、やっと家族として対等な扱いをして貰えたように思えて、とても嬉しくて、気恥ずかしくて。

 頬がニヤニヤと緩んでいくのが抑えられなくて。

 ふふふ、ヒルダ、ノーラ……ってしまった、この瞬間を二人に見せてやれなかった。今からでも良いか、えい。


「うお! いきなり普段の方出すんじゃねえよ、びっくりしたじゃねえか」

「ナナちゃ~ん、許してあげますから、わたしの膝に乗りましょうね~」

「「セレスの膝の上は自爆より危険なので却下じゃ」」


 私の膝の上にノーマル義体の私を乗せて、私達で同時に言葉を発してみた。これ、傍目で見ると怖いな。

 そしてノーマルの私の後頭部に柔らかく心地いい感触が伝わり、ヴァルキリーの私の胸にノーマルの後頭部が深く埋まってぐりぐりと動いている。その様子をヴァルキリーの頭上から飛び立ち、ぱたぱたと翼を動かしながら飛行して眺める、スライム体の私。


 我ながらややこしいな。


 お城に着いたことだしノーマル義体で動きたいけど、またアルトがカメラゴーレムを起動させているから、ノーマル義体はひとまずしまってメインの意識をヴァルキリーにしておこう。



 真っ赤で派手な皇城は近くで見ると、西洋のお城を木造で再現しました的な、何とも言えないアンバランスさがとっても素敵で気分が一気に上がった。

 レーネに聞いたらこの辺りは寒いので、断熱効果の高い木で建物を建てるのが一般的だそうだ。

 意外だが土壁や石壁で木の板と同じ断熱効果を得ようとすると、四倍ほどの厚みにしなければいけないのだと、これはジルが教えてくれた。

 ただし木造なのは外側だけで、内部の多くは切り出した石を積み上げられて作られているそうだ。外に火がついても中まで燃えにくいような作りらしい。


 当然謁見の間も大理石のような真っ白な石の床で、これまた真っ赤な絨毯が敷かれた派手派手な内装だった。

 そしてそこらじゅうに普通のランタンに混じって暖房の魔道具らしき、橙色の光を放つランタンがぶら下げられている。それでも相当寒いらしく、会う人会う人みんな厚着である。

 それはフォルカヌス神皇国の神皇である、ヴィシー・フォルカヌスも例外ではなかった。そして病的なほど細く生気の感じられない顔をしたヴィシーは、私の姿を見るなり玉座を降りて片膝をついた。


「神皇ヴィシー・フォルカヌスは現時点をもって退位、後継をステーシア・フォルカヌスと致します。どうか……どうか神罰は私の首一つで、何とかお納め頂けないでしょうか」

「……はい?」


 何かおかしなことになってないかな? というかシア達はもちろんアルト達も一応礼儀として片膝付いて頭下げてるし、今この場で立ってるの私とアネモイだけとかちょっと空気読めない子達みたいで嫌なんだけど。


「ヴィシーよ、何か色々誤解があるようじゃが、まずは落ち着いて話さぬか? 自己紹介が遅れたの、わしはプディング魔王国の魔王ナナじゃ。と言っても正式な建国の名乗りはまだなのじゃがの」

「はい。全てトロイ殿から聞いております。魔人族・光人族を始めとした幾つもの種族を従え、世界最古かつ世界最高の生命体である古竜とも親交のある、慈愛と生命の女神ナナ様」

「トロイは何言っちゃってるのじゃ!?」


 私の知らない所で私は一体どんな存在にされているんだ!?

 そしてアネモイやアルト達というか、シアとレーネ以外全員ドヤ顔なのは何でだ!?

 ていうかトロイから聞いたってどういうこと!?


「えーと……ヴィシー、ちょっと落ち着ける所で話さぬか? 皆が皆ひざまずいておっては、話をするにも落ち着かぬのじゃ」




 応接室に場所を変え、私とアルト・アネモイ、そしてシア・レーネの五人でヴィシーと話をすることになった。

 そこでヴィシーから、城に潜入してきたトロイに映像を見せられながら説明を受けた事を聞いた。

 警備の厳重な城に容易く侵入し、何事もなかったように帰って行くトロイのような斥候がいる事実にも驚いたが、それ以上に映像で見た私のヴァルキリー姿とその行動に驚き、プディング魔王国は女神が統治する国と信じ敵対しないことを決めたのだそうだ。

 しかし四大貴族家の関係者に知られると自分や后が人質に取られる可能性が高いため、皇都守備軍を率いる将軍に私達と敵対しないよう密かに伝えた他は、普段通りの行動をしていたと言う。

 そして私と親交の深いシアに皇国の全てを任せ、皇国を混乱させた罪は自分一人で負うつもりだから、后や国民には寛大な処置をと頼まれてしまった。


「ヴィシーよ。いろいろと勘違いしておるようじゃが、これだけは言うておくのじゃ。おぬしの罪などわしの知ったことではない、裁かれたいのであれば皇国の法によって裁かれるがよい」


 女神だの何だの否定したい話はあるが、ちょっとムカついてきたのでそれは後回しだ。


「じゃがの、おぬしが退位して喜ぶ者は誰じゃ。悲しむ者は誰じゃ。おぬしは全てをシアに背負わせて逃げるつもりかの? シアが何のために『解放軍』を名乗り、おぬしと戦うことになるやも知れぬと知ってもなお、ここまで来た理由を知っておるか?」

「ナナ様……」


 シアの目に涙が浮かんでいる。多分シアは自分が即位することなんか望んでない。四大貴族を排除するというのは何度も聞いたが、父である神皇を排除するとは一度も口にしていないからね。


「シアとちゃんと向き合って話し合わぬか。少なくともわしは、ヴィシーの首など貰っても扱いに困るわい。わしの望みは皇国との友好関係じゃ。他の望みについては、シアが知っておるから良く聞くとよい。わしらは今日のところは引き上げるでのう、ちゃんと話し合うのじゃぞ」


 ヴィシーもまた目に涙を貯め、深く頭を下げて私達を見送っていた。応接室から出るとニヤニヤしたアネモイに抱きつかれたので、角を掴んで振り回しておく。

 ヴィシーは威厳の欠片もない男だったが、彼なりに家族や国民を守りたいという意志だけは伝わった。その点だけは好感が持てる男だ。シアもしっかりしているしレーネもついてる、きっとちゃんと話し合ってくれるだろう。

 それにシアが即位したら、跡継ぎとか必要になるじゃないか。そうなるとレーネ相手じゃ子供は出来ないから、二人が可哀想だ。


「これを利用して立ち回ればいくらでも僕達に有利な同盟関係を結べたでしょうに、本当にナナさんらしいですね」

「ふん、元々こっちの都合で首を突っ込んだのじゃ、それなのに相手の罪を問うなどおこがましいわい」

「うふふー、ナナってばそんなこと言ってるけど、本当はシアの家族とかレーネの事も考えうえうえうえうえ」


 アネモイは振り回され足りないようなので、両手で角を掴んで揺さぶって黙らせた。

 涙目で抗議してきたアネモイをスルーしてリオ達が待っている別室に向かうが、アネモイも元気になったようで良かった。言わないけど。




 皆と合流したあと、皇国の貴族っぽい人の案内で迎賓館に案内された。ここも立派な作りで、特にアルトが興味津々にあちこち見て回っていた。私はここでようやくノーマル義体に戻り、一息ついた。

 それにしてもヴァルキリーのダメージは思ったより大きいな、あとで時間を取ってしっかり直そう。

 迎賓館の使用人や案内してきた貴族が突然私が子供の姿になって驚いていたが、髪の色も目の色も同じなのですぐに察してくれたようだ。というかいちいち祈りを捧げるのをやめてくれ。


 それよりも、だ。迎賓館では私達にと昼食が用意されていたのだが、そこに並んでいる物に私は目を奪われてしまった。


「甘そうなというかしょっぱそうというか、何とも言えない臭いがするわね。ねえナナ、私お腹が空いてきちゃったわ」

「……アネモイはさっき、ドラゴンの丸焼きを二頭食ったじゃろうが……」


 アネモイをあしらいながら、懐かしい香りのする料理の並ぶ食卓へ足を向ける。

 ぶるぶるの皮に包まれた餃子や小籠包っぽいものや肉まんらしき中華の点心のようなものの他、黒い汁がかけられた灰白色のモチのような塊と、土のようなものを塗られて焼かれた肉、そしてパンの横に置かれた、お湯に浸されたお椀に溶けるたくさんの白いつぶつぶ。


 案内された食卓にはナイフ・フォーク・スプーンだけではなくお箸も並んでおり、私は頂きますの挨拶の後迷わず箸を手に取る、久しぶりに扱う箸にニヤニヤが止まらなかった。

 アネモイやリオやアルトが何やら話しかけてきている気がするが、すまない後にしてくれ。

 まずは黒い汁がかけられた灰白色のモチだ。箸で一口分を切り取り、口の中へと放り込む。

 最初に広がってきたのは塩味。そしてほのかな甘味が口の中に広がる。そして噛むと広がる香ばしさ。


 予想通りだ。


 これ、蕎麦がきと……醤油だ。


 次いで土のようなものを塗られた肉を、ナイフとフォークで切り分け一口頬張る。

 最初に広がってきたのはほのかな塩味と酸味、そして強い甘味が口の中に広がった。噛むと肉自体は豚か猪なのだろうが、正直そこはどうでもいい。


 これも予想通り、塗ってあるのは……味噌。


 最後にお湯に浸されたお椀に溶ける白いつぶつぶをスプーンですくって口に入れる。これもやはりお粥だ。ただ使われている米は以前食べたインディカ米より太めで、恐らくジャポニカ米に近いのではないだろうか。


 あったよ……醤油、味噌、そして米。


 嬉しさを噛み締めていたら、視界が歪んできた。十九年ぶりだもんな、それも当然か。そう思いながら顔を上げたら、アネモイが蕎麦がきにかかっていた醤油を飲んで変顔で悶えていた。


「……のうアネモイ、それは付けて食べる調味料の一種じゃ。そのまま舐めると塩っ辛いのじゃ」

「ねえナナ、そういうことは飲む前に言ってくれないと意味が無いと思うの」


 やかましいポンコツ、私がせっかく懐かしさに浸っていたのにぶち壊しやがって。全く、もう。



 その後はアルトやリオ・セレス・アネモイに箸の使い方を教えながら料理を平らげ、その足で厨房へと向かった。


 突然乱入してきた私の姿に料理人達が驚きと怒りの表情を向けてきたが、案内人の貴族と一言二言会話して顔を青く染めていた。

 その料理人に今回使った食材と調味料を見せてもらい、調理台に並べると私の頬は緩みまくった。

 間違いなく、味噌・醤油とジャポニカ米だ。それぞれ現地名で説明されたけど、そんなもん知るか。味噌と醤油と米だ。


「のう、少し厨房を借りてもよいかのう」


 とは言ったものの返事を聞く前に作業開始だ。



 まずはシジミのような味がする、アサリのような大きさの貝を空間庫から大量に取り出し、真水につけて闇の魔素で覆って真っ暗にして放置する。

 同時に以前海で採った鮭のような1メートル級の魚を三枚におろし、その赤い身を切り分けて塩を振って放置。

 貝の砂抜きも魚の生臭さが抜けるまでも、少し時間がかかるからね。

 その間に米だ。精米が雑だったので、表面の糠をきれいに削り取る。試しに半合分くらい水で研ぎ、浸るくらいの水を入れて炊いてみる。

 次はじゃがいもを切って水に浸してアクを取り、玉ねぎ・人参もそれぞれ櫛切り・乱切りにして置いておく。


「ねえナナ、空を飛んだり包丁を使わずに食材を切ったりその食材まで空を飛んだりしてるけど、程々にしないと料理人達の顎が外れてしまうと思うの」

「それはのうアネモイ、この義体では調理台に届かないから仕方が無いのじゃ。それとこれがわしの普段の調理風景じゃから、気にしないで欲しいのう」


 いつの間にかアネモイだけでなく全員が厨房に勢揃いして壁際に並んでいたが、厨房はそんなに広くないからちょっと邪魔だ。

 待ち時間に料理人達とあれこれ話すと案の定『出汁』という概念は無く、魚の頭と背骨を火で炙って鍋に入れて火にかけ、濾したものを味見させる。ついでに手持ちの豚骨や鶏ガラ等の様々な出汁スープを味見させたが、味見どころがごくごく飲んでるポンコツが一体混じっていたが放っておこう。


 料理人に酒を出させると日本酒っぽいものがあったので、それを少し貰い塩を足して料理酒代わりにする。飲みたいけど、今は我慢だ。

 炊き上がった米は十分な甘みはあったが水分が足りないため、今度は水を少し多めにして炊くとしよう。多少の粘り気がないと物足りないよね。

 それにこの食感では、懐かしいとは思って貰えないだろう。


 昆布出汁のスープを鍋に入れて火にかけ、砂抜きした大シジミをよーく洗って全部投入、貝が全部開くまでこのまま置いておく。

 切った野菜とドラゴンの肉の赤身部分を薄切りにして炒め、昆布出汁スープを加えて火にかけアクを取り、料理酒と砂糖と醤油で味を調える。

 ふふふ、私の記憶にあるものとほぼ同じ味だ。難点を言うなら、ドラゴン肉の主張が強いかな。ちっ。


 鍋に入った大シジミが全部開いたので味噌を加えて味を調える。しまった、あいつは私と違って酒飲みじゃない、シジミよりワカメや大根の方が良かっただろうか。でも美味しいから許してくれるだろう。

 米もそろそろ炊き上がるので、魚を焼くとしよう。焼けた魚は身をほぐし、炊き上がった米で作ったおにぎりの中に入れ、外に塩をまぶす。海苔も欲しいが無いものは仕方が無い。


 肉じゃがとシジミの味噌汁、そして鮭おにぎりの完成である。


 さて。しまった少し時間がかかりすぎたかな、向こうとの時差は六~七時間だったか。お昼どきはちょっと過ぎちゃったけど、向こうはずっと同じところから動いてないみたいだしまあ良いか。

 それにしても調子に乗って作りまくったけど、流石にちょっと多いかな。

 肉じゃがと味噌汁を別の鍋に半分ずつ移して空間庫に入れ、おにぎりも半分空間庫に入れて持っていこう。あ、でも一人分だけは器に入れて手で持っていこーっと。


 あれ、何か向こうがよく見えないな。でも外にいるっぽいしまあいいや、うふふふ。


「あ! 姉御が!!」


 相変わらず勘が良いなーリオ。でももう転移しちゃった。てへ。


『ゴチン!』

「ぴぎゃっ!?」


 え、後頭部に何かぶつかったよ!?


『トサッ』


 あ……空間障壁で作ったお盆、ひっくり返しちゃった……せっかく作ったのに……。


「ナ、ナナ!?」

「ヒデオ……ごめんなのじゃ、驚かせようと思って持ってきた料理、ひっくり返してしもうた……」


 びっくりさせるのは成功したようだけど……って、何でヒデオは私のスライムを持って血だらけで立ってるの?


 あれ? それに何かたくさんの視線が私に集中しているよ? んんん?

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